銀河英雄ガンダム   作:ラインP

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アイドルマスタータグは今回の話から。Fateタグは次回登場する予定です。

感想でタグを指摘されたので。
銀英伝のDVDレンタルしに言ったらアイドルマスターのDVDがあってそっち借りてハマっちゃいました。
アイマスってロボアニメだったんですね。勘違いしてました。


第六話 歌の力

「くっそマジつえー」

「うでがーうでがー」

「俺の下半身どこいったー下半身―ガクリ」

 

あちこちで被害が拡大している。

 

敵将シェーンコップは不可能を可能にする男ムウラ・フラガ首相が一対一で止めているので壊滅的というほどではないが、それでも兵士の数では圧倒的に不利。

ジリジリと押されてきていた。

 

キンキンキンキン!

シェーンコップの振るう斧とムウラ・フラガの愛機アカツキ改のビームサーベルが何度も打ち合わされる甲高い金属音が鳴り響く。

キキンキンキンキキンキンキン!

その音は時間を減るたびに加速する。

斬る薙ぐ逸す避ける突く斬る斬る薙ぐ薙ぐ逸す逸す避ける避ける突く突く

お互いに一歩も引かず、卓越した技量でお互いへの致命打を打ち、そして尽くをお互い回避していく。

斬る薙ぐ逸す避ける突く斬る斬る薙ぐ薙ぐ逸す逸す避ける避ける突く突く飛ぶ飛ぶ穿つ穿つ跳ねる跳ねる抉る抉る斬る薙ぐ逸す避ける突く斬る斬る薙ぐ薙ぐ逸す逸す避ける避ける突く突く飛ぶ飛ぶ穿つ穿つ跳ねる跳ねる抉る抉る斬る薙ぐ逸す避ける突く斬る斬る薙ぐ薙ぐ逸す逸す避ける避ける突く突く飛ぶ飛ぶ穿つ穿つ跳ねる跳ねる抉る抉る

もはや常人には到底理解どころか視認すらできない光の速さまで到達している。

その剣速は1秒間に1万発。

余波だけで通路の床という床、壁という壁を切り裂き崩落させ、お互いの兵はその空間に近寄ることすら許さない。

彼らが戦っている半径10キロは誰も近寄れない空白地帯ができていた。

 

 

だがシェーンコップは抑えれても、こちらもムウラ・フラガが同時に抑えられている状況。

装甲擲弾兵にはもうひとりの将軍オフレッサーがいる。

 

そのオフレッサー将軍の指揮のもと、装甲擲弾兵は悠然と戦場を闊歩する。

 

ブリッジへ続くメイン通路。

そこまであと少し。

そこまでたどり着かれるとあとはブリッジまで直線なので防衛が厳しくなる。

投入されるモビルスーツも虎の子のガンダム部隊を残し数百機もはや出し惜しみなどできない。

 

 

このままでは防衛は難しいか。

防衛部隊の隊長はいざとなったら自爆を覚悟せねばと嘆息する。

だが運命の女神はまだ彼らを見捨ててはいなかった。

 

 

「抱きしめて!銀河の果てまで!」

 

 

通路後方からステージがせり上がり、ライトアップと共に歌が戦場に響き渡る。

ステージに立つのはラクス直轄戦術歌唱部隊756小隊所属のアイドルたちだ。

 

 

「プロデューサーさん!戦場ですよ!戦場!」

「この私が歌ってあげるんだから、無様な姿見せたら承知しなんだからっ!」

「「はるるんもいおりんも久々の戦場で高ぶってるぞ、亜美と真美も負けないように精一杯歌うから兄ちゃんたちもうーんと頑張って戦ってね」」

 

アイドルたちが歌い出すと今まで心が折れかけていた兵士たちが活力を取り戻していく。

重症をおって気を失っていたり、手足がもげて瀕死状態だった者たちも次々と起き上がり、残り少ない命の灯を燃やし尽くすかのように光の消えた目を敵へと向け、突撃していく。

 

アークエンジェル軍の兵士たちはコーディネイター手術の際に特定の周波数の歌を聞くと戦意を高めたり、痛みを感じなくなったり、また逆に混乱していた心を沈めて気を落ち着かせたりといったバフを受けることができるようになっている。

戦術歌唱部隊は戦場で歌をうたうことによって、それぞれの状況にあったバフを兵士たちに与える特殊部隊なのである。

 

ラクスがザフト時代に培った歌による民衆への心理的影響に関する研究を実践的に採用したのだ。

先程ラクスがブリッジのクルーを落ち着かせたのもこのバフの効果である。

これによって恐怖も痛みも感じず最後の一兵まで勇敢に戦い抜く理想の軍ができたのだ。

 

 

「サクリファイスソング・隣へ・・・」

 

アイドルの三浦あずさ少尉が『隣へ…』を歌うと、特殊な装備を身にまとった兵士500人が次々と敵へと突撃していく。

その兵士の顔は無表情。ただ「生まれ変わっても君を見つける」とだけぶつぶつと言いながら敵の元へと全力で走り続ける。

そのあまりにも不気味さに装甲擲弾兵が近寄りがたいふいんきを感じ、遠くから斧を投げつけて殺そうとする。

だが兵士たちは頭が潰れようが足が無くなろうが止まることなく走り続け、敵まで接近してくる。

その止まらない理由は彼らの装備したパイロットスーツにある。

三浦あずさ少尉だけが使える特殊ソング『隣へ…』の部隊に配属された兵士は特殊なパイロットスーツを着ている。

それは歌が発動すると敵をロックオンし、たとえ装着者が途中で死のうともスーツが動きを補佐して任務を完遂する機能があるのだ。一種のパワードアーマーである。

そして、敵へと接近すると敵を思いっきり抱きしめ、肉体内部に仕込んである超高性能戦略核が炸裂する。

腸の部分に収められるサイズの小型サイズにかかわらず、戦略級の威力を誇る核爆弾が炸裂すると、ガンダムタイプのモビルスーツすら蒸発する威力がある。

元々モビルスーツの保有数が少ないアークエンジェル軍が兵士でモビルスーツを倒せるようにと開発された特殊部隊だ。

ただその特殊性故に高い包容力を持つ三浦あずさ少尉にしか使用できない。

この攻撃で敵を5万人ほど削ることができた。

まさにキルレシオ100倍である。

 

「遠い彼方へ旅立ったのね、また私を一人置き去りにして。ずっとそばに居てくれるといったのに嘘つきな人たち…」

 

散りゆく兵士たちを見ながら三浦あずさ少尉は一人涙を流す。

 

 

また歌は味方へのバフのためだけではない。

男性アイドル白銀御行が装甲擲弾兵へと自慢のラップを歌う。

 

「ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!ボエ!」

 

音程とリズムが異次元へと乖離したなまこの内臓のような歌声が敵へと響く。

それを聞いた装甲擲弾兵たちは口から泡を吹きながら倒れていく。

彼の歌は指向性を伴う音響兵器として特化したもので、例え鼓膜を破ろうとも脳へと直接響かせ地獄へと引きずり込む魔性の歌声の持ち主なのだ。

この歌によってまた1万人ほどの装甲擲弾兵が戦線離脱を余儀なくされる。

 

 

「あのアイドルどもだ!あのアイドルどもを倒せ!」

 

アイドルたちの歌の危険性に気づいたオフレッサー将軍はそれをやめさせるために禁忌をやぶってブラスターで狙撃させる決断を下す。

 

「インベル!おねがい!」

アイドル天海春香が叫ぶと、彼女の後ろから全長38メートルの大型ロボットが飛び出し、重力レイヤーとも呼ばれる防御フィールドを展開してブラスターからアイドルたちを守る。

インベルと呼ばれたそのロボットはロストアルテミス社が作り出したiDOLと呼ばれる謎のロボットである。

特殊な資質を持った人にしか操縦できないロボットであり、アイドルたちは歌うアイドルであり、同時にiDOLを制御するidolm@sterでもあるのだ。

先の戦争で多数のiDOLを喪い、残り少ないiDOLのうちの一つがこのインベルであり、アイドルたちを守る最後の砦でもあった。

故にインベルがいる限り、アイドルたちを倒すことは難しい。

そしてインベルの攻撃と死兵と化した兵士たちによって装甲擲弾兵の猛攻は尽く食い止められていく。

 

 

帝国軍旗艦

 

「うぬぬ。文明すら持たない未開の猿どもが!小癪な木偶人形を使いおって!」

 

もはや勝ったも同然と優雅にマッサージを受けながらワインを嗜んでいたラインハルトは、その映像を見て顔を真っ赤に怒りに染め上げ手に持ったグラスをオーベルシュタインに投げつける。

 

「オーベルシュタイン!参謀の貴様が何をこんなところで突っ立っている!あの猿どもを駆逐する策をひねり出すのがお前の仕事だろうが!」

 

「お言葉ですがラインハルト様、プランBは未だ始まったばかり。まだ2手3手と残されております。やられたのはせいぜい10万。残り90万を残らず投入しておりますれば、所詮敵兵5000など造作もなく押し切れます。このまま突撃されるのがよろしいかと」

 

それを聞いたラインハルト。

常に冷静で頭脳明晰な王者の脳が冴え渡る。

 

「ふむ、確かに妙案だな。よし、下手な小細工などより数で押しつぶすのが王道。獅子はネズミをかるのも全力を尽くすのだ。いざとなったら第二、第三の装甲擲弾兵をオーデンから呼び出すのだ」

 

 

キラ・ヤマトが参戦するまで後4時間58分。

戦いはまだまだ加熱していく。

 


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