いわゆる「普通」な魔法使い   作:朱莉

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 前話との繋がりはございません。


誰かの日記

 

 

 最近忘れっぽいので、というか覚える物事が増えたので日記というかメモ帳にあったことを記入しようと思う。誰かに見られることはないだろうが、もしもそうなれば恥ずかしいので生活には一切触れないよう書こう。

 

 

 

 

 春、曇りの日。

 パチュリーの蔵書から気になる書物を見つけた。ページを捲る毎に魔力を出して危険な本だ。

 即、借り出して写本したが、写本にも能力が載る。写本ページを置き換えて対処。見られても魔力を溢れないようにした。原本は危険なので仕舞っておく。

 

 読んでいくと精霊降臨の書物ということがわかった。お手伝いに欲しいところだったのでこの研究を進めてみよう。

 

 

 

 春、雨の日。

 必要な材料が多すぎる。実行に移せるかわからない程度には。『おおなまずのひげ』とかどの辺りからおおなまずなのかさっぱりである。『大樹の桜の木の根』もサイズ不明。前途多難だ。補足に花をつけないものほど好ましいとあるが枯れた木と何が違うのか。しかも桜。さっぱりである。『大船の破片』とか大雑把だし、死神印の舟は小舟だし、前途多難すぎる。さっぱりだ。書き直してもさっぱりだ。

 

 

 春、曇りの日

 さっぱり尽くしなので開き直って見つけたら採集の形に変えることにする。研究するに至って面倒だが、蒐集が困難なのだからしょうがない。

 

 気分転換に写本を読み耽っていると気になる文面を見つけた。『各所の大まかな位置』それを省み文章を漁る。木の根は冥土、舟は空、までは読み取れる。面倒なことこの上ない。『異変の際に隣接』……は? ちょっと詳しく見てみようか。

 

 『異変の際に隣接』

これらの素材は通常とは逸脱した存在である。鯰の地割れ、大樹の満開桜、空舟の闊歩、どれをとっても特別な力が宿る。その際に起こる力場を利用した召喚の儀式である。通常時のそれらは異様な雰囲気を纏うだけのただの物体だ。それを用意しても無駄になる。

 

 

 まるで現実に起きるかの様に書かれたそれを読み解く。もしもそんなことが起きれば、もしもその事態に私が直面したら、この書物を知った私は普通に驚くことはないだろう。識ってしまったから。仮定がどうあれ。

 知的好奇心で調べたのが悔やまれた。この精霊は触れてはいけない。だが──。

 

 

 夏、晴天の日。

 だいぶ時期が開いた。本の処分に困ったがなんとか元に戻すことに成功した。写本には鍵をつけた。封印と共に。解く方法は──。…書く必要ないか。

 

 

 夏、雨の日。

 写本の封印が無理矢理開けられていた。勿論、その中身も。鍵は無惨に壊されていた。まずい。

 

 

 夏、雨の日。

 手当たり次第に問い詰める。

 

 

 不明、不明。

 興味本意だったことは大いにある。が、それのツケがシワを寄せるかの如く一気に来た。事の大きさは曖昧ながらも理解している。もはや、誰かに相談する度合いを通り越している。この日記は誰の目にも入らないように近いうちに破壊する。関係がないと割りきれるほど時間もない。

 ツケの払方は儀式を以て行われるそうだ。その後の私の処分は儀式が成功なら解放、失敗なら保管だそうだ。怖い、堪らなく怖い、怖いぜ……。

 

 もし許されるなら、今までに借りた本を返して、彼女たちと友達になって、いままでに起きた異変のことを話ながら花見酒でも楽しみたいものだ。霊夢、私はお前のこと──

 






 下書きが済み次第投稿予定。

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