ケツアゴ作品番外及び短編集   作:ケツアゴ

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アンパンマンは頭がアンパン

バーガーキッドは頭がバーガー

天丼マンは丼の天丼を抜き取られても・・・・天・・丼マン? 


悪故に悪を成そう 終

「そう言えばさ、うちの組織って組織名ないの?」

 

 それは平和なお昼どき、焼肉屋に集合と聞かされて一人先に行ったものの誰も来ず、皆が別の店でスキヤキを食べている間、ずっと待っていた黒歌が会議室で口にした疑問だった。

 

「あっ、組織名に関してならこの間決めましたよ、姉様。私と先生とサイラオーグさんとバルパーさんとリゼヴィムさんとエンヴィーさんで」

 

「私除け者っ!? 私も幹部なんだから参加させてっ!?」

 

「取り敢えず今は決めない事にしました。まだ表舞台に立っていませんし、正式に存在を表明した後、私達をどう呼ぶか向こうが勝手に決め、それが浸透した辺りで全く別の名前を名乗ろうって先生が言いました」

 

「……うわ〜」

 

 性格悪いと思ったが今更なので言わないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「和平反対! 和平反対!」

 

「奴らは敵だぁぁ! 皆殺しにしろー!」

 

 魔王領を中心に行われているデモは戦争継続を支持する貴族や反魔王派の介入で激化し、今や数万人規模の民衆が魔王が執務を行う屋敷を取り囲んでいた。聖剣を使う騎士や堕天使と思しき集団による悪魔領への襲撃事件は連日のように行われ、対応が後手後手に回る魔王への不満は貴族の息がかかったマスコミによって激化の一歩を辿っている。

 

 この様な状況下でも既得特権を守ろうとする貴族によって悪魔は徐々に衰退へ進んでいた。そんな中、更にデモを激化させる要因となったのが数日後に控えたトップ会談。そこで魔王が和平を結ぶ気だとマスコミにリークがあり、民衆の怒りが爆発した。

 

 堕天使は堕天使で副総統と内密に恋に落ちていた悪魔が子供と共に悪魔に殺害され、更にはリアスの眷属である朱乃が堕天使幹部であるバラキエルの娘であることが冥界中に広められた。連日のようにバッシング的な報道がなされ、これを機に悪魔や堕天使を撲滅しようと教会の戦士が騒ぎ出す。

 

 

 

 

「うひゃひゃひゃ。所詮は薄氷の上に築かれた平和。僕ちゃんが少し扇動すれば容易いぜ」

 

 前ルシファーの息子として行方不明になった今でも強い影響力を持つリゼヴィムは協力者である貴族達への手紙を書きながら笑う。彼らが望むルシファーの息子に相応しい文章を送るだけで簡単に今の政権を裏切る貴族達は彼にとって都合の良い玩具であった。

 

 

 

 

 数日後、会談の結果が新聞の一面を飾る。だが、その内容はサーゼクス達が当初望んでいた物とは懸け離れていた。

 

「三すくみ間での戦闘行為の厳禁。破った勢力は残りの勢力二つで袋叩きだってさ。どうだい? 君の望んだ物とは違うけど」

 

「……殺せ」

 

 冷たく湿った地下牢の中、翼と手足をもがれ光力を全て奪われたコカビエルは自分を閉じこめ力全てを奪った彼を睨む。エクスカリバーを奪い魔王の妹たちを殺して戦争を再開させるという彼の野望は桁外れの悪意の前に踏み潰されていた。

 

「嫌だね、面倒くさい。なんでわざわざライバルキャラの噛ませ犬の殺処分をしなくてはならないんだい? そんなことよりも今日みたいに君が嫌がりそうな話を聞かせる方が楽しいじゃないか。じゃ、もう行くよ。君は聖剣を強奪したまま行方不明になったし、皆に不安を振りまいてくれて助かるよ。何時動くか分からない奴って怖いからね」

 

 

 

 

 

戦争が起きそうでおきないという不安の中、綻びは少しずつ悪魔社会を蝕んでいった。

 

 戦中の需要を狙って商人が食料や生活必需品を買い溜めた。だから物資が不足して物価が上がった。

 

 ちょっとした事故が発生した。他の勢力の仕業ではないかと噂が立った。

 

 ピリピリとした状況の中、諍いが起きやすくなった。

 

 欲望のままに生きることを良しとする歪な社会。権力が二つの派閥で分散し、振り回される民衆には不安ばかりが広がっていく。明確な敵が目の前に居たのならば力のある魔王の元で結束しただろう。だが、今のような戦闘力が役に立たない事態では……。

 

 

 

 

 

「……リアスが結婚か。まあ、こんな情勢だからな」

 

 サイラオーグはトイレで新聞を広げながら呟く。幼い頃に会ったっきりの()()()()()()()()()の婚約が早まり、大規模な報道の元で披露宴が行われようが興味は然程ない。精々が結婚相手であるライザーは親類縁者が全滅して(クッキーは美味かった)実権を全て握った彼の所にリアスが嫁ぐ形になろうが、自分がかつて成りたかった魔王の有力候補だったミリキャスが次期次期当主から正式に次期当主になって魔王になれなくなってもどうでも良い。

 

 

 

 

 

 

「眷属が一人、貴族に逆らったから処刑か。見せしめだろうな、それか身の丈に合わない良い神器でも持っていたか?」

 

 大っぴらに強い神器を手に入れれば他の勢力を刺激するが、処刑する際に抜き出して黙っておけばそうはならない。

 

「……紙がない」

 

 ケツ出した状態でトイレから出た時、丁度白音と出会した。

 

 

 

 

 

 

 

「……戦争か。起きたら良いのにな。なあアルビオン」

 

『俺は赤いのとの戦いの方が興味があるな』

 

 堕天使領地でヴァーリは戦争が起きればと願いながら修行を行っていた。そんな時、窓から紙飛行機が飛んでくる。何か書かれているので開いてみると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変だ、アザゼル! ヴァーリが抜け出した。修行して赤龍帝の籠手を装備したサーゼクスに勝負を挑むそうだ!」

 

「はあっ!?」

 

 突然の知らせにアザゼルは久方ぶりの酒の入ったグラスを取り落とす。最近は忙しくて酒を飲む余裕もなかったが、この日は仲間が気を使って酒の時間を使ってくれた。だが、それは知らせに来たバラキエルの手の中の紙飛行機に印刷された写真と知らせの内容で終わってしまう。

 

 赤龍帝の籠手を装備したサーゼクスの姿はアザゼル達に危機感を与えるに十分であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、ヴァーリ君が組織を抜けてから早一ヶ月……脆いね。あまりに脆すぎる。手を抜き過ぎたと思っていたのに」

 

「ははは! 僕を散々働かせといてよく言うよ。……楽しかったなぁ。ミカエルに息子を殺されたルシファーや、自分の父親に犯された時の元堕天使の小娘の顔とかさぁ……最高だよねぇ!!」

 

「いやはや、私と同じ施設の生き残りを発見した時は肝を冷やしたが、君のような最悪の性格で良かったよ」

 

「性格最悪は先生だろ? 僕は二番目さ」

 

 

 不戦条約はたった数ヶ月しか持たなかった。元々殺し合いをしていた仇敵で、トップ数名が手を合わせたからといって下の者もそうなるはずがない。オーフィスを神輿に据えたテロリストが殆どが三時のオヤツに消えた今、元々の敵が明確な敵に変わった……ただそれだけだ。

 

 

 

 きっと疲弊した三すくみは何処かの神話に何かしらの口実で滅ぼされるだろう。オーフィスもその内自ら動き出すだろう。龍殺しの力を何者かに奪われたサマエルは役に立たないだろう。神の奇跡を起こす力を奪われた槍は青年の夢を叶えることは出来ないだろう。

 

 

 

 

 そんな中、悪は悪を為すために動くだろう。理由は簡単。悪故に悪を成す、只それだけだ。

 

 

 

 




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