アルベルト・フォン・ライヘンバッハ自叙伝   作:富川

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書き終わって気づく。二話で一日すら進んでいないという事実に。
……いや、でもほら、革命とかって本当に分単位で情勢ががらりと変わるから(震え声)


青年期・『リューベック奪還革命』(宇宙歴760年12月27日)

『ライヘンバッハ!貴様何を考えている!』

 

 スピーカーから聞き覚えのある声がする。上階を見上げると、そこにはこれまた見覚えのある顔があった。

 

 処刑場の上階には処刑場全体を展望できるような高い位置に部屋が設置されている。その部屋から担当者は窓越しに処刑を指揮するのだ。ロンぺル少尉はその部屋から窓越しに私を見下ろしていた。……ドラマなんかで見る手術室をイメージしてもらえば分かりやすいだろうか?上から手術室を病院長や医局長が見下ろしている光景を見たことがあるだろう?

 

『総督を手に掛けたばかりか、処刑を邪魔するとは、貴様らのやっていることは叛乱行為だぞ!極刑に値する!』

 

 ロンペルががなり立てる。『叛乱』や『極刑』という言葉で、私に従っていた兵士たちが動揺するのが分かった。彼らは事態を正確に把握している訳ではない。

 

「叛乱を起しているのは貴様らだロンペル!私、アルベルト・フォン・ライヘンバッハ宇宙軍大尉は宇宙艦隊副司令長官カール・ハインリヒ・フォン・ライヘンバッハ上級大将とエルザス・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン辺境軍管区司令カルステン・フォン・グリュックスブルク中将の密命を受けている!内容はリューベック自治領(ラント)における駐留艦隊司令部の内偵だ!」

 

 私はハッタリをかます。全て嘘という訳でもないが、当然父からそんな密命は受けていない。が、父の勇名とライヘンバッハの知名度に期待して嘘をついた。私は間髪を入れずに続ける。

 

「貴様らの企みは全て分かっているぞ!このリューベックで騒乱を起こし、それによって帝国と辺境自治領の関係を悪化させる。あわよくばリューベック全体で反帝国紛争を起こし、帝国軍がサジタリウス腕の叛乱軍に対処する力を無くす!それが狙いだろう!ここに居る第三作戦群司令代理メルカッツ少佐がその証人だ!」

 

 私はメルカッツ少佐を指し示す。当然、メルカッツ少佐はそんな陰謀など聞いていないし、証人でもないが、この場は空気を読んでくれたらしく、胸を張ってロンぺル少尉を睨みつけた。

 

『な、何!?馬鹿な、私たちは……』

「うるさい!」

 

 私はロンペルが反論してくる前に正当性を訴える。ロンペルに従っている兵士も、私に従っている兵士も誰も状況を理解して従っている訳ではないのだ。

 

「フェルバッハ総督を襲って、私を犯人に仕立て上げるとは考えたな!だが欲をかき過ぎた。総督が負傷すれば次に権限を継承するのは副総督!このリューベックでは現在副総督は空席だから、高等参事官か財務局長辺りが正しい継承者だ!それなのに駐留艦隊司令部が出張ってきたことは、悪辣な企みがあった動かぬ証拠!単に階級を理由に出張ってくるのであれば、領都警衛隊司令官ハンテンブルク准将やランペール方面司令官ロッテンハイム准将が継承するのが筋だからな!」

 

 私は一方的にまくし立てる。……論理的にはお世辞にも洗練されているとは言えないが、この場は勢いで誤魔化すべきだ。無理が通れば道理は引っ込むのだ。

 

『ば、馬鹿な事を言うな!処刑隊!丁度良い、この反逆者を撃ち殺せ!」

 

 ロンぺル少尉の指示を受け、迷いながらも監獄所属の兵士たちが銃を構えようとする。

 

「正義は我らにあり!中隊構え!」

 

 隣の部屋の騒ぎを収めた後、こちらの部屋に飛び込んできたヘンリクが叫び、私に従っている兵士たちが銃を構える。私の演説が功を奏したのだろうか、ヘンリクの率いる総督府防衛大隊第二中隊の兵士たちは私を当面の指導者として承認することにしたらしい。

 

「待て!双方銃を収めよ!」

 

 その時、新たな声が私たちの間に割って入る。先ほど私を追いかけてきたアドラーとかいう士官だ。

 

「ライヘンバッハ大尉の総督暗殺未遂はあくまで疑惑に過ぎん。裁判も経ずに処刑することは許されない!」

『な!アドラー中佐、小官に逆らうのか!?』

「図に乗るな小僧!貴官はノーベル大佐から『囚人』の扱いを一任されているに過ぎない、監獄と大隊の指揮官は私だ!」

 

 アドラー中佐は一喝する。そして私の方へ向き直った。

 

「これは普通ならば重大な越権行為ですぞ、大尉。それこそ叛乱行為と取られてもおかしくはない」

「小官は上位司令部より密命を帯びている」

 

 アドラー中佐は険しい表情だが、ロンぺル少尉よりは話が通じそうだ。

 

「その証拠は?」

「……小官の部下、アーベントロート中尉が命令書を持っている」

 

 アドラー中佐は首を振った。

 

「ではその命令書とやらを見せてもらうまでは、大尉殿の指示にも従えませんな。現状駐留艦隊司令部が総督府を指揮下に収めていることは確かに強引ではありますが、法的に話が通らない訳でもない。総督個人が指揮を執れない場合は大尉殿の御指摘通りですが、総督府全体が機能を停止した場合は駐留艦隊司令部がその権限を継承するのは越権行為とは言えません」

「……後悔するぞ中佐。小官の名を聞きそびれた訳でもあるまい」

 

 アドラー中佐の言ったことは正しい。私は不本意ではあるが、アドラー中佐をライヘンバッハの名で恫喝する。……が、これは逆効果だったらしい。

 

「……小官がこんな辺境に居るのは何故か分かりますかな?大尉殿。ブラウンシュヴァイク公爵の縁者に正論を説いたところ、気づけばこんな所に居りました。……今更何を後悔することがあるのか、教えて頂きたいですな!」

 

 アドラー中佐は皮肉めいた笑みを浮かべながら私を睨みつけた。役者が違う、と私は思わされた。

 

「ライヘンバッハ大尉、メルカッツ少佐、オークレール少佐を拘束し、処刑を再開せよ。オークレール少佐の中隊は武装を解除し……」

「失礼します!アドラー中佐、せ、正門に群衆が押し寄せてきました!」

 

 アドラー中佐の指示を聞き、いよいよ帝国軍同士の戦闘も覚悟しないといけないかと思ったその時、一人の士官が駆けこんできた。

 

「何だと!?」

「幸い、正門は乱入してきた帝国軍兵士たちが閉じたために、監獄内への侵入は許しておりません」

「待て!『正門は』だと?跳ね橋はどうなった?」

 

 私はつい、横から兵士に尋ねる。兵士はこの部屋の状況を知らないからだろう。私にすぐに返答した。

 

「ロストン少佐と乱入してきた兵士たちが押し問答を繰り広げている間に大量の自治領民が跳ね橋に殺到してきました。跳ね上げることは不可能かと」

『アドラー中佐、群衆に伝えろ!散らねば残り半数の囚人も処刑するとな!』

「アドラー中佐!まだ処刑をやるつもりか?怒り狂った群衆が門を打ち破る前に囚人たちを解放するしかない!」

 

 ロンペルと私がそれぞれアドラー中佐に語り掛ける。

 

 ……この時、私たちは誰も知らなかったが、ランペール州と領都特別区の境の都市レンドにおいて、リューベック駐留帝国軍第四師団と群衆の間で『戦闘』が起きていた。ランペール州全体を統括するカール・フォン・ロッペンハイム地上軍准将は帝国軍人には珍しく、自治領民を蔑視しない開明的な性格だったが、この場合はそれが悪い方向へ働いた。ロッペンハイム准将は帝国軍に一切の武力行使を禁じ、放水と催涙弾の使用にすら消極的であった。ある意味でその対応は間違っていない。火に油を注ぐ奴と、火を消そうとしない奴、どちらかと言えば後者の方が正しいに決まっている。だが、処刑開始と共に群衆の間で不穏な空気が流れ、ついにレンドに都市ロブセンからチェニェク・ヤマモト率いる集団が到着するに至り、瞬く間に大暴動へと発展した。

 

 ロッペンハイム准将は折り悪く、群衆を説得する為に司令部を離れていた。しかも説得の為に群衆に極めて接近しており、大暴動の初期に犠牲になった。ロッペンハイム准将が武力行使を許可しないまま殉職したことで帝国軍の対応は後手に回り、ロッペンハイム准将が殉職したことを第四師団長ラーネル地上軍准将が把握し、正式に発砲を許可した時には帝国軍の前衛部隊は群衆によってズタズタにされ、彼らの有していた武器はそのまま暴徒によって帝国軍に向けられることになった。

 

 帝国軍第四師団はランペール州と領都特別区の境界に部隊を広げて移動を制限していた為――そしてレンドの暴動発生後も暫く持ち場に残っていた為――にレンドに対して適切な戦力を派遣することが出来なかった。一方で自治領民の中には自治領警備隊で初歩的な軍事訓練を受けた者も少なくなく、レンドにおける第四師団と暴徒の『戦闘』はラーネル師団長が戦死した第四師団がレンドを放棄するという形で幕を閉じることになるが……この段階ではまだ第四師団が絶望的な抵抗を続けている。監獄を取り囲んだのは全員ベルディエの住人たちだ。

 

 

「……ロンペル少尉!この状況では処刑の継続よりも監獄の防衛を優先せざるを得ない。私と監獄駐留大隊は貴官に協力できかねる」

『な、何!貴様ぁ!』

「どうしてもやりたいのならば貴官が自分の手でやられると良かろう。オークレール少佐、貴官の部隊には一時的に私の指揮下に入ってもらう。良いな!」

「は!」

 

 アドラー中佐はそう言うと囚人たちを牢へ戻すように兵士たちに指示し、処刑場を去る。

 

「兵長、ゾルゲはどうか?」

「出血が酷い……大尉殿の介入があったからでしょう。見たところ急所は外れていますが……。監獄では応急処置が精一杯かと」

「分かった。軍医はまだか!」

 

 私がそう叫んだ時、医療班がようやく到着した。ところがそこでロンペルが口を出す。

 

『そいつを治療することは許さん!そいつは逆賊だぞ!?栄光あるゲルマン民族を騙り、総督府や駐留艦隊司令部に出入りしていた男だ!汚らしいラテン民族の分際で……恥を知れク』

「ああああああああ!」

 

 私は腰のホルスターからブラスター銃を抜き、上階のロンペルの居るあたりに向かって乱射した。処刑場に面している窓だ。万が一にも銃撃を受けても大丈夫なように防弾ガラスが完備されている。それでもロンペルは腰を抜かしたようだ。

 

「ウンザリだ!宇宙時代に何がゲルマン民族だ馬鹿野郎!人の価値はそんなもんで決まるか!お前の弟は平民だから貴族に殺されたんだろう!?それを憎んでおいて他民族への差別は許容するか!あまりの愚かさに愕然とするな!口を縫い合わせておけ!次に余計な事を言ったら俺が殺す。貴族の俺が平民のお前を堂々と殺してやる!ゲルマン系のお前がここで他民族にやってたみたいにな!」

 

 私はそうまくし立てた。そのまま医療班にゾルゲを連れて行くように命じた。ロンペルは何も言えないでいる。私は囚人たちが牢に戻されようとしている姿を確認してから、ヘンリクを連れて監獄司令部に向かった。その際、分隊を一つ残し、万が一にでも処刑が再開されないように見張らせるのを忘れなかった。メルカッツ少佐はロンペル少尉を見張ると言ってその場に残った。

 

 

「来たか!オークレール少佐、ライヘンバッハ大尉!」

 

 司令室にはアドラー中佐と私たちの部下が何人か居た。私たちを制止しに来たアドラー中佐とすれ違いになったらしく、部下は司令室をあっさり制圧したようだが、先ほど帰ってきたアドラー中佐に一喝されて、あっという間に奪還されてしまったらしい。

 

「状況はどうなっています?領都は……」

「見ろ、この惑星の住人は自らのリーダーたちを追悼する為にえらく野蛮な儀式をするらしいな!」

 

 アドラー中佐は不愉快そうにモニターを指差す。そこには民衆たちが……銃剣に憲兵の首を刺して高々と掲げた民衆たちが映っていた。口々に帝国や皇帝、駐留艦隊司令を罵倒している。『奪還せよ!』と叫び門を打ち破ろうとする。どこからか装甲車を用意し、それによって門を打ち破ろうとしているようだ。

 

「……彼らにそうさせたのは私たちでしょう」

 

 私はそう呟くがそれでも眼前の光景は見るに堪えないものだった。縛られた帝国軍兵士が跳ね橋の端に立たされ、次々に水の中に落とされた。ご丁寧に彼らの両足には重しとなるような様々な物が縛り付けてある。運よく硯を付けられたために沈まなかった憲兵も居たが、すぐに跳ね橋の上から銃撃を受け蜂の巣にされる。

 

 装甲車の前面にかつてその装甲車を運転していたであろう兵士が括りつけられ、その状態のまま門へと装甲車が激突した。衝突の瞬間は丁度私の見ていた監視カメラからは死角になっていた。縛り付けられていた兵士がどうなったかは……考えたくないし書きたくもない。『こっちを見ろ!臆病者!』そう叫んで兵士の腕を門の前で切り落としている自治領民も居た。泣き叫ぶ兵士の口に銃を突っ込んで……いや、もう止めておこう。もっと詳しく知りたいイカレ野郎は図書館に行って『リューベック奪還革命』の資料映像を確認すると良い。私は御免だ。

 

「発砲を許可する!奴らに節度を弁えさせてやれ!」

「な!?中佐!」

 

 私は止めようとしたが、中佐の鋭い眼光に怯む。

 

「言っておくがな、これは別に私個人の感情故の命令じゃないぞ!?このままだと間違いなく門は打ち破られる。その後、この監獄でも門の外と同じことが繰り返されるだろうな!貴官も私も仲良く暴徒の玩具(オモチャ)だ!平民も貴族も区別無くな!」

 

 私はアドラー中佐の言葉に同意せざるを得なかった。アドラー中佐の発砲許可によって、門に体当たりを繰り返していた装甲車が対戦車ミサイルの直撃で大破炎上した。機関銃が火を噴き、門のすぐ近くに居た自治領民が吹っ飛ぶ。群衆も黙っては無い。殺した帝国兵から奪った武器で応戦する。それは散発的なモノで、ほとんど脅威にはなり得なかったが、城壁から不用意に顔を出した兵士が撃たれ、水堀へと落下した。群衆は監獄側の反撃で悲鳴を上げていたが、その瞬間だけは歓喜の声がそれを上回ったように思える。

 

 帝国兵も黙ってはいない。狙撃手が居ると思われた場所に再び対戦車ミサイルが撃ち込まれた。門前の群衆の蛮行を見せられて、我慢の限界も来ていたのだろう。明らかに帝国兵の攻撃は防衛から復讐へと変わりつつあった。私は監獄側から打ち出されたミサイルが、群衆と、彼らが盾にしようとしていた帝国兵を纏めて吹き飛ばしたのを見た瞬間、アドラー中佐に再度進言した。

 

「中佐!既に群衆は押し戻されつつあります。過剰な攻撃はさらなる民衆の怒りを招くだけです。攻撃を止めましょう!」

「言いたいことは分かるがな……今銃撃を止めたらあいつらは大人しく家に戻るのか?」

「……」

 

 アドラー中佐は私にそう言った。私は言葉に詰まる。

 

「……跳ね橋を上げましょう。それで解決です」

「そう、跳ね橋があります。……銃弾にも限りがあるはずです」

 

 ヘンリクが進言するのに続けて私もそう言う。

 

「領都と寸断される。秘密通路はあるがな、この状況では使いたくない」

 

 アドラー中佐はそう言って拒否したが、私たちは説得し続けた。

 

 やがて群衆側が明らかに統率され、装備の整った集団へと変わっていった。私は直感した。ミシャロン氏の独立派が動いたのだ。ミシャロン氏自身は捕まっているが、あの人ならば機関や同盟側を出し抜いて、独自の秘密基地やメンバーを用意していてもおかしくないし、ミシャロン氏の『切り札部隊』なら軽率な動きはしない。ここぞと言ったときに動くだろう。……後で知ることになるが、ミシャロン氏の『切り札部隊』が動く一〇分前の午後二一時二〇分、レンドの大暴動に参加していたチェニェク・ヤマモトがロッペンハイム准将の戦死を把握し、その情報を領都に流したらしい。それを受けてミシャロン氏の『切り札部隊』は監獄襲撃の支援に動いたようだ。

 

「アドラー中佐、敵は明らかに跳ね橋の可動部を狙いつつあります!今上げなければ……」

「やむを得ないか……!」

 

 午後二二時〇八分、アドラー中佐によって跳ね橋を上げるように命令が降った。それによって跳ね橋が上がっていく。群衆と独立派がそれを妨害しようとしたが、監獄側も斉射でそれに応じ、何とか跳ね橋を上げることには成功した。……跳ね橋の上から逃げ損ねた数人の群衆が門の近くまで滑り落ちた。監獄側は彼らに容赦のない銃撃を浴びせた。私は勿論、アドラー中佐も情報収集の観点から発砲を禁じたが、その命令は届かなかったか、無視された。

 

 こうして、私にとっての激動の宇宙歴七六〇年一二月二七日は終わることになるが、『クラークライン監獄攻防戦』はその一日では終わらなかった。また、同日一九時一一分、総督府が陥落しランズベルク局長を含む数人の幸運な、あるいは目端の利く職員を除く全職員が混乱の中で死亡――虐殺された。総督府防衛大隊はすぐに防衛に出動しようとしたが、暴徒を前に行軍が出来ず、総督府方面で一際大きな爆発がした段階で救援を断念。駐屯地に戻って立てこもる他無かった。

 

 こうした状況下で領都警衛隊司令部は一早く対応し、領都の混乱を鎮めるべく抵抗を開始したが、同日二一時三〇分、司令部庁舎内でクラウス・ハンテンブルク地上軍准将が帝国軍中尉によって射殺されたことで指揮系統が混乱、また信じられないことに軍内にリューベック側に呼応している工作員が居ることが明らかになり、非常に苦しい状況に追い込まれ、ついに司令部庁舎に立てこもっての抵抗を余儀なくされた。

 

 同日二三時四二分、態勢を立て直した帝国軍第四師団を中核とする部隊がランペール州から領都ベルディエへ向かう群衆を襲撃したが、群衆は一斉に逃亡。以後、帝国軍は各所に散らばりながら反帝国活動と領都ベルディエへの『進軍』を続けるランペール州民に苦しめられることになる。

 

 尤も、私たちがこうした情勢を完全に知り得たのはもっと後の事である。……ミシャロン氏は我々機関も把握していない策をいくつも張り巡らせていたらしい。駐留帝国軍の通信網が爆弾テロによって各所で混乱、またいくつもの欺瞞情報によって我々は騙されていた。

 

 こうした混乱の中で『リューベック奪還革命』の初日は終わることになる。私は事態が完全に自身の――そして機関の――コントロールを離れたことを認めざるを得なかった。

 

 

 

 

 


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