ハイスクールD×D 無限の守護者   作:宇佐木時麻

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あかん、このキャラ口調滅茶苦茶書きにくい……! というか誰だおまえ!?


黒猫

 ふと、彼女は眼を覚ました。沈んでいた意識が睡眠という海から浮上する。しばらく身体を酷使していたためか、目覚めの微睡みが凄く心地良い。出来るのならば、ずっとこの微睡みに浸かっていたいほどだ。

 

 しかし、眼を覚まさないと。まだ微睡んでいたい本能とは反対に、理性が猛烈なモーニングコールを掛けてくる。逃亡生活が長かったためか、睡眠は最低限の時間にしなければならないと身体が覚えてしまっている。

 

 身体はまだ疲労が濃く残っており、瞼を開けるのが精一杯だ。それでも現状を把握するために、眠気を堪えて死に物狂いで瞼を開いた。

 

 そこは、一室の部屋だった。

 

「…………」

 

 彼女は見たことのない光景に一瞬目を見開くが、すぐさま思考を切り替えて周囲を警戒する。彼女はお尋ね者。見知らぬ場所にいたならば、それは親切よりも警戒を優先すべきだ。少しでも情報を得るために、周囲を見渡す。

 

 部屋というものは、住処の人物の深層心理を微かだが表している。優しい者なら温かさを、狂った者なら狂気を。具体的に言えば狂科学者(マッドサイエンティスト)ならば己の研究している証に薬品や血を部屋に吸わせる。自分の努力を己に知らしめるように。

 

 ならば、この部屋の持ち主はどういった人物か。部屋にはほとんどの物がなく、娯楽品などは存在せず必要最低限の物しか揃っていない。一見すると心が虚無のような印象を受けるが、そうではない。

 

 おそらく、この部屋――此処は、この所持者にとって大切な場所なのだろう。守りたい、巻き込みたくない、傷つけたくない。そういった感情が見え隠れしている。此処にはなるべくそういったものを持ち込みたくないのだろう。

 

 それが理解できるからこそ――――この部屋の主が、彼女と同じ裏側(、、)の住人だということに気が付いた。

 

 僅かに匂う血の匂い。それも日常で流す血の量ではない。それに、気に長けている彼女だからこそ分かる。この部屋には僅かに戦気の気が残っている。戦いを知らなければ放てない気。それを感じたからこそ、彼女は自分が敵の手に捕まったのだと理解した。

 

「…………ッ!」

 

 理解して、納得して。やはり恐怖が背筋を震わせる。分かっているつもりだった。あの日、大切な家族を守るために主を裏切ってからこうなる日が来ることは覚悟しているつもりだった。

 

 しかし、それでもやはり恐怖心は消えない。猫魈という種族は妖怪の中でも珍しい種族だ。だからこそ、こうして生け捕りにされていることはそういうところに商品として売られるかもしれない。いや、まだそういうことならば逃亡できるチャンスがあるから良い。もしかすれば、死にたくても死ねなくなるかもしれない。

 

 彼女は自身の肉体に自信がある。並みの女性には負けないプロモーションだと自負している。だからこそ、下衆な輩にそういう行為をされるかもしれない。肉体も精神も無限に陵辱されて、魂が崩壊するかもしれない。悪魔とは欲望に忠実な輩が多い。ゆえに、それが否定できなかった。

 

 だからこそ恐ろしい。先を考えるのが、未来を予想するのが、どう想像しても悪い方向にしか浮かばない。当然だろう、この状況は彼女にとって“詰み”なのだから。

 

 そして。

 

「ったく、オーフィスのヤツ、流石に六時間ぶっ続けで説教とか普通有り得ないだろ。おかげで徹夜に正座六時間で脚の感覚がないぞ。……ん? ああ、眼が覚めたか」

 

「…………!」

 

 ふと扉が開き、黒髪の少年が入ってきた。彼女と近い年齢の少年。だが一目で分かる、この彼がこの部屋の主だと。そして、彼女を捕まえてここに連れてきた張本人だということも。

 

 彼からすれば現在の彼女は格好の獲物だっただろう。彼女はシヌイというはぐれ悪魔に捕まり、その際に力のほとんどを根こそぎ奪われていた。だからこそ、今の彼女は少しでも力を早く取り戻すために黒猫の状態でしかいられなかった。もし人型ならば、何とか逃げる策があったかもしれないというのに。

 

 ほとんど身動きが取れないほど疲労している身体が心底憎い。抗うことすらままならない己自身に、悔しくて涙が溢れそうだった。しかし、それらの感情を押し殺して彼女は少年を睨む。せめて、例え何があっても心までは穢させないと決意を見せ付けるようにして。

 

「しかし汚れてるな……とりあえず風呂にでも入るか」

 

 ひょいと、首根っこを掴まれて、彼の肩に乗せられた。

 

「…………?」

 

 ワケが、分からない。彼女は茫然とすぐ傍の少年の横顔を見つめた。乱暴もせず、何か尋ねてくるわけでもなく、普通に無防備な肩に乗せて、あげく風呂に入れる? いったい彼は何を企んでいる?

 

 ふと、ある考えが浮かんだ。それはこの少年が何も知らないのではないのかという儚い考え。だが、そんな幻想は有り得ないと自ら否定した。この少年は間違いなく此方側(、、、)の住人だ。それに、微かに匂う香りが彼女をここに連れてきた者の匂いと一致している。しかし、だからこそ疑問が湧く。

 

 とりあえず、ほとんど動かせない身体を酷使してパンチを頬に繰り出す。弱弱しい、身体が猫のせいで全然気も込められない威力のない猫パンチ。しかし、彼女の正体を知る者ならば敵意があるということで何らかのリアクションを見せるはずだ。

 

 しかし。

 

「ん? ああ、悪い。その姿勢辛かったか?」

 

 この少年は、何を勘違いしたのかそう言って優しく腕に抱きかかえる体勢に変更した。

 

 ……ますますワケが分からない。この少年は本当に彼女が何者なのか知らないのか? だが、そんなはずはない。だというのにそういう身振りを見せないから、彼女は戸惑うばかりだった。

 

 そして、気づいたら風呂に入れられていた。

 

 今思えば近い年頃の異性に身体を隅々まで洗われるなんて経験は初めてだった。しかもそれが気持ちいいのだから疲労とは関係なく彼に総てを委ねていた。もしいま彼女が人型だったならば、おそらく嘗てないほど顔を赤く染めていただろう。普段とは違う環境に、どうも調子が狂う。

 

 ……まあ、身体を洗われるのが余りに気持ちよ過ぎて意識がボーっとしていて、その時に万歳の姿勢にされて「……雌か」と言われた時には羞恥心で呪法・玉天崩(別名:金的)を食らわせてやろうかと本気で思ったが。

 

 閑話休題(それはさておき)。風呂からあがり、彼にタオルで優しく拭かれて彼女はソファに置かれていた。

 

「ちょっと待ってろ」

 

 彼はそう告げると、冷蔵庫の方へ向かっていく。おそらく飲み物を注ぎに行ったのだろう。リビングに一人ぽつんと残された彼女。戸惑いの連続で、何をどうすればいいのか分からない。もし仮に動けたとしても、きっと今のように借りてきた猫のように大人しくしていただろう。

 

 分からなくて、理解不能で、だけど何処か、居心地が良くて――――

 

 

 

「……猫魈?」

 

 

 

 その言葉と、その声の主を認識して――――彼女は、己の死を確信した。

 

「――――、――――ッ」

 

 声が出ない。それは疲労とは全く関係ない原初の感情。恐怖という暴力的衝動。おそらく仮に今動けたとしても、彼女は動こうとしなかっただろう。否、動くことができなかっただろう。

 

 思えば、気が使えなかったのは疲労だけが原因ではなかった。この場所に来てから何故か気が練ることが困難だった。初めは酷使したせいで操れないと思っていたが、実際は違った。

 

 この家には、力が満ちていた。それも純度の高い力そのもの。もし彼女が気の扱いに敏感でなければ気づけなかっただろう。あまりにも次元が違いすぎて、それに近い領域の者にしか気づけない。気が操れなかったのも、その力に阻害されて感覚が混乱させられていたからだ。

 

 その力の持ち主は――――

 

「…………」

 

 ふと、背後から持ち上げられる。抵抗することも出来ず、そのまま身体の向きを反対にさせられ、対面した。

 

 黒い髪にゴスロリ服。幼い容姿とは裏腹に、圧倒的な力を無意識に放っている少女。

 

 無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス――――神すらも凌駕する存在が、そこにいた。

 

「――――」

 

 何故、このような存在がこんなところに居る? 理解出来ない、理解不能。彼女とてSS級はぐれ悪魔と恐れられているが、これとは比べることすらおこがましい。対象にすることすら論外。たとえどれ程の強さを有していたとしても、これのまえでは総て塵となる。

 

「何故、ここに猫魈がいる? ……消す?」

 

 すっとオーフィスの目が細められる。彼女を持ち上げる腕に僅かに力が込められる。それだけで、彼女は自身の死が逃れられないものになったのだと直感した。

 

 これに逆らえる存在など無い。これは神すらも凌駕する存在。これが一度決めた決定には誰も逆らうことなど出来るはずがない。ゆえに、死は必然と化す。

 

 それを理解して、ああやっぱり死にたくないなと思って、

 

「――――こら、オーフィス。なにしてんだおまえ」

 

 ポカっと。冷蔵庫から戻ってきた少年がオーフィスの頭を叩いた。

 

「……シキ、痛い」

 

「嘘つけ。というか何物騒なこと言ってんだおまえは」

 

「…………」

 

 目前の光景に唖然する。あのオーフィスが、無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)が、神を凌駕する存在が、人間の少年に頭を叩かれている。これが少しでも力を籠めれば簡単に壊せる脆弱な存在と仲良くしている。その有り得ない光景に我を疑った。

 

「シキ。これ、ただの猫じゃない。猫魈という妖怪」

 

「――――」

 

 自分の正体を告げられて、はっと意識を取り戻す。もし彼が彼女と同じ裏の住人ならば、その意味に気づくはずだ。ましては、彼女をここに運んできた張本人ならなおさら。

 

 ――――だが。

 

「ああ、そいつがただの猫じゃないことぐらい最初から知ってる」

 

 そんなことは些細なことだというように、彼は平然と告げた。

 

「――――」

 

「……そう。ならいい」

 

 彼の放った言葉に茫然とする彼女。そんなことはお構いなしにオーフィスは納得すると、彼女をもといた場所に戻した。そして横のソファに腰かけ、当たり前のように少年から飲み物を受け取っていた。

 

 ……ワケが分からない。理解の範疇を超えている。この少年がなにを考えているのか彼女には皆目見当が付かない。彼女が危険な存在だと知っていて、なぜこんな真似をする?

 

 それが全く分からなくて……彼女は自分の前にミルクを注ぐ彼の顔をじっと見つめていた。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 月の綺麗な夜だった。寝静まった家の中。灯りも付けず、彼は縁側から月を見上げていた。そんな一人夜空を見上げる彼のところに、彼女はゆっくり近づいていく。

 

「……ん? どうした黒猫、おまえも眠れないのか?」

 

 ふと、彼は苦笑しながらこちらを向く。……自分の正体を気づいているはずなのに、そんな様子を見せず微笑む彼が本当に何を考えているのか分からなくて、

 

「……いったい、どういうつもりにゃ?」

 

 気が付けば、そう問いかけていた。その言葉に目を見開く彼。

 

「……驚いた。おまえ喋れんだな」

 

「喋れるまで回復したのはついさっきだけどね。それで、私をどうして助けたの? 私がどうゆう存在なのか、分からないワケじゃないでしょ?」

 

「……そうだな」

 

 嘘は許さないと、強い意志を以って彼を睨み付ける。それを受けて、彼は視線を逸らし、月を見上げる。そしてしばらく黙った後。

 

「俺にも、よく分からない」

 

「……はぁ?」

 

 思わず情けない声音が彼女から洩れた。だが、誰だってそんなことを言われれば呆れてしまうのは当然のことだろう。彼はそんな彼女に対し、やはり苦笑しながら言葉を続ける。

 

「きっとあの時、倒れているおまえに俺が気づかなかったら、俺はおまえを見捨てていたと思う。その後おまえが何処の誰に何をされようとどうでも良かったと思う。俺は別に、ヒーローじゃないから。見ず知らずの他人が世界の裏側でどんなに苦しんでいたとしても、どうでもいいと思っちまうような人間だから」

 

 だから、と呟いて、

 

「気づいてしまったから、助けていた」

 

 ただ、それだけ。妖怪だろうが関係ない。そんな、馬鹿みたいなことを言った。

 

「――――」

 

 その答えに息を呑んだ。それはなんという馬鹿げた理由。理屈などない感情的行動。偽善で偽悪な、何処までも自分勝手な答え。そう言われてしまえば、彼女は呆れるしかなかった。

 

「……呆れた。そんな理由で私を助けたのかにゃ?」

 

「ああ。生憎、まだ一から十まで理屈だけで生きていけるほど達観した人生を送った覚えはないからな」

 

 そう言って、彼は人間らしく笑う。理屈など理由付ければ他にも様々あった。此処で見捨てたらいつか思い出して後悔する日が来るかもしれないから助けたとか、誰か一人でも見捨てたら本当に救わなければならない人も見捨ててしまいそうで恐ろしいから助けたなど、作ろうと思えば幾らでも作れただろう。

 

 だが、そんなものは所詮後付けに過ぎない。助けたいと思った、だから助けた。そこにはリスクなど一切考えていない自分の思うがままに行動した。それが彼の本音だった。

 

 きっと、ここで自分が悪者だったらどうしたのかなどというリスクを尋ねても、彼はそれでも助けたかったなんて言うに違いないと彼女は溜息を吐く。

 

「もういいにゃ……あなたがとんだお人よしだというのは分かったにゃん」

 

「む……いや、別に誰でも助けるわけじゃないぞ? 赤の他人がどうなろうと別に知ったことじゃないし――――」

 

「それと、もう一つ訊きたいことがあるにゃ」

 

 何か言おうとしていた彼の声を遮り、彼女は問い掛けた。

 

「なんで、あなたは此処(、、)にいるの?」

 

「――――」

 

 今度は彼の方が息を呑む番だった。それは空間的な意味ではなく、立場的な意味。

 

 何故裏側(こちら)の存在が、表側(ここ)にいる――――?

 

 その問いに対し、彼は一瞬顔を歪ませるが、また苦笑した。

 

「……きっと、俺は中途半端なんだと思う」

 

「……?」

 

「頭では理解してるんだ。俺はどちらかにしか居られない。陽だまり(ここ)か、非日常(そちら)か。いずれどちらかを選ぶか決めなければならないし、一度決めたらどちらかを棄てなければならない。失いたくないし、ずっとこのままだったらいいのにと思う。だけど、何事も永遠には続かない。いつか必ず終わりが来る」

 

 だけど。

 

「それが分かっていても、失いたくないものがある。失くしたくない陽だまりがある。だから、俺がここにいるのは中途半端だからなんだろうな」

 

 本当に大切ならば、どちらかを失う前に捨てなければならない。でなければ、いつかその両方を失ってしまうだろう。それが分かっているのに、選べられない。そんな自分に、彼は自嘲した。

 

「だから、俺がここにいるのはそんな理由だよ。そんな、くだらない理由さ」

 

「…………」

 

 その答えに、彼女は何を思ったのか。少しだけ眉を寄せたあと、ぽつりと呟いた。

 

「……少しだけ、分かる気がするにゃ」

 

「ん?」

 

「私は、猫だから。飼われるか自由になるか選ばなくちゃいけなくて、頭じゃ出ていくのが一番と分かっていても、離れたくない家族がいた。でも、そのままだと大切な家族が傷つくのだと分かっていて、だけど選んだら一緒にはいられなくて。結局、一人になろことを選んだけどね」

 

「……後悔、しているのか?」

 

「後悔はしてないにゃ。だけど――――」

 

 ふと、彼女は泣きそうな声で、ポツリと呟いた。

 

「――――独りぼっちは、悲しいにゃ」

 

 それは、長年一人だった彼女が漏らした弱みだったのか。しかし、次の瞬間には雰囲気を切り替え、彼女は庭に跳んだ。

 

「……もう、行くのか」

 

「ええ。此処にいたら、変な気持ちになるからさっさと行くにゃん。ある程度力も回復したし、問題ないわ。まあ、一応助けてくれたのは礼を言うわ。もう二度と逢わないことを祈ってるにゃ。恩人を殺したくないしね」

 

 そう告げて、彼女はいつもの調子で去ろうとして。

 

「――――なあ、黒猫」

 

 ふと、少年が月を見上げながら呟いた。

 

「おまえさ、もし一人でいることが耐えられなくなって、悲しくて壊れそうになったら」

 

 彼は優しい微笑みを浮かべながら。

 

 

 

「――――また、ここに来いよ。まあ、おまえの寂しさを紛らわす相手ぐらいはしてやるよ」

 

 

 

「――――」

 

 その言葉に、彼女は何を思ったのか。僅かに振り返って、震える声で尋ねる。

 

「……同情にゃ?」

 

「俺がそんな善人に見えるか?」

 

「見えるにゃん」

 

「……マジで?」

 

 即答した彼女の答えに項垂れる彼。SS級はぐれ悪魔を損得抜きで助けるような馬鹿が、善人でなくてなんだというのだ。

 

 自分と同じ側にいるはずの少年。だというのに、彼は何処までも歪だった。だけどそれが何故か心地良くて、彼女は気づけば笑っていた。

 

「……あなた、名前は?」

 

「ん? ああ、信貴。兵藤信貴だ」

 

 信貴――――彼の名前を胸でもう一度呟いて、少しだけ気分が高揚する。ほんの少し、いや大分変わっている少年。こうして彼女に話し掛けてくる存在など初めてだった。だからこそ、彼女は笑う。

 

「私の名前は黒猫じゃなくて黒歌。知ってる? ――――猫は、実は寂しがり屋なんだにゃん」

 

 彼女の姿が、猫から変貌する。現れたのは黒い着物を着込んだ女性。黄金に輝く瞳が暗闇でも輝き、頭に生える猫耳と尻尾がゆらゆらと揺れる。

 

 それこそが、SS級はぐれ悪魔として恐れられていた彼女――――黒歌の真の姿だった。

 

 彼女は妖艶な――――そう思っているだけで実際は可愛らしい――――笑顔で、告げた。

 

 

 

「私を本気にさせた責任――――取って貰うにゃん♪」

 

 

 

 そう告げて、彼女は夜の闇に消えていった。静寂な夜中。その中で、ポツリと彼は己の本心を呟いた。

 

「……猫魈って、ただ尻尾が増えた猫じゃないのか……!」

 

 彼の呟きは、夜の闇へと消えていった。

 

 

 

    ◇◇◇

 

 

 

 以来。偶に信貴が昼寝をしているところ、彼の側に黒猫が蹲っている光景が見られるようになったらしい。

 




次回、「エピローグ」

さあ、物語をはじめよう――――

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