虹の軌跡   作:テッチー

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グランローゼの薔薇物語(前編)

 グランローゼとは何を意味する言葉だったか。

 そんな疑問が頭に浮かんだ気がしたが、窓から差し込む朝日によって、まどろんだ意識は霧散した。

 目を開いて真っ先に視界に入ったのは天井、そしてガラスでしつらえた小振りながらも豪奢なシャンデリア。このシャンデリアは実家から持ってきた特注品だ。

 ベッドから身を起こすと、特注のスプリングがぎしりと苦しそうに軋む音を立てる。

 ゴーディオッサーとか言う魔獣が乗っかっても壊れないという謳い文句だったはずだが、なんという体たらくだ。そもそもそんな魔獣自体見たことがないが、どうせ飛び猫クラスの大きさなのだろう。商人の口車ほど当てにならないものはない。

 カーテンレースを開く。レースの所々に刺繍されたバラの模様は何度見ても美しい。

 もちろんカーテンだけではない。部屋中のありとあらゆる物にバラの意匠がある。

 例えば今足をついている絨毯にもバラの刺繍が施されているし、壁にかけてある絵画もバラだ。ついでに言えば絵を納める額にもバラのモチーフが彫られている。先ほど目に入ったシャンデリアなど、形そのものがバラの花弁だ。

 人が見れば不思議に思うだろう。バラが好きなのかと推測するだろう。

 それは間違っていない。だが足りない。そんな陳腐な言葉ではとても言い表せないのだ。

 あえて言うなら“誇り”であり、自らの先祖が生きた“証”

 そう答えると、さらに問われるのだろう。何が誇りで、何ゆえの証なのかと。

 彼女はそこで一旦思考を中断し、部屋の隅に設置してある机――その上に置かれた花瓶に目を向けた。

 当然ではあるが、そこに活けられているのはバラだ。それも真っ赤なバラ。これはグランローズと呼ばれている品種である。まだ花は開かず、つぼみの状態ではあるが。

 そっとつぼみを撫で、彼女はある人の顔を思い浮かべる。

 いつも自信に溢れ、優雅に振る舞い、我が道を行く芯の強さ、そして純白を着こなす清廉な立ち姿。

 思い浮かべて、彼女の心は熱くなった。体も身をよじるほどに熱を帯びた。

 彼女は考える――この身を焦がすような、たぎる想いは何なのか。

 彼女は考える――どうすれば溢れ出すこの想いを抑えられるのか。

 彼女は考える――いや、そもそもこれは抑えるようなものなのか。

 彼女は思い至る――否、抑える必要などない。気持ちの一切を偽ることなく、己の心にただ従えばいい。

 花瓶からバラを抜き取り、差し込む陽光に掲げてみせる。薄く透けた赤色は燃えているようだった。

 先ほどの問いを思い返し、目を閉じて、自分と重ね合わせながら思考を巡らしてみる。

 何が誇りなのか、生きた証とは何なのか。そしてたぎる想いの正体とは。全ての問いは集約され、やがてたった一つの解に帰結した。

 それは“愛”。

 先祖から受け継がれ、自分の根幹を成す、言わば魂。

 ならばこそ、魂の赴くままに、自分は愛を伝えなくてはならない。

 かつて自分の先祖は数えきれない程のバラを想い人に贈り、熱烈とも言える愛を伝えたという。

 バラの花を用意することこそ容易いが、現代でそれをすることは、多少の時代錯誤であることも彼女にはわかっていた。

 贈るバラはただ一輪でいい。そこに自分の気持ちと、わずかばかりの隠し味を込めて作ったクッキーを添えて。

 彼女はベッドの枕元に置いてある、もう一つの花瓶へと向かう。

 その花瓶にも一輪のバラがあった。この部屋で唯一の白いバラ。こちらはすでに満開だ。まるで想い人の佇まいをそのまま映したかのような、純白。

 その花瓶に、手にしている赤いバラも入れてみた。一つの花瓶の中、仲睦まじく寄り添う赤と白。

 赤いバラの花言葉は『愛、幸福、乙女』

 白いバラの花言葉は『清純、恋の吐息、私はあなたにふさわしい』

 しかし赤と白のバラが二つ揃った時、その意味は変わる。『温かい心』そして『和合』

 彼女――マルガリータは決意する。今日こそは想いを届けよう。たとえいかなる障害が自分の行く手を阻んだとしても。自らの願いが成就したその時こそ、あの赤いつぼみは花開くのだ。

 想い人――ヴィンセント・フロラルドの名を頭に思い浮かべて、マルガリータは微笑んだ。貴族子女の名に恥じないよう、たおやかで、しなやかで、穏やかに。

「ムフォッ!」

 疑問に思うまでもない。すでに自分は知っている。

 グランローゼ。それは魂に刻まれた愛の銘であると。

 

 

《☆☆☆グランローゼの薔薇物語☆☆☆》

 

 

「僕を救いたまえ!」

 昼休みを告げる鐘が鳴ると同時に、バンと勢いよく扉が開いて、Ⅶ組の教室にヴィンセントが駆け込んで来た。

「ヴィンセント先輩、教室を間違っていますよ」

 きょとんとしてリィンが言うと、ヴィンセントは「違うのだ!」と上ずった声を吐き出した。

「僕に……きょ、脅迫状が……っ!」

 脅迫状。その一語に他のⅦ組メンバーも反応を返してくる。

「それは穏やかではないな」

「何か要求されてるの? 犯人に心当たりは?」

 ガイウスが片眉を上げる横で、フィーは淡々とヴィンセントに問う。

「ですがそのようなことなら、僕らなんかより教官達に相談した方がいいのではないですか」

 至極まっとうなマキアスの意見だ。確かに脅迫状というのなら、一生徒が対応する範疇を越えている。

 しかしヴィンセントは首を横に振り、無言のままリィンに小さな封筒を手渡した。

 恐らくはこれが届いたという脅迫状だろう。

 どこかずれながらも、いつも自信にあふれた態度を崩さないヴィンセントだったが、今ばかりはその表情も青ざめ、額には油汗が滲んでいる。

「……それでは」

 リィンもさすがに緊張の面持ちで封筒を開ける。封留めの部分には真っ赤なバラのシールが貼られていた。

「……?」

 赤いバラ。ヴィンセント。

 前にも同じようなことがあったような。そんな既視感を覚えながらもシールを慎重に剥がし、中の便箋を取り出した。

 脅迫状と言うには、便箋自体の色合いが鮮やか過ぎる気もするが、ひとまずリィンはそこに書かれている文章を読み上げる。

「えーと、『愛しのヴィンセント・フロラルド様。涼やかな風が秋の始まりを告げる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。夏の日照りが陰りを見せ始めましたが、わたくしの心は未だ真夏の猛暑日のように ~中略~ そしてわたくしの身は全てあなたに捧げ ~中略~ 貴方にお渡ししたいものがございますので、本日十七時、学院の中庭にてお待ち下さい。――あなたのグランローゼより』」

「ひ、ひいっ!」 

 グランローゼの名が出た瞬間、ヴィンセントはのけぞって叫び声を上げた。

「……これってラブレターってやつだよね」

 エリオットが怪訝顔を浮かべる。文章の内容はどう読んでも脅迫状ではない。

 一方、フィーとミリアムをのぞく女性陣達は顔を赤面させて、うつむき加減である。

 それはあまりに赤裸々な“中略”の部分を、朗々と読み上げたリィンに対しての反応だった。

「あなたってよくそこまで恥ずかしいセリフを、ペラペラと真面目な顔で声に出して読めるわね」

 アリサが呆れる横で、エマとラウラもうなずいている。

「リィンさんったら……」

「そなたはもう少し配慮というか、慎みを覚えた方がよいのではないか?」

「そ、そうなのか。すまない」

 女子達から軽く非難の目を浴び、とりあえず謝るリィン。

 そんな彼を横目に、クロウは含みのある笑い声をもらした。

「相変わらず朴念仁だな、お前は。つーか脅迫状の話はどこに行ったんだよ。その内容だったらむしろ羨ましいくらいだぜ」

「というか、グランローゼって名前の人いたかしら?」

「ああ、グランローゼってのはマルガリータのことだ」

 リィンがそう答えると、アリサは「マルッ!?」と頓狂な声を響かせた。

「ご、ごめんなさい。なんでもないわ」

 皆の視線が集中するが、彼女はこほんと咳払いしてはぐらかす。

 その名を聞いてフィーが首を傾げる。

「マルガリータって確か……」

 先日、ベッキーとヒューゴの依頼で屋台勝負をした際、終盤にやってきたあの女子だ。

 顔をしかめるユーシス。

「俺の焼いたハンバーグ五個を飲み欲したあいつか……」

「えらいのに惚れられたもんだな」

 他人事のようにクロウは笑う。実際、他人事なのだが。

 あのインパクトはそう忘れられるものではない。濃厚な顔立ちが全員の脳裏に焼き付いていた。

 同様にその顔を思い出したのか、ぶるりと身震いしたヴィンセントは、改めて全員に向き直った。

「そういうわけなのだ。Ⅶ組の諸君には僕を助ける栄誉を授けよう」

 リィンは少し躊躇した。例えばヴィンセントを匿い、マルガリータからその身を守ることはできるかもしれない。

 しかし、それでは彼女の気持ちはどうなるのか。別に彼に危害を加えようとしているわけではない。行き過ぎた愛情表現が結果的に危害に繋がるというのは、ひとまず置いておくとして。

 彼女の想いを度外視してまで、ヴィンセントを守ることに正当性はあるのだろうか。

 そんな疑問がふとよぎった時「此度の件、私からもお願い申し上げます」と物静かな声が届いた。

 すっと扉が開き、柔らかな足取りで教室に入ってきたフロラルド家の使用人――サリファはヴィンセントの隣に立つと、慇懃な物腰で頭を下げた。 

「ある筋から入手した情報なのですが、マルガリータ様がヴィンセント様にお渡ししようとされているのは手作りのクッキーらしいのです」

「シャロンといい、使用人っていうのは独自の情報ルートを持ってるものなのかしら……」

 加えて言うなら、今みたいに平然と校舎内にいることもだ。

「問題はそのクッキーに成分不明の薬物が混入されている恐れがあることです」

 薬物。不穏な響きが不安を煽る。まさか告白が失敗した場合、マルガリータはヴィンセントを毒殺でもしようというのか。

 ざわめきの中、サリファは続けた。

「とはいえ、やはり学院の中でのこと。あまり大事にはしたくないのが本音のところでございます。そこで“学院トラブルが俺の友達”と豪語されているリィン様、引いてはⅦ組の皆様にお願いに参った次第なのです」

「いや、俺はそんなことを言った覚えがないんですが」

「そうでしたか」

 だが薬物というのなら看過はできないところだ。事実確認も含めて、やはり受諾するべきかとリィンが考え直した時、その後押しは意外な所からやってきた。

「ねえ、リィン。この依頼受けてくれないかしら。私も協力するから」

 アリサの赤い瞳に強い意志が宿っている。

「この問題が解決すれば、フェリスの悩みも解決するのよ。今回の事は友達の為でもあるわ」

 フェリスの悩みを端的に言えば、マルガリータに付きまとわれていることだ。

 理由は一つ。ヴィンセントとの橋渡し役としてである。

 マルガリータの恋が成就するしないに関わらず、一区切りつけることはフェリスの解放をも意味する。もっとも成就したらしたで、新しい問題も出て来そうではあったが。

「アリサ様……お心遣い痛み入ります」 

「ええ、任せて」

 事の次第から、今回もⅦ組全員での依頼を請け負う形となった。

 彼らはまだ知らない。バラの棘の鋭さを。

 

 

 昼休み前半。

 ヴィンセントとサリファが退室した後、教室では作戦会議が開かれていた。

 今回のミッションにおける目的は二つ。

 一つ目が件の手作りクッキーに薬物混入が確認された場合、速やかにマルガリータからクッキーを奪取すること。

 二つ目が目標の奪取に失敗した場合、ヴィンセントとマルガリータの接触を防ぎ、彼の身の安全を確保すること。

 その為にはマルガリータの行動経路の限定、及びⅦ組メンバーの配置が重要になってくる。

「――と、いう感じでどうだろう」

 リィンが全員の意見や見解をすり合わせたミッションプランを伝える。その概要はこうだ。

 同じ調理部のミリアムが調理室にて待機し、マルガリータがクッキーを作る過程を観察。怪しげな薬物を使った時点で作戦は開始される。

 まずは男子二名がマルガリータを説得し、可能であれば自発的にクッキーを引き渡してもらう。

 女子を外したのはアリサからの進言で、マルガリータの性格を考慮し、ヴィンセントに好意を持っているのではという邪推を起こさせない為だ。

 万が一抵抗するようであれば、不本意ではあるが人命救助を最優先事項とし、強制的にクッキーを押収する形を取らざるを得ない。

 そこまでが第一プラン。

 その後も予想される状況に合わせて第三プランまで練り上げることとなった。

 ちなみにクッキーを作る際に薬物混入を確認できなければ、残念だがヴィンセントには定刻通りに待ち合わせ場所に赴き、愛の告白を受けてもらうことになる。

「これでいいか、アリサ?」

「いえ、正直万全とは言いがたいわね」

 第三プランまで考えることになったのは、アリサの強い要望があったからだった。

 ただ一人、彼女だけはマルガリータの脅威を知っている。

 フェリスと贈り物のブローチ探しをしたあの日、一歩間違っていれば彼女は今この場に立ってすらいなかったのかもしれない。

「マルガリータさんを侮ったらダメよ! 本当なら最初から総力戦を仕掛けたいんだから。お願いだから第二プラン以降の配置には武器を装備させておいて」

「そんな大げさな……」

 先にも述べたマルガリータの性格を考慮し、基本のミッションは男性陣で遂行する。しかしリィンを始め、他の男子達はそこまで事態を重く見ていない。

 確かにあのマルガリータはインパクトこそ群を抜くものの、今回の目的は薬物確認とクッキーの回収のみだからだ。

 一方の女子の主な役割はヴィンセントを匿い、彼を護衛、防衛することだ。

 主とする作戦目的が違う為、ここからの細かい打ち合わせは、男子班と女子班に分かれて行うことになった。

 

 

 昼休み後半。男子達は屋上の一角を陣取っていた。教室でもよかったのだが、話が漏れる可能性を一応考えてこの場所を選んだのだ。

「俺達の作戦プランは決まっているから、あとは人員配置と注意事項を共有するか」

 リィンの提案に異は出なかった。今日は放課後に部活のあるメンバーもおり、なるべくなら早く済ませたいらしい。

「ヴィンセントに代わって中庭に向かう先発隊は、まー、消去法で決まりだろ」

 説得班である。クロウの目線がエリオットとガイウスに向けられた。

「え、僕たち?」

「なぜだ?」

「波風立たなさそうだし適任だろ。ただ説得に失敗して、しかもその場でクッキーの押収が出来なかった場合、お前らには必ずやってもらうことがある」

「やってもらうことって?」

「マルガリータに、ヴィンセントは今屋上にいるという情報を流せ。不自然にならないようにな」

 中庭にヴィンセントがいないのなら、それでフラれたという結論には至らず、恐らく彼女は学院内を探し回るだろう。彼の居場所からは遠ざけるよう誘導しなければならない。

「それで途中の二階にはユーシスとマキアス。屋上には俺とリィンが控える二段構えだ」

「少なくともあの女が屋上に辿り着くことはないな」

 フェンスにもたれ掛かかるユーシス。その横からマキアスが言った。

「そういえばリィン、アリサが武器を所持した方がいいと言っていたが、どうする?」

 リィンは肩をすくめた。

「仮にも相手は女子だ。しかも丸腰の相手に武器は少々みっともないだろう。俺たちは素手でいこう」

 

 

「私達はフル装備でいくわ」

 アリサは強い口調で宣言し、テーブルを囲む他のメンバーを見回した。

 学生会館、一階食堂。

 昼と言うこともあり、利用者は多かったが、この喧騒が自分達の声と姿を隠してくれていた。こういう打ち合わせは、人の多い所の方が逆に漏れないものだ。

「そなたがそこまで言うなら、そのようにしよう」

「ん、私もいいよ」

「リィンさん達で終わるのが一番いいんですけど……」

「ボクは調理室待機でいいんだよね」

 全員の同意を確認したアリサは続ける。

「それじゃあ皆《ARCUS》を出して。フォーメーションの確認をしながらクオーツの見直しするから」

 机の上に人数分の戦術オーブメントが並べられる。

「ミリアムはこのクオーツお願いね。ラウラとフィーはこれを」

「私がこれをか?」

「普段あまり使わないやつかも」

 怪訝顔のラウラとフィーだったが、「マルガリータさん相手に正攻法は危険よ」とアリサは押し含めた。

 エマが心配そうにアリサに目を向ける。

「ところでヴィンセント先輩を匿う場所は、あそこで本当に大丈夫でしょうか?」

「絶対はないけど、かなり安全なはずよ。それに施錠用の鍵の隠し場所には、さすがにたどりつかないだろうし」

「それならいいんですけど……」

 話もまとまってきた所で、昼休み終了の予鈴が鳴り響く。

 一抹の不安は残しながらもミーティングは終了し、後はその時を待つのみとなった。

 

 

 放課後。

 Ⅶ組は各班に分かれ、指定の場所に付いていた。

 今回は各チーム毎の位置が離れているので《ARCUS》の通信機能を最大限活用した連携が不可欠になってくる。

「まったく、お前は色々と安請け合いし過ぎだ」 

「今回のことは仕方ないだろ。まあ、巻き込んだのは悪いと思っているが」

 屋上に控えるリィンとクロウは、適当な話をしながら時間を潰している。

 出番があるとしても一番最後で、またその可能性も少ない二人は、緊張感は持ちながらもどこか悠長に構えていた。

「薬物ってマジだと思うか?」

「正直に言えば、さすがにそれはないと思う。ただサリファさんの情報ルートって不明だし、一応確認はいるだろ」

 真実味はあるが、どこかシャロンと似たような雰囲気を感じるのだ。

 シャロンのように冗談めかしてくるわけではないが、サリファもトラブルを――特にヴィンセントに降りかかるトラブルをどこか楽しげに眺めている節がある。

 その時、《ARCUS》に通信が入った。

 受信のボタンを押し込むが早いか、通話口から『薬物確認したよ!』とミリアムの声が飛び出した。 

「それは本当に薬物か? 香料の類も考えられるだろ」

 念の為、再確認を促すがミリアムは間を置かずに言い返してくる。

『だってクッキーの生地に注射針で何か注入してたんだもん。間違いないと思うけどなー』

「クロウ、どう思う?」

「どうもこうも料理に注射針は使わねえよ。こりゃ決まりだな」

 訊いてはみたものの、リィンも同意見だった。できれば無粋な真似などしたくはなかったのだが、こうなってしまえば仕方がない。

『ボクはどうしたらいい?』

「まだそこで待機してくれ。マルガリータが焼き上がったクッキーをもって調理室を出たら、男子第一班に連絡を頼む。その後でミリアムは女子班と合流だ」

『りょーかい!』

 通信が切れる。

 クッキー回収ミッション、スタートだ。

 

 

「了解した。今から説得に向かう」

「うう、緊張してきた」

 リィンが薬物使用の連絡を受けてからおよそ一時間後、ガイウスの《ARCUS》にミリアムからの通信が入った。

 マルガリータが焼き終えたクッキーを袋に詰め、ついに調理室から出て行ったとのことだ。

「中庭に彼女が現れたら出ていくぞ」

「……話せば分かってくれるよね」

 二人が待機しているのは、花壇付近だ。ここからなら中庭がよく見える。

 まもなく扉が開く音がして、誰かが校舎内から中庭に出てきた。

「来た、マルガリータだ」

「う、うん。行こうか、ガイウス」

 時刻は約束の十七時。マルガリータはきょろきょろと視線を巡らし、おそらくヴィンセントを探している。

 我知らず忍び足で近づいていたエリオットは、ガイウスから「あくまで自然にだぞ」と目を向けられ、苦笑いを返した。

「あの、マルガリータ……さん?」

 背中から声を掛けると、マルガリータはヴィンセントだと思ったのか、ぐるんと素早い動作で振り返る。ぶわっと体動によって生まれた風に体を押され、エリオットは思いがけず足を引いた。

「ひいっ!?」

「……あら、あなた達なんなのよお」

 ヴィンセントでないことがわかると、マルガリータは露骨に態度を変えた。

「今から私、ここで人を待つの。あなた達はお邪魔虫だからどこかに行って下さらないかしら」

 言葉こそ丁寧だが、その細い瞳にはありありと険が盛られている。

 気後れするエリオットだったが、その隣からガイウスがマルガリータに告げた。

「悪いが、ここにヴィンセント先輩は来ない」

「……なんですってえ……?」

 ざわりと木々が揺れ、木の葉が舞い落ちる。虫の鳴き声が止まり、花壇奥の池に泳ぐ魚は全て水底にへばりついた。遠く離れた馬舎からは落ち着かない鳴き声がグラウンドにこだまし、鳥達はトリスタ方面へと群れをなして飛び去っていく。

 ガイウスは感じた。風が怯えている。 

「教えて欲しいわあ。どうしてあなた達はヴィンセント様がここに来ないと知っているのかしら?」

 周囲の異様を訝しげに思いながらも、ガイウスは用意していた答えを口にする。

「実は俺たちはヴィンセント先輩と仲がよくてな。今日の事は前もって聞いていたのだ」

「あなた達がヴィンセント様と……?」

 食いついた。

「しかしあの人も忙しい身だ。急なことでどうしても来られないので、代理で俺達が来たのだ」

 ここからが本題だ。ガイウスは一呼吸置いてから続ける。

「今日はヴィンセント先輩に何かを手渡すつもりだったのだろう。クッキーのような何かを。先輩から言伝で俺達はそれを受け取りに来た。後日、ヴィンセント先輩に責任を持って渡しておこう」

 クッキーのような何かは失言だ。

 かなり苦しく、詰められたら言い訳し辛い部分もあるが、『ヴィンセントが言った』というのは効果的に働くはずだ。若干心が痛まないでもないが、彼の安全確保が第一である。それに成分調査の上で、問題がなければヴィンセントにはクッキーを渡す手はずになっているから、まるきりの嘘というわけでもない。

「そう、ヴィンセント様が……」

 うつむき加減のマルガリータ。やはり乙女心には思う所もあるのだろう。

「ここは冷えるからさ、一度校舎の中に戻ろうよ。クッキーは落ち着いてからでも――」

 エリオットは優しげに言い、本校舎へと歩き出す。

 ――ゴキリ。

 そんな鈍い音が耳に届いたのは、ちょうど扉に手を掛けた時だった。 

 何とはなしに後ろを振り返る。

「え?」

 否応なく視界に映ったのは、ガイウスの長身が宙を舞う姿だった。

 例えばそれは、癇癪を起こした少女が手にしていた人形を投げ捨てたような、そんなあまりにも仕様がなく、単純で、そして物悲しい光景だった。

 どさりと音を立て、彼はそばの植え込みに落下した。身じろぎさえなく、指先の一つすら動かないガイウスは完全に沈黙している。

「ガ、ガイウ……!」

 名を呼びかけて、はっと言葉を詰まらせる。マルガリータの目がエリオットに注がれていた。

「ヴィンセント様がそんなこと言うわけないでしょお」

 太く、底暗い声。

 やられる。その一言が頭蓋を反響し、エリオットは素早く身を返して扉を開いた。

 勢いよく校舎内の廊下に踏み出しながら《ARCUS》を取り出す。

 プラン1は失敗だ。撤退と連絡をしなくては。

『こちらユーシスだ。エリオットどうした?』

 すぐに男子第二班、ユーシスが通信に応答する。

「ユーシス! 聞いて――ぐっ?」

 背後から襟元を掴まれ、力任せに持ち上げられる。エリオットが小柄とは言え、片手で男子一人を持ち上げる膂力はもはや女子のそれではない。

 脳に酸素が回らず、視界が急速に狭まってきた。薄れていく意識の中、何とかマルガリータの姿を捉える。彼女はもう片方の手を拳の形に握り、腰だめに引いていた。

 死神が鎌を振り上げた。まもなく終焉が訪れる。幾何の猶予もない。自分は最後に何を言うべきだ?

 仲間に危険を伝え、かつマルガリータを誘導し、加えて自分達の身に起きた惨事を伝えられる一言。

「屋上のヴィンセント先輩を守って!」

 その言葉を弾き出したと同時、背から胸にかけてズンと重たい衝撃が走る。目に映る全てが一瞬、二重にぶれた。

「うっ」

 これでいい。守ってと言えばマルガリータが攻撃的手段に出たことと、自分達が敗れたことは伝わる。マルガリータにも屋上という認識を持たせた上、屋上に直結する玄関側の階段ではなく、二階廊下を経由しなくてはならない方の階段近くまでも誘導できている。

 ガイウス同様にぶんと投げ捨てられるエリオット。

 壁面が迫ってくる。痛みは覚悟していたが、幸か不幸か壁にぶつかる前に彼の意識は無くなっていた。

 ――男子第一班、消沈。プラン1、失敗。

 

 

「エリオットは何て言ってたんだ?」

「どうやらプラン1は失敗したらしいな」

 二階、特別教室側の廊下。その中程にユーシスとマキアスが待ち構えている。

 エリオットが上手く誘導したおかげで、当初の予定通りのルートをマルガリータは通って来るらしい。逆にこの廊下を突破されれば、屋上に繋がる正面階段まで進まれてしまう。

「しかし、ここまでやる必要があるか?」

「念には念をだ」

 二人の背後にはピラミッド宜しく、天井近くまで積み上げられた机のバリケードが張られていた。

 自分達の退路を塞ぐ代わりに、先への道も与えない。

「一般生徒に多大な迷惑を与えているが……」

「あとでお前が関係各所に謝ればいい。副委員長らしくな」

「か、勝手な事を! そもそも君の発案だろう」

「乗ったのはお前だ」

 いつもの小競り合いに発展しかけた時、ズシンと地鳴りにも似た足音が響いた。階段を上がってきているらしいが、自分達が相手取るのは大型魔獣だったのだろうか。

「来たみたいだな。えーと、確かガリガリータだったか」

「お前は人の名前も覚えられんのか。マルマリータだ」

「それも違うような気が……」

 足音が近づき、階段からマルガリータが現れる。その姿を見たユーシスは不敵な笑みをマキアスに投げ掛けた。

「見ろ。やはりマルマリータだ」

「いやまあ、確かに丸まってはいるが」

 ユーシスはマルガリータに言う。

「止まれ。お前の持つクッキーを引き渡してもらおうか」

 交渉と言うよりは通告のような口調でマルガリータを見据えるが、彼女は困ったような表情を浮かべて「……そういうことだったのお」と灼熱の吐息を吐き出した。

「さっきの二人と言い、あなた達も私の事が好きなのねえ。だから手作りのクッキーを欲しがって……あんな嘘まで付いて。美しさは罪だわあ。グフッ」

 マルガリータを取り巻く熱がぐいぐい上昇する一方、ユーシスとマキアスの周囲の温度は急激に冷え込んでいく。もしここが海なら、あまりの寒暖差に大型の台風が発生していたかもしれない。

「な、何を盛大に勘違いしている」

「でもダメよ。私の愛はただ一人、あのお方のもの。ヴィンセント様を屋上に監禁しているのね。私が必ずお救いするわあ」

 エリオットは『屋上のヴィンセントを守って』と言ったはずだが、どう変換すればそのような解釈に至るのか。説得に失敗した先の二人の結果を納得し、ユーシスはマキアスを一瞥した。

「今からプラン2だ。制圧の上でクッキーを奪取する。武器がなくても俺は問題ない。お前は下がっているがいい」

「ふざけないでもらおうか。実技でも白兵戦は習っている。僕を甘く見ない方がいいぞ」

 互いに余裕の笑みを見せた。

「ふっ、いいだろう。足は引っ張ってくれるなよ」

「君の方こそ!」

 強く地を蹴り、二人はマルガリータに迫る。

 彼女はにたりと口許を歪めた。

「情熱的ねえ。グフフッ」

 ――でもダメよ。付け加えられた一言が耳に届いた時、すでにマキアスの眼鏡は砕け散っていた。

 

 リィンの《ARCUS》に通信が入る。

『リィン……聞こえるか。こちらユーシスだ』

 落ち着いた声音。リィンは作戦終了の連絡だと思った。

「ユーシスか。遅かったから心配したぞ」

 続けられた言葉は予想と正反対だった。

『俺はここまでだ。後の事は任せる』

「何を言って……?」

 いや、そうだ。ユーシスから連絡が来るということは、エリオット達、第一班は失敗したということだ。説得はできず、さらには制圧も出来なかったということなのか。

「一体どうしたんだ? マキアスは!?」

 一瞬の沈黙の後、ユーシスは喉を詰まらせた。

『あいつはやられた。まるで眼鏡が飴細工のように粉砕されたのだ。もう助かるまい』

「うそだろ……マキアスが」

『聞け、リィン。俺の背後にはバリケードがある。つまり屋上に行くためには回り道をしなければならん。時間は稼げるはずだ。態勢を整え直せ』

「わかった。ユーシスはそこから早く離脱してくれ」

 ユーシスは無言だった。

「ユーシス?」

『ふっ』

 少しの沈黙のあと、彼は笑った。どこか自嘲の響きがあった。

『言っただろう。背後にはバリケード。正面にはマルマリータ。退路などない。しかし一矢は報いるつもりだ』

 嫌な予感がした。まるで敗北を悟った兵士が、爆弾を体に巻き付けて特攻するかのような、諦観と悲壮の行きつく先。

 一瞬恥ずかしい名前間違いを聞いた気がしたが、そんなことはもはや些事だ。

 リィンは通話口に向かって叫ぶ。

「馬鹿な真似はよせ!」

『頼みがある。聞いてくれるか』

「なんだ……なんだよ」

『もし兄上に会うことがあったら伝えて欲しい。貴方の弟は、貴族の誇りを胸に……最後まで戦ったと』

「そんなことは直接自分で言え!」

 無理な相談だ、と今度こそユーシスは自嘲に満ちた声を絞り出した。

『さらばだ、リィン……――っな、なんだと!?』

 落ち着いた声音が、驚愕のそれへと一変した。

「ユーシス、おい、どうした!?」

『ば、馬鹿な! 俺の後ろにはバリケードもあるのだぞ!? やめろマルマリ――ぐあああああ!』

 悲痛な叫び声に混じって、大量の何かが崩れ落ちるけたたましい音が響いてくる。

 耳障りなノイズ音が神経にも障り、通信が切れた《ARCUS》を手にしたまま、リィンは肩を脱力させた。

 ――男子第二班、撃沈。プラン2、失敗。

 

 

「クロウ、戦闘準備だ。防衛ラインが突破された」

「まじかよ。てことはプラン3か。できればやりたくはなかったぜ」

 説得、奪取、制圧が不可能だった場合にのみ発動される最後の作戦。成分調査や事実確認は放棄して目標を破壊する、すなわち殲滅作戦。

「で、一班と二班の連中は無事なのかよ?」

「……わからない。ただマキアスはもう……」

「そうか」

 クロウは感情を押し殺した声音で「からかい甲斐のあるやつだった」と空を見上げた。

 青い空にマキアスの顔がチェス盤とセットで映る。眼鏡がきらりと輝いていた。

「本気で行くぜ。銃はねえが、俺も白兵戦はそれなりのつもりだ」

「ああ、俺も問題ない」

 二人が強く意志を固めた時、轟音と共に屋上の扉が吹き飛んだ。べこりとへこんだスチール製の扉は、クロウとリィンの間を凄まじい勢いで抜けていき、後ろのフェンスに衝突した。

「来たか!」

「なんつー登場の仕方だよ」

「ヴィンセント様はどこなのお!」

 屋上に足を踏み入れるなりマルガリータは叫び、びりびりと空気を震わせた。

「悪いな。愛しのヴィンセントサマはここにはいねえ。探すなら好きにすればいいけどよ、クッキーだけは置いて行ってもらうぜ」

「最後通告だ。大人しくクッキーを置いて行ってくれ」

 それぞれに言うと、マルガリータはぶはあと空気の塊を吐き出し、まだ距離のあった二人の前髪を強く揺らした。

「もう、思わずため息が出ちゃうわ」

「今のため息だったのか」

「俺は新手の威嚇方法かと思ったぜ」

 マルガリータはさらに一歩踏み出した。

「ほんと悪質なファンには困るわあ、男の嫉妬は見苦しくてよお?」

 恐らくは本気で言っているマルガリータを見て、二人は素早く戦闘態勢に入った。この後の展開が容易に予測できたからだ。

「あなた達を懲らしめてヴィンセント様をお救いしないとねえ」

 マルガリータは半足を引き、腰を落とした。

 リィンも無手で構え、クロウも拳を作る。

 双方共に仕掛けるタイミングを図る。切迫する緊張感。二人分の気当たりを受けても、マルガリータが臆する様子は微塵にもない。

 強い風が枯れ葉の一枚を屋上に運んできた。たゆたう葉が、一瞬だけ相対する直線上を通る。

 瞬間、マルガリータが地を蹴る。肉薄する肉塊が枯れ葉を吹き散らした。

 速い。リィンは刹那の内に判断する。後の先を取る以外にない。

 初撃をかわす為、足に力を入れた時、視界の中のマルガリータが急に大きくなった気がして、続いてその姿が消えた。

「え?」

 直後、景色の上下が反転する。追いつかない思考の端に、「バカ野郎! 何やってんだ」とクロウの怒声が飛んできた。声のした方に無意識に目が向く。クロウはすぐに視界に入ったが、おかしい。自分は上に目を向けたはずなのに、なぜクロウが下に見える。

 はねられた。

 ようやく現状を理解し、その一語が身に起きた全てを表した。

 猛るケルディック牛にはねられる? そんな生温いものではない。最高速度のアイゼングラーフと正面衝突したような、慈悲の欠片もない鋼の一撃。

「ったく、本気出すしかねえか……!」

 クロウの焦れた声が耳朶を打つ。

 一秒後。

 スローモーションで流れるリィンの視界の中に、同じく宙を舞うクロウの姿があった。

 すでに語る口も持たず、その暇もない二人は何度もきりもみ回転をしながら、無機質なコンクリートの地面に顔面から墜落した。

 鈍い衝撃が首まで届き、二人の意識はそろって闇の淵に落ちていった。

 ――男子第三班、轟沈。プラン3、失敗。

 

 

 今日の《ARCUS》はまともな連絡をよこさない。

 プラン2まで失敗したという報告はリィンから入っていたが、アリサは妙に納得していた。

 戦車相手に素手では立ち向かえないのだから。

 残るはプラン3。殲滅作戦だと聞いているが、逆に殲滅されていそうな気がしてならない。

「無事ならいいんだけどね」

 不安をかき消すように口を開いた時、手元の《ARCUS》に通信が入る。リィンからだ。

「こちらアリサよ。そっちはどう? グラウンド側は異常なしよ」

『……そう、グラウンドなのねえ』

 低く響いた野太い声に、ぞくりと肌が粟立った。思わず《ARCUS》を耳元から離し、屋上を見上げる。

 屋上の端に誰かが立っている。見覚えのあるずんぐりとした、巨大な酒樽を思わせるシルエット。その手に持っているのは恐らくリィンの《ARCUS》だ。

 アリサは自分の迂闊さを後悔した。《ARCUS》は試験運用も兼ねた特注品だ。その特性から個々に同期し、持ち主以外では使用できないようになっている。

 特性――すなわち戦術リンク。Ⅶ組同士であっても、例えばラウラの《ARCUS》をアリサが手にしても、他の誰ともリンクは結べない。だがオーブメント本来の機能として、持ち主以外でも使用しようと思えばできる機能もある。

 それが導力通信だ。盲点だった。さすがに傍受してくるとは考えないが、直接通信してくるなど想定外だ。

 せめて相手の声を先に聞くべきだった。

 後悔は遅きに失している。マルガリータは手にしていた《ARCUS》を後ろに放り投げた。アリサの音声口から、ガシャンとそれが落ちた音がノイズに混じって聞こえてくる。

「全員、戦闘態勢に入って!」

 アリサの号令で、彼女の背後に控えていた女子メンバーが一斉に武器を取り出す。

 ラウラが大剣を構え、エマが魔導杖を掲げ、フィーが双銃剣を光らせ、ミリアムの傍らで見えない何かが駆動音を上げた。

 《ARCUS》で通信してきたのは確かに想定外だったが、この状況は想定内だ。

 導力弓を手に、アリサは鋭い声を発した。

「プラン4開始!」

 

 

 ~後編に続く~




最後までお付き合い頂きありがとうございます。今回も前後編に分けての更新となりました。
はい。バトル展開と言っておきながら、戦闘にすらならず男子達は瞬殺されました。女子達の奮闘にご期待下さい。
余談なのですが、何か話を描くときにはテーマ的な曲を流しながら書いていまして、例えばラウラならレグラムの曲、アリサならルーレ、みたいな。
ちなみに今回のテーマ曲は閃のBGMではなく『IN MY DREAM』というちょっと昔のアニメのオープニング曲です。
今回の話にピッタリの曲なので知らない方は、ぜひ一度聞いて見て下さい。

それでは次回後編もお楽しみにして頂けたら幸いです。

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