ハイスクールD×D 無限の守護者   作:宇佐木時麻

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説明回乙。

そして未だイッセーのキャラが定まらない。


悪魔

 翌日の放課後。教室の窓際にある机に頬杖を付けながら、兵藤一誠はぼんやりと黄昏の夕焼けを眺めていた。一人黄昏ている彼の元に、友人である松田と元浜が下校するために鞄を背負いながら声を掛ける。

 

「おいイッセー、なにしてんだ? 授業を終わったことだしとっとと帰ろうぜ」

 

「そうそう。久しぶりにゲーセン寄って行こうや。この元浜のゲームタクティクスを見せてやるよ!」

 

「あー……悪い。今日は用事あってさ。人待ってるんだ。悪いけど今日は一緒に帰れないわ」

 

 昨日の夕暮れ。黒い翼の男に襲われリアス・グレモリーに救われた後、彼女は『今から説明してもいいけど、今から話し出したら遅くなるから詳しい話は明日話すわ。あなたも落ち着く時間が必要だろうし、明日の放課後に使いを出すから、また明日逢いましょう』と、一方的に告げて去っていった。

 

 おかげで、気になることが山ほど在ったため碌に睡眠も取れなかった。本日の授業など上の空。執るべきノートが空白で白紙であるため、あとで信貴にノート写させて貰わないとなーと、ぼんやりと思う。

 

そんな腑抜けたイッセーに対し、松田と元浜は互いに顔を見合わせた後、やれやれと嘆息した。

 

「何だよ、おまえも用事なのかよ。信貴も今日は用事があるから先に帰るって言ってたし、ホント似た兄弟だよなおまえら」

 

「うん……? 信貴はもう帰ったのか?」

 

「ああ。俺らが帰る支度をしている時には既に荷物持って教室から出ていってたな。あれは神技だったぜ……!」

 

「つーか、用事って何だろうな? ……ハッ! ま、まさか昨日の娘とデートとか!? そういやあの後有耶無耶になって詳しい話を聞きそびれてた!」

 

「何ぃッ!? もしそれが本当だとしたら、とんでもないスクープだぞ!? あの堅物が彼女作ったなんで一大事じゃないか!」

 

 騒ぎ立てる松田と元浜の会話を聞き流しながら、一誠はふと今朝の信貴の様子を思い出す。普段なら何か用事がある時は朝に言ってくるはずなのだが、今朝信貴は何も言わなかった。用事事を隠されたことなど今回が初めてだった。いや、もしかしたら今朝の放心状態だった一誠のことを思って何も言わなかったかもしれないが。

 

 どちらにせよ、所詮憶測に過ぎない。とりあえずはこちらの問題を片付ける方が先決だろう。

 

「――――や、どうも。待たせちゃったかな?」

 

 現れたのは金髪の好青年。同級生であり、この学園の生徒ならば誰でも知っている学園のアイドル的存在、木場祐斗(きばゆうと)。本日もにこやかな笑みを浮かべているが、それが詐欺師の類を連想させる笑みではなく本当に微笑んでいるように映るのは彼自身の人柄ゆえだろう。

 

「おまえが、先輩の使いってコトでいいのか?」

 

「うん。リアス・グレモリー先輩から話は聞いてるよね?」

 

「……まあ、使いを送るって事だけはな」

 

 詳しい話は一切聞かされていないけど、と木場に聞こえるギリギリの音量で呟く。彼は微笑みを僅かに苦笑に変えたが、それでも笑顔が似合うことには変わりはなかった。改めてイケメンって凄ぇなと思う一誠であった。

 

「えっと、じゃあ案内するよ。ついてきて」

 

「了―解っと」

 

 木場に案内され、一誠もその後を続く。教室では松田と元浜がまだ何やら騒いでいるがそんなものはスルー。何やら視線が集まってきているので、出来れば同類とは思われたくない。

 

「えっと……放っておいていいのかい?」

 

「良いんだって。あんなの日常茶飯事だし」

 

「へ、へぇー……」

 

 何やら木場が若干引いている気がするが、おそらく気のせいだろう。

 

 そうして木場に案内され連れてこられたのは、校舎の裏手にある現在使用されていない旧校舎だった。外観は古い木造建築物だが、暫く誰も使用していないはずなのに綺麗にされており窓も一枚とも割れていない。その不気味さゆえか、校内では学園七不思議の一つに数えられるほどである。

 

 それはさておき、こんな場所にいったい何の用だろうか。ここは現在使用されていない校舎だから、何もないと思うのだが……

 

「ここに部長がいるんだ」

 

 悩んでいる一誠に木場が軽く告げる。その言葉に一誠は首を捻らせた。

 

「部長……? リアス先輩じゃないのか?」

 

「ん? ああ、言ってなかったね。ここは『オカルト研究部』が利用している校舎で、リアス・グレモリー先輩はその部活の部長なんだよ」

 

「へえ……というか、ここ利用してもいい所なのか? 確か現在使用されてない校舎なんだろ?」

 

「心配しなくても学園の許可は貰ってるよ」

 

 などと他愛もない会話をしつつ、脚を進めていく。木造校舎の二階に上がり、一番奥の部屋へと向かう。その途中周囲を観察していたが、現在利用されていないのにも関わらず校内は綺麗に掃除されていた。まめに掃除しているのだろうか?

 

 そして、木場は校内の一番奥の部屋の前に立ち止まる。扉にはプレートに『オカルト研究部』と記されていた。中に入る木場に連れられ、一誠も入っていく。

 

「――――ぅわッ」

 

 咄嗟に漏れた呟きは、室内を見た感想をぐつぐつに煮込んだシチューのように混沌な気持ちを一つにまとめた呟きだった。

 

 部屋にはいたるところに意味不明の文字が書き込まれており、床、壁、天井と万遍なく刻まれている。更に一番目を引くのは部屋の中央に刻み込まれた円陣。人一人分入れるほどの巨大な円陣は、怪しさを通り越してもはや呆れるしかない。

 

 何だろうか、この、素人が一生懸命オカルト研究部っぽい内装を考えました的な部屋は。もはやここでオカルト喫茶店でも開いた方がいい気がする。オカルト研究部だからといって部屋までアレンジする必要はないだろうに。それともここで深夜悪魔召喚の儀式でも行っているのだろうか。サバト的な。

 

 部屋の内装に一誠が引いていると、ふとソファに腰掛けている少女が視界に入る。白い髪に小柄な体格。確か、一年生の搭城小猫(とうじょうこねこ)と呼ばれる我が校のマスコットアイドル的存在だったはず。

 

 彼女もここの部員だったのかーと、ぼんやり考えていると、

 

「じゃあ、少しの間ここで待ってて」

 

 そう言いながら木場がソファに座るよう促してきた。流石にいきなり初対面の女の子の横に座れるはずがなく、反対の机越しに腰掛ける。当然、反対側にいる後輩と眼が合った。とりあえず微妙な雰囲気になる前に自己紹介をしておこう。

 

「えっと、兵藤一誠だ。よろしく」

 

「……搭城小猫です」

 

 ポツリと呟くような声で自己紹介された後、搭城はそのまま無言で持っていた羊羹を食べ始める。

 

 ……暫し無言の間が流れる。木場は壁にもたれたままで、搭城は黙々と羊羹を食べ続けている。一誠は今か今かとソワソワしながらリアスが来るのを待っていた。

 

 とりあえず、やることがないので羊羹を食べる搭城を観察することにする。黙々と食べ続けるその姿はまるで名前通り小猫のようで、可愛らしいと思う。この少女が学園のマスコットになるのも頷ける。

 

 そういえば最近家で信貴に懐いている黒猫を見てないなーとぼんやり考えていると、ふと搭城が羊羹を食べていた手が止まり、視線が上がる。当然、今まで見つめていた一誠と視線が交じり、見つめ合うこととなった。

 

「…………」

 

「…………」

 

 暫し無言。モグモグと口だけ動いていた搭城の口が止まり、半目で一誠を見つめながら告げる。

 

「……あげませんよ」

 

「いや、いらないから」

 

 如何やら見られていたことから羊羹が欲しいと思われていたらしい。搭城はその返答を聞くと安心したのか、再び羊羹を口に運んでいく。……若干表情が緩んだように見えるのは気のせいだろうか?

 

「……やれやれ」

 

 一誠は嘆息して約束の人物が来るのを待つ。すると、

 

「――――ごめんなさい。少しホームルームが長引いて遅くなったわ」

 

「あらあら。どうやら私達が最後のようですね、部長」

 

 そんな声と共に扉が開き、二人の女子生徒が入って来る。片や黒髪ポニーテールの大和撫子風の三年先輩、姫島朱乃(ひめじまあけの)

 

 そしてもう片のリアス・グレモリーと併せて「二大お姉さま」と称される我が校のアイドル的存在である。……というか、ここの部員やけにアイドル的存在が多い気がする。

 

「ごめんなさい。待たせてしまったかしら?」

 

「いえ、俺もついさっき連れて来られたところです」

 

 自分の存在に場違いを感じながら一誠は答える。リアスはそれに柔らかい微笑みを浮かべながら、改めて荘厳な雰囲気で彼に告げる。

 

「これで全員揃ったわね。さて、兵藤一誠くん」

 

「はい」

 

「私たちオカルト研究部はあなたを歓迎するわ――――悪魔としてね」

 

「………………はい?」

 

 一誠が思わず漏らした戸惑いは、仕方がないことだろう。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 曰く、この世には悪魔と呼ばれる者達がいる。そればかりか、天使、堕天使といった者達まで実在する。彼等は互いに敵対し、三大勢力となって遥か太古から戦争を繰り広げてきた。

 

 悪魔は人間と契約して代価を貰い、

 

 堕天使は人間を操り、

 

 天使は人間を従え、

 

 それぞれが人間の力を借りて、力を蓄えてきた。いずれ迎えるDies irae(怒りの日)に備えて――――

 

「……話をまとめると、そんな感じですかね?」

 

「ええ、大体合ってるわ」

 

 リアスから話された内容を噛み砕き解かりやすくまとめてから、一誠は一息つくために先ほど注がれたお茶を一口飲んだ。

 

「あ、これ旨い」

 

「あらあら。ありがとうございます」

 

 先ほど注いでくれた姫島先輩がにこやかに笑いながら一誠に微笑む。それに会釈で返すと、一誠は再びリアスに向かい直った。

 

「正直に言えば、そんな荒唐無稽な話を信じろっていうのは無理な話です」

 

「まあそうだと思うわ」

 

 リアスはそう言いながら、余裕そうな雰囲気で注がれた紅茶を口に含んでいる。口ではそう言いながらも、確信しているのだろう。

 

「…………ですが――――」

 

 それを嘘だと断言するには、一誠はあまりにも知り過ぎた。昨日の翼の生えた男。光輝く槍。そして、

 

「一つ、これだけは正直に答えて下さい。……二日前のあの日、あれ(、、)は現実に起こった出来事なんですか?」

 

 あの雨の降る夜。夢で殺された日。そして――――涙を流しながら懺悔する、黒い翼の生えた少女。

 

 もし、あれが現実だったとしたら。

 

「ええ。あれは本当に起きた出来事よ。あなたはあの日、堕天使に殺された」

 

「――――ッ! だ、だけど! 俺は今こうして生きてる! それにどうして俺が殺されなきゃいけないんだ!?」

 

理由が解らない。殺害という行為は理由が必要だ。無差別殺人というものも在るが、少なくともそんな事件はこの付近で起きたなどニュースで訊いた覚えがない。最初の犠牲者なのかもしれないが。

 

 殺害とはかなりの労力を使う。何より、人を殺すという事は相当な殺意を抱いてなければ為せない行為だ。何の関係もない人物を殺せるほど、人は丈夫ではない。殺人には理由がいる。

 

 だからこそ、一誠は自分が殺された理由が解らなかった。それをリアスは冷徹に真実を告げる。

 

「あなたが殺されたのは、おそらく神器(セイクリッド・ギア)を身に宿していたからよ」

 

神器(セイクリッド・ギア)……?」

 

 訊き慣れない単語に一誠は首を傾げる。それを木場が補足した。

 

神器(セイクリッド・ギア)とは、特定の人物の身に宿る、規格外の力。それは稀に僕たち悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器(セイクリッド・ギア)が存在するんだよ」

 

「そんなものが……俺に……?」

 

「あなたの持つ神器(セイクリッド・ギア)を危険視した堕天使に殺された。それが二日前に起きた事件の真相よ」

 

「でも……なら、俺はどうして生きてるんだ?」

 

 もしリアスの言うことが正しいのならば、一誠がここで生きていることに辻褄が合わなくなる。あの夢が現実ならば兵藤一誠は間違いない死亡しているはず。ならば、なぜ?

 

「瀕死のなか、あなたが私を呼んだのよ」

 

 戸惑う一誠にリアスは優しく微笑む。

 

「瀕死の最中、あなたは生きたいと強く願った。触媒もない状態で呼び出すほど強く、強く。人が祈る領域を遥かに凌駕してあなたは生きたいと願った。だからでしょうね。普段なら眷属の朱野たちが呼ばれるはずなんだけど、その時は私が呼ばれた」

 

 それでふと思い出す。あの時見えた紅い髪。あれがもし夢ではないとしたら――――

 

「召喚された私が見たのは、槍で腹部を貫通させられ瀕死の重症を負ったあなただった。それを見て神器(セイクリッド・ギア)所持者で堕天使に殺されたのだと察したわ。でも、あなたは生きようとしていた。たとえ一秒後に死ぬとしても、あなたは必死に死の運命に抗おうとしていた。――――だから、私はあなたに選択させた」

 

「選、択……?」

 

 リアスの言葉。それを訊いて、ふと思い出す。夢で告げられた言葉。それは、

 

 

 

『――――あなたが選択するのよ。ここで死ぬか、人間をやめるか』

 

 

 

「そして、あなたは選択した。あなたは――――」

 

 彼女が言い終わる前に、背中に違和感を覚える。何かが膨れ上がってくる。本来ならば身体に存在しない骨格。一誠はそれが何なのか判断する間もなく、外へ飛び出してきた。

 

「あなたは人をやめ、悪魔として生きることを選択した。あなたは私の、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったの。私の下僕の転生悪魔として」

 

 背中から飛び出していたのは、黒い翼。堕天使のような翼ではなく、蝙蝠のような翼だった。周りを見れば、一誠だけでなく他の部員達にも翼が生えていた。

 

「改めて紹介するわ。祐斗」

 

「僕は木場祐斗。兵藤一誠くんと同じ二年生で、悪魔だよ。これから宜しくね」

 

 リアスに促され、木場がにこやかな笑顔と共に挨拶してくる。

 

「……一年生。……搭城小猫です。……よろしくお願いします。……悪魔です」

 

いつものように半目で会釈する搭城。

 

「三年生、姫島朱乃ですわ。研究部副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。私、これでも悪魔ですわ。うふふ」

 

 礼儀正しく姫島が深く頭を下げる。

 

 そして、最後の一人。

 

「私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。ところで、あなたのことはイッセーって呼んでいい?」

 

「えっ、あ、はい」

 

「そう、ありがとう」

 

 彼女は微笑み、優しい笑顔をこちらに向けて、告げた。

 

 

 

「――――『オカルト研究部』へようこそ、イッセー。私たちはあなたを歓迎するわ」

 

 

 

 




こうゆう説明回が一番面倒くさい。さて、次回は聖女の出番かな?

気が早いけどライザーをイケメンにしようと思っている。正確は原作通りだけど、精神力が馬鹿高いとか。
「おまえらは、解っている己の弱点を放置するか? 死んで精神力が減るならば、死に続けて克服すればいいだけの話だろう」
的な。数万回死を経験してるとか。

脳内設定の曹操が気づいたら五段階変身してた。どういうことだ……?

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