ハイスクールD×D 無限の守護者   作:宇佐木時麻

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誰かあああああああああ俺に七夜の戦闘描写を教えてくれえええええええええええ!!


妨害

 眉間に迫る弾丸を躱せたのは条件反射に等しかった。脳が飛んでくる弾丸を認識するよりも早く、肉体がそれに反応し、僅かに顔を逸らすことで回避を成功させる。

 

「……いきなりだな」

 

 無駄だと思うが一応話し掛けてみる。しかし、それに対する返答は哄笑。夜なので昏く、灯りが窓から差し込む月の光しかないので姿を捉えることが困難だが、影のような人型の相手ははっきりと口許を歪ませて笑っているのが見えた。

 

『――――、――――ッ』

 

 聞こえる声はノイズのように擦れ、はっきりと聞こえない。現在、俺はオーフィスから貰った『言語変換能力』を宿した蛇を飲んでいるためありとあらゆる国の言語が理解できる。

 

 ゆえに、それでも理解できないとすれば、そもそも言葉を発していないということだろう。

 

 おそらく、外にいた連中は不良品で、室内にいた目前の相手は屋敷の警護を任された成功品なのだろう。もしくは、単純に強いからこそか。

 

「いや、どうでもいい話か」

 

 相手が何であろうと関係ない。弱かろうが強かろうが、怪物だろうが人間だろうが邪魔する輩は斬ってバラシて解体すればいいだけの話。

 

 感情が昂る。いつにもまして好戦的な自分に少し疑問を持つが、それは構えると同時に眼前の敵が放ってきた殺気に消えていった。

 

 そうか、俺を殺したいか化物。ならば、

 

「さあ――――殺しあおう」

 

 その呟きと同時に、地面を強く蹴り出した。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「へえ――――?」

 

 撃った弾丸が躱されるのを見て、フリードは驚いたように笑った。

 

 初めてだった。この屋敷に来て何十体ものキメラを相手にしてきたが、こうして弾丸を躱されるのは初めての経験だった。しかも、不意打ち気味の一発を。教会の連中が見れば卑怯者と罵られるかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。

 

 分かるのは、目前の相手は先ほどまでの輩とはレベルが違うということ。しかもかなりの強者ということだった。

 

『――――、。』

 

 相手が何か喋っているが、何を言っているのかまるっきり検討が付かない。それは敵に逢えた喜びなのか、獲物を喰える嬉しさなのか。

 

「ハッ。喋んなら人間語で喋れよ」

 

 獣相手に話しても意味はないが、思わず哄笑しながら告げる。ようやく会えた歯応えの在りそうな相手を前にして、フリードは僅かに興奮していた。

 

 ゆらりっ、と影がナイフを握り締める力を増やし、身体の四肢に力を漲らせていくのが分かる。仕掛けて来るのを理解して、フリードも殺気出しながら銃を構える。

 

「来いよ、化け物」

 

 その言葉に反応するように、影の脚に力が籠りる。そして、

 

 刹那――――瞬く間に影はその姿を消していた。

 

 目を逸らしてなどいなかった。一瞬たりとも視線を逸らしていなかったと断言できる。しかし、目前に先ほどまで居た相手はいない。ならば何処へ?

 

 その思考速度、現実において0.2秒ほど。姿を見失ってその直後、フリードは反射的に前方に跳んでいた。

 

 それは一種の直感。このままだと殺されるという何の根拠もない感覚。されど侮るな。戦場においてそういう曖昧な感覚は何よりも鋭い。戦場で鍛えられた直感というものは未来予知にも等しいのだから。

 

 現に。フリードが前方に跳んで浮遊しながら見た背後。そこにはナイフを先ほどフリードの首があった場所に突き立てて驚愕している影の姿があったのだから。

 

「じゃあな」

 

 短くこの世の別れを告げ、フリードは眼前の影の顔面に銃を構える。その距離、僅か一メートル。回避不可能な距離。驚愕する相手に向かって、容赦なく引き金を引いた。

 

 そして、次に驚愕するのはフリードの番だった。

 

「な――――」

 

 地面に着地しながら、フリードは先ほどの光景に驚愕する。

 

「おいおい――撃った弾丸を踏み台にするとか曲芸師かよ(、、、、、、、、、、、、、、、、、、、)

 

 空中での方向転換が不可能なことなど誰でも知っている。しかし、いやだからこそ、影は回避不可能な弾丸を身体を大きく捻り、回し蹴りの用法で脚に付け、それを起点に真横へと跳んだ。

 

 その光景を目の当たりにして、あまりに荒唐無稽な光景に笑ってしまう。ふざけている。弾丸を踏み台にするという発想も、それを実現させる影の技量も、到底有り得ない。現実に喧嘩売っているようとしか思えない。

 

 だからこそ。

 

「面白いな、おまえ」

 

 フリードは歓喜で笑っていた。

 

 そうだ、そうでなければ面白くない。誰でもできそうなことを自慢げに魅せられてもつまらないだけだ。やるからには全力で愉しませろ。

 

 そんな歪に歪んだ笑みを浮かべながら、フリードは再び連続してトリガーを引いた。

 

 放たれるのは同時に三発。それを当てもなく、ただ闇雲にしか狙っていないような出鱈目さ。そして、フリードは何となく避け続ける。

 

 何故なら、既にフリードは影の姿を捉えられていなかった。

 

 意識の隙間から意識の隙間へ。まるで相手の視界を、意識を読んでいるような移動。一瞬見えた壁に張り付くその姿は、まさに蜘蛛。空間を立体的に移動する影にとって、この部屋や奴の巣の中でしかなかった。

 

 ならば、その戦い方は卑怯か? 正々堂々戦わない影の戦い方は卑怯者と糾弾されるものか?

 

 ――――否である。

 

 そのような戯言は、戦を知らない餓鬼の戯言でしかない。戦いとはそういうものだ。負ければ死に、勝てば正義となる。それに、真の強者というものは如何なる卑怯も正面から捻じ伏せられる者である。その程度でやられてしまう者など、たかが知れているというものだろう。

 

 それに、どちらかと言えば異常なのはフリードの方だった。

 

 フリードは影の姿を捉えられてなどいない。見切るという高等手段は予備動作から予見するものであり、先ほどから一度も見れていない彼には到底不可能なことだった。

 

 だからこそ、フリードはなんとなく避け続ける。

 

 直感に身を任せ、天啓を常に掴み続ける。それは千に一つ、万に一つの奇跡を起こし続けているような出鱈目さ。無駄撃ちに見える弾丸も、その回避同様に的確に影の動きを妨害していた。

 

 もし弾丸の妨害がなければ、今ごろ頭を蹴り上げでザクロのように散らしていただろう。

 

「さて。どうするとするかねー」

 

 今もまた奇跡のような回避をしながら新しい弾丸をリロードして、静かに呟く。このままでは千日手だろう。別にこのまま続けてもいいが、まだメインディッシュが残っている。この戦いで体力が尽きてはい終―了-というわけにはいかない。

 

「そろそろ……切るか?」

 

 懐に手を伸ばしながらふと呟く。その直後、変化が訪れた。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

「何の茶番だ、これは」

 

 遠見の魔法を使用して二人の舞踏のような戦いを見ていたシヌイは、落胆するように嘆息した。

 

「せっかく失敗作とはいえ私の研究成果を百体も倒したというのに、何の変化もない戦い振り。片や小物のように逃げ隠れながら不意を突き、もう片は防戦一方。くだらない、実につまらない。こんな輩に私の時間を割いでしまったことが嘆かわしい。本当に、時間の無駄だった」

 

 はぐれ悪魔であるシヌイは研究者としては名を馳せたが、戦闘に関しては素人だった。もしこの場に戦闘に関する者が見ていれば、二人の戦いに見惚れているほどだっただろう。

 

 しかし、戦闘経験が少ないシヌイにとってすれば二人の戦いなど見栄えのかわらない愚戦にすぎない。だからこそ、彼は愚挙を侵した。

 

「もういい。見るに堪えない。ゼクス、アハト。奴らを始末しろ」

 

『――――』

 

 いつの間にか彼の背後にいたキメラが、音もなく姿を消した。彼等はシヌイが生み出した数少ない成功品。速度に関しては他を凌駕する圧倒的速度を誇る僕たち。ゆえに、彼等なら問題ないと慢心した。

 

 もし、そのまま傍観を続けていれば二人の奥の手(、、、)が見えていただろう。それに、決着が付いていれば片方は疲労して倒すのが容易くなっていただろう。

 

 しかし、シヌイはそれらの考えを破棄して慢心した。その間違いは、すぐに払うこととなる。

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 フリードが懐に手を伸ばそうとした直後、変化が起きた。

 

『――――』

 

 顕れたのは二つの気配。闇の中から現れたそれらは、途方もない速さで迫って来る。その姿は不自然なほど手足が伸ばされ、対照的に身体がやせ細っている。完全に速度を重視したような体型。

 

 二体のキメラは身体を大きくしならせ、瞬間槍のように腕を突き立てながら背後から襲い掛かる。

 

 それは暗殺者とすれば一流の動きだろう。肉体を完全に掌握し、どこをどう動かすのが最も素早いのかを理解した動作。

 

 だが、それらは彼等の前ではあまりにも稚拙だった。

 

 気配がまるで隠せていない。狙う箇所が丸分かり。そして何より、彼等からすれば遅すぎた。

 

『「邪魔だ」』

 

 獣風情が、我らの戦いを邪魔するな――――!

 

 それはほぼ同時だった。ふと現れた二つの気配。しかもそれがあまりにも鈍く、さらに妨害というにはおこがましいと言わんばかりの攻撃を仕掛けて来ると理解した瞬間、彼等は目前の敵を無視して互いに背後の敵を一撃で殺した。

 

 ナイフが唸り、首が飛ぶ。

 

 銃のトリガーが引かれ、眉間をぶち抜く。

 

 一瞬の幕切れ。シヌイの成功品は、彼等にとって邪魔な妨害程度でしかなかった。

 

 互いに仕留めて、さあ仕切り直し――――という所で、ふと気づく。

 

 

 

 キメラはキメラを殺さない。

 

 

 

 先ほどキメラの大群と戦って理解したが彼等は互いを傷つけられないようにされていた。おそらく勝手に共食いを始められたら困るのでそう細工していたのだろう。

 

 ゆえに、キメラを殺せるとしたら、それはキメラ以外(、、、、、)の存在となるはずだ。

 

 つまり――――

 

「……あー、あーっ、あー! そういうことね。オーケーオーケー、理解できたわ」

 

 フリードはいきなり不敵に笑うと、部屋の各隅に向かって弾丸を撃ち込んだ。そして、何かが壊れる音と共に部屋の何かが霧散していく。

 

「ご丁寧に認識阻害と感情高揚、さらに言語不可の三重結界も張っていやがったのか。どうりでこの部屋に来てから思考が好戦的になってると思った」

 

 んで、とフリードは一端そこで区切って、

 

「お宅は人間か?」

 

 先ほどまで戦闘を繰り広げていた相手の姿を見た。

 

「……なんでそんなことを訊く?」

 

「無駄な戦いは避けたいだろ? というか、ぶっちゃけおまえ、そのうねうねした闇のせいで人間に見えねえんだよ。顔見せろ、顔」

 

 先ほどまでとは言わないが、全身を闇が覆っているため正直人間なのか判断つかないのだ。キメラと言われても信じてしまいそうになる。

 

 それは彼もそうだと思ったのか、嘆息しながら覆っていた闇を解く。

 

「……これでいいか?」

 

「おお、顔隠してばっかだからどんだけブサイクかと思ったが、中々イケメンじゃん。まあ俺様の方が百倍イケメンだけどな」

 

「勝手に言ってろ。つーか、おまえこそ本当に人間か?」

 

「あ? おまえこれ見て普通そー思うか?」

 

 そう言って、フリードは己が着ている服をひらひらと見せつける。

 

「キメラにエクソシストの服を着させると思うか? どんなマゾヒストだよ」

 

「……まあ、確かにな」

 

 はぐれ悪魔が己の作品に天敵であるエクソシストの服を着せたがるなんて、変態以外の何者でもないだろう。

 

「じゃあ、今後間違われないように自己紹介でもしておくか。オレはフリード・セルゼン。見ての通り教会のエクソシストだ。で、おまえは?」

 

 ニヤニヤと不敵に気負いのない笑みを浮かべるフリードを見て、彼はやれやれと言った様子で自己紹介をした。

 

「……信貴。ただのはぐれ悪魔狩りだ」

 

 ――――この時。彼等は本当の意味で邂逅した。

 




皆、原作前が長いと思ってるな? 安心しろ、俺もだ。

最近、男ばっかり書いてる方が楽しくなってきた気がする。男の友情って最高だぜ!(遠い眼)


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