アルベルト・フォン・ライヘンバッハ自叙伝   作:富川

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青年期・アスターテ会戦(宇宙歴766年4月11日~宇宙歴766年5月6日)

 宇宙歴七六六年四月一一日。ドラゴニア星系基地を預かるリヒャルト・フォン・グローテヴォール宇宙軍大将は軍務省・統帥本部・宇宙艦隊総司令部・宰相府・国務省・財務省・内務省等一七の公的機関とブラウンシュヴァイク公爵家・リッテンハイム侯爵家・クロプシュトック侯爵家・カストロプ公爵家等一一の貴族家に同じ内容の機密通信を送った。

 

 これは明らかな越権行為であるが、グローテヴォール大将がこのような強行手段に出たのは近く自由惑星同盟軍によるドラゴニアへの大規模侵攻があると予測されていたからである。宇宙歴七六四年に同盟議会が一〇年の時限を付けて国家総動員法を可決し、政府と軍部に広範な大権が与えられたことで同盟軍の動きを帝国側が察知するのはより難しくなった。また、事前に察知出来たとしても回廊を超える遠征とは違って会戦に至るまでの時間が短く、有効な防備を整えるのが難しい。グローテヴォール大将やクヴィスリング元帥、ライヘンバッハ元帥はこれらの事情を憂慮し、危機感を抱いていたが、その危機感が政争に明け暮れる他の上層部には欠けていた。

 

『発 ドラゴニア辺境軍管区司令

 宛 宇宙艦隊司令長官

 

 辺境軍管区ノ実情ハ軍務尚書二報告スベキモ艦隊悉ク疲弊消耗シ遂ニハ日々ノ食料マデ事欠ク有様ニテ最早一刻ノ猶予モ無ク緊急二諸閣下ニ御報告申上グ

 

 ドラゴニア辺境艦隊総数既ニ一万五千隻ヲ切リ内地ヨリノ僅カナ補充戦力デハ到底再編ニ足ラズ 辺境艦隊既ニドラゴニア=アルテナ間ノ航路安定ニ足ル戦力ヲ持タズ 故ニ回廊出口側ニテ輸送艦隊悉ク叛乱軍ノ小艦隊ニヨリ壊滅ス 輸送艦隊ノ増発 護衛艦艇ノ増強 伏シテ請フ

 

 叛乱軍来攻以来 想像ヲ超エタル量的優勢ヲ以ッテ迫ル叛乱軍二対シ麾下将兵真二敢闘セリ 然レドモ叛徒ノ猛攻ニ将兵相次デ斃レ我等最早矢尽キ刀折レルガ如キナリ 軍管区各部隊遂ニ我身ヲ以テ矢玉ト為ス事ヲ決意ス 然レドモ本職艦艇一万五千 将兵百五十万 其ノ他多数ノ地上部隊ト支援部隊 悉ク矢玉ト為シテモ叛徒ヲ撃滅ス自信無シ

 

 故ニ本職ハ内地諸閣下ノ御高配ヲ信ゼリ 我等諸閣下ニ祖国ノ後世ヲ託シテ悉ク玉砕セントス 本職ハ諸閣下ガ我等ノ魂魄ヲ以テ祖国ニ平和ト安寧ヲ齎サンコトヲ祈念ス』

 

 グローテヴォール大将の機密通信文は帝国上層部に衝撃を与えた。要塞建設の是非を巡る論争に帝位継承争いが絡んだ結果、帝国上層部は前線部隊を放置したまま政争に明け暮れていた。その間も事前に策定された補給計画に沿って、物資は輸送艦隊によって前線に送られていた為、政争の当事者たちは前線部隊が玉砕を決意する程に苦しい状況に置かれているとは夢にも思っていなかったのだ。

 

 実際にはグローテヴォール大将の機密通信文にある通り、同盟艦隊の猛攻は帝国軍上層部の想定を超えた消耗を前線部隊に与え、ドラゴニア=アルテナ間の補給線が度々脅かされており、補給物資は多くが同盟軍によってスペース・デブリへと変えられていた。加えて、ジークマイスター機関は帝国領内の海賊組織や犯罪組織、反体制派組織に情報を流し、彼らが輸送艦隊を襲撃することを助けた。これによってドラゴニア連合艦隊は適切な補給を受けられず、また肝心の要塞建設にも悪影響が出ていた。

 

 即日統帥本部総長クヴィスリング元帥と宇宙艦隊司令長官ライヘンバッハ元帥はオトフリート五世に拝謁し、アムリッツァの黄色弓騎兵艦隊のドラゴニア星系派遣、フォルゲンの黒色槍騎兵艦隊のアムリッツァ進駐を上奏する。オトフリート五世はこれを承認したが、ここで再びクレメンツ大公派の横やりが入った。

 

「要塞建設計画自体に無理があったのだ……これ以上前線の将兵に血を流させるべきではない。要塞建設計画を撤回し、艦隊の撤退を許すべきだ」

 

 リッテンハイム侯爵は自身が要塞建設の実現に手を貸したことを忘れたようにそう言った。その他のクレメンツ大公派も一斉に艦隊撤退と要塞建設計画の撤回を求めて各省や軍に圧力をかけ始めた。

 

「ドラゴニア辺境軍管区に不足しているのは適切な補給です。それが為されれば要塞建設まで叛徒共を要塞から遠ざけておくことは決して不可能ではありません」

 

 軍務省次官シュタイエルマルク上級大将は記者会見を開き、ドラゴニア辺境軍管区の現状について説明した後、最後にそう述べた。……軍部改革派はリッテンハイム派の後ろ盾を得ることで要塞建設着工を実現したが、ここにきて軍部改革派とリッテンハイム派の間で不協和音が流れ出した。

 

 リッテンハイム侯爵が要塞建設計画に賛同したのは軍部への影響力を拡大させたかったからだ。要塞建設計画への支持はその手段に過ぎず、リッテンハイム侯爵自身はハッキリ言えば要塞建設の是非などには拘っていないのだ。

 

 リッテンハイム侯爵が軍部改革派に求めに応じて要塞建設計画を支持したのは、要塞建設費用の一部をフェザーン勢力が負担するということを聞いたことも大きい。フェザーンがバックアップにつくならば、自分の懐から金を出す必要は無い。故にリッテンハイム侯爵にしてみると要塞建設費用が高騰し、オトフリート五世による帝前三部会への再度の租税法改革法案提出が行われるというのは予想外であり、しかもその高騰を最初からリューデリッツが予想していたとするならば、リッテンハイム侯爵にとっては最早詐欺も同然である。

 

 リッテンハイム侯爵はそういった事情から軍部改革派に不信感を抱き、ブラウンシュヴァイク公爵とクレメンツ大公に急速に接近したのだ。

 

 

 

 宇宙歴七六六年四月一五日。緊急御前閣僚会議が開かれ黄色弓騎兵艦隊と黒色槍騎兵艦隊の移転について話し合われたが、ここで沈黙を保っていた財務尚書オイゲン・フォン・カストロプ公爵が艦隊の移転に反対する。

 

「現在の帝国財政は破綻こそしていないものの、極めて危機的な状況にあります。財務尚書としてはイゼルローン要塞建設計画にこれ以上国費を支出することには賛同できません。ドラゴニア星系基地を放棄し、一時的にイゼルローン要塞建設計画を断念することも検討するべきかと考えます」

「……ここで計画を断念すれば、これまで費やしてきた資金も物資も戦力も全て無駄になる」

「そう言って退くべき時に退くことができなければ、結果としてさらに多大な資源を無駄にすることになるでしょう」

 

 カストロプ公爵の言うことは一理ある。一理はあるがそれをカストロプ公爵が言うことにほぼ全ての閣僚が強い不快感を覚えたのは間違いないだろう。……何せカストロプ公爵が財務尚書に任じられて以来、国家予算の不正蓄財に励むと共に、自派閥の為に恣意的な予算配分や課税制度の運用を繰り返していることは公然の秘密である。

 

 さらに言えば今まで財務尚書らしい仕事を殆どしてこなかったカストロプ公爵がこの局面で『財政状況』を理由に要塞潰しに動いたのはブラウンシュヴァイク公爵やリッテンハイム侯爵らの暗躍があることは想像に難くない。

 

 私の養父上であるカミル・フォン・クロプシュトック伯爵がサロン『ベイカー街不正規連隊(ベイカー・ストリート・イレギュラーズ)』でやっていたように、クレメンツ大公が名士会議で公然と皇帝批判を行って以来、リヒャルト大公とクレメンツ大公の皇位継承争いは公然化し、互いが中立派を切り崩すべく動いていた。クレメンツ大公派がどのような条件を提示したかは分からないが、カストロプ公爵はクレメンツ大公派についたという事だ。

 

 カストロプ公爵の反対によって一度は統帥本部と宇宙艦隊総司令部によってゴーサインが出た黄色弓騎兵艦隊のドラゴニア派遣、黒色槍騎兵艦隊のアムリッツァ進駐の動きは止まることになる。以後、要塞建設計画の是非を巡り主にリヒャルト大公派とクレメンツ大公派を中心に激しい論争が起こる。

 

 そんな中、宇宙歴七六六年四月二二日。皇帝オトフリート五世が突如として国営放送を通じて詔勅を発表した。詔勅は歴代の皇帝が制定してきた法律の範囲内で帝国臣民に絶対的な効力を発揮する。

 

「余は二個艦隊の動員費用を皇室財産より拠出する事を決めた。関係省庁はその方向性で動員を進めるように。余は忠勇なる将兵を政争によって無駄死にさせることには耐えられない」

 

 オトフリート五世はそれだけを淡々と述べた。その後、宮廷書記官長リヒテンラーデ子爵が記者会見を開き詳細な説明を行う。

 

 皇室財産は歴代皇帝が合法不法の手段を問わず溜め込んできた財産である。一見すると私欲の為に臣民から不当に収奪した財産を溜め込んでいるようにも思える。しかしながら、今回オトフリート五世が行ったように艦隊を動員できるほどの額である上に、いざとなれば他の官僚や貴族に話を通す必要も無く、皇帝が独断で自由に動かせる資金である。つまり、皇帝権力の重要な源なのだ。オトフリート三世猜疑帝が皇太子時代に述べた「皇室財産は不可能を可能にする」という言葉はまさしく真理をついているといえよう。

 

 尤も、歴史上この皇室財産が実際に使われたことは少ない。歴代の皇帝は「金の力で不可能を可能にする」皇室財産を反皇帝勢力への見せ札(ブラフ)として使ってきた。実際に皇室財産に手を付けたのはオトフリート二世再建帝、エーリッヒ二世止血帝、マクシミリアン=ヨーゼフ二世晴眼帝、オトフリート三世猜疑帝、そしてオトフリート五世倹約帝の五人だけである。

 

 少しゴールデンバウム王朝の『裏』を知っている人間ならこの五人の名前でピンとくるだろう。再建帝と止血帝はそれぞれ『黄金狂時代(ゴルト・ラウシュ)』と『アウグストの血祭(ブルートフェスト)』の後始末の為に手を出さざるを得ず、晴眼帝は『暗赤色の六年』に終止符を打ち、同時に悪弊を一掃する為に強権を発動する過程で手を出し、猜疑帝は皇太子時代から尽力していた第二次ティアマト会戦後の財政再建の為に皇室財産に少しだけ手を付けた。

 

 しかし、オトフリート五世ほど積極的に皇室財産を利用した皇帝は他に居ない。彼は即位から数年間の危機的状況を躊躇わず皇室財産の一部を国庫に回すことで凌ぎ切った。その数何と三回。総額は不明だが、一時は国家予算約五兆帝国マルクの内のかなりの部分を皇室財産で補填していたとも聞く。

 

 宇宙歴七五七年の帝前三部会で租税法改正を条件付きながらも可決させることに成功した後は皇室財産からの予算拠出は全く行われていなかった為、今回の二個艦隊動員に関する支出がオトフリート五世帝統治時代で通算四回目の皇室財産利用となる。

 

 オトフリート五世の強権発動により漸く艦隊のドラゴニア派遣に目途が立ち、宇宙歴七六六年四月末には黄色弓騎兵艦隊が回廊を超える事が決定した。しかしながら……帝国上層部の対応はあまりに遅きに失した。

 

 

 

 宇宙歴七六六年四月二八日。フレデリック・ジャスパー宇宙軍元帥自ら率いる同盟軍四個艦隊が三方からドラゴニア辺境軍管区に殺到。圧倒的な数的劣勢に置かれたドラゴニアの軍管区司令部は全ての同盟艦隊に対応することを諦め、アスターテ恒星系にてフレデリック・ジャスパー宇宙軍元帥が率いる二個艦隊二万六〇〇〇隻に決戦を挑む。

 

 リヒャルト・フォン・グローテヴォール大将率いる青色槍騎兵艦隊と第一辺境艦隊の残存艦艇併せて約一万五〇〇〇隻は少ないエネルギーとミサイルを駆使して奮戦し、同盟軍に彼らが当初想定していた以上の損害を与えることに成功する。が、同三〇日、副司令官クレーメンス・アイグナー宇宙軍中将が戦死。兵士に人気の高かった平民中将の死は将兵たちの士気面に多大な影響を与える。

 

 アイグナー中将の戦死後、元々数で劣ることもあり、グローテヴォール艦隊は目に見えて劣勢に立たされるようになっていく。五月三日。グローテヴォール大将は抗戦を断念。彼は機密通信文に書いた通り、いざとなれば体当たりをしてでも敵に損害を与える覚悟を決めていたが、それを他の将兵に強いる意思も能力も有していなかった。

 

「私はここで死ぬ!だが、卿らが付き合う必要は無い。逃げたいならば逃げろ!援護しよう」

 

 グローテヴォール大将は直属部隊と共に殿を務め、今や生ける伝説――帝国にとっては死神――と化したジャスパー元帥を相手取りながらも友軍艦艇の撤退を最後まで援護する。

 

「司令官閣下、大方の部隊は安全圏に離脱しました」

「何?見たところまだ四〇〇〇隻程が戦場に残っているが……」

「……恐らく、旗艦だけでジャスパーを相手取るのは荷が重いだろうという事でしょう。それに見たところ残っているのは第二次ティアマトを生き抜いた古参の者たちのようです」

「……そうか、シュタイエルマルク閣下の薫陶を受けし者たちが我先に逃げる訳がないな。まして目の前には仇敵フレデリック・ジャスパー……。よし!各艦続け!あの忌々しい行進曲(マーチ)を我々の手で終わらせてやる!」

 

 グローテヴォール大将が率いる青色槍騎兵艦隊の四〇〇〇隻は殆どがシュタイエルマルク提督と共に第二次ティアマト会戦を戦い抜いた帯剣貴族たちが指揮する艦だ。会戦全体において彼らは補給の不足によって本来の実力を発揮しきれていなかったが、この最終盤において彼らは士気と練度によって補給の不足を補い、極短期間ではあるが往時の姿を取り戻した。その戦いぶりはジャスパー元帥の旗艦『ヴァージニア』も砲撃を受け小破する程であったという。

 

 しかしながら、補給不足で勝てる軍隊などこの世界に居るはずもない。やがて彼らは深刻な物資不足に直面することになる。そのタイミングで同盟軍は完全な包囲下にあるグローテヴォール艦隊に降伏を勧告した。

 

『各艦、全将兵に叛乱軍の降伏勧告に応じることを許す。だが私は誇り高き帯剣貴族である。私が戦いを止めるのは、この心臓が止まるときだ。……私と思いを同じとする者が居れば嬉しいが、降伏を選ぶ者が居たらそれを許してやって欲しい。そして降伏する者たちよ、私は卿らを恨まないが、卿らが我々の抗戦を妨げるようならば、ヴァルハラから卿らに復讐する。絶対にな』

 

 グローテヴォール大将の旗艦『ガーランド』はその直後、最も近くの同盟艦艇に突撃した。……文字通りの意味で。哀れな同盟艦艇を道連れに『ガーランド』は爆沈する。

 

 降伏に応じる艦も確かにあったが、大部分の艦艇は『ガーランド』に倣った。エネルギーやミサイルが残っている艦はそれを手当たり次第にばら撒き、それが出来ない艦は強引に白兵戦を挑み、それも出来ない艦は『ガーランド』のように体当たりを目論んだ。

 

 

 

『ジャスパァァァァァ!この悪魔!コーゼル閣下を返せ!』

『来るな!来るなぁ!』

『我らの生き様をその目に焼き付けよ!これが本物の軍人、帯剣貴族の中の帯剣貴族たる青色槍騎兵艦隊の姿よ!』

『こいつら……いかれてる』

『死ねジャスパー!ヴォーリック、ファン、ローザスも後から送ってやる!』

『……叛徒も叛徒だがな!帝都の馬鹿共を俺は絶対に許さねぇぞ!ヴァルハラでは覚悟しやがれクソが!』

『クソ、まるでティアマト以前の頃を見ているみたいだ……帝国軍には腰抜けしか残ってないんじゃなかったのかよ』

 

 グローテヴォール艦隊と戦った同盟軍将兵は死を恐れない狂気的な戦いぶりに恐怖した。通信回線には帝国軍人たちの勇ましい雄叫びと同盟軍兵士の恐怖に満ちた叫び声が溢れた。

 

 ラインハルト・フォン・ミューゼルがその光景を見れば勝敗が決した後も無駄に血を流す彼らに怒りを感じるだろうか?政争に翻弄され、最終的に体当たりなどという愚行を選ばざるを得なかった彼らに憐れみを感じるだろうか?……少なくとも、ラインハルトがこれを賞賛する光景は考えられない。

 

 だが……私に言わせてもらえるならば、アスターテ会戦でグローテヴォール大将たちが示した勇戦は『古き良き時代』の帝国宇宙軍が有していた勇気と高潔さが示した最後の輝きだったと思う。……私は新たな時代の到来を歓迎するし、古い時代に戻ることは絶対に許せない。許せないのではあるが……グローテヴォール大将たちの姿を否定することも出来ないのだ。私もまた、軍事的、あるいは貴族的ロマンシズムに毒されているのだろうか?

 

 

 ……まあ、私の感想はどうでも良いだろう。重要なのはアスターテ会戦による決定的な敗北を当時の要人たちがどう感じたかだ。

 

 宇宙歴七六六年五月四日早朝。朝食を採っている最中に幕僚総監フォーゲル元帥から直々に報告を受けたオトフリート五世はその内容を聞き青褪め、口を開いたり閉じたりを何度か繰り返した末に御前会議の招集を命じた。

 

 同日正午過ぎ、要人を集めた緊急御前会議の最中だった。突然オトフリート五世が倒れた。出席者たちは急いでオトフリート五世を病院に搬送する。が、病院についた時、既にオトフリート五世は事切れていた。死因は急性心筋梗塞であり、恐らくはドラゴニア辺境軍管区失陥の報告を受けた瞬間に発症。高齢者の一部が発症する無痛性の心筋梗塞であり、それ故に症状に気づくことが出来なかったと思われる。オトフリート五世はまだ四八歳であり、無痛性心筋梗塞を起こすにしては若かったが……彼が即位以来受けてきたストレスを考えれば分からなくもない話である。

 

 そして、財政再建に尽力した名君オトフリート五世倹約帝の突然死は……帝国にさらなる混沌を齎すことになる。

 

 銀河の歴史がまた一ページ……。


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