いわゆる「普通」な魔法使い   作:朱莉

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その参! 突撃晩御飯!

 

 

 

 時間的に昼時なんだけどもね。

 

 お世辞にも参拝客が参るとは思えない少し寂れた神社を、定番である紅白の巫女服(普通じゃない)を着た女性が手馴れた様子で箒片手に掃除していた。

 そう、私の友人である博麗 霊夢である。

 そして私こと私の名前は霧雨 魔理沙である。あ、みなさま、おはこんばんちは。

 流石にお風呂入りましたよ気付いてすぐに。キノコ慣れって怖いわぁ……じめってるから自分の変化に気づかないとか怖いわぁ。

 私の服はいつも通りの白黒模様。汚れたりしても気楽なのがいいところだよねぇ。

 で、今日は何しに来たかと言えばおすそ分け。薬品じゃないよ? ご飯のだよ? ますぽはまだ検証中だからね。できてても渡さないけど。

 確か霊夢は好き嫌いなかったはずだから適当に作ってきた。あ、きのこ分は大量なんだけどね。だってそうしたほうが安く済むし、何より作りやすいんだもん、しょうがないね。

 

 で、おすそ分けを運びながら移動してるわけですが、やっぱ空を飛べるのは楽でいいわぁ。鳥と違って羽で飛んでるわけじゃないし、某魔女宅よろしく運び中なわけです。いやぁ歩くのと違って煮崩れ(荷崩れ)とか心配しなくていいのは大きいなぁ。

 という訳で到着。

 

「やぁ、掃除頑張ってるねぇ」

「なんか用?」

 

 なんでこの巫女は不機嫌なのだろう? 

 

「お昼の差し入れ。食べてなかったらだけど……台所借りてもいい?」

「……いいわよ。さっさと終わらせるから先にあがっといて」

 

 「ありがとう」と軽く告げて私は箒を縁側に立て掛けてそそくさとお邪魔する。

 自分の履物はちゃんと整えて隅っこに寄せてから台所に向かった。

 

 

 

■  ◆  ■  ◆  ■  ◆

 

 

 

 縁側から馴れたように台所に向かう友人を傍目に一瞥し軽く溜息を吐く。

 やっぱり私は魔理沙には悪いけど昔のように接することはできない。

 表に出そうと思ってなくても辛くあたってしまう。私自身はそんなつもりはないんだけども。

 アリスは害はないから構わないと言っていたけど……あの魔理沙が断りを入れてお邪魔するだけに飽き足らず、言われずとも自分の履物を整えるなんて……。

 百歩譲って差し入れには感謝しよう。貰えるのであれば私に不利益じゃなければ貰うのが私の信条だから。(アリスが言うには美味しいらしいし)

 でもやっぱあの魔理沙がここまで変化したのを見ると……しかも何も私には相談してくれないし、アリスやパチュリーのところにはよく行ってるらしいけど……紫に相談してみても、いい返事はもらえなかったし……自分でやるしかないのかしら。

 

 掃除を終えて後片付けを済ませ魔理沙の後を追う。私が縁側に着いた頃には空きっ腹に利く良い香りが鼻をくすぐる。手際の良さからある程度仕上げてから来たのだろうか? 香りからしてキノコ料理か。アリスから事前に聞いていなかったら台所に殴り込んでいただろうが……とりあえず居間で待機しておこうか。

 

「霊夢ぅ、もうすぐ完成するから楽にして待っててー」

 

 足音が聞こえたのだろうか? 居間に向かおうとしている私にそう声を投げかけた。軽く返事を返して居間に行くと湯呑が置かれていた。中身を見れば今しがた淹れられたのであろうか、湯気がたっていた。

 気が利きすぎて渇いた笑いしか出ないのはしょうがないと思う。しかも見覚えのない茶請けもあるし……。

 

 魔理沙が来たのは丁度茶請けを食べ終えた頃だった。ぇ、なに、見計らったのってくらい丁度に来たから数秒止まってしまった。

 そんな私を見て魔理沙はゆっくり休んでいいぞと声をかけ、せっせと準備をし始めた。こいつは私のお母さんだろうかってくらいだ。

 ……果たして出てくる料理を素直に食べていいのだろうか? 毒とか入ってるのではないか? 考えるだけ無駄か……なるようになれ、だ。

 

 

 

 

 

 

 借りてきた猫っていうのはあんなのを言うのだろうか? 台所を借りているのは私なわけでいろいろと食い違ってはいるけども。要は霊夢は今の私に不満を抱いている、それも割と顔に出るくらいに、つまりは凹むってことさ。はぁ。

 

 以前の私が台所を借りたことがあるのか、ただ知っていただけか、よくわからないけど器具のしまっている場所がすぐわかって良かった。流石に掃除しているところお邪魔しているから呼ぶわけにはいかない。料理で焼けぼっくいに火がつくといいんだけども……物で釣るのはやっぱダメかなぁ。

 無理だったら話の種にしてそれで……かな。

 さて、気になるご飯の中身は空★鍋……ではなく普通に作り置きというか寝かしたカレーなわけで、加熱とちょっとの味付け+白米で完成なわけよ。白米はちゃんと持ってきた。人ん家襲撃しといてご飯頂くとかどんな畜生よ……私ですね、猛省します。

 お茶のお代わりも準備して(ヤカンでだけど)霊夢が元の調子に戻ってからさて頂きますっと。手を合わせて行儀よく、訝しげに見てくる霊夢に見せつけるように口にほうばってやったのだわさ。え、口調が変? それくらいしなきゃ霊夢の目線(光線)に胃がやられそうな勢いなんですわ、マジで。

 そんな私の頑張りが実ったのか諦めただけなのか定かじゃないけど食べてくれましたよ、この巫女さん。いや食べてくれていいんですけども。

 

「……」

「なによ?」

「お、お味は?」

「……美味しいわよ。食事中に喋らすんじゃないの!」

「ごもっとも!」

 

 えへへ……っといけない。割と素直に喜んじゃった。でもやっぱ言われると嬉しいわけで……えへ。

 

 

 まぁ、その食事中は不敵な笑みを浮かべる私と、そんな私を可哀想な目で見る霊夢という絵面が終わるまで続いたとさ。

 

 




 
 
 
仲直り(それ美味しいの?)回でした。
なにげに初会話。短いですけど会話。
こんな調子で進みます。




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