【完結】深紅の協奏曲 ~ディアボロが幻想入り~【IF投稿中】   作:みりん@はーめるん

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…… Extra Stage.


― ここから始まる幻想曲 ―

「はうぅ~」

「彼、ですか? そうですね……。弟のような存在、でしょうか」

「姐さんに男性のこと聞いても無駄ですよ。何でもどこかに弟との共通点を見つけて弟みたい、っていうんですから」

「ま、酷いこと言うわね一輪ったら。けど、ねぇ……」

「ねぇ、じゃないですって。え、私? うーん、頼りがいもないただの子どもだし、無鉄砲だし、けど何かやるって決めたらできるできないにかかわらずやろうという意志は感じられてー」

「ほら、命蓮みたい」

「でーすーかーらー! 話聞いてる限り命蓮様は無鉄砲要素特になかったでしょ!?」

「えぅ~、はうぅ~」

「んぇ、御本尊? あー、なんでも心配してた相手が勝手に帰っちゃって、顔も見せずに行っちゃったことが悲しいんですって。自分の事が嫌いになったかー、って。ナズーも所用で香霖堂さんに取られてるしで、ちょっと機能してないんですよ」

「やっぱりあんなこと言うんじゃなかった、私が無責任にやっちゃうからこうなるんだ……いつもそうです、私ってホント馬鹿」

「寅でしょ」

「寅ですねぇ」

「はぅ~」

 

 

 

「あいつ? 外来人の割には珍しく働き者で学習意欲の高い奴だったな。嫌な時に遭遇しちまったけど、特に気にしてくれてなかったのはポイント高い」

「……悪かったから、いい加減機嫌を直してくれないかな」

「い・や・だ・ぜ」

「……まさか君たち、そこまで仲がいいというか、飼いならされているというか」

「当たり前だ。こういう奴はちゃんと管理してやらないといつどこでくたばっているかわからないから、私みたいなしっかり者が面倒を見てやらないとな」

「しっかり、ねぇ。可愛いもんだ」

「所でお前は何時まで雇われしてなきゃいけないんだっけ? 香霖は乳製品嫌いだからチーズでないだろ」

「…………彼の気が済むまで。もっと無理にでも止めればよかった……」

「うわ、さすがの私でもそれは引くぜ、香霖……」

「……勝手に言っていてくれ。君たちが話を聞かないのは知っているから。そう言えば、あれの解読は満足いく結果だったかい?」

「いかにも魔法使いらしかったが、あれは私の領域じゃなかったぜ……全然可愛げなかった。魅魔様曰く、魔法というのはだなー」

 

 

 

「凡夫」

「あの、霊夢さん。今いないからってそんな言い方」

「あの時も私そう評した記憶があるけど。そうだったわよね、アリス?」

「そんなこと言ってたと思う。たぶんその後二人で泊まったことを聞きたいんじゃない?」

「たってー、わ、二人とも急に寄ってくんな! 別に何もないわよ、ご飯食べて寝ただけ」

「それだけですか!? ボーイミーツガール的な夜の展開はないんですか!? 本当に!」

「食いつくわね、早苗」

「だってその後私の神社に来たとき少し大人になったみたいな感じがあったんでこれは確実に霊夢さんに先越されたって焦ったくらい!」

「何にもないっての! 気づいたら外で寝てたくらい」

「野外プレイ!?」

「はったおすぞ!!」

 

 

 

「えー? 別に、私からはそんなに接触してないからどうというわけも……しいて言えば、霊夢さんや魔理沙さんや早苗とは違うタイプだけど、覚悟決まってる奴って感じでしたねぇ」

「というかなんであんたがそんなこと聞きまわってるの? あの子に対しては前に話して盛り上がったじゃん」

「そうなんです? だったらなおさら私程度に聞いてもしょうがないんじゃあ……他に? ……んーと、んーと、椛より強そう」

「………………」

「どこが? て、あー、そういえばそんな話もあったんだっけ。私が連れてくるように頼んでたんだけど」

「そうですよ。椛が脅しても全然怯まない奴でしたよ。椛、顔が可愛いから恐くないからもあるんでしょうけど」

「…………今回はにとりもぶん殴っていいよな」

 

 

 

「……申し訳ないんですけど、私は特に触れてないのでわからないんですよね。咲夜さんとかパチュリー様、お嬢様ならあるいは、って感じですけど。……正式な許可取ってます? なければ蹴り飛ばしますが」

 

「……で、私の所に来たの? 魔力のカケラもないただの子どもなんかに興味はない」

「天狗って色々いますよね。やっぱり精力尽きないんですか? やることやってるんでしょう、教えてくださいよ。ちょっと前に男に頭撫でられるだけで顔を赤らめるレズの風上にも置けないネズミが居たんでムッとしてるんです」

「うるさいよ、やるなら妹様の見えない所でやりな」

「許可キタコぶぎゅっ」

「……なんか、ごめん」

 

「彼、ですか? うーん、どう評価してもただの子どもっていうだけでした。けれど、ちょっと面白い手品を持ってましたので、教わりました。やってみましょうか?  はい。……えぇ、使い道ないです。先の見通しを十全に整えないと誰にも干渉できないしされないので意味なし手品です」

 

「あいつ? ああ、最も勇気があって、最も愚かしくて、それでいて無謀。どれもいいバランスに持っていた面白い奴だったよ。どうしても弾幕ごっこに嵌っちゃうとそういうのに飢えるからね。美味しいものばっかり食べてないで野菜も食べなさい、ってこと。私? いらないもん、あんな緑色」

 

「あ、天狗だ珍しい。え、男の子? ……大人の人なら来たけど、子どもは来てないわ。来ていたとしても、帰れるはずないでしょう? 他の人はいたって言ってる? また私だけ仲間外れにされてるのかな。あなたは私の仲間になってくれる? 天狗のお姉さん」

「逃がさないよー」

「逃げられないよー」

「あややややー、っていつも言ってるけどそれってギャグ? 天狗特有の口癖みたいなの? 前は聞かれただけだったから、今度は一方的に聞きたいなー?」

 

 

 

 

 

 ……ふー、最後は酷い目に遭いましたけど何とかなりましたよ。妹さんは手加減知らないですからね。ホント、ごっこ遊びじゃなかったらぞっとします、ぶるぶる。

 で、ここまで集めたんです。私にとってもいいネタになるんですよね、その子? ……関係ない? な、なんだってー。

 いや、だと思いましたよ。受け入れのための根回しみたいなもんでしょう? 相変わらずやることがそつない、というより慎重ですよねあなたは。はたてみたいにもっと大雑把に生きていて欲しいですけど。

 えぇ、えぇ。嫌われてもいませんでしたし、寺の人たちとそこのネズミさん以外は特別力いれて好まれている様子も特には見られませんでしたよ。あー、はたてはこう、ショタ喰いなんで。閻魔様とは違う方向ですけど。でも特別入れ込んでるわけじゃないし大丈夫でしょう。釘刺しておきます? いらない、はいはい。

 依代は……すでにあると。アリスさんの。ほうほう、むしろそれならアリスさんの、いらない、はいはい。

 ……あの、ここまで用意されているのなら私別にいらなかったんじゃないですかね? 外来人が一人増えたところ、妖怪もどきが一人増えたって別に何も面白くないんですけど。うーん、提示されたそれはありがたいんですが……

 まあいいか。目を瞑っておきます。それでは、私はこれで。

 

 

 

 

 

 

「……遅くなったわね。こんな小さな入れ物に居ただけだから、つまらなかったでしょう? 人間の身体ではないけれど、それでもあなたが生きるていることに誰も問題は持たないわ。だって、そのための、幻想郷なのだから。

 あなたは外に行けないけれど、あなたが生きていれば。たとえどれだけ離れていても心が通じ合っていれば。それだけで理解しあえる。今の彼には、必要でしょう? だから、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――ようこそ、幻想郷へ。

 




どれだけ離れていても、二人の奏でる曲は、止むことはないでしょう。
二つの静かなBGMは、それはいつまでも続き、鳴りやむことはない。
だから、だからこそ。

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