いわゆる「普通」な魔法使い   作:朱莉

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その玖! 私に勇気を分けてくれ!

 

 大切な場所を守るために、背中をおしてくれる、そんな勇気を。

 

 

 

 謝ろうと思い境内に足を運ぶ。震える足が何度も階段を踏み外すが箒に乗る気にもなれない。そもそもなんでこんなに怖がっているのだろうか、あんなに謝りたいと思っていたのに。

 いろんな人に訪ねて解き方を教わったのになんで答えがわかったらこんなにも辛いのだろう。階段から見える神社はまだ遠い。

 私のせいなのはわかっていた。理由ももしかしたらで思っていた。違ったらいいなって思っていた。でも霊夢に迷惑と思われても構ってくれて嬉しかった。

 

 ……私は怖かったのだ。頭ごなしに今の私を否定されるのが。彼女のサバサバとした答えが。問題を先送りにして手遅れになってから取り掛かる……なんて酷いやつだ。今ならルーミアに食べられてもいい人間なのかもしれない。なんて思うのは逃げだろう。私はまた逃げるのか。

 これが私の『普通』だとは思いたくない。

 

 もし言いたいことも言えずに固まったら彼女はどう反応するだろうか、呆れられる? 心配してくれる? 苛つかれる? なんにせよ、面倒をかけそうだ。

 

 遠い。神社にいく階段ってこんなに長かったっけ……小町に距離を弄られてる……んだったら気が楽なのに。

 ぼやける視界に揺れる地面。私はどんだけびびりなのか。

 

 だいぶ前に作ったますぽに手がのびる。持ってきたのは失敗だった。でも、こんなに足が遅くなるなんて思わなかったから……これに頼ったらもう私は『普通』に戻れない。

 

 はぁ。と深く息を吐く。肺にたまっている空気を全部吐き出すように。そして一気に吸い込んだ。最後に勢いよく声に出して気を締める。ここで悩んでも進めないから。

 最初に二段抜かしで一気に登る。下は向かない、前だけ見つめて足を踏み出す。たんたんたん、と進むにつれて鳥居が見える。もうすぐ会える。言いたいことはまとまってないけどどうにかなる。どうにかする。地味に階段ってハードワークだよね、進む速度が早かったようで心臓がよく跳ねる。でももう少しなんだ。頑張って。

 勢いよく駆け出し、鳥居を抜けたときには肩から息をしていた。膝に手を置き深呼吸。いきなり止まったせいでちょっと痛かったけど、うじうじした駄賃だ。快く受け取ろう。

 呼吸を戻してさぁ、ごたいめ……ん? ん? んー?

 

 目の前にあるはずのものを探して視界を動かす。あれ、博麗神社がない?

 

 いや、神社はある。だけど私の知ってる形をしてなくて、神社なのかすら怪しい。これが幻なら、夢ならどんなに良かっただろうか。

 

 なぜなら、私の前にあるはずの神社は大きな石が突き刺さり粉々になっていたのだから。

 

 

 




 

 時系列なんて関係ねぇ! 異変だ、異変を寄越せ!

 ますぽの効能は軽い高揚感と、感情の抑揚、感情の抑制などです。頼り害のある(誤字に非ず)お薬ですね。

 誤字確認は後日します。

 仕事中に書くお話は楽しいなぁ。

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