剣鬼と黒猫   作:工場船

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体育館裏のカースソード
第四十三話:賑いの修業場


 

 駆ける。

 全身の躍動を前へ進むベクトルに変え、大きく跳躍する。疾風を追い抜くに達する時間は刹那、残像すら生み出す急加速は余人の目に止まらない。

 流れる景色を見下ろせば、荒涼とした地面に岩の柱が乱立している。

 その隙間から、伸びる鋼の輝きが見えた。

 

「――!」

 

 迫る一撃は鈍色の流星。

 まっすぐこちらに伸びるそれに対し、駆ける剣士――暮修太郎(くれしゅうたろう)は白銀の太刀を振るうことで弾き逸らした。

 同時に空中で身体を捻転させ、逆方向から放たれたもう一つの流星を撃ち落とす。そのまま岩柱に着地すると、襲い掛かる八つの人影を迎え撃った。

 

『おおおおっ!!』

 

 人影の正体は、古代中華の鎧を纏う青年だ。

 頭に金輪をつけ、烈昂の気合いと共に鉄棒を振るう人影たちは、なんと全て同じ容姿をしていた。

 彼の闘仙勝仏――斉天大聖・孫悟空が末裔、美猴(びこう)である。

 

 仙術によって為される八つの分身が、揃いの棍『如意棒』を持って修太郎に殺到する。伝え聞く『西遊記』の物語において孫悟空を助けた身外身の術だ。

 本体より多少劣るとはいえ、美猴の力を反映した分身たちはそれぞれ並の達人を凌駕する技量を持つ。

 波濤の如く迫りくる鉄棒の猛威に、修太郎は振るう銀閃の結界を以って防御に徹した。

 

 前後、左右、上方、下方。

 回転鋭く薙ぎ払われたと思えば、その隙間を縫って捻りの入った重い突きが姿を現す。

 完全に統制された分身たちのコンビネーションは、修太郎とて容易く打ち破れるものではない。

 多勢に無勢のこの状況、凌げるか押し切られるかは五分といったところだ。

 このまま戦うならば、だが。

 

 次の瞬間、修太郎は斬風の乱舞を放ち岩柱に大きな傷をつける。

 その隙を突かれて頬を棒が掠めたが、何のことは無い。そのまま続く震脚から衝撃の波が発せられ、岩柱を砕け散らせた。

 

『ちぃッ……!』

 

 舌打ちをして散開する分身たち。

 だが、このまま逃げるようなことはしない。

 半数を踏み台に半数が宙に舞いあがり、如意棒を天へと掲げる。

 そして。

 

『デカくなれッ、如意棒!!』

 

 未だ滞空する修太郎へと四つの巨大な柱が落下する。

 超重量が大地を叩き割り、空間全体を軋み震わせた。

 衝撃が暴風となって辺りに大量の土煙を撒き散らす。

 

 踏み場の無い空中だ。これは流石に躱せまい。

 美猴の予想はしかし、次の瞬間土煙を破って出てきた影に覆される。

 巨大化した如意棒の上を大地と垂直に駆け抜ける姿は、紛うことなき暮修太郎。蒼い炎の闘気によって土煙を吹き飛ばしながら、その身体に大した傷は見られない。

 受ける棒を一つに絞り、全身を使った化勁によって受け流すことで見事に攻撃を凌いだのだ。

 

 分身の一人に鋭い膝蹴りが突き刺さる。加速によって生まれた運動エネルギーを顔面に叩き込まれた分身は、間を置かずして消滅。如何なる体術の妙技か、その勢いを維持したまま身体を横に回転、刃の如き蹴撃が傍にいた分身の頸骨を砕き折り、同時に振るわれる太刀がさらにもう一人の分身を切り裂く。残る分身が放った攻撃を脇の下に通して回避しつつ、棒を掴んで引き寄せれば、そのまま斬龍刀を小太刀に変え、心臓目掛けて突き込んだ。

 

 休む暇は無い。

 今度は刃を野太刀に変えて、背後に感じる気配へと走らせる。

 超速に達した瞬間質量を増大させた斬撃は、二体の分身が放つ攻撃の一切を見事に弾いてその命脈を切り裂いた。

 

 このまま修太郎の攻勢が続くかと思われたがしかし、残る分身が伸ばした二本の棒が野太刀の刃を絡め押さえつける。

 瞬間、上空より影が迫った。

 

「受けな、暮修(くれしゅう)!!」

 

 無論のこと、美猴。

 しかし分身ではなく本体だ。

 

 すかさず斬龍刀を野太刀から太刀へと戻し拘束をほどくが、美猴の攻撃を完全に防ぐには間に合わない。

 辛うじて刃で受け止めるものの、分身とは比べ物にならない膂力と棍の冴えからくる大威力が修太郎を地に叩き落した。

 

「ぐっ……!」

 

 受け身と共に全身の筋肉を操作し、墜落の衝撃を受け流せば周囲の大地が爆ぜた。

 ダメージは最小限にとどめたがしかし、それでも息が詰まる程の衝撃が修太郎の動きを一瞬妨げる。

 その隙を見逃さず、分身たちが棒を構えて迫る。伏せる修太郎は転がりながら体勢を整えると同時に刃を走らせ、敵の攻撃を捌いていく。

 分身の数は二体。それぞれ挙動極めて素早く、振るう棍の冴えも決して侮れるものではないが、こと近接戦闘に限り神域の技量を持つ修太郎ならば凌駕することも可能である。

 

 突き込まれた棍を刃に滑らせ外側に逸らす。大きく一つ踏み込み、分身の懐に潜り込もうとすれば、すぐさまもう一体がそれを阻むべく攻撃を放った。

 修太郎の太刀は一方の棍を防ぐのに使われている。

 この攻撃は直撃する――。

 そう思われたが、しかし。

 

 棍が相手の胸に突き刺さろうとした刹那、修太郎の身体が跳ねた。

 跳躍と同時、大地と身体を水平にして高速回転、太刀と接触していた棍は威力を上方向に逸らされ宙を舞い、襲い掛かる棍は身体の下を通り過ぎる。その勢いのまま刃が振り下ろされれば、棍を構えた分身は脳天を裂かれて消失した。

 残るは得物を失った一体だけだ。

 着地した修太郎が刃を放とうと構えたその時。

 

「――!」

 

 蹴り出した地面が急激にぬかるみ、修太郎の足を飲み込む。

 見れば、遠くに立つ美猴の本体が如意棒を大地に突き刺し、こちらを眺めてにやりと笑っていた。おそらくは仙術の地形操作か。美猴が如意棒を引き抜けば、地面のぬかるみは一瞬にして元の固さを取り戻し、修太郎の足が土深くに固定された。

 それによって生まれた隙は大きく、分身に太刀を持った腕を取られ組みつかれてしまう。拘束を振りほどくべく、すかさず拳を繰り出す修太郎。

 しかし、それが敵を吹き飛ばすことは無かった。

 

「ちっ……!」

 

 美猴の分身は寸前にその身体を鋼鉄へと変えたのだ。

 絶大な勁力の籠った修太郎の拳は、それでも鉄像の半身を砕いたが、依然として動きは封じられたまま。

 そして、この好機を逃す美猴ではない。

 

 疾風の如く駆けながら、引き抜いた自身の髪の毛を口に含み、仙気と共に吹き出す。

 すると無数の猿が空中より次々と生み出された。

 

「いきなぁ!」

 

 号令を受けた猿たちは四足を用いて疾走し、修太郎に襲い掛かる。

 数を稼いだため先ほどのような精巧なものではないが、これもまた身外身の術。

 機関銃の如く飛び掛かる猿の群れを次々と拳や手刀で叩き落していく修太郎だったが、片腕と足を封じられた状態では限界がある。

 

 手刀が数匹をまとめて引き裂いた直後、とうとう猿が組み付きを成功させ、その身を鋼鉄に変える。重さが増した腕でもなお敵を迎撃し続ける修太郎だったが、一匹、また一匹と飛び付かれてしまっては、もはや抵抗できる余地など無かった。瞬く間に猿の群れが山と圧し掛かり、その全てが鋼鉄に変化する。

 それを確認した美猴は、勢いをつけて天高く飛び上がる。

 

「如意棒ッ!」

 

 振りかぶった如意棒は、天を突くような大きさだ。

 身外身の分身が持っていたそれよりもなお膨大な質量は、正真正銘の神珍鉄である証。全身に漲る闘気が妖仙としての膂力を最大限にまで高めれば、龍王すら一撃で昏倒するだろう破壊力の塊が生まれた。

 

「おおおおーーーーりゃあぁッ!!」

 

 解き放たれた一撃が大気との摩擦で燃え上がり、熱風を巻き起こしながら地に落ちる。

 目指すは鉄猿の山、その下に封じられた暮修太郎。

 はたして破壊の鉄槌は、誰にも止められることなく全てを砕いた。

 

 響く轟音、震える空。

 割れた大地が大きく弾け、衝撃波と共に飛び散った。

 隕石が落下したかのごとく、跡には土煙舞うクレーターが残るのみ。

 

 熱波の影響で赤々と輝く破壊痕の上空、如意棒を元のサイズに戻した美猴は、觔斗雲に乗って様子を窺うが――。

 

「……はっ、そうこなくっちゃあ面白くねぇ」

 

 美猴が見るのは地表ではなく、自身が立つよりもはるか上空。

 そこに小さな影が見える。

 だんだんとそれが近づけば、長身痩躯に猛禽を思わせる鋭い目つきがあった。

 修太郎だ。

 

 額から血を流し、両腕は芯が抜けたかのようにぶらぶらと風に揺れているが、それだけだ。白銀の太刀も、彼自身の命も未だ健在。

 どうやったかは知らないが、必殺の攻撃を凌がれた美猴は笑うしかない。

 だが同時に、それでこそだという感情もあった。あれぐらいで死んでもらってはつまらない。

 

 対する修太郎は落下しながら両腕の関節を嵌めなおす。

 先ほどの拘束は実に危なかった。全身を鋼鉄の猿に組み付かれ、超重量で押さえつけられてしまえば修太郎自慢の体術もまったく役に立たない。文字通り手も足も出ず、どうしようもない状況だったが、幸いなことに頭と首は動いたのだ。

 まずは頭突きで地面を破壊し、空いたスペースを使ってさらに強力な頭突きを繰り出す。そうして猿をいくつか破壊した後に両腕の関節を外して拘束から引き抜き、その際リングに戻していた斬龍刀を太刀に変える。あとは斬るだけだ。

 

 とはいえタイミングはギリギリ。わずかにでも遅れていたら確実に死んでいただろう。

 間一髪躱せたにしても、まったくの無傷というわけではない。凄まじい破壊力の余波は、小さいながらも修太郎の身体に確かなダメージを刻んでいる。

 

 ――素晴らしい。

 

 まっすぐに美猴を見据え、闘気と共に練り上げるは魔法の力。

 魔剣投擲ではない。連日の徹夜でやっと実用段階までこぎつけた術式、それはすなわち――。

 

 足元にルーン文字が数度瞬いて、次の瞬間に修太郎は虚空を跳躍した。

 

「な――マジか!?」

 

 予想外のことに驚く美猴はしかし、臨戦態勢を崩さない。矢のようにこちらへ突進してくる相手を迎え撃つ。

 正直な話、修太郎を相手に純粋な一対一の接近戦は厳しいが、それもまた良し。元々先ほどのようにちまちまやるのは性に合わないし、何よりもここで逃げては男が廃る。

 花果山が石猿一族の武威、目に物見せよう。

 

「おらッ、こいやぁ暮修!!」

 

 両者ともに凶悪な笑みを浮かべて、太刀と棍とが交わる火花を散らせ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

                  ―○●○―

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、これ本当に模擬戦ですか」

 

「そうだけど、どうかしたにゃん?」

 

 互いに殺す気満々、どう見ても死闘。

 塔城小猫の疑問に黒歌はあっけらかんと返す。

 そんな姉猫を、妹猫は目を丸くして見つめた。

 

「あ! もしかして白音ってば、私の頭がおかしくなったって思ってるにゃん? 失敬ね、私だってこれが普通じゃないことくらいわかってるわよ」

 

「……いえ、まあ、そうならいいんですが……」

 

 失礼しちゃうにゃー、と憤慨する黒歌から目を逸らす小猫。この状況を許容すること自体が既に普通とは言い難いのだが、それは黙っていた。

 

「むむむ……あんなに楽しそうな師匠は初めて見るぞ」

 

 そのすぐそばには歯がゆげな表情で戦いを眺めるゼノヴィアがいた。

 

 ここは冥界、レヴィアタン領にある訓練用フィールド。

 黒歌たちは、その端にそびえ立つ一際巨大な岩柱の上で修太郎と美猴の模擬戦を眺めていた。

 

 このフィールドは本来、セラフォルーとその眷族が戦闘訓練その他諸々(主にセラフォルーの映画撮影)を行うために作られた場所だ。

 レーティングゲームで培った亜空間形成技術を応用して拡張された地下空間であり、都市ひとつが丸々収まるほどの広さに加え、セラフォルーの全力攻撃すら余裕を持って耐えるほどの頑強さを有している。なんとある程度の天候再現や、地形変更機能も備え付けられているらしい。

 なぜそのような設備を彼らが利用しているかと言うと、修太郎がシトリー眷族の指導を見るにあたって要求したものがこれだったからだ。

 

 日々の鍛練を怠らない修太郎だが、常々それを行う専用のスペースが欲しいと思っていた。

 気功やチャクラなどの自己内部だけで完結する修行ならば問題無い。しかし大威力の技を使う場合は周囲に対する影響も考えなければならない。今までは黒歌の形成した結界や異空間の中で行っていたが、それにしても限界はあるのだ。たとえば会談での一戦において放った『灼火天鎚』などの連携魔剣は、その超威力から中々修行できないでいた。

 強大な敵と相対しなければならない現状、扱える力が多いに越したことはないだろう。

 

 セラフォルー曰く、ここ数年は大して利用していないため、自由に使って構わないとのこと。維持・整備などのメンテナンスはあちら持ちなので、どれだけ破壊しつくしてもいいらしい。ありがたいことだ。

 

 と言う訳でさっそく使わせてもらうことになったその時、タイミングよくやってきたのが美猴である。

 黒歌と美猴はルーマニアで一戦交えていたが、修太郎はヴァーリの相手をしていたので今の彼がどれほどまで腕を上げているか正確に把握していない。それはあちらも同じであるため、丁度いいので手合せしようということになった。

 

 そしていざ試合開始といったところで現れたのが小猫とゼノヴィアである。

 新しい訓練場所が確保できたとして黒歌が小猫を呼び、修太郎と修行がしたいゼノヴィアがそれを耳ざとく聞きつけたのだろう。

 

 最低1キロメートルは離れているにもかかわらず、白刃と鉄棒が交わる音は明瞭に響いてくる。

 時折如意棒の一撃が岩柱を崩壊させ、斬撃の風が瓦礫を切り裂いて舞い乱れる様子を見せていた。オーラも放たず術も使わず、力と技だけで周囲に破壊を振りまくさまはまるで現実感が無い。

 

 舞い散る火花は一瞬たりとも絶えず、地表を滑り、天空を駆ける。

 地上戦では美猴が押し込まれているようだが、空中戦となると動きが直線的になりがちな修太郎はうまく追撃できないらしかった。

 結果として、互角の応酬が繰り広げられている。

 しかし。

 

「あ、そろそろ終わるにゃん」

 

 黒歌がそう呟くと同時、修太郎の片手平突きを美猴の如意棒が受け止めた。

 刹那、空中で睨み合う二人。

 修太郎はそのまま素早く握りを返すと、柄頭を空いた片手で殴りつける。途端、激しい衝撃が武器を伝播、棍を握る美猴の手が弾けるように引き離された。

 ――月緒流『鋼走(かなばしり)』が崩し『刃崩(はくずし)』。

 思わず息をのむ美猴。直後に放たれた刃が如意棒を完全に吹き飛ばすとともに、続く疾風の蹴りが顔面を直撃し、大地に墜落する。

 

 土煙の中起き上がる美猴の鼻先に、白刃が突きつけられた。

 勝負ありだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっそ、相変わらずのバケモンっぷりだな暮修。俺っちも大分腕を上げたってのによぅ」

 

「唯一の取り柄だ。後れを取るわけにはいかない。そちらこそ、見事な分身術だった。以前の倍とは恐れ入る」

 

「倶利伽羅剣盗まれたせいで、クソジジイに滅茶苦茶しごかれたからな。今なら玉龍(ウーロン)にだって勝てるぜぃ」

 

「ほう」

 

 かかかっ、と笑う美猴と共に、修太郎は黒歌がいる岩柱の上に戻ってきた。

 二人とも服は破れ、鎧は砕けとボロボロだ。しかし動くのに支障はない程度にダメージは少ないらしく、ピンピンしている。

 

「お疲れにゃ、シュウ。術式の調子はどんな感じ?」

 

「ああ、悪くない。だがやはり発動が遅いせいか、細かい挙動が難しい。力の消耗も激しいな。要改良といったところだが、出来ると思うか?」

 

「ん~、ロスヴァイセにも聞いてみないとはっきりとしないけど、かなり強引に成立させた術式だから、これ以上となるとシュウの方が技量を高めない限りどうにもならないと思うにゃん」

 

「やはりそうなるか……」

 

 つまりは魔術の実力不足と言うことだ。正直な話、改善はかなり厳しい。

 

「おいおい、暮修なら魔法より軽功極めた方が早いんじゃねえか? 俺っちと打ち合えるほどってんなら、内功の練りは相当なもんぜぃ。それくらいありゃあ、軽功術なんざより取り見取りだろ」

 

 黒歌の返答に腕を組んで考え込む修太郎に、美猴が呆れた声を出す。

 それに対して反応したのは黒歌だ。

 

「そんなことは百も承知なのよ。肝心の師匠になる人がいないから仕方ないにゃん。それともあんたが教えられるって言うの? アホ猿(・・・)

 

「ああん!?」

 

 冷やかに言い放つ黒歌に、美猴は額に青筋を浮かべた。

 先ほども話にあったように、かつて闘仙勝仏の宝物庫から黒歌が倶利伽羅剣のレプリカを拝借したせいで、彼はひどく厳しい修行を課せられていたらしい。と言うのも、当時宝物庫の番を任されていたのが彼であったからだ。

 修太郎に不意を突かれて気絶させられたのは、状況と実力を加味すれば仕方ない。しかし課された責務を怠ったことは許すわけにはいかないとして、美猴は一から鍛えなおされることとなった。

 人の持ち物を勝手に盗んだ(彼女曰く借りてきた)黒歌も悪いが、美猴にしても言ってしまえば自業自得である。

 元々大して仲が良かったわけでもないため、ルーマニアでの敵対を経て現在、猫と猿の関係は最悪だった。

 

「やめろクロ。美猴、俺も軽功に関して鍛えてはいるのだ。しかし空を駆けるとなると手さぐりでは中々難しい。今は不完全だが、すぐに使うなら魔法(こっち)の方が手っ取り早いと踏んだ」

 

「……まあ、そういうことなら仕方ねえけどよ。俺も空飛ぶレベルの軽功使いなんて知らねえし、そもそも今の時代にいるかもわからねえしなぁ……」

 

「何よ、偉そうなこと言ってそっちだって何も知らないんじゃない」

 

「うるせぇな、中国は広いんだっての。……つーか、それよりもいいかげん倶利伽羅剣返せよ、バカ猫(・・・)

 

「にゃんですって!?」

 

 それを皮切りに二人の言い合いが始まる。

 その光景に修太郎は内心溜息を吐き、しかし止めることはしない。ここが市街地ならともかく暴れても何ら問題ない場所なのだから、一度ぶつかった方が何かと早いだろう。連戦となればおそらく美猴は負けるだろうが。

 

「師匠、次は私の番だぞ」

 

 横合いからかかった声に振り向けば、やはりと言うかゼノヴィア。

 ゲームでは実力を出し切れなかった感が激しく伝わってきたので、この場で確かめてみるのもいいだろう。……どうせ断っても諦めないのだろうし。

 修太郎としてはその元気を勉学に向けてくれると嬉しいのだが、意外なことにこの少女、成績は結構いいらしいのだ。意外なことに。

 

「ああ、わかった。移動するぞ」

 

「了解だ、師匠!」

 

「師匠ではない」

 

 ということで岩柱から降りようとした、その時。

 

「ちょっと待ってください」

 

 制止の声に立ち止れば、白い少女が手の平を前に待ったをかける。

 言わずと知れた塔城小猫だ。

 少女は無表情のまま修太郎に話しかける。

 

「暮さん、姉さまの話によれば今日は私の体術を見てくれると聞きました」

 

「む」

 

 確かにこれまでも、仙術修行の合間に黒歌監督のもと修太郎が訓練相手を務めることが何度かあった。

 彼女は今回もそのつもりでやってきたらしい。

 だが――。

 

 後ろを見る。

 

「はっ、お前のショボい仙術なんか俺っちに効くかよ! 魔術に妖術に浮気ばっかしてるもんだから半端も半端だぜ!」

 

「一つに絞ればいいってもんじゃないにゃん! あんたの古臭い仙術なんか、意外性の欠片も無くてかび臭いのよ!」

 

 視線を戻す。

 

「クロは取り込み中だぞ」

 

「……わかっています」

 

 まあ、黒歌がいなくても彼女の訓練相手を務める程度のことは可能だ。少々加減が効かないかもしれないが、町に戻ればアーシア・アルジェントもいることだしどうにでもなるだろう。

 

「ならば二人まとめてやろうか。ゼノヴィアもそれでいいな?」

 

「ああ、かまわない。正直、一人だとすぐに終わってしまいそうと思っていたところだ。出来るだけ長く師匠と戦ってたいからな」

 

 話はまとまった。

 ならばあとはやるだけだ。

 三人は場所を移動するために岩柱を離れた。

 背後でわめく猫と猿の声を聞きながら。

 

 

 

 

 

 

 

                  ―○●○―

 

 

 

 

 

 

 

 そして1時間弱。

 二人の少女は荒野に倒れ伏していた。

 それに対して前に立つ男は息切れ一つしていない。闘気を纏ってはいるものの、得物すら抜いていなかった。

 

「わかってはいましたが……」

 

「ここまで歯が立たないとは……」

 

 仰向けに天を見上げる少女たちは息も切れ切れだ。

 

 まず攻撃が当たらない。

 相手が速いとかそう言うことではなく――いや、それもあるのだが――完全に動きが読まれているのだ。

 よしんば攻撃が当たりそうになったとしても、受け流されるか撃ち落とされる。素手で。

 

 次に相手の攻撃が防げない。

 デフォルトで無拍子を刻む精妙な体術の前には、防戦一方などと言う展開すら望めない。為す術も無くボコボコにされた。

 一撃で昏倒しなかったことと、顔を狙われなかったことは彼の気遣いだろう。デリカシーの使いどころが間違っている。

 

 シトリー眷族から聞いた話によると、彼女たちが受けたものはこれよりもひどかったと言う。

 

「白音は足腰の鍛錬が足りない。ウェイトが軽いのだから、地に足付けた運体を心がけた方が良い。跳び上がるな、低い体勢を維持して下から抉り込むように打て」

 

「『バージョン3』で身体を成長させれば……」

 

「あれは未完成であるし、どちらにせよキミは小さく軽い。安易なパワーアップよりも地力を高めるべきだ」

 

「……はい」

 

 指摘そのものは的確であった。

 つい先ほどそれが原因で痛い目を見たのだから、文字通り痛感している部分だ。

 

「ゼノヴィアは出力だけなら見事だ。剣技も以前よりは上達している。しかし、鋭さに欠ける。今のお前が振るうデュランダルは刃と言うよりハンマーのそれに近い」

 

「そうは言っても師匠、デュランダルの制御は中々うまくいかないんだ。私の実力不足なのは重々承知しているが……何かうまい方法はないだろうか?」

 

「うまい方法……か。ふむ……」

 

 とはいえやはり、修太郎は聖剣使いとしての素養を持たないため、彼女がどういった部分で躓いているのか把握できない。

 なので推測で話すしかないのだが……。

 

「その剣が持ち主の気性を反映させるというのなら、お前自身がその剣と一体になればいい」

 

「…………うん?」

 

 意味がわからないという顔をするゼノヴィア。

 それもそうだろう、いきなり『剣と一体になれ』と言われてもどうしようもない。

 必死に頭を捻って、たどり着いた結論は一つ。

 

「それは、私とデュランダルを物理的に融合させるとか、そう言う話だろうか? アザゼル先生に頼めばできそうだが、流石にそれはちょっと……」

 

「違う。そんなわけがないだろう」

 

 だが修太郎の言い方も悪い。気を取り直して話を続ける。

 

「人剣一体、無想の境地。即ち明鏡止水の心を以って、剣を己が身体の延長とする」

 

「ムソウ……? メイキョウシスイ……?」

 

 聞きなれない言葉にゼノヴィアの頭は疑問符でいっぱいになる。

 言ってみた修太郎としても説明が非常に難しい。故にどうしても抽象的な言葉で表現せざるを得ない。

 

「一切の雑念、妄念を捨てた精神状態のことだ。自身が修めた武をあるがままに発揮できる。わかりにくいかもしれんが……」

 

「ううん、何だかすごそうだな。それで師匠、私は何をすればいいんだ?」

 

 月緒流の修練法にそのための方法がある。月緒の剣士を名乗るならば、必ず受けなければならない試練だ。

 確か――。

 

「一番手っ取り早い方法としては、『(うろ)』に入ることだ」

 

「ウロ?」

 

「ああ、身を清め、ただ一振りの剣だけを持って、黄泉路――黄泉へ通ずると言う洞穴に入る。その奥深くより一歩手前、現世で最も死に近い狭間の暗闇で三日三晩過ごすのだ」

 

 当然食料は持たされず、そして身を清めると言うことは水以外胃に何も収めてはならないということでもある。

 

「音も無く、身を包む衣と握る刃以外に触るものも無い。匂いも無ければ、暗闇であるから当然目も見えない。そのうち自分が生きているか死んでいるかすらもわからなくなるが、それでもなお自我を保ち、期日まで剣を振るい続けねばならない」

 

 無明の闇に包まれながら、ただ一心不乱に剣を振るう。集中に集中を重ねて恐怖すら消え去るほどに没頭するのだ。

 五感をすべて失い剣と己の境が無くなったその時、飢えも疲れも忘れ、無想の域に到達する。

 

「もし、失敗すればどうなるのですか?」

 

 それまで黙って聞いていた小猫が問う。

 修太郎の答えは一言。

 

「死ぬ」

 

 三日三晩ののち、意識がまだ残っていれば術によって虚から引きずり出されるが、そうでなければ死ぬ。そして黄泉の住人に死体を持ち去られ、魂もろとも二度と現世に戻れなくなる。

 

 この修行は月緒の剣士が乗り越えなければならない壁の一つである。

 これを三度経て無想に至れなかった者は退魔剣士になる資格を失い、次代のための糧として暮らすことを余儀なくされる。

 

「……頭がおかしいです」

 

「確かに毎年死人が出ていた。しかし通常数十年かかる境地を短期間で手に入れようと言うなら、それくらいしなければ不可能だ」

 

「でもそれをやればデュランダルの制御がうまくいくかもしれないんだな? ならば私はやるぞ、師匠!」

 

 寝転がったままの体勢で張り切るゼノヴィア。

 しかし。

 

「いや、説明しておいて何だがそれは無理だ」

 

「な、なぜだ?」

 

「まず黄泉路と繋がるとされる洞穴は日本に複数あるが、所謂霊地……パワースポットの一つとされる。その関係で、土地の管理者から使用許可を得なければならない。第二に、黄泉路とは黄泉比良坂、つまり黄泉の国へ続く道でもある。黄泉とは死者の国、伊邪那美命(いざなみのみこと)が治める常世の国だ。悪魔がみだりに近寄っていい場所ではない」

 

 日本の退魔師、特に黄泉路を管理するほどの家となると、悪魔を快く思わない者も多い。協力を求めても、よほどのことが無い限りはぐらかされるのがオチだ。

 伊邪那美命に関しては致命的で、彼女は基本的に寛容であるが、姿を見られるかもしれない事態を極端に嫌がる。神道系の名門である月緒一族ですら、厳密な条件を定めたうえで立ち入ることを許されていたのだから、他神話体系の侵入など論外だ。

 

「特にお前のような見目良い少女などが許可も無く近寄れば、たちまち二目と見れない姿に……どうしたゼノヴィア」

 

 そう説明していると、ゼノヴィアが驚いた顔をしているのに気付く。

 

「え、いや……その……」

 

 怪訝に問いかける修太郎。ほのかに顔を赤くして、何やら動揺している様子だ。

 

「なんだ、腹でも痛いのか?」

 

「し、師匠が私を褒めたから、驚いたんだ。てっきり嫌われているものと思っていた」

 

 そう言って、目を伏せる。

 なるほどこちらが好意的なことを言ったから照れているのだろう。修太郎としては客観的な意見を述べただけであるのだが。

 

「なあ、私は師匠から見て『見目良い』のか?」

 

「まあ、お前を醜いと思う者はまずいないだろう。第一、嫌いならば最初から関わろうとはしない」

 

「そうか! うん、ならいいんだ……ふふふ」

 

 一転して満面の笑みになるゼノヴィア。

 この程度で喜ぶとは、思い返せば扱いがおざなり過ぎたのかもしれなかった。少しばかり反省しなければならない。

 

「……続けてください」

 

 いつのまにやら正座の体勢をとっていた小猫が、じとりとした目つきで話の続きを促す。

 黒歌に似たその表情は、彼女たちが姉妹であることを再確認させた。

 

「ともかく重要なのは心を鎮め、無とすること。そのためには座禅を組むなりして、まず集中力を高めることだ。やり方は白音かギャスパー少年が知っている。動的なお前の気質では難しいだろうが、やっておいても悪いようにはならないだろう。地道に臨むといい」

 

「地道……か。わかった師匠、私は頑張るぞ! ……頑張るからな!」

 

「……あまり力を入れすぎるなよ」

 

 話の直後、馴染みの気配が背後から凄まじい速さで迫るのを感じた。

 素早く振り向いた修太郎は、それを受け止める。

 

「クロ――」

 

 言葉が途切れる。

 腕の中に飛び込んできたのは、修太郎の予想とはやや違うものだった。

 光沢の少ない闇色の黒髪とそれに付随する猫耳、ぱちりと大きな黄金色の猫目、黒い着物に赤い帯などの姿は変わらない。しかし、サイズが合わない。

 端的に言って小さいのだ。

 幼女な黒歌が、そこにいた。

 

「――――」

 

 思わず言葉を失う。

 そんな修太郎に構わず、にんまりと笑った黒い子猫は素早い身のこなしで身体をよじ登り肩の上に納まった。

 

「……姉さま?」

 

「これはどういうことだ?」

 

 困惑する小猫とゼノヴィア。

 すると遠くから美猴が走ってきた。

 

「おいこらこのバカ猫! 逃げてばっかじゃ話になんねぇだろうが! 大人しく正面から勝負しろぃ!!」

 

「うっさいにゃん、アホざる! ほんとうのたたかいはここからなんだから。ほらシュウ、あのさるをころころするのよ」

 

「おいそりゃ卑怯だろ! 暮修、そいつの言うことなんか聞くんじゃねえぞ。これは俺っちとそのバカ猫の勝負なんだからな!」

 

 などと言い合う。

 小さな手の平でぱしぱし頭をはたかれながら、よく気配を調べてみるとからくりがわかった。

 

「身外身の術か」

 

 目の前の美猴と肩ぐるましている黒歌、どちらも仙術の分身だった。

 仙術による変化や幻惑は魔術などと根本的な仕組みが違うためか、注意しなければスカアハの加護も反応が鈍くなりがちだ。その関係で見破るのが遅れてしまったのだろう。

 遠くを見れば、岩柱の上で睨み合う美猴(本体)と黒歌(本体)が見える。

 

「そうだぜぃ、どっちの仙術が優れてるか分身合戦だ。邪魔すんじゃねえぞ」

 

 そんな美猴(分身)をよそに、肩の上の黒歌を引きはがす。

 

 手も足も驚くほど細く、小さく、元々の黒歌が持つ豊満さは欠片も無い。

 強く抱けば折れそうなほど華奢な肢体だがしかし、純白の肌は既に女性特有の柔らかさを備えていた。細い首のうなじからはだけた肩の線は、幼いながらに色艶がある。猫又という妖怪は、他種族の雄と交わるために美しいのだと聞いたことがあった。幼くともまったく良くできている。

 端的に言って、大変可愛らしかった。

 

「どうしたにゃん?」

 

 わずかに濡れた瞳がこちらを見返してくる。

 普段見慣れた人物が縮んだ姿というのはかくも新鮮である。思わず注視してしまうのも仕方がないのだ。

 

「いや……」

 

 それはともかく、どうしようか。

 

 完成度の高い美猴の分身に対し、黒歌の分身がこんなにも幼いのは単純に練度の差だ。

 今まで使ったのを見たことが無いので、おそらくは見様見真似に違いない。

 身外身の術で作った分身は術者のそれを基とした自我を持ち、高度な自律行動を可能とするが、肉体的な技術以外を使うことはできない。遠距離から鋼鉄に変えた美猴のように、術者の腕次第では分身に干渉することもできるようだが、今の黒歌では不可能だろう。

 術そのものに精通し、且つ体術にも秀でる美猴を相手にこれでは条件が悪すぎる。

 この勝負は公平ではない。黒歌は美猴に嵌められたのだ。

 

「シュウ……」

 

「かっかっかっ!! いい気味だぜバカ猫! ほら暮修、そいつを寄越しな!」

 

 そう言って如意棒を構える美猴(分身)は、言動も相まってどう見ても悪役にしか見えなかった。

 それに対し、黒歌は修太郎の胸にすがりつく。

 

「いや……いやよぅ……こんなさるによごされるなんて……」

 

「あん?」

 

「そのながくてふとくてかたいぼうで、わたしのちっちゃなからだをめちゃくちゃにするつもりにゃん? うすいほんのように……うすいほんのように!!」

 

「おい、なに人聞きの悪いこと……痛えっ!?」

 

「……最低です」

 

「ああ、同感だ。幼い少女を辱めるなど、主もお許しにならない」

 

「おおぃ!? ちょっ、待て……うおっ、石投げんなお前ら!!」

 

 少女二人の蔑むような視線が美猴(分身)に突き刺さり、小石が雨あられと降り注ぐ。

 そして。

 

「シュウ、たすけて?」

 

 幼い指がぎゅっと修太郎の手を握る。

 

「悪いな美猴、流石にこの状況は看過できない。――クロは俺が守る」

 

「暮修ぅーーーーーー!?」

 

 魔法の煌めきと共に白銀の太刀が現れる。

 美猴は見た。修太郎の腕の中で幼い黒猫がこちらを見て嘲笑うのを。

 

「てっめぇこの覚えてやがれクソ猫ぉ!!」

 

 叫ぶ美猴(分身)に刃が走ろうとしたその時――。

 

「何をやっている美猴」

 

 横合いから声がかかる。

 声の主は暗い銀髪の少年、ヴァーリ・ルシファーだった。

 

「ヴァーリ!」

 

「人を迎えに行くだけの事にいったいどれだけ時間を使ってるんだ。俺もいいかげん待ちくたびれた」

 

 そう言い放つヴァーリの表情は不機嫌そのものだ。

 そして修太郎と黒歌の方に顔を向けて告げる。

 

「暮修太郎、黒歌、来い、アザゼルが呼んでいる」 

 

 

 

 

 

 

 

                  ―○●○―

 

 

 

 

 

 

 

 駒王学園旧校舎の一室、ヴァーリに連れられそこを訪れた修太郎と黒歌は怪訝な表情になった。

 

「おう、やっときたか。えらく遅かったな」

 

「美猴が遊んでいただけだ。それで、要件とはなんだアザゼル。俺たちを集めて、まさかつまらないことじゃないだろうな?」

 

「まあそう急かすなよ」

 

 そう言ってアザゼルはこの場に集った面々を見る。

 

 まずは『白龍皇』ヴァーリ・ルシファー。

 

 続いて『孫悟空』美猴。

 

 『魔剣』暮修太郎と『猫魈』黒歌。

 

 『戦乙女』ロスヴァイセ。

 

 そして、天界の『切り札』デュリオ・ジェズアルド。

 

 これら錚錚たる面子を見渡して、アザゼルは不敵に笑む。

 

「いきなりで悪いが、この場にいるお前らにはチームを組んでもらう。揃いも揃って精鋭だ。活躍を期待するぜ?」

 

 

 




大変お待たせしました、更新です。
色々予定が重なった挙句に体調不良というコンボを喰らっていました。

何気に強くなってる美猴。だいたい黒歌のせい。
孫悟空と言えばまず觔斗雲ですが、分身術も何気にチート。というか孫悟空自体がチート。

新章開始と言うところですが、話が動くのは次回から。
もっとサクッと進められるようになりたい……。

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