本編の前に謝罪を一つさせてください。操作ミスで感想を一つ消してしまったかもしれないのです。
宇宙空間で戦闘中とか邪魔になるのに髪が野放図に伸びてるのはおかしい、という旨の感想でした。
私は基本的にどんな感想であれ頂ければ嬉しいので批判的な内容だったからと消すことはないのですが、気付いたら消えていました。どこかのボタンを間違えてクリックしていたのかもしれません。
ここに謝罪いたします。感想をくれた方、すいませんでした。
それとは別に、アンケートをこそっと行っていたのですが、期間を延長します。本当はアンケートともにこの話で告知するつもりだったのですが、大幅にずれ込んでしまったためです。
上記に重ねてお詫びします。申し訳ありません。
詳しくは活動報告にあります。ガイドラインに従い、ご協力いただける場合は活動報告の方へお願いします。よろしくお願いいたします。
「本当にやるんですかい?」
「それが命令だ。例え、味方に銃を向けるものであったとしても」
――ある将校と下士官の会話
◆
「草臥れた。もう帰りたい」
目に付くところの、誰も彼もが敵ではない。世界もそれほど酷くはない。
だからといって、誰も彼もが味方でもない。世間は言うほど優しくない。
表面的には味方で、しかし潜在的には敵でもある。そんな連中はごまんといる。
どこか遠く。地球の、古いアニメにあったような、山岳地帯でヤギを追って暮らしているような狭い世間であれば、周りにいる多くはきっと優しい人間だろう。
しかし、この場は光届かぬ月の裏側を抉って造られた地下都市グラナダ。
権謀術数が張り巡らされたキシリア・ザビのお膝元。
彼らがそうなった理由もまた多様であろう。
些細な権益を欲してか。はたまた私怨によるところか。
何にせよ、“そういった連中”は事の貴賤にかかわらず目標のためならそれはもう精力的に動ける人種だ。
何を斬り捨てても、前に進み続ける。客観的に見た事の善悪など、彼らには何の枷にもならない。
そして、“そういった連中”を“そうでない者達”が相手をするのは、酷く疲れるものなのだ。
そのことを、冬彦はつい先ほどまで身を以て体験した。
ルーゲンスが集めたグラナダの有力者達。スーツを纏った官僚らしき者。なじみ深い軍服を着込んだ者。わずかだが白衣を着た者も居た。
多くはキシリア閥の人間だが、中にはギレンの閥であることをそれとなく臭わせたり、その上で中立を標榜する者もいる。
そんな相手に言質を与えぬよう、うふふあははと笑みを貼り付けのらりくらりと躱して過ごすのだが、そのうち誰も彼もが悪意を持っているように見えてくるのだ。
そもそも本当に中立であるという者は余り冬彦には積極的に近寄ろうとはしないし、そう言う意味ではこの場で本当に中立な者などどれだけいただろうか?
「そんな奴誰もいねーってんだ畜生め」
「地が出てるよ、中佐殿」
「ご助言ありがとう。大尉」
とりあえずは人の波をば切り抜けて、将校として共に出席していたアヤメと二人壁の華。迎賓館としても使われる豪華な建物のこれまた豪華な一室で、視線はそれぞれ手に持った皿の上に落としている。
皿を持つのと反対側の手には使い手を選ぶ万能器具“ハシ”を持ち、ひょいぱくひょいぱくとどんどん皿の上の物を片付けていく。
こうしている間は、少なくとも話しかけられることもないだろうとの打算もあるが、MSに乗っている間や戦闘時はおなじみの四角い棒状の固形糧食しか食べられないので、せめて今くらいはという切実な思いもある。
そのため、二人が皿の上の肉やら魚介やらを見る目は真剣そのもの。ハシを動かす手にもどこかキレがあった。
「それで、どうなってるのかな」
「何が」
「わかっているだろう?」
「……ここでするような話じゃないんだが」
そうは言う物の、冬彦のハシが止まることはなく、皿の上の料理も順調に減っていく。
皿の上を平らげてしまうと、好機と見た誰かが寄って来かねないので、その前に近場のテーブルから料理を補充しておくことも忘れない。ちなみに白身魚のフライである。
「今することは何も無いよ。強いて言うなら」
「精一杯舌鼓を打つくらい?」
「その通り」
「今食べてるのは?」
「白身のフライ。そっちは?」
「鴨肉」
普段と異なるスリムなシルエット。いつぞや用意された件の眼鏡のレンズ越しに、並べられた料理を品定めする。
煮込み、照り焼き、蒸し物まで、肉料理一つとっても種類は豊富だ。
アヤメがやや酸味の効いたソースがかけられたた薄切りの鴨肉を一枚一枚すっすっと口に運ぶ間にも、冬彦は次の料理を取りに動く。
今度の狙い目もまた魚。宇宙においては肉よりも魚介の方が貴重である。
「……取り込みは、思ったほど本気じゃないみたいだね。今は」
皿の上に幾らか料理を残したまま、ふとアヤメのハシが動きを止めた。
「向こうも、そう簡単には将校を引っこ抜けるとは思ってないってことだろう」
「探られて痛い腹もないしねぇ。僕らは」
士官学校時代の一件は、冬彦のみならず余りに多くの人間を巻き込むので脅し文句には使えない。
「ところでアヤメ大尉。現在時刻を教えてくれないか」
「なんだい、やぶからぼうに。……二十時を回ったところだよ」
「となると、そろそろか」
何が、と聞き返そうとした瞬間のこと。広々とした一室が、ずん、ずずんと二度三度揺れる。
グラナダの高官や要人が多く集まっているが為に、入念な警備が成されているにもかかわらず、さらにもう一度。
俄に、室内が騒がしくなった。
ここで、ふっと冬彦が口の端をつり上げたのを、アヤメは見逃さなかった。
「君の差し金か」
「いいや」
「嘘」
「本当だ。詳しくは後で話す。今はとっとと退散しよう」
元より壁際にいた二人。皿の上を片付けて手近なテーブルの上に置くと、誰かに見咎められぬうちにさっさと扉から退散する。時折通路で呼び止められたが、そこは中佐と大尉の階級章が力を発揮するところ。
事の情報収集に動いていると言えば、余程階級が上の者と出会いでもしない限りは押し通れる。
建物を出て、昼間と同じ三人の部下が待つエレカへ走る。
慌ただしく飛び乗ったことで、だらりとまでは言わずとも、多少くつろいでいた感のある三人はぎょっとして身を起こした。
彼らが何かを言う前に、声を発したのは冬彦だった。
「出せ! 船(ウルラ)へ!」
「は……いえ、了解であります!」
エレカが、静かに前へと進む。ここまで来て、やっと一息ついたのか襟元を緩め、“偉い人”もいるとのことで普段であれば野放図な髪を束ねる紐を外して、ざりざりと頭を掻いた。
遠くでは、今もサイレンが鳴り続いている。止む気配は無い。
「中佐、この揺れは一体……っ!」
「攻撃だ」
まるで、たいした事ではない。とでも言うように、あっさりと。
冬彦は、自身の知る事の真実を話し始めた。
「どこから?」
食いついたのは、当然アヤメ。冬彦の右肩を掴み、顔を無理矢理向けさせて詰め寄った。
「月の影から。以前に拿捕したサラミスとマゼランを回してきているそうだ」
「連邦の船が月に出るか? 怪しまれるよ」
「この間のルナツーの残党だと判断するだろうさ」
「ドズル閣下の策か? 本当に?」
「俺は閣下から直接聞いた。それ以上はわからん」
「……そうか」
アヤメが肩を離し、居住まいを直して口を噤んだ。
それきり、冬彦も、アヤメも、三人の部下達も。
無事「ウルラ」にたどり着くまで、誰一人、何も話そうとはしなかった。
◆
それは、男には聞き慣れぬ音であった。
男が普段よく耳にする音は決まっている。
電子制御の扉が開閉する音。
お気に入りのフレーバーの入ったコーヒーメーカーの蒸気の音。
そして、己が心血を注ぐデータの集大成が詰まった、コンピューター端末の静音ファンの回る音。
男は音楽の類は好まなかったために、耳に入る音などはこれ以外には計器の類が発する電子音のみ。
研究のために用意された、研究のためだけの区画。
だから男は、鳴り響くサイレンと怒号を何かの事故による物だと思い込んでいた。
事故であれば、その内対処が済んで、サイレンも止む。
月に築かれたグラナダは、否グラナダに限らず、宇宙であればどこであっても危機管理にはできる限りの手が打たれてある。
なればこそこのグラナダの、中枢近いNT研究所ともなれば最上級のシステムが敷かれている。
しかし、いつになってもサイレンは鳴り止まない。
酷く耳につく、長く甲高い音。その中で何か一つごとに手が着くはずもなく、苛立ち紛れに男は立ち上がった。時計を見れば、まだほんの数分も経っていなかったが、男には我慢ならなかった。
警備は何をしているのか。文句の一つでも入れてやろうと入り口近くの通信端末の受話器を取り、しかし普通であることにさらなる苛立ちを覚え、男は外への扉を開いた。
通路へ出て、視線を右へ向けたところで、目の前で何かが光り……
「――クリア」
男の世界は、静かになった。
それはそうと、みなさんどれくらいUCのep7の情報見てるんですかね。
ネ オ ジ オ ン グ で す っ て ?
しかもプラモ化決定してるらしいじゃないですか。シンジラレナ~イ!(某道化風に)