宇宙暦七六九年二月一六日。その日、私は約一週間ぶりに
この孤独な公爵とグリンメルスハウゼンの死後最初に会った時は驚いた。一気に二〇歳は老け込んだように見えた。亡き妻フィーネが最後に産んだ幼いカスパー殿下に対して向ける笑みは大層弱々しく、後ろ姿には諦観が満ちていた。
言葉を交わしてすぐ、フリードリヒという男が本心で自由に生きることを望んでいることは分かった。それはひょっとすると私の共和主義思想が生み出した偏向した評価だったのかもしれないが、結果的には的を射た洞察であったといえるのではないか?
「この人は放っておけない」……私はフリードリヒを傀儡とする機関の計画には否定的だったが、それとは別にこの公爵への同情心、あるいは憐憫の情によって彼の下へ足繁く通うことになる。
「クリスティーネ様……。まだお怪我の具合が良くなっておられないのですから、安静になさってください」
「うるっさいわね。あたし、一応皇族。あなた閑職の下っ端近衛兵。分かった?」
「承知しておりますから、こうして止めているのでしょう……。それにクリスティーネ様は『元』皇族であって今は一介の公爵令嬢に過ぎません」
「あ……言っちゃうのね?そういうことを言っちゃうのね?ならあたしも遠慮しないから!あなたね、そうやって無神経に物を言うから出世できないのよ!皇族を敬わない近衛兵なんて近衛兵失格よ!」
「ご無沙汰しております。クリスティーネ様……。小官の事を覚えておいででしょうか?」
「アルベルト・フォン・ライヘンバッハ。伯爵家の嫡男で帝国軍少将。軍務省高等参事官補……だったわね?」
私は片膝をつき左手を腰の後ろに回し頭を下げ、クリスティーネ嬢が差し出した手を右手にのせて接吻する。
「見た?ラムスドルフ。あなたもこれくらいできないと近衛の本流に戻れないわよ?……ライヘンバッハの動きもイマイチ洗練されてないわね。夜会を避けているからよ。あなたも帝国貴族なんだから少しは貴族らしく振舞う努力をしなさい、『帯剣貴族は野蛮』なんて陰口を叩かれるのはあなたも嫌でしょ?」
「良い気分ではありませんが、言いたい方には言わせておけば良いかと。……誰が一番野蛮なのかは後世の歴史家たちがきちんと判断してくれるでしょう」
私は苦笑しながらクリスティーネ嬢に答える。クリスティーネ嬢への慰めの意味も入っている。彼女は負けず嫌いでプライドが高い。お飾り皇子の父の下に生まれたことで彼女やアマーリエ嬢は周りから馬鹿にされたり、嫌がらせされることも少なくなかったのだが、その度に彼女は反撃を躊躇わなかった。
「そうね!前半は同意できないけど、後半は至言だと思うわ。あなたたちトラーバッハ伯爵の死に様は聞いた?散々私をプライドだけ皇族並みの小娘なんて馬鹿にしてたけど、あいつにそんなことを言う資格は無かったわね。後世の歴史家はきっと私では無くあいつに『プライドだけが伯爵に相応しかった小物』という評価を与えるわね!」
「クリスティーネ様。トラーバッハ伯爵は愚かでしたが、それは我々が愚かでは無いことの証明にはなりません。我々もまた今この瞬間、後世の歴史家たちの批評対象となっているのです」
私はそうクリスティーネ嬢を窘めたが、クリスティーネ嬢はピンと来ていないようだ
「……つまり、死人に口なし。反論できない死者の悪口は言うもんじゃない、ということです」
ラムスドルフが私の横からそう補足すると、クリスティーネ嬢は不満気に反論する。
「生者にだって口があるとは限らないわよ?あいつはそこかしこで私や馬鹿父様の悪口を言っていたけど、それにあたしたちが反論できたと思う?」
「……トラーバッハ伯爵が愚者であることは、我々が愚者になる正当性を担保してはくれる訳ではありませんよ」
クリスティーネ嬢は溜息を一つつくと、そのまま自然に私たちの間をスーと通り抜けていこうとして、そこでラムスドルフに腕を掴まれた。
「無礼者!」
「お許しを。しかしながら御身を守るのが小官の仕事であります」
「だ~か~ら~ちょっと開放区画を出歩くだけだって。怪我だって大したもんじゃないし。あんたちょっと融通利かな過ぎよ」
クレメンツ一世が大公時代に平民に対して開放した
「ラムスドルフ。何なら私が同行しようか?クリスティーネ様にも気分転換は必要だと思うし」
「お前……」
「そうね!回廊の死線をくぐりぬけて、若くして帝国軍少将に上り詰めたトップエリートのライヘンバッハが居るなら何の問題も無いわ!ドラゴニアのような辺境に飛ばされた挙句帰ってきたら閑職で燻っているそこの無能者とは違って優秀な男でしょうし」
クリスティーネ嬢はラムスドルフを睨みながらそう言ったが、ラムスドルフは肩を竦めて取り合わない。
「ライヘンバッハ、お前グリューネワルト公爵閣下はどうする?」
「あんなボンクラの相手はあなたで充分よ!」
クリスティーネ嬢はそう言い捨てると、簡単にラムスドルフの手を振りほどいた。ラムスドルフも令嬢相手にあまり強い力は使っていなかったようだ。クリスティーネ嬢は私の手を取り、中庭へと進んでいく。
「で、何であなたもついてきているのかしら?ラムスドルフ」
「御身に何かあれば小官の首が飛びます故」
「そんな言い方しかできないのか?ラムスドルフもクリスティーネ様の事を心配しているのです」
私たちはクリスティーネ嬢の側に控えて歩く。中庭には屋台が立ち並び、休日だということもあって、人であふれている。中庭の辺りにはいかがわしい店も少ない。クリスティーネ嬢は時折、屋台に近づいては「これは何?」「ぼったくりね!あたしを世間知らずと舐めているの?」などと店主と話している。中には顔見知りも居るようで、向こうから話しかけてくることもある。
「おい!ライヘンバッハ……。お前また余計なお節介をしてくれたな?お前、クリスティーネ嬢が何で怪我をしているのか知っているか?」
クリスティーネ嬢が『節分盆栽!』という謎の漢字――地球時代の中国・日本地域で使われた言葉である、同盟やアウタースペースの一部では今でも使われているという。……後、盆栽じゃなくて万歳では?――が書かれた屋台の海苔巻きを見て目を丸くしているのを見計らって、ラムスドルフが私に小声で話しかけてきた。
「
「お前な、仮にも公爵令嬢が装飾品の下敷きになるなんてことが自然に起こると思うか?人為的なモノに決まってるだろう」
私は思わずラムスドルフの方を見る。確かにラムスドルフが指摘するようなことは私も承知しているが、グリューネワルト公爵、さらにその二女を標的に暗殺などを計画する意義など全くない。勿論、あらゆる勢力にだ。それ故にお転婆のクリスティーネ嬢が勝手に自爆したものだと考えていた。
「クリスティーネ様はこの通りのお転婆娘だ。お怪我なさる数日前の夜会でグリューネワルト公爵閣下を馬鹿にしたエーリッヒ皇太子とその取り巻きに猛反論して泣かせた。……衆目の集まるところでな。その報復じゃないかと俺は睨んでいる」
「だって仕方ないじゃない。一応、あんなのでも実の父親だしね。あたしやアマーリエ、ルートヴィヒがあいつを悪く言うのは当然の権利だけど、父様が腐った原因の一端はあいつらでしょ。あいつらが父様を悪く言うのは恥知らずよ!そのくせ、まるで父様の浪費が財政危機の原因みたいな言いがかりをつけてくるんだもの。我慢できる訳無いじゃない……後、お転婆で悪かったわね」
クリスティーネ嬢は私たちの話を聞いていたようで、屋台の方を向きながらそのまま会話に加わってきた。海苔巻きに非常に興味を持っているらしく、親子連れが買った海苔巻きを羨ましそうに見ていた。ラムスドルフはバツの悪そうな表情を一瞬浮かべたが、諦めたようにクリスティーネ嬢に話しかける。
「……まあ、本職としてはそういう訳でクリスティーネ様には宮殿に居ていただきたかったのです。ほとぼりが覚めるまで様子を見ようと」
「ま、そうでしょうね。あなたが考える程度の事はあたしにだって分かるもの。でもその上で今日は出歩きたかったのよ。ほら見なさい」
クリスティーネ嬢が中庭の入り口側を指し示すと、そこには人だかりが出来ていた。
「カール・フォン・ブラッケもいけ好かない奴だけど、叔父様と違って筋は通す男ね。きちんと父様に連絡してから開放区画を訪れるもの。ただ、警備の近衛に連絡しないのは迂闊だと思うけど」
「仕方がありますまい。ブラッケ侯爵は長く宮廷の本流とは縁のなかったお方ですし、第一警備の近衛部隊へ連絡をしなかったことを責められるべきはブラッケ侯爵では無く、皇帝陛下か……あるいは近衛兵総監部です」
「……どういうことだ?」
クリスティーネ嬢が不機嫌そうに発言し、私がやや窘めつつも追従する。ラムスドルフは分かっていないようだ。
「どんな事情か知らないけど、叔父様がブラッケ尚書、リヒター尚書、バルトバッフェル書記官長を連れて
「時代は変わっているのですよ。クリスティーネ様。なに、悪い事ばかりではありません。こうしてクリスティーネ様が皇帝に言いたい事を言えるのは時代が変わったおかげです」
クリスティーネ嬢が人ごみの方へ歩いていき、私もその後ろに付き従う。ラムスドルフは蒼白になりながら「陛下がいらっしゃるだなんて聞いてないぞ……。そんなバカな……」と呟いているが、やや遅れて私たちについてきた。
人ごみではクレメンツ一世がフランクフルトを手に持ちながら、平民たちに気さくに語り掛けている。その後ろにはブラッケ侯爵が今にも悪態をつきそうな顔で佇み、リヒター子爵が商人たちに屋店の服を見せながら何やら議論している。そしてバルトバッフェル子爵がじゃれつく子供たちに応えながら、その美しい母親――バルトバッフェルは美しくない母親たちにも平等な男だが、今日は美しい母親を選ぶ自由を行使したようだ――を口説いていた。
「叔父様!お久しゅうございます。クリスティーネでございます」
クリスティーネ嬢は右足を左足の後ろに持っていき、軽くプリエをする。が、目線は下げずそのまま陛下に合わせたままだ。……わざと失礼に挨拶をするときのやり方らしい。私も気に入らない領地貴族に同じことをするので分かる。ちなみに、当然私も貴族として最敬礼をとる。ただし跪くことはしない。クレメンツ一世がそれを周囲に求めていない事が見て取れるからだ。勿論、私は視線を下げている。ラムスドルフは軍務の最中だから軍隊式の敬礼だ。
「おお!クリスティーネか!大きくなったな!フリードリヒ兄上は元気か?」
「陛下の御厚意によって、何一つ不足無い生活を送っております。……友人以外は」
クリスティーネ嬢の応答で側にいたブラッケ侯爵が少し動揺したのが分かる。一方リヒター子爵は感心した様子だ。……バルトバッフェル子爵は面白がっているのが分かる。今にも口笛を吹きそうな表情だ。クレメンツ一世は流石に微塵も表情を変えない。どう振舞えば人から良く見られるのか、彼は知り尽くしている。
「そうか!グリンメルスハウゼンは残念だったな……彼こそ侍従武官の鑑よ。余としてもフリードリヒ兄上が望むのなら新たに優秀な侍従武官を付けたかったのだが、兄上はそれを望まれなくてな」
「陛下のご心配には及びません。この通り、ラムスドルフとライヘンバッハが良く仕えてくれていますので」
「ふむ。ラムスドルフ少将はここの警備責任者だったな?しかしライヘンバッハ少将は何故ここに居るのだ?」
そら来た、と私は思った。私だって望んでこんな所に居る訳では無いのだが、フリードリヒに頼まれたのだ。「お転婆娘がクレメンツに物申したいらしい。ちょっと面倒を見てくれ」と。「ラムスドルフは皇帝相手じゃ使いもんにならん。不遜で無礼な叛徒気質のお前なら皇帝にも物怖じしないだろう」という有難いお言葉も頂いた。
「ラムスドルフ少将と小官はかつて縁あってグリューネワルト公爵閣下の知己を得ることになりました。ラムスドルフ少将からグリューネワルト公爵閣下が無聊を持て余していると聞き、小官として役にたてることもあるのではないかと、こうして軍務に支障が出ない範囲で閣下の下におります」
「陛下はご存じないのですか?貴族嫌いのライヘンバッハがどういう訳かグリューネワルト公爵に尻尾を振っているらしい、日陰者同士波長も合うのだろう、と噂になっておりますよ」
「陛下は父様に本当に興味が無いのですね」とクリスティーネ嬢は笑う。バルトバッフェル子爵が明らかに笑いを噛み殺している様子だ。ブラッケ侯爵がそれに気づいたらしく、バルトバッフェル子爵を睨みつけている。クレメンツ一世はにこやかなまま、大仰な仕草で周囲の民衆に語り掛けた。
「おやおや、皆!どうやら余はクリスティーネの機嫌を損ねてしまったようだ!……すまんな可愛いクリスティーネよ……。余としても数少ない信頼できる肉親である二人の事は大切に想っているのだが、全人類の統治者としての使命を蔑ろにする訳にもいかぬのだ……。それだけに、今日はしっかりフリードリヒ兄上との時間を大切にするつもりだ」
「開明派の三巨頭をお連れになってですか?それは結構なことでございますね!巷で人気の高いお三方と会えるとなると、父様もきっとお喜びになられるでしょう!宮殿で父様がお待ちです!さあこちらへ!わたくしが案内しますわ」
皮肉を織り交ぜつつ、クリスティーネ嬢が案内を申し出る。しかし、クレメンツはにこやかにその申し出を断った。
「いや、余に構わなくても良い。……怪我をしたのだろう?余としても心配でならないのだ……クリスティーネ、叔父として言わせてほしいのだが、もう少し我が身を大切にしてくれぬか?」
「ご心配をおかけして申し訳ございません……。しかし、わたくしは叔父様が来られると聞いてこう思ったのです。『エーリッヒ皇太子殿下もいらっしゃるかもしれない、何としても殿下に謝らなければ』と。官僚や軍人、大勢が集まる中で些細な戯言を聞き流すことができず、正論をぶつけて皇太子殿下を号泣させてしまい申し訳ありませんでした、と。このクリスティーネ、きっと姉様のように聞くに堪えない罵詈雑言を受け流せる度量を見に付けて見せます、と」
バルトバッフェル子爵が爆笑し、即座にブラッケ侯爵に足を踏まれ悶絶する。リヒター子爵は肩を竦めて呆れた様子だ。周囲の民衆はクリスティーネ嬢の言ったことがよく分かっていない様子だが、その中には学の有る活動家も居るだろう。きっと近い未来には帝都にエーリッヒ皇太子の話が面白可笑しく広まっているはずだ。
「気にしなくて良いさ!あれはエーリッヒにも非があるからな。とはいえ夜会の最中に
「ジークリンデ皇后位の物ですね」
私はクレメンツの顔色に若干の苛立ちを確認してフォローに入った。クリスティーネ嬢は流石に言いすぎた。エーリッヒ皇太子を泣かせた話を広めたのは流石にまずい。これ以上は手酷い反撃を受けかねない。
「……そうだな、ライヘンバッハ少将。……クリスティーネ嬢はまるでジークリンデ皇后の再来のようだ。ジークリンデ皇后のような立派な女性になることを期待しよう。道は険しいだろうが」
クレメンツはそう言うと宮殿の奥へと歩いていく。仏頂面のブラッケ侯爵、思案顔のリヒター子爵、激痛を耐えるバルトバッフェル子爵が後に続く。……バルトバッフェル子爵はこっそりクリスティーネ嬢にサムズアップをしていった。残念ながらクリスティーネ嬢に意味は通じていないようだが。
クレメンツは恐らくクリスティーネ嬢への口撃に移ろうとしていたのだろうが、私の言葉に機先を制された。誰もが知る偉大な女傑、ジークリンデ皇后の名を出されては中々クリスティーネ嬢の振る舞いを貶すのは難しいだろう。「道は険しいだろうが」に行き場の無い苛立ちと不快感が凝縮されているように感じられた。
「あー不愉快ね。平民皇后の再来って……絶対噂されるわよこれ……。やっぱり叔父上って悪辣よね?ま、軟弱息子の悪評をうんと広めてあげたし、痛み分けって所かしら?」
クリスティーネ嬢が不機嫌そうにそう言った。ジークリンデ皇后は貴族の血が流れているものの、自身は平民身分にあった。……確かにクリスティーネ嬢にとっては「ジークリンデ皇后の再来」というのは特大級の嫌味だろう。私は当初気づかなかったが。
「さ、二人とも行くわよ。あの海苔巻きっていうのを食べてみたいわ。……叔父様に見つからないようにね」
そう言ってクリスティーネ嬢が歩き出したその瞬間だった。……轟音が鳴り響き、空気が揺れた。
「何だ!?」
顔面蒼白、茫然自失といった様子だったラムスドルフが瞬時に表情を切り替えて周囲を見渡す。真っ先に思い浮かべたのはかつてこの場所で起こった事件。……クロプシュトック事件。
「まさか……!」
私はフリードリヒとクレメンツが会う北館を見る。見た所損傷はない。炎も見えない。
「ライヘンバッハ!クリスティーネ様を安全な場所へ!」
「分かった!」
ラムスドルフが北館に向けて走り出す。クレメンツ一世はまだ北館に入っていない。しかし、北館にはグリューネワルト公爵が居る。クリスティーネ嬢も大切だが、警備責任者としてまずは二人の安全を確保しようとするのは間違った判断では無いだろう。
「一体何なの!?父様は?父様に何かあったの?」
「分かりません。とにかく安全な所……近衛の詰め所へ向かいましょう!」
「駄目よ!まずは父様の安全を確認しないと!」
クリスティーネ嬢はそう言って北館に向かおうとするが、私は咄嗟に肩を掴んでそれを止める。しかし、クリスティーネ嬢は何とか私を振りほどこうとしている。
(何とか止めないと……)
そう思った時、視界の端に高く昇る白煙の姿を確認した。
「クリスティーネ様!あれをご覧ください。恐らく爆発はここでは無くあそこです」
「え?」
私の指差す方向をクリスティーネ嬢は見て、その顔をさらに青褪めさせた。
「あそこって……あなた……」
その様子を見て、私も気付く。
(……ここから見て左側の方向にあるのは……まさか爆発したのは
宇宙暦七六九年二月一六日。
銀河の歴史がまた一ページ……。
注釈24
『節分』というのは地球時代に存在した祭りだという。鬼と呼ばれる代表者が社会レベルから個人レベルまで様々な不平不満を演台で叫び、群衆はそれに対しひたすら野菜をぶつける。最終的には鬼であるかどうか関係無くひたすら互いに野菜をぶつけ合う。
起源は不明だが、説としては住人同士での階級闘争、パレードで野菜が一斉に投げられた、町政に不満を持つ住人が、町の祝賀会で町の議員に向けて野菜を投げつけた、ファシストの台頭に抗議してひたすらエネルギーを発散する場を設けた、被差別住民がその記憶を留めるべく行っていた、などが挙げられる。最も有力な説は暴政に対する不満逸らしとして大量の豆を与えられた住人が受け取りを拒否して領主に豆をぶつけたことをきっかけに叛乱が始まった史実を基にしているというものである。
期間中は街が野菜で埋め尽くされたという記録が残るが、これは流石に作り話だろう。街が真っ赤に染まったと記される資料自体は信憑性が高いが、これはナチスドイツによるスペイン空爆の事実を暗喩する資料であると解すべきだ。