【完結】深紅の協奏曲 ~ディアボロが幻想入り~【IF投稿中】   作:みりん@はーめるん

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―嘘と真の三重奏 4―

 長い長い数分が経ち、改めて4人は顔を合わせる。

 泣き腫らした二人の顔はどこも赤く染まり、昂った感情の大きさを物語る。

 もっとも、それ以外に『人の前で泣いたこと』が大きいことは事実だが。

 

「……すみませんね、みなさん。あんなに、子供のように泣いてしまって……人前に立つ身なのに、これじゃあいけませんよね」

「……いや、早苗は悪くないよ、しょうがないよ。一番悪いのはなんだかんだ理由をつけて自己保身に走ろうとするはたてだ、そういうことにしよう」

「マジっすか」

「マジです」

 

 同性同士だからか、受け止める側だったからか。すぐにいつも通りに話し始めているはたてと諏訪子、そしてそれは早苗の落ちた気を上げようとも見える。

 だが、その空気もドッピオには少々心苦しい。

 状況がどうであれ、人前で、女性の胸を借りて泣き喚いたことによる恥が彼の心で暴れ出す。

 

「…………」

 

 できることなら、今すぐにでも逃げ出したい。

 先に聞いた話を改めて自分の中で反芻して納得しようとする時間ももちろん欲しい。

 しかし一番大きいのはその話の前まで敵対していた、少なくとも自分はそう思っていたはたての胸の中で泣いてしまったこと。

 まだ一人で泣いていた方が、自分の精神的にも楽だったんじゃないか。

 

「いやまあ、しかしはたても隅に置けないね! まさかこんな子どもを手籠めにするたぁね。利己的な輩が多いという天狗なのに、どういう風の吹き回しなのやら」

「ちょ、洩矢様、何も目の前でそういうの言わなくてもいいでしょうよ、ねぇ」

「……ふぁ、そういえばそこは気になりますね」

 

 そんな彼に追い討ちをかけるように諏訪子は話を持ち上げる。

 早苗もそれを聞いて少し明るい声を出す。まだくぐもった声だが、諏訪子の狙いは成功している。

 

「……やめてくれよ……」

 

 もっとも、それがドッピオにとって良いことではないことも確か。

 今一番触れられたくない点に早々に食らいつく彼女らに恨みがましい感情しか湧いてこない。

 はたてがどう思っているかは知らないが、どう思っていようが、その点にドッピオは触れられたくはない。

 

「そっちが先に聞かれたくないことを聞いたんだからそれくらいいいだろう? 恥は掻き捨て、世は情け」

「今この状態のどこに情けがあるのさ……」

「十分有情だよ、ドッピオとやら。女を泣かせた男なんだってことを覚えておきな? それに、君は気にならないのかい?」

 

 そう言われてしまえば、いいえと答えたら嘘になる。ドッピオ自身も、急な彼女の心変わりが気にならないわけではない。

 だが、それを何も直後に本人の前で聞かなくてもいいだろうに、この神様は笑顔で訪ねてくる。

 その姿は、昼下がりにゴシップを見て楽しむ姿。

 

「いつもはくだるかくだらないかの瀬戸際新聞くらいなのに、当の本人が記事に乗っちゃいそうなことしちゃってさー」

「いやまあ、洩矢様。そのー、ねぇ。聞きます?」

 

 対して、割合まんざらでもない様子のはたての姿。

 

「なんていうか、私と似てたんですよね、コイツ。八方塞がりなところに救いの手を求めている姿。……あの時はこんなに女々しくしていたつもりはなかったんですけど、きっとあいつからしてみたらこんな顔をしていたのか、なー、なんて」

 

 少々の恥ずかしさを顔にだし、目線を外して頬を掻く仕草。小さな仕草は彼女の癖なのかもしれない。

 はたての回答に対して合点のいった顔をして頷く早苗と諏訪子。そして二人は、声に出さずとも先を促している。

 

「あー、それに、あいつは口が悪くても何だかんだでこっちの面倒を見たりしてるし。憧憬みたいなの、ちょっと持ってたのかも。もちろんこういう男の子好みだけど……もういいでしょ?」

「えー」

「えー」

 

 話を打ち切ろうとするはたてに対して、二人は口をとがらせる。

 

「中々のインパクトもあったので、もっと聞いてみたいですね。私のいない間にどこまで仲睦まじくなったのか」

「おかんか」

「おい、それは絶対に言いふらさないでくれよ」

 

 これ以上三人に喋らせていては何にもならない。

 けれど、この茶化しあいは自分の心を抑える要因にもなった。別の心が浮かび上がってきているが、それはもうどうでもいい。

 

「せっかくの天狗の恋バナなんだから、もっと聞いておきたいじゃないですかー。幻想郷ってそういうの全然ないんですよ? ちょっとみんな自分に生き急ぎすぎてるというか」

「別に、そういった話題なら人里とか行けばあるだろうし、山の鼻高天狗とかはいつも発情、年中女募集してるけど?」

「そんな愛の無い男女関係なんていりません!!!」

「おい」

 

 痛くなってくる頭を押さえながらドッピオはまた声をかける。

 これ以上彼女たちの好き勝手を許してしまえば、自分の知らぬところでおもちゃにされてしまうに違いないだろう。

 

「そういうのはもういいからさ……気になることが」

「よくありませんよ!! ドッピオさんさっき気になるって言ったじゃないですか!!」

「言ってない! ……じゃなくって、さっきの話で気になる点があるから、それを答えてくれないか」

 

 むっとした表情で話す早苗は、先の悲しみが大分薄れていることを窺える。

 悲しいことがあったとしても昔の話。そこにいつまでも捕らわれていてはいけない、と考えていることがわかる。

 だが、ドッピオはそうではない。

 

「今から11年前って言ってたよね、2001年が。……いや、そこじゃないな。今が127季、早苗たちは122季にここに来た、と」

「そーですよ?」

「……早苗は、何歳だ? あの日記の内容から垣間見るに学生だったろうけど、ここに来てから5年でその成りだとしたら随分小さいころに来たことになる。……その割には漢字も使っていたし」

 

 そこまで自分で話し、自分で口走った内容に違和感を感じる。

 何故イタリアでしか過ごしていなかった自分が日本語を読める? 思い返してみれば、命蓮寺でも人里でも違和感なく読み取れていた。

 今口に出している言語も、気がついてみれば日本語だ。

 

「……」

 

 そこで押し黙った彼を、鋭く見つめる諏訪子。

 それに気づいたのは、この中にはいなかった。

 

「……とにかく、5年の歳月にしては早苗は成長しなさすぎている、と感じるんだ。それはどうなってる? まさかそれで成長期は過ぎているだなんて言わないよな?」

「い、言いますねドッピオさん……!」

 

 先ほどまでとは違う、それはドッピオが表に出していた恥の感情。

 その感情が早苗の顔を赤くし、胸を隠すように腕を組む。……別にそこは指摘をしていないのだが。

 

「あー、それは幻想郷の癖というか。長く楽しむコツというか」

「そ。永く永く楽しむという、外でできないそれがここでは行える」

 

 問の回答ははたてと諏訪子から出た。

 

「どういうことだい、それは」

「厳密に言うと違うが、分かりやすく言ってしまえばここでは歳は取りたいときに取るのさ。妖怪は当然ながら、人間も少なからずね」

 

 諏訪子が答えると、はたての腰をポンとたたく。

 はたてはわかっていたかのように手帳から一枚の写真を取り出す。

 そこには蝙蝠のような羽が生えた少女と髪型以外は今とほとんど変わらない巫女の姿。赤く輝く満月を背景に、二人が激しく弾幕ごっこをしている写真。

 

「これ、紅霧異変の頃。今から9年くらい前かな?」

「……本当に?」

 

 さすがに10年近くも経っていると言われて今と変わらぬ姿を取っているとなれば、理解の前に納得がいかない。

 

「誰だって、楽しいことはずっと楽しみたいじゃない? 妖怪がそれを願い、人間もそれを享受すれば肉体の衰えは僅かに歪む。その結果、肉体も精神もそれ相応に維持されるのさ。

 もちろん、だからといって成長しないわけじゃない。遊んでばかりの子供の時代はいつか終わる、その終焉をどちらかが理解すれば、人間は自然と周りに追いつくようになる」

 

 諏訪子が指を立てて解説するが、ドッピオの表情は変わらず理解に苦しんでいることを窺える。

 

「まだ遊びたいという『想い』が、外の世界で忘れられた『想い』がここで実っているというわけ。私たちが外に居た頃から既に友と日が暮れるまで遊んでいられるという時代ではなかった。

 子供でも、大人でも、風習や因習、慣習といった要因でその想いは踏みにじられ忘れられていった。幻想郷は、そんな『想い』も受け入れる」

 

 そこまで話し、諏訪子はドッピオの胸をトン、と叩く。

 その言葉と行為で、何か忘れていた物を思い出したような、そんな風が吹きとおったような感覚が身体を走る。

 

「誰かに教わったわけでもなく、誰かから教えられたわけでもなく、ここの皆はおのずとそれを理解している。もはや、それが常識。

 幻想の壁とは常識の壁。全てが逆になるわけではないけれど、『あるはずの無い希望』位ならあるかもしれない。……こんなところかな?」

 

 はたてが諏訪子に続き、話を締めくくる。

 もちろんそれに完全に納得したわけではないが、自分が雲に乗って移動する、といった彼女らの言う『あるはずの無い希望』に触れている以上、そういったものだと受け止めるしかないこともわかっている。

 

「……いずれ大きくなるからいいんです」

 

 口をとがらせながら、早苗は呟いていた。

 

 

 

「さて、ドッピオとやら。ここから麓まで降りるには大分時間がかかる。悪いがここは赤色しかない神社と違って色立つことは苦手でね、男を泊めるわけにはいかない。

 さっきの話が本当ならば天狗に送らせるのも不安だから私がその役を引き受けてあげよう」

「へっ? いやいやいや、洩矢様にそのようなこと。それに、んなことするわけないでしょうよ、この私が」

 

 諏訪子が急にドッピオの手を引き、下山を促そうとする。

 確かに山の麓で椛と会ったのが正午ごろ、そこからそれなりに時間は経っている。もしそのまま下山に時間を使えば日は落ちてしまうだろう。

 ……あの時椛にはああ言ったものの、確かに妖怪の腹の中と変わらないこの中、夜闇を動くには危険かもしれない。

 先の発言があった以上、はたても何をするか、分からなくなってくる。

 

「天狗って若い男の子を攫って自分のものにするって聞きましたよ」

 

 早苗がにこやかに、ドッピオに説明するかのように話す。多分に意を含んだその言葉。

 

「それに、はたてにはウチの早苗を自分の我欲の為に利用した罰を与える必要があるからね。狂王の試練場クリアするまで返さないよ」

「え、勘弁してくださいよそういうのー。それになんですその珍妙な名前の物は」

「諏訪子様それ好きですよね……何周してるかわからないくらいやりこんでますし。……まあ、ドッピオさん。言うとおりさすがに夜に一人で行くのは危険ですよ。……ちょっとお泊めになるのは、その」

 

 にぎわう外野をよそに、確かに早苗は彼の身を案じてはいるらしい。そして、霊夢と違い『そういったこと』に抵抗があるらしい。

 

「さあさ、時間は待ってくれないよ。行くなら急いだ方がいい。早苗ははたてを確保しておいてくれ。逃がさん、お前だけは」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ、まだ」

 

 そう言うと諏訪子は強引にドッピオの手を引き神社を出ようとする。

 傍から見れば幼子の我儘に手を取られ、強引に連れまわされているようにも見える。が、ドッピオとて勝手に決められては困る。

 

「君の本当に知りたいことはここでは言えない」

 

 抗議の声を上げようとしたとき、それを見越したかのように、小さな声で諏訪子が呟く。

 そこから感じた印象は先までの得体の知れない神のような存在でもなく、早苗の保護者としての彼女でもない。甘言で人を堕へ突き落とす悪魔の様な。

 その先を聞けば、もう戻れなくなってしまうような囁き。まだ、何も始まっていないというのに。

 

「…………」

 

 その言葉を聞いた時、ドッピオの中で何かがざわめく。

 自分の中で抗いたい行動なのに、その何かが足を止めずに動かしている。そんな、矛盾。

 

「洩矢様、そんなに無理にやらないで私に任せれば、っ、がっ」

「諏訪子様の言うとおりに! ……大丈夫ですよ、諏訪子様は取って喰ったりしないですって。たぶん」

 

 何か鈍い音と共に早苗の大きく送り出す声が辺りに響く。おそらく、それは最初のやり取りとは逆になっているのだろう。

 ドッピオは、それに振り向くこともせずに諏訪子に手を引かれるままに足を運んで行った。

 

 

 

「……どういうこと?」

 

 諏訪子に手を引かれるがまま、石段を下りて進む。

 繋いだ手から伝わる温度が運動からかじわりじわりと温かくなっていくのを感じて。

 

「言葉通りの意味さ。さっきのはたての話、不完全だったろう? その空いたスキマは私が知っているということさ」

 

 石段を降り切ったあたりで諏訪子は答える。

 

「肝心な所はわからない……大妖は知っているかもしれない……奴はそんなことを言っていたはずだ。そしてそれは正しい。外の者が幻想郷をも喰らい尽くす様な力を持っているとするならば、幻想は何のためにある?

 妖怪は人に恐れられる存在でなければならない。すごく簡単に言ってしまえばそれが存在理由。それよりも恐ろしい力を持つ者が外に居るとわかってしまえばこちらの世界の存在理由が危ぶまれる。

 長らくその存在を知っていながらも、誰も詳しくは知らなかった。『それ』がここまで大きな力を持つと思っていなかった」

 

 手を大きく広げ、仰々しい口調と身振りで演説する。その姿は、先に感じた違和感を強調させる、支配階級の頂点に立つ者の纏う雰囲気。

 ……それを察知した瞬間、ドッピオは諏訪子に向かって駆け出し距離を詰めていた。

 

「わかってるじゃあないか、少年」

 

 と、と諏訪子が後ろに下がるように跳ねると、それと共に先ほどまでドッピオの居た場所に多数の木々が生えてくる。何かしてくる、その予感が働きいち早く駆けだしていたからこそ、ドッピオはそれを躱すことができた。

 もし自分の予感を信じずにおとなしく聞いていたなら木々に囲まれ身動きが取れなくなっていたか貫かれていただろう。

 僅かな距離を完全に無くそうと、その離れた距離をさらに詰める。彼女に、息つく暇を与えずに。

 そんな彼を嘲るかのように、後ろに下がった諏訪子はそのまま地面に倒れこむ。

 

「何!?」

 

 諏訪子は地面に潜り込んでいった。まるで、水面にそのまま飛び込んだかのように吸い込まれていった。

 想像を超えた出来事に一瞬、隙が生まれてしまう。

 

「「ゾッとしたみたいね」」

 

 背後から、右後方左後方の両方から諏訪子の声が聞こえる。

 それとほぼ同時に、背後から飛び掛かるように両腕を抱え込まれ、その勢いで地面に叩きつけられる。先ほどの諏訪子とは違い、地面に潜ることはない。そこは固い固い石畳のままだった。

 

「がふっ!」

 

 身体の前面に衝撃が走り、体内の空気が吐き出される。

 冷たい石畳に這うドッピオの眼前に、ずるずると、諏訪子は這い出てくる。沼から現れる蛇のように。

 全身を浮上させると、うつぶせになっているドッピオを見下ろしながら、

 

「『宝永四年の赤蛙』」

 

 そう呟くと、両腕から押さえて拘束していた二人がドッピオを仰向けにするようにひっくり返す。

 二人の諏訪子は、赤い霊体の様にうっすらと色を帯び、実際に存在しないように揺らいでいる。

 三人の諏訪子は、くすくす、くすくすと静かな笑みを湛えていた。

 

「……何をする気だ? 憂さ晴らしのつもりか?」

「そんな! そんな頭の悪いことをしたいわけじゃないよ。もっとも、人によってはもっと頭の悪いことと言うかもしれないけどね」

 

 そう言うと、本体である諏訪子がドッピオの胸に顔をうずめる。

 

「んっ……すぅ、んはぁ……!! んんっ、はっ……!」

 

 彼の服の上から、激しく、それを貪りつくすかのように香りを味わい始める。

 聞こえる吐息から、熱くなり抑えきれない劣情をありありと感じられる。

 その姿からは、外側だけ同じで中身は全くの別人であるかのように、見た目は幼い子供にしか見えないが、本質はまるで別であることを嫌でも感じさせた。

 

「はぁ、ぁ、久しぶりだ、長らく味わっていなかったよ。この雄の香りと、どれだけ落としても拭いきれない、染み着いた血の香り。……興奮する」

 

 顔を上げた彼女は、顔を紅く上気させ、求める様な上ずった声で語りかける。

 薄く開いた目、唇から出る舌は上唇をなめずり、

 

「だが、まだ足りない」

「!? っ、がっ」

 

 変貌にあっけにとられていたドッピオの首にその小さな両の手を伸ばし、へし折るかのように力を入れる。

 

「ぐ、あっ……!! ぎ、ぁ……ぁ!!」

「絞められて、落ちる瞬間が最も気持ちいい。……知らないでしょう? 少しずつでいいから、頭から抜けていく気力と共に最後の抵抗を示してみなさいな」

 

 ぎりぎりと、容赦など全くなく。

 その細腕にどれだけの力がこもっているのかと、もし当人でなければ何の感情も抱かず考えてしまうほどに。

 今、ドッピオの両腕は変わらず赤い霊体の様な諏訪子に押さえつけられ全く動かすことができない。

 それでも、このまま、こんなところで。

 

「ぎ、ん、ぐぅっ!!」

 

 動かない両腕の代わりに、見えない何かが諏訪子の手首を掴み、そのまま握りつぶすかのように力を加える。

 視覚として存在しないにも関わらず、確かにある何かは万力の様な力で細い腕を砕こうとする。

 

「出したね、『スタンド』を」

 

 そのまま両の腕を潰されることを受け入れるかのように、諏訪子は特に何もしなかった。ただ何もせず、ドッピオの首を絞め続けていた。

 

「ようやく出してくれたというべきかな。……存在しえない、認知の無い、そんな外の力。幻想郷をも揺るがすことのできる……こんなものじゃないはずだ。さあ、私に見せてみてよ」

「ぐ、そぉ……っ!! が……っ!!」

「確かに感じるんだよ、でも違う。『この身体なのに人を殺した事があるのは君じゃない』。それは確かなんだ!

 さあ!! もっと! もっと!! 私が一番だ、私は見たいんだ、君の力を、味わいたいんだ、君の身体を!! 偽りの身体なんざ捨てて、私に感じ  てちょうだい!」

 

 一声ごとに、諏訪子の力が強まっていく。身体もどんどんと前にのめり、自らの体重全てがその両腕に掛るように、その苦しむ顔の全てを収めようとなる。

 対して、ドッピオは視界がぼやけ、徐々にスタンドの力も薄れていく。諏訪子の両の腕に刻む腕の痕も、それに合わせて薄くなっていく。

 そして、体の力も抜けていき、意識も薄れ、やがて閉じていく。

 

 

 

 

 絶頂に達しようとしていた諏訪子が気が付いた時、そこには地面に手をついている自分の姿だった。

 そしてそれは自分の分身も同じ。押さえつけていた少年の姿はどこにも存在しなかった。

 次に気が付いたことは三つ。自分を覆うような影、それにより自分の背後に誰かが立っていること。

 もう一つは、その誰かが自分の首根をがっちりと掴んでいること。先まで自分がやっていたように。

 最後の一つは、ドッピオの首を折らんばかりに握っていた両腕、その腕を砕かんばかりに掴んでいたスタンドによる痕。そして、それに合わせて砕けきった自分の腕。

 

「……? がぶふっ、……」

 

 わからないまま、自らの腹部が何かに貫かれる様。

 大量の血と臓物が前面に飛び散り、ドッピオが倒れていた地面を汚す。

 貫かれた穴から飛び散るには足らず、衝撃で顔まで逆流してきた血が口や鼻から飛び出、垂れる。

 そこまでして、分身の視界に入り、ようやく共有している感覚が自分を攻撃してきた正体を知る。

 そこにいたのは、逞しい肉体、どこまでも深い闇を堕ち、その行程を見てきた暗い瞳、それでも淵から立ち上がろうと、前に進もうとする覚悟の意志。

 

「……キングクリムゾン」

 

 今までの様なふらついた足取りではない。明確な意志を持って目的の為に歩く、そのための足。

 ディアボロは、そこに立っていた。

 

「……なん、て……いつか、ら……」

 

 わずかに残る体内の空気が、諏訪子の血でかすれた声から漏れる。そんな明らかな重傷状態でもディアボロは全く警戒を解かずに見つめる。

 それは当然。本体である身体が傷ついてもその分身は全く傷ついていないから。ディアボロからすれば、その分身たちからいつ次の攻撃が来てもおかしくはない状態。

 だが、諏訪子からすれば『当人が何もしていない状態』で『質量をもった何かで攻撃を行った』という状態。

 

「このまま殺してもよかったが……おそらく人間とは違いこの程度では死なないだろう。その点においては信用する。それより、聞いておきたいことがあるからな」

 

 掴んでいる諏訪子ごとスタンドを手近に戻し、その左手は首、右手は背中。足で腰を踏みつけて、そのまま地面に押さえつける。

 立場は完全に逆転した。

 

「……確か、に。神殺しには及ばないけど、このままじゃあ抵抗すらも、ぼほっ、できない、ね……」

「……想像以上に元気そうだな。恐ろしいものだ」

「あは、口だけね。……答えるのも辛い。そういった意味での抵抗はもうしない。だから、あれを戻してもいいかな? 少しは力が戻って、話しやすくはなる」

「…………許可する」

 

 どうも、というと二つと分身が消え失せる。そして、その力は諏訪子に戻ったのだろう。僅かだが、押さえつけている諏訪子の体が力を増したように感じる。もっとも、傷は戻っておらず確かに抵抗しきる力まではないようだ。

 ディアボロは辺りを見回す。周囲は閑散としており人気は感じないが、同時に隠れる所も見当たらず尋問をするには不向きである。

 一連の流れをもし最初から見られていたのならば――もちろんそれはディアボロが良しとするわけではないが――まだ諏訪子から仕掛けてきたと言い訳はできるがここだけを見てしまえばどうにも弁解はできない。

 

「……安心しなよ。ここは妖怪の山と守矢神社との領域の空間地帯だ。本当に通りすがりがない限りは誰の目にも止まらない。私と一部の天狗以外は空間の存在を知らないし、ここで何があっても咎めない。悪巧みには便利でしょ?」

 

 その考えを察したのか、血に濡れた顔を歪めて諏訪子が話す。

 確かにはたても同じことを言っていた。一部の天狗が既に知った顔なのも、近隣にいることを知ったことも、それはいい都合である。

 

「聞きたいことが多すぎる。何から聞けばいいか整理する必要があるが……まず聞こう。お前は私をどこまで知っていた?」

 

 少なくとも命蓮寺の者たちは知っているようには見えなかったし、知っていてそれを隠しているようにも見えなかった。白蓮以外は。

 

「お前は『スタンド』の事を知っているようだ。だが、どうやら名前だけらしい。……私がそれを持っていることを知っているなら、他には何を知っている?」

「……答える前に聞いておきたいけど、私も君の事で聞いてみたいことがある。それは、いっ、ぎゃああああ!?」

「答えてもいいなら答えてやるが、自分は相手の事を知らないのに、相手は自分を知っている事が私は嫌いなのでな。仕返しはこれだけだ。お互い仲良くしようじゃあないか」

 

 諏訪子の腹の傷を踏み躙りながら、ディアボロはそれを解答とした。

 自分に対しての冷酷な瞳、手段を選ばぬ残忍な心。

 

「……あっ、……いい、ね、ぇ……責められるのが趣味ってわけではないけど」

「……答えるのか、答えないのか、どちらだ?」

「ぐああっ!? 答える、はっ、答えるから、足どけてよぉ!」

 

 再び踏み躙り、そのたび諏訪子の悲鳴が辺りに響く。……確かに、聞かれてしまうのはまずいことではある。

 まだ罰を与えなければ気は済まないが、それより用件を済ますことが先ではある。

 

「うぅ……、あぁ……。どこから、話そうかな……」

「時間稼ぎなどを考えるなよ。解放されるのが遅れて困るのは自分自身なのだからな」

「解放してくれる気なのは助かるけど……いや、そうじゃないね。……ざっくりだけど、はたての話の続きから話そうか」

 

 躙る程、開くごとに口から血が垂れ、辺りを塗らす。

 

「幻想郷の中で、スタンドを知っている者はほとんどいない。今までにスタンド能力を持ってここにきた者も少なくとも私は知らない。伝聞でもね。

 そんな中、先の事変だ。……知っている者は皆それをスタンドによるものだと考えていた。……だから、そのケースを呼び込んだんだ、ここにね」

「……続けろ」

「……続けろって言っても、私が知ってるのは大体それだけ。君がその呼び込まれたケースだって気づいたのは実際に会ってからさ。呼び込まれたケースがどのような人物かは知らされていない……私は外の世界の極悪人、とだけ聞いていた。

 だからあんなちんちくりんが来たときは全く気付かなかったけど、話や素振りを見てそれだと気づいた。……まだ外見しか見てないが、良い男じゃあないか」

 

 いっぱいに首を回し、視線を片寄らせてなんとかその顔を見ようとしている。

 倒れた状態では見えていないのだが、分身から共有したその姿と、今僅かに見える逆光で見えないディアボロの表情は彼女に十分の好奇を感じさせている。

 

「スタンド、については確かに私はよくわかっていない。使用者の精神に依る像、それによる特殊な力。それがベースであり君がどんな能力を持っているかは知らない。……さっき見た感じだと、知り合いと同じような能力みたいだがね。

 過去、私たちがまだ外に居た時代、早苗の生まれる前。それを示唆した老婆が早苗の父にその力と、それを使う何かの集団に誘っていたよ。あまりの不気味さから断っていたけどね」

 

 説明を聞きながら、過去を顧みる。

 スタンド能力を開花させる矢。早苗が生まれる前。示唆する老婆。それがどれだけ離れていたかはわからないが、一応符号は合致しなくはない。

 

「そこまで正直に話してくれることには感謝するぞ。……次の質問だ。私をここに呼び込んだ者は、どこにいる? ……おそらく、ヤクモユカリ、という人物だが……いや、妖怪か」

 

 今までいくらか話に上がってきた、八雲紫。博麗神社で聞いた時にはアリスより力のある者、程度の認識だったがはたての話ぶりから『有名で、知っていて当然』と思えるほどの者。

 また、先の事変について『全て知ってそう』と表現していた。おそらく、その事変に類する、対抗する力を持つ者の一端であるはず。

 

「それについては、上手い答えを持っていない。奴はどこにも存在しているようで、どこにも存在していない。神出鬼没の妖怪だ。探そうとして会える者でないが、会いたくないときには顔を出す。……そんな奴だ。ただ」

「ただ?」

「この空よりさらに上……冥界の中、白玉楼には奴の友人、西行寺幽々子がいる。同じ程度に喰えない奴だけど……紫に近づくのであればそいつに近づくのが一番、かなぁ」

「…………冥界、まであるのか……」

 

 さすがに様々な出来事が起き、やや感覚が麻痺してきていると思えるほどだが、さすがに死後の世界まであるということには驚かされる。

 もっとも、ディアボロにとってそこはたどり着くことすらできない世界だったのだが。

 

「……最後の質問にしよう。私の能力は、そのユカリが解除したと考えてよいのか、それとも別の者が解除したのか」

 

 一番知りたいこと。

 それを感付かれたくないからという心が、この質問を最後まで持ってきた。

 自分を縛り続けていた鎮魂歌の力。死ねばまた再発するのか、という疑問もあるが、そもそも死に至ることがないまま時間が過ぎている。

 人間を越えた力だが、それを超える者がいくらでも存在するこの世界。……現に今足元で転がっているのも神の一柱であるという。その力を解除したものがいるのかどうか。

 

「……能力? 解除? ……何のこと?」

 

 だが、その質問に対しては諏訪子は知らなそうな素振りを見せる。

 今まで素直に答えていた態度と同じく、素直に知らないといったような態度だ。

 

「隠すことは許可しない」

「いや、ほんとに知らないって! 何が君を縛っていたのか知らないけど……もし何か、それに境界を設けられそうなものなら奴はそれを弄れるだろうね。紫は境界を操る程度の能力を持つ。

 空と海といった、物理的な境界から現と夢、そう言った概念的境界まで。幻想郷を作り出した当人だ、何ができてもおかしくはない」

「……想像以上、だな……その、ヤクモユカリの事実は」

 

 舐めていた、正直に。心のどこかでは、自分の力を用いればどのような事態も予測し回避できる。故の自信があった。

 もしその話をそのまま受け入れるのであれば、自分は全くの勝ち目はない。また、今までに聞いた全てのおかしな事柄には納得できる。

 言うなれば、鎮魂歌の能力は生と死の境界を操り、あやふやのままにしておいた、といったところか。言葉の壁、とも言われるほどの言語の問題もその力を使えば簡単な設問だ。……サービスのつもりだろうか?

 だからといって、それに恐れて足を止めることはないのだが。

 

「……お前から聞くことは、以上だな。最後に」

「……?」

「私の事は誰にも言うな。私に関する、全ての事を。今以前に知っていたことも、不用意に広めるな……できるな?」

 

 できなければ、今ここで殺す。

 その意図は十全に詰めた。つもりだが、元よりこの状態で生きていられる存在だ。自分に、本当に彼女を死に至らしめることができるかはわからない。

 そして、本心は消せるのであれば消し去りたいが、その先を考えると少々骨が折れる。諏訪子はドッピオと離れ、そして帰ってこない。天狗は支配下に置いてあり、並の妖怪では天狗には適わないとと椛の談。

 諏訪子に従う早苗と、まだ見ていないが同格であろう神奈子という神。それら全てをドッピオの状態で敵に回すことはしておきたくはない。

 

「……してもいいよ。だけど、それは約束。脅しているつもりなら今ここで必死の抵抗をしてあげるよ?」

 

 それを読めたか、諏訪子は顔を歪ませて答える。その歪みは、悦楽を含んだ、敵対の意志も感じ取れる。

 こう出てくることが、ディアボロにとっては好機だ。その先を促すように、口を開かず待つ。

 

「抱いてよ、君を私に感じさせてよ。久しぶりなんだ、私が満足できるような男が来たのは。……ねぇ、いいだろう? それとも、私の見た目じゃ君が満足できない?」

 

 提案した見返りは、予想は付いていた。……本当に要求してくるとは思わなかったが。

 確かに今まで男性で力のある者は少なかった。人里であった霖之助も線が細く、この女が喜ぶような人間ではないだろう。

 

「……悪いが、女に対してそのようなことはしないことにしている。痛い目を見たのでな」

 

 諏訪子に対して、外見だけであれば何の感情も抱かないが、精神や振る舞いはおそらく一流の娼婦に劣ることはないだろう。おそらく、欲求を全て叶え自らに陥らせるくらいはできると見える。

 だが、あの忌まわしき出来事が、過去の過ちこそが全ての原因。行きずりのあの女に。あの娘さえ生まれていなければ。

 

「……子供の心配なんてしなくていいよ? もう年中安全日だ、気に入ったら作れる」

「そういう問題じゃあない」

「……じゃあさ、せめて顔を見せてよ。誰にも言わない。君を、私の心に刻んでおきたい」

 

 これには、少しの間を置いてからスタンドによる拘束をやめる。そして、今までほとんど動かしていなかった自身の身体で、諏訪子の身体を仰向けにする。

 その顔は血にまみれてとても見れた顔じゃないが、それでも、喜びと悦びの表情をしているのがわかる。

 

「……ああ、理解した。さっきの違和感。何でさっき感じ取れなかったのか。……そっちの身体が本当の身体。だから、どこか見せかけの様な感じだったんだね。

 ……自らの為ならばいくらでも他人を使い捨てられる。いくらでも手に血を染めることができる。拭い去れなくなるほどの血の匂い……ふふふっ」

 

 実際に相手にしなくても、『自分に気を向けていてくれている』だけで舞い上がる女もいる。

 最後に見せた諏訪子の笑みも、それに近しい物だった。

 

「……行きなよ。私の事は放っておいてくれていい。むしろその方が互いに助かると思うよ。君が欲するであろうものは私は全て出したし、私は、まあ、満足ということにしておいてあげる、から」

 

 見れば、腹の傷は少しずつ蠢き小さくなってきている。それでも十分すぎる大穴は空いているが、やはり殺すには足りず、殺しきれるかはわからないといったところか。

 彼女を欲求を叶え、籠絡し手持ちにすることができれば、まさに最高の駒になることだろう。

 

「……当然だが、そこではないな……」

 

 ここにいるとだんだん自分も違うものになっていく気がする、とディアボロは感じた。今までの現実から乖離しすぎたそれは、やはり感覚を鈍らせてきている。

 相手は神だ。自分は人だ。神を求めようとして天に向かい、地に落ちる逸話は、なんであったか。

 そんな逸話では苦労して手に入れた翼を、いともたやすく自分は扱えるようになっているが、それは違う。

 違うのだ。

 

「見抜け」

 

 そんな矛盾を持ちながら、その先を向く。それは、高い山よりさらに高い、彼方空、雲の上を目指していた。

 

 

 

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「ただいまー」

「お帰りなさい、諏訪子様……どうしたんですか、その服!」

「あーうー、転んだ?」

「なんで疑問形なんです!? もう……お着替えなさってください。私、繕いますから」

「助かるねぇ。はたては?」

「サイコロ何度も振って、今のうちに強いキャラ作らないとー、って頑張ってますよ。ボーナスポイント13でた、ってさっき喜んでました。私にはよくわからないですけど」

「一発振りだ」

「あ、はい。伝えておきます」

「よろしく。……ごめん、私少し寝るよ。服は本殿の前に置いておくから」

「え、また寝るんです? ……まあ、諏訪子様がそういうなら」

「うん、お休み」

 

 あくまで普段通りに、あくまで普通に。

 元々欺くのは得意だから、早苗もそれには気づかなかった。

 

 本殿の中に入り、誰もいないことを確認してから。

 腹を抱え、うずくまる。額には小さく汗が浮かび始める。その抱えた腕からも、不協和音が全身に響き渡る。

 

「ぐぅ、うぅ……」

 

 身体を苛む猛烈な痛み。肉体だけではなく精神から削られる苦痛。

 あの時、嘘を言った。もし彼がそれを知ってしまえば最悪自分の手のひらだけで収まらないだろうから。

 スタンドは、神殺しの武器に十分になりうる。神といかなくても、精神を憑代とした妖怪たちを滅ぼす退魔と十分になりうるだろう。

 精神から成り立つ像。単純な力をどれだけ持っているかを試してみたが、これほどとは。

 

「うぐ、ぅ……へ、へへへ……」

 

 笑みがこぼれる。

 神遊び、巫女との弾幕ごっこも楽しい物だった。ごっことはいえ、誰も彼もその一瞬では自分の存在を賭けて戦っているのだ。

 でも、彼の力は違う。同じだが、それはごっこ遊びではない。真剣な、命のやり取りなのだ。互いに交わしたのは一撃、けれどその一つにどれほどの存在を賭けていたか。

 

「どうだ、八雲の……!! 私が一番だ、唾付けたのは私だ、女狐めぇ」

 

 スタンド能力がどれほどの脅威を持つか。それを調べるのは元々藍の役目であり、主人のそれとは違い、純粋に危惧していた。

 が、その別諏訪子と同じような劣情をディアボロに抱いているのを隠していた。同じ考えを持つ者、互いに腹に一物抱えている者だ、何かを隠そうとしていることがわかるのだ。

 諏訪子がその細腕で大樹をちぎり取れる様な力を加えても、首を折るにも至らなかった。

 生半可な攻撃では傷つかぬこの身体をも、やすやすと貫いた。

 精神性を織り交ぜた、妖力や巫力といった力を交えた攻撃は効果が薄くなる。また、逆に相手にはそれらで守れた盾を破る力がある。

 ……違う、精神そのものが像となっているのだ。それが無意識に肉体を守っている。物理的な力だけから外れている妖怪の力では、圧倒することができない。対等に至れる。

 試していないが、精神の像同士がぶつかり合えば、きっとそのダメージは肉体に反映される。もっとも、砕けきったこの両腕、握られているという感覚は全くなかった。感じ取れもしなかった。

 

「……どうでもいいや、今は」

 

 そう言ったことを考えるのは今を担いたがる奴らだし、それは既に行っているだろう。

 確かに幻想郷の脅威になりうる、が彼がその器足るかはわからない。……そんな、ことより。

 

「……ぁ」

 

 自分の胸に手をやる。痛みとは違う甘い感覚がぴりぴりと走る。身体を治すための鼓動とは違う、もっと別の感情が体幹を駆け巡るから。鼓動も早くなっているのがわかる。

 

 ―――久しぶりに、一人でしようかな。

 

 す、とわずかに夕日が差す本殿が暗くなる。諏訪子が周りと隔絶させ、一人の空間を作り、その中で横になる。

 時間が、また経った。


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