銀河英雄ガンダム 作:ラインP
「ラインハルト様、偵察部隊が未発見の星系を発見しました」
それは叛徒共に奪われたイゼルローン要塞を偵察する艦隊からの報告だった。
「イゼルローン回廊の内部。イゼルローン要塞と帝国領の中間あたりです」
「イゼルローン回廊内にだと?もう何百年も回廊内を行き来してて未発見な星系などあったのか?」
銀河帝国と自由惑星同盟は銀河を二分する壁があって、イゼルローン回廊というトンネルでだけ繋がっている。
それ以外は岩壁に阻まれていて、銀河帝国はそのトンネル内にイゼルローン要塞を作って、自由惑星同盟と戦っていたが、先日、ヤンウェンリーに奪われてしまったのだ。
ラインハルトは皇帝からイゼルローン要塞の偵察の任務を受けていた。
そこで偵察に送り出した艦隊が、トンネル内で未発見の星系を見つけたのだ。
でもトンネル内は岩壁に囲まれていて、そのトンネルも狭いので星系があったら今まで見つかっていないことが不思議だった。
「どうやら、もともとイゼンローン回廊の壁に使用期限切れが近いミサイルを練習で打ち込んだところ、壁が薄いところがあったようで。
その壁が砕けて、その向こうに空間が広がっていたので、偵察したところ、その向こうに有人の惑星と恒星が見つかったのです」
「有人だとっキルヒアイス!我々と叛徒以外に宇宙に人がいたのか!グレイ型か!それともタコ型なのか!」
宇宙には今まで銀河帝国と自由惑星同盟の2種類しか宇宙人は存在しておらず、それ以外の宇宙人など子供向けの漫画かオカルトでしかなかった。
「無人機を使って調査したところ、我々と同じような姿形のようです。叛徒人を発見したときに宇宙人研究者が言っていた通り、知的生命体とは進化の都合上、同じような見た目になるんでしょうね」
「そうか、グレイ型じゃないのか。グレイ型なら捕獲して、寂しい思いをしている姉上にペットとして差し上げたかったんだがな」
ラインハルトは愛する姉、アンネローゼを思い、ため息をついた。
「でもラインハルト様、新しい星系は早い者勝ちです。形式上は皇帝陛下に発見した星系を献上しますが、その後、発見者に下賜されます。世にも珍しい宇宙人のいる星系です。アンネローゼ様にお渡ししたら喜んでくださるんじゃないですか」
「それはいい考えだキルヒアイス。それでその星は現地人になんて呼ばれているんだ」
「なんでも地球。そして恒星は太陽と言われているようです」
「ははははは!それは傑作だキルヒアイス!なんとも安直な名前じゃないか!そいつらは知能指数が低いサルなんだろうな!」
「そうですねラインハルト様。ラインハルト様ならもっと素晴らしい名前を付けるでしょうね」
「しかもそいつらは宇宙に進出しているようです」
偵察の結果、地球の周りに宇宙空間で居住できるコロニーを作り、地球とそのコロニーで戦争をしていることが分かった。
「ほう、コロニーか。宇宙空間に進出する程度の技術はあるのか。なおさら価値が出てきたじゃないか。このまま情報だけ持ち帰ったら他の貴族に取られる可能性もあるな。今回は偵察しかしておらず弾薬や燃料は全く減っていないのだったなキルヒアイス」
「えぇ、艦隊数15万隻、エネルギーも弾薬も9割近く残ってます。あと1年は無補給でも航行可能です」
「よし、では全艦隊で進撃!まずは全コロニーを破壊しろ。地球だけあれば後は余分だからな」
「かっしこまりました!ラインハルト様!」
偵察任務ばかりでストレスのたまっていたキルヒアイスは久々に戦闘ができる事でテンションが上がり飛び上がるように敬礼しウキウキと操縦席に座り、全艦隊をコロニーへと向けた。
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場所は変わり、地球側の一つのコロニー。
1年前に二度目の大戦を終え、ようやく平和を取り戻した本日。
戦争をしていた国家、地球連合とプラント、そしてオーブの3国の平和会談がコロニーの一つ、アプリリウス市で行われていた。
地球連合軍の首相ムウ・ラ・フラガ、プラントの最高議長ラクス・クライン、オーブの国王カガリ・ユラ・アスハの3人が平和条約に捺印し、その後会談が行われていた。
「では地球連合は今後プラントを正式に独立国と認めるということで構いませんね」
「ムウさん、そんなに安請け合いしていいの?首相になったばかりでしょw」
ラクスの提案を快諾したムウをカガリがからかった。
「任せておけって!俺は不可能を可能にする男だぜ!今頃特殊部隊がコーディネーター反対派のブルーコスモスの拠点をつぶして回ってるぜ」
プラントはコーディネーターという遺伝子操作をされた新人類で、それを認めない旧人類側の地球連合軍は内部組織ブルーコスモスの扇動で戦争をすることになった。戦後もブルーコスモスの残党がコーディネーター撲滅運動を各地で行っているが、新体制になった連合軍はそれを叩き潰し、平和への道を作り出していった。
「俺もこの前、コーディネーター手術を受けて、コーディネーターになってさ、持病の腰痛がすっかり良くなったよ」
ムウは腰をさすりながら親指を立ててみせ、陽気に笑った。
首相や幹部たちが率先してコーディネーターになることで、コーディネーター手術への嫌悪感をなくす政策をしている。
「それに来年から連合軍は全員コーディネーター手術を受ける法律ができたからな。これで全員コーディネーターになって能力差がなくなることによって反感なんてなくなるしさ」
「さすがムウさんですね。今まで反対派が多くてできなかったことを意図もあっさりと可能にする手腕。御見それしました」
「いやあそれほどでも…あるけどね!!!!!」
ラクスにおだてられて木にも登りそうなぐらい上機嫌で飛び跳ねるムウ。
その会談を見ている全世界の人たちはこれで平和になったんだと改めて感じた。
ただし、その会談は平和には終わらなかった。
「おい!あれを見ろ!」
会談場にいたスタッフの一人が窓の外を指出した。
ビルの外に見えたのは見たこともない戦艦の群れだった。
その戦艦の群れはアプリリウス市に向かって猛然と侵攻してきた。
「1万5000隻もいやがる、なんて数だ!くそっ条約が破談した時のためにって銃を持ってきてよかったぜ!バキューンバキューンもういっちょバッキューンって感じでこれでどうだ!」
「さすがですムウさん!それよりスタッフさん!警報を出してください!」
「艦隊までの距離、約30キロか!ニュートロンジャマーのせいでレーダーが効かなかったためここまで接近を許してしまったか」
ムウは素早く戦艦の数を数え、その数の多さに慄きながらも隠し持っていた銃を取り出し戦艦へと発砲する。ただし、元々隠し持つための小型の銃だったため弾数は多くなかった。燃料タンクを正確に狙撃し十数隻を沈めたが、それで弾切れとなる。
ラクスは準備のいいムウに感心しつつイベントスタッフに指示を出す。
カガリは目視距離になるまで気づかなかった理由を察してしまった。
そう。戦争はもう終わって襲撃なんて起きる確率は0%だったために戦争のせいで赤字続きだった予算回復のために節約モードに入っていた各国の軍事情勢のために軍人や警備員は全員解雇されていたのだ。
ゆえに会談場所であるここにも軍人や警備員はおらず、イベント会社のスタッフだけだったため、警戒などだれもしておらず、ここまで接近されていたのだ。
もし警備している人がいれば、敵艦隊が索敵機を送り出す前、イゼルローン回廊の壁を爆破した爆発に気づいただろう。
降伏勧告と民間人と非戦闘員の離脱を呼びかける準備をしていた敵艦隊は、まさかこの戦力差で先制攻撃してくると思っておらず油断していた。
なのでムウからの思わぬ反撃を受け、十数隻を沈められたことに怒り心頭になり、艦首を銃撃があった会談場に向けビームを撃ってきた!
1万5千隻から放たれるビームが迫るさまは、まさに空一面が眩く光に覆いつくされ、世界の終わりを予期させる光景だった。
「大丈夫かカガリ!あの黒い艦隊は黒色槍騎兵艦隊(シュワルツ・ランツェンレイター)だ。非常に野蛮で猪突猛進なやつらで、攻撃力だけなら帝国一だ!今すぐ逃げないと危ない」
ビームが向かってきているのを見たアスラン・ザ・ラー(カガリの護衛にプラントに来ていた)はすぐさまインフィニットジャスティスに乗り込み、カガリを掌に載せ、ビルの壁面を破壊し、外に飛び出す。
「アスラン!このままコロニーの外に!アークエンジェルまで飛んでくれ!そこで指揮をする!」
カガリは振り落とされないようにインフィニットジャスティスの指にしがみつきながらコロニーの外に飛んでいるアークエンジェルを指さす。
それを聞いたアスランは迫りくるビームの群れをもう一度見て、このままでは港まで行くのは間に合わないとビームライフルを連射し、コロニーの壁面に穴をあけ、そこからコロニーの外へと飛び出した。
「私たちもアスランに続きますわよ!スタッフの皆さんはここに残って市民の誘導を優先してください!」
「おう!」
ラクスとムウもアスランの開けた穴からそれぞれ飛び出す。
スタッフは市民を避難させるために市内各地へと走り出す。
だがその直後、無情にもビームの群れはコロニーを引き裂く。
市民の脱出は間に合わず、結局4人だけが何とか生き残った。
燃え盛り爆発し、そして崩れ行くコロニーを見ながらラクスとムウは呆然としつつ、アークエンジェルの甲板へとなんとかたどり着いた。
その時、アークエンジェルのカタパルトから1機のモビルスーツが飛び出した。
それは2つの大戦を終わらせた英雄キラ・ヤマトが駆る最強のモビルスーツ、ストライクフリーダムガンダムだった。
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時は帝国歴796年、そして地球ではコズミック・イラ75年。
今、二つの歴史は交じり合い、新たな戦火を地球へともたらすことになった。
次回からキラ・ヤマトのフリーダム無双が始まるかも。
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