銀河英雄ガンダム   作:ラインP

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おはようございます。
今回は感想でいろいろ誤解されていたので科学的な説明回となります。


第八話 ヤン・ウェンリーの布石

シェーンコップとアカツキ改の戦いは熾烈を極めていた。

 

この戦い、一見身長3mのシェーンコップと20mのアカツキ改では、大きさの差がありすぎて勝負にならないように見える。

だがそれは実際の戦闘を経験したことのない素人がライト級ボクサーがヘビー級ボクサーに勝つのは不可能と言っているようなものである。

武道に熟練した者ほど、柔よく剛を制すという言葉の重要さを理解するだろう。

20mサイズのアカツキ改が兵士一人と戦うということ、それは人間がハエを相手に戦うということだ。

小さくてすばやく動くハエを素手で捉えて倒すのすら苦労するのに、それをMSを操縦して行うことなど非常に難しいことは科学的に明らかである。

MSはもともと戦闘機やMS、戦艦といったサイズの敵を相手にすることを想定していて、歩兵を相手にする際には弾幕を張ったり広範囲を爆撃して倒すことはしても、ビームサーベルで歩兵を斬るなど想定していないのである。

なので、素早く動く熟練した武術の達人の動きは如何に超天才的な操縦技術を持つムウ・ラ・フラガ首相でも難しいのだ。

その上、戦っているのはアークエンジェルの中。

アークエンジェルを破壊するなんてもっての外であるので、普段は使えている銃火器を一切封印してビームサーベルだけで戦わざるを得ない。

 

更に、ここは宇宙だ。

故に無重力である。

 

つまり、現在アカツキ改の重量は0グラムである。

本来は90トンあるアカツキ改の重量も、無重力だと0グラムになる。

シェーンコップも体重が0グラムになるが、同じ0グラム同士、力が均衡する。

であるからして、格闘戦が成立するのだ。

すばやく動き、攻撃の届かない懐に飛び込み斧で斬りつける。

まさに小さい歩兵の利点を活かした戦い方だ。

 

そして、アカツキ改には致命的な弱点がある。

それは本来、アカツキ改の大きなメリットである、ビームに対する絶対的な防御である黄金の装甲である。

ヤタノカガミと呼ばれるそれは、ビームを完全に無効化するのだが、それ故に質量兵器に対する致命的なまでの脆さがある。

アカツキ改はヤタノカガミを実現するためにすべて純金で出来ている。

純金は普通の人は触ったことが少ないだろうから気づきにくいが、非常に柔らかいのだ。粘土のように。

そして、シェーンコップの持つ炭素クリスタルの斧は、人工のダイヤモンドで出来た斧である。

ダイヤモンドはこの世で一番硬い物質で、どんな力を持ってしても破壊することは不可能である。

たとえビームに焼かれても何億トンの重量をぶつけられても傷一つ付かないのがダイヤモンドの特徴である。

そんな硬いダイヤモンドで出来た斧で純金の装甲を殴ればどうなるか。

一撃で豆腐のようにグチャグチャに飛び散るだろう。

故に、ムウ・ラ・フラガ首相は一撃でも喰らえば負けてしまうため、回避に専念する必要があるのだ。

 

どちらも一撃を与えれば倒せる、そして一撃も食らうことが出来ない。

そんな状況だからこそ、戦いは拮抗する。

 

 

現在、アークエンジェルは衛星軌道上にいる。

それは衛星軌道上に配置されたジェネシスとドッキングしてるからだ。

150万隻という大艦隊を擁する銀河帝国と戦うには大火力が必要だ。

故に、ザフトから接収したジェネシスとドッキングしている。

これは大戦後に接収したジェネシスを有効活用するためにアークエンジェルとともに改修されたのだ。

そのようなわけで現在アークエンジェルwithジェネシスの大きさは、直径100万キロほどの大きさになっている。

もちろんこんな大きさだと移動できないので、ジェネシスは衛星軌道においてあり、ドッキング中はアークエンジェルも動くことは出来ない。

なので、揚陸艇がワープしてきた際に、移動できずに接舷を許してしまった。

痛恨の極めである。

だが、ドッキングしていたため、内部はとても広く、MSや戦闘機などで防衛できている。

 

 

これは5年ほど前、自由惑星同盟のイゼルローン要塞から技術供与され、衛星型要塞として機能させるために作られたもので、ブルーコスモスやデュランダル議長との戦いの際に大活躍した。

ヤン・ウェンリーがいつかこの地球も銀河帝国の侵略を受けるのではないかと危惧して先んじて手を打っていたのだ。

まさに神算鬼謀といえる。

故に、如何に装甲擲弾兵といえど、攻略に手間取っているのだ。

 

 

つまり、未だアークエンジェル軍と帝国軍が拮抗した争いを続けれるのはヤン・ウェンリーの布石あってのこととも言えるだろう。

 

 

キラ・ヤマトが参戦するまで後4時間54分。

戦いは更に加熱していく。

 

 


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