銀河英雄ガンダム 作:ラインP
急いで書いたので文法が変な所あるかも。
予約投稿なので修正とかはまた後日。
アークエンジェル艦隊はエーテル宇宙を進んでいた。
銀河帝国中枢に向かい、ワープを開始して2分、ウラシマ効果により地球では2000年ほどたっているだろう。
このまま何もなく7つの銀河を素通りし、オーディンへと辿り着けるのが最良ではある。
だが、やはりというべきかそうすんなりとは行かせてはもらえなかった。
1つ目の銀河を通ろうとしたとき、突如として現れたエーテル宇宙を次元断裂させる結界により、アークエンジェル艦隊は通常宇宙へと引き戻されてしまった。
「できるだけ気づかれないうちにオーディンへと行きたかったのだけど」
マリューラミアス提督はちらりと通常宇宙でどれだけの時間が経過したのかを測定するウラシマ時計を見る。
「通常宇宙時間で2072年経ってるわね。ラインハルト艦隊がその間に情報を送って待ち伏せさせたってところかしら」
『そのとおおおおおおり!!!』
マリューラミアス提督の呟きに対して、いきなりオープンチャンネルで割り込みがかかった。
『貴様ら蛮族の原始的なワープと違い、我ら銀河帝国のワープ技術はウラシマ効果などおこらず瞬時に転移可能なのじゃ!故にゆっくりとそなたらを待ち伏せできたというわけじゃ!』
モニターにでかでかと映し出された老人が「これが飛んで火に入る夏の虫じゃな」といい呵々大笑する。
「索敵班!あの老人の情報は!」
「銀河のギリワンボンバーマンことクロプシュトック侯爵です!」
マリューラミアス提督の問いかけに索敵版のクルーがすぐさま応答する。
「クロプシュトック!あの有名な爆弾狂いのクロプシュトックなのね!」
銀河のギリワンボンバーマン、または爆弾狂いのクロプシュトック。
地球から1つ目の銀河を領土とする侯爵家であるクロプシュトック家は銀河帝国貴族の中でも一番裏切り者として知られ、また稀代のボンバーマンとしても有名だった。
クロプシュトック家の当主は他家のパーティーに呼ばれる度に必ずその場に核爆弾をお土産でおいていきパーティー会場を爆破することを代々の当主の役割としており、現当主ウィルヘルム・フォン・クロプシュトックも年間50以上のパーティー会場を爆破している。
特にブラウンシュヴァイク公爵は寛容さ故に毎回クロプシュトック家をパーティーに招待しては爆破されている。
今ではブラウンシュヴァイク公爵家の毎月定例パーティーの締めくくりはクロプシュトックの爆破で終わると貴族たちの常識として知られている。
これがいわゆる銀河帝国の爆破オチといわれ、自由惑星同盟ではお貴族様コントの定番ネタにまでなっているほどだ。
そんな変わり者貴族として「駄目だこいつ」と貴族間でもはや諦められているほどだが、クロプシュトック家の能力としては侯爵だけあって、油断できない実力がある。
銀河帝国の貴族領地では当然だが領民全員が一人の例外もなく兵士である。
老若男女関係なく軍事訓練を受け、いざ領土の危機となれば全員が武器を手に立ち上がるのである。
生まれたばかりの赤ん坊ですら口に爆弾を詰められブービートラップとして活用され、誰もそれに疑問など覚えないのだ。
そして領民の戦い方というのはその領地ごとの個性が反映されている。
例えば全身甲冑とレイピアをこよなく愛するポルナレフ髭男爵家の領土では領民は常に全身甲冑とレイピアを着るのが法律で定められており、敵との戦いではその格好のまま「シルバーチャリオッツ!」の掛け声と共に突撃するという戦闘方法だ。
例え相手が戦車であろうと航空機であろうと宇宙戦艦相手でもレイピアで戦うのが彼らの誇りである。
おかげで自由惑星同盟との戦争開始初期になぶり殺しにあい、すでにポルナレフ家は断絶している。
そしてクロプシュトックの領土では爆破こそ真理。爆弾が彼らの唯一無二の武器である。
クロプシュトック領民は全員生まれながら爆破のプロフェッショナルである。
産まれた赤ん坊に手榴弾をもたせ、爆弾に慣れさせて爆弾と共に育っていく。
当然赤ん坊の頃に誤爆して死亡する子供も出てくる。
だがその過酷な状況の中生き延びた子供こそ、真のボンバーマンとして成長するのだ。
故に彼らの戦いとは爆弾による爆破である。
アークエンジェル艦隊の艦艇が3隻、いきなり爆破して火球となる。
「魚類戦艦ダライアス!宅配巡洋艦ヤマトクロネコ!郷愁駆逐艦ホームシック!爆沈しました!」
「なんですって!状況どうなってるの!」
通信士からの報告に驚き、指揮官席から転げ落ちたマリューラミアス提督が情報の確認を指示する。
「どうやら各艦にクロプシュトックの領民が無差別にボソンジャンプしてきて、自爆しているようです!」
「各艦、陸戦隊が領民が爆破する前になんとか無力化しようとしていますが、数が多すぎて対応しきれていません!」
クロプシュトック家の領土である第一銀河は小さいながらも総人口100億を超える。
それら全員が次々と転移しては自爆するのだ。
いくら優秀な陸戦隊がいようとも、数的にどうしようもないであろう。
『ふはははは!どうだマリューラミアス提督!このクロプシュトック家に歯向かうからこうなるのだよ!』
通信モニターからクロプシュトック翁の笑い声が響く。
「こんな攻撃…一体どうしろっていうのよ」
無数に転移してくる敵兵に対してマリューラミアス提督はどう対応すればいいのか分からず絶望に暮れる。
こうしている間にも次々と味方の艦が爆破されていく。
遂にはアークエンジェルにも転移するものが現れてきた。
領民が爆弾を爆破させようとするのをブリッジクルーたちが必死に止めていくが、すぐに対応しきれなくなるだろう。
まさに絶体絶命か、そんなときだった。
“諦めるな、ラミアス艦長!あなたは艦長である前に技術者でしょ!こんな原始的な爆弾なんかに負けるあなたではないはず!”
マリューラミアス提督の頭の中に叱咤する声が響く。
「ナタル・・・貴方なの?」
その声はヤキン・ドゥーエでの戦いで散ったナタル・バジルール少佐の声であった。
「そうね。何を勘違いしていたのかしら。提督提督って持て囃されて、ちょっと考え違いしていたみたいね」
マリューラミアス提督はふっきれたような清々しい笑顔で立ち上がる。
「私は元々技術士官よ。戦術でやり返せないんなら、技術屋らしく技術で勝負するしかないでしょ」
そう言って、ラップトップコンピュータを取り出し、一心不乱にプログラムを書きはじめる。
『ん?そんなPCで一体何をしようというのかね?』
クロプシュトック侯爵は怪訝な顔をする。
「爆弾のバイタル角から爆発の物理衝撃がこうで、更に領民の平均的な身長から、そして固定脳波をフレミングの右手の法則に当てはめて、起爆に使うのはBlutoothの規格が…よし!できたわ!アーノルドくん!このプログラムを全艦で実行させて頂戴!」
マリューラミアス提督が組み上げたプログラムを5インチフロッピーへと書き込んでアーノルド・ノイマンへと手渡す。
だがそれを受け取った彼はすぐさま床へと叩きつける。
「だめですよ!提督!こんなレガシーすぎる媒体、読み込める機械なんてないですよ!このUSBメモリを使ってください!」
「えーー!フロッピーってもう時代遅れなの!だって、サーバとかではまだまだ現役じゃない?」
「せめて3.5インチ使ってくださいよ!」
「あのペラペラなのが素敵なのよ!だからわざわざ外付けドライブを特注で発注したのに・・・」
そう愚痴りながらも渋々とUSBメモリへと書き込んで渡すラミアス提督マジ昭和。
「もう令和になるっていうのに、この平成ジャンプ提督め」
そんなことだからいつまでたっても独身なんだよと、内心で罵倒しながらプログラムを送信する。
そして恙無くプログラムは実行されていく。
『一体なんじゃというのだ!わけがわからんわ!』
「ふふふ、これは爆弾の起爆スイッチ乗っ取りバックドアプログラムよ!」
どーーんとドヤ顔で説明するラミアス艦長。
「これを起動している艦の中ではあなた達の爆弾は起爆しないわ!」
そして、そのプログラムが正しく動作しているようで、領民が何度も起爆アプリで爆破させようとしているが、いっこうに爆弾が爆破する様子はみられない。
「そしてもう一つ、そのバックドアプログラムからあなた達の起爆アプリをこちらへと転送させてもらったわ。ふむふむ、こういうソフトね、ならばこうして、えっと、銀河の半径がこうで、クロプシュトック領土をシャヌエル予想して、さらに爆弾の周波数をフィボナッチ数列に当てはめて、オイラーの定理がこうだから、メルセンヌ素数で組み上げれば・・・できたわ」
タタタタターーーン!とスーパーハカーのようにリターンキーを押して、マリューラミアス提督がプログラミングを終える。
「今組み上げたプログラム、これを起動することによって、クロプシュトック領土の全爆弾を起爆できるわ。最後に言い残す言葉はあるなら聞くわよ」
それはそれはとてもいい笑顔で尋ねるマリューラミアス提督。
『ぐぐぐ・・・だが、致しなしか』
クロプシュトック翁はそれに対して、とても悔しそうな顔で、だが最後は貴族として誇り高くあろうと、冷静さを取り戻す。
『そうじゃな、せめて妻のエミリーちゃんと側室のリンリンちゃんとシェリーちゃんとチュッチュしてからでいいかいのう?』
「リア充爆発しろ」
絶賛独身のマリューラミアス提督は容赦なくプログラムを実行した。
こうして、クロプシュトック領土の星はすべて爆破され、第一銀河は消滅した。
銀河帝国開闢から続く、伝統あるクロプシュトック侯爵家はその日をもって歴史に幕を閉じた。
この出来事から貴族たちは三十路を過ぎた独身女性をからかうと爆破されるという教訓を得たのだった。
七銀河貴族専用チャットルームにて。
「クロプシュトック侯爵がやられたか」
「所詮やつは七銀河貴族の中では一番の小物」
「アークエンジェルなど我らの敵ではないわ」
「さて、次は第二銀河の私の出番であるな。どーれ軽く揉んでやるとしよう」
キラ・ヤマトが参戦するまで後4時間42分。
アークエンジェルの銀河帝国を討つ旅はまだまだ始まったばかりである。