そろそろイベント欲しい 心臓、カーミラ強化クエで手に入ったが未だ三個必要
「つ、疲れた……」
悪魔よしてまだまだ未熟な俺には課題が山積みだ。まずは魔力量。身体能力は悪魔だからか、人間に比べてグングン上がって行くけど、魔力はそうはいかない。そもそも魔力量がカスの俺では成長率も低いんだ。まぁ気長に伸すしかないな。
だけど、早急に習得すべき事がある。飛行だ。本来悪魔は飛べるけど、俺は最近になって漸く浮けるようになってきた程度。泳ぎで言うならば水に入っても何とか溺れないでいられるけど、前には進めないって感じか? 悪魔は飛べて当たり前だし、使える手段が少ないって事はもしもの時の選択肢が狭められるって事。今辛い目に遭うことで皆を守れるようになるのなら苦じゃないぜっ!
「あっ、お疲れ様です、イッセーさん!」
く〜! 相変わらずアーシアの笑顔には癒されるぜ。今も俺にタオルを手渡してくれるし、兄貴に習ってお菓子作りの勉強も進んでるんだよな。まぁ兄貴が
『誰かに食べて欲しいと思って作るなら、美味しそうに出来たから食べて欲しい、じゃなくて、美味しく出来たから食べて欲しい、にしな。じゃねーと自己満足だ。食べて貰う事を喜ぶんじゃなくって、相手が食べて喜ぶ姿を喜びな』
って言ったからってまだ食べさせて貰ってねぇんだけどな。……ちなみに兄貴は先生だからって味見をしてアドバイスをしているらしい。コアトルさんとの仲を見る限りじゃアーシアとはそういう仲にならないだろうけど、何だかチクショー、とってもチクショー。
「今日のデザートはシャルロット・オ・ショコラだってお兄さんが言っていました。楽しみですね!」
兄貴のお菓子に夢中のアーシアは本当に嬉しそうだ。兄貴、コアトルさんが甘いの好きだからって毎晩のようにデザート作ってるからなぁ。俺も甘いの嫌いじゃないし嬉しいけどな。
この時、俺は知らなかった。これが地獄の幕開けだという事に……。
「兄貴、夕食要らねぇの?」
今日の夕食は兄貴特製のタンシチュー。友達の伝手を使って取り寄せた牛たんをコトコトじっくり煮込んで作った絶品で、家族内でも一二を争う人気メニューだ。当然の様に部長やアーシアも美味しそうに食べている。
この日、兄貴は急に誘われた飲み会にコアトルさんと一緒に行ったとかでデザートは古くなる前に食べてくれって事だ。余ったのは二個だから俺も食べたいけど我慢我慢、此処は部長とアーシアに譲らねぇとな。
「ん〜! これも最高ね。彼をうちのシェフとして雇いたいくらいだわ」
「でも、最近食べ過ぎて体重計に乗るのが怖いです。今日もお腹一杯食べたのにデザートを二個も食べちゃって……」
「……言わないの、アーシア。甘いものは別腹よ」
そう言えば兄貴が帰ってくる前よりも二人の食べる量って増えてるよな。兄貴の料理が美味しいのが駄目なんだけど、そんなに気にする事なのかな?
まぁ俺って昔から兄貴のお菓子を沢山食べているけど太った事ねぇしな。それはそうと別腹って事は、料理を食べ過ぎて太った分と甘いものの分で二倍太るって事……殺気っ!?
俺はレイナーレとの戦いやライザーとのゲームで殺気を受けた時の感覚を知った。この肌がチリチリするような寒気の原因は……部長っ!?
「……えっと、今の口に出てました?」
「ええ、昔から甘い物食べてるけど太った事がないのくだりから二倍太るの辺りまでね。……後で私もトレーニングをするわ。貴方も
「あ、あの、私も明日からイッセーさんの早朝ランニングにお付き合いします」
アーシアは涙目になりながらもお菓子を口に運ぶ。ああ、可愛いなぁ。現実逃避をしながら俺はアーシアの可愛さに夢中になっていた……。
「それにしても貴方に恋人が出来るなんてね。一向に私に恋する様子がないから、恋愛に興味がないのだと思っていたわ」
「はっ! 鼻垂れの時からテメーの性悪具合をよーく知っているんだ。どう間違ったら恋に落ちるってんだよ、なぁ、
「全くだな。俺達
ダチの一人である
ちなみに妹が二人のマネージャーをやってるって聞いてる。昔からこき使われてるが仲は良い。
「っとハニーは……」
キョロキョロとハニーを探すとデけぇから(俺の方がでかいけど、でかいって言ったら怒るから本人には言わない)直ぐに見つかった。
「アハハー! 日本のお酒も美味しいデース!」
「おっ! いい飲みっぷりじゃねーか! だが俺様の方が上だ!」
「その自信を破壊させて貰う。私の方が上だからな」
見ると
あとは中学生の時からのダチで大手企業の御曹司だったけど高校卒業と同時に独立して会社を立ち上げ、たった数年で親の会社に匹敵する企業のトップになった
「……濃いな」
しっかし、まぁ此処まで濃い連中が集まったもんだ。何かとは言わねぇが店内の濃度が急上昇中だな、おい。
「その濃い連中を引き合わせた共通の友人の貴様が言うか?」
「うっせーよ。大体なんだよ、その話し方。中二病かってんだ。店名も『巌窟王』とか意味わかめだしよ」
「……近頃では普通の店では客が入らないんだ」
「……悪い」
「……謝るな、惨めになる。雑誌に取り上げられてから親は連絡してくれなくなったし、恋人にはふられたがな……」
江戸門が言うには変なキャラ付けしたら客が集まりだしたらしく、今更普通に出来ないんだとさ。……悪い事言ったな。
それから何事もなく日々は過ぎていく。まぁ創作物の世界じゃあるめぇし簡単に大事件が起こって堪るかってんだ。女神と婚約したのは最高だが、弟が堕天使に殺されて悪魔になったとかあったてのによ。……レイナーレとかいうアマはイッセーが一応の決着は付けたから俺は何も言わねぇ。だが、アザゼルとやらは何時かぶん殴らなきゃ気が済まねぇな。
なんせ、野郎のせいでイッセーは……。
兎に角、ハニーと公園でデートしたり、講義受けたり、ハニーと新しいカラオケボックスに行って出禁食らったり、幼馴染の所でバイトしたり、ハニーのダチである他の太陽神と会ったり、ピースマン教授が元婚約者に結婚詐欺師処刑砲とかいう技を食らったり、ハニーとヤったり、組手でイッセーと木場をボコったり、スサノオとか言う神と仲良くなったり、レポートがギリギリで焦ったりと充実したごく普通の毎日を送ってたんだが、ある日ハニーにこう言われた。
「……暫くは無闇に外出しないでね。関係ない人は私が守るけど、そういう世界に生きてる相手の面倒は見ないから」
どーも個人としてのみ付き合うって事に接触するからって詳しくは俺にさえ言ってくれなかったが、どうもキナ臭ぇ事が起きてそうだぜ。
そんなある日、買い物帰りに妙な二人組を見掛けた。砂漠にでも行くような顔も肌も完全に隠したフード付きのマントみてぇな怪しい奴らで、メモを見ながらキョロキョロ周囲を見渡している。……スゲー目立ってるな。
「……あれ? もしかしてレーカンお兄ちゃん?」
「知り合いか? イリナ」
……イリナ? 何処かで聞いた名前だし、向こうはこっちを知っているようだと記憶を辿る。すると思い出す前に片方がフードを取って嬉しそうにしながら駆け寄ってきた。
「私、私! イリナ、イリナ!」
「……ああ、思い出した。大きくなったじゃねーか」
そうそう、イッセーと仲良くなって家にも遊びに来ていた紫藤イリナだ。俺もよく遊んでやったら二人して俺の後を付いて来たっけな。あの頃はショートヘアで男みたいだったんだがな。
「家で昼寝した時に寝小便した布団後始末してやったりしたっけな」
「そ、それを言わないでよ〜!!」
ポカポカと殴ってくるイリナ。……なーんか随分と戦闘慣れした感じがすんな。歩き方とか軸がぶれてねぇ所とかよ。
俺が二人を怪しんでいたその時、風が吹いてマントが翻る。マントの下は水着みてぇな格好だった。
「……まぁ、なんだ。服装はテメェの自由だけどよ……」
弟の幼馴染は服装の趣味ががアレだった……。
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