インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
「…………」
俺を乗せた車は北関東自動車道を北へ進む、車窓に映る自分の顔は死んだ魚のような目をしていた。
「藤木君、なんで君はパジャマで裸足なの?」
「聞かんといてください、これには深い訳があるんです」
「それにしても元気ないわね、君の専用機ついにが完成したんだからもっと喜んでるかと思ったのに」
「専用機……か。そんなのどうでもいいや」
そんな事より今の俺はラウラに嫌われたショックで胸がいっぱいだ、というか今すぐ死んでしまいたい。
「行先って群馬でしたっけ?」
「ええ、そうよ。以前あそこに行ったのももう半年以上前の事になるのね」
「そんな所より東尋坊行きましょうよ、そしてそこで紐無しバンジーやりましょうよ」
「だ、大丈夫?」
「大丈夫だったらこんな事言いませんよ」
すると隣に座っている楢崎さんが電話をかける。まぁ、今の俺にとってそれもどうでもいいことだ。
「あっ、デュノアさん? ええ、藤木君なら居るけど。……メール? ……解ったわ、それでいいのね?」
通話の相手はシャルロットのようだ、メールがどうとか言ってたがそれもどうでもいいことである。
「藤木君、デュノアさんがメール見たかだって」
「メール? ……あっ、来てる」
自分のスマホを覗くとシャルロットからメールが来ていると表示されている、それを開くと『ラウラの誤解は解けたよ、だから心配しないで。ラウラも紀春に会ったら謝りたいって言ってるから、もう大丈夫だよ』と文章が表示された。
「あ、ああっ……そうか、良かった……」
「元気出たかしら?」
「はいっ。良かった、本当に良かった……」
自然と涙が溢れてくる、しかしそれは俺の心を清々しいものに変えてくれた。
目的地までもう少し、俺の未来は明るかった。
「…………」
三津村重工業IS兵器試験場、そこは六階建てのビルと大小さまざまな格納庫からなる施設である。そして俺が初めてISに乗った場所だ。
以前ここに訪れた時は有希子さんが俺を出迎えてくれたが.、彼女は今フランスにその拠点を移している。この田舎町を嫌っていた有希子さんもきっと喜んでいる事だろう。
「おはよう、藤木君」
「おはようございます、成実さん」
そして今回俺を出迎えてくれたのは俺の専用機開発チーム副リーダーにして開発チームリーダーせっちゃんこと水無瀬清次の妻、水無瀬成実さんであった。
「成美さんが居るってことは、せっちゃんも?」
「うん、今は格納庫で色々準備しているよ」
「で、その格納庫に俺の新専用機があるということですか」
「そうだよ。じゃ、早速行ってみる?」
「そうですね、早速ですけどお願いします」
格納庫は近いのでそのまま徒歩移動だ。俺達は二、三分歩き格納庫の前まで到着した。
「やぁ、おはよう。キミの到着を心待ちにしていたよ」
格納庫の前にはせっちゃんが立っている、そしてその後ろの扉を開ければ俺の専用機がお目見えするというわけだ。
「俺も待ってましたよ、長い間ね」
「君の新専用機の開発期間の事かい? むしろ半年で一から作り上げたんだ、褒めてもらいたい位だ。本来なら年単位で掛る代物だよ?」
「うっ、それはそうなんですけど……」
せっちゃんをたしなめるつもりが逆に反撃されてしまった、確かに兵器を一から作るのに要する時間として半年は脅威の短さだ。これも三津村のなせる技なのか。
「さて、挨拶も済んだ事だしそろそろ君の新専用機とご対面といこうか」
「そうですね、俺も早くご対面したいですし」
俺がそう言うとせっちゃんが格納庫の扉を開く。そこには赤い、それにしては黄みがかっているあえて言えば朱色の機体が鎮座していた。
「形式番号MX-01/s1、開発名称プロトタイプ・ヴァーミリオン・カスタム。第三世代のISで分類としては高機動強襲型、装甲材には三津村謹製の多重積層電磁装甲とラファール・リヴァイヴやヴァーミリオンにも使用されている衝撃吸収性サード・グリッド装甲のハイブリットだ」
「ふむふむ」
「第三世代の仕様としてはヴァーミリオンと同じ高性能運動性強化CPUとブルー・ティアーズのコピー品を積んでいる」
「ブルー・ティアーズ!?」
「この機体には牽制用の武器を積んでない、その代わりになるかと思って一応積んでみた」
「しかしビットを飛ばすには特殊な才能が必要になると聞いてますけど」
「最悪肩部ビーム砲としての役割をこなすだけでいい、別に君にそこまでの才能は期待してないよ」
「はぁ、そうっすか……」
「次に武装の説明に移るぞ」
「ほいほい」
新専用機の隣には三つの武器が置かれている、一つは以前使ったアンカーアンブレラ、そして残りの二つは剣と銃だった。
「アンカーアンブレラの説明は省くとして、まずこちらの剣だな」
剣は今ではむしろ珍しい両刃の剣だった、それは刃の色がエメラルドのように輝いておりダブルオーガンダムを思わせる。
「こちらの剣の名称はエムロード、フランス語でエメラルドを意味する名前だな」
「某スターソードみたいな名前っすね」
「スターソード?」
「いや、なんでもないです、続けてください」
せっちゃんが怪訝な顔をして俺を見る、つい口から出てしまっただけなので気にしないでもらいたい。
「まぁ気になっていると思うが、この剣の第一の特徴がこのエメラルド色の刃だ。これは刃の部分にある塗料を塗ってるからこんな色になっている」
「塗料? ただかっこいいからこんなもの塗ってると?」
「違う、確かにかっこいいのは認めるがかっこよさはあくまで副次的な意味しかない」
「ふーん」
「この塗料、名前はそのままエムロードという新型塗料なのだがかなり曰く付きの一品だ」
「その塗料の名前がそのまま剣の名前になってるんですね。で、その曰く付きというのは?」
「この塗料のせいでデュノア社は経営危機に陥った」
「ファッ!?」
え、たかがこんな塗料で経営危機!? それは俄かには信じられないような話だ。
「デュノア社が以前から第三世代の開発に難航していたのは知ってるな?」
「ええ、そしてそのまま三津村に吸収合併されたんですよね」
「その通りだ、そしてこの塗料はその第三世代の機体の装甲全てに塗られるため開発されたものだ」
「そりゃさぞかしド派手な機体になったでしょうね」
「ああ、しかし特筆すべきはその効果だ。このエムロード、エネルギー兵器の攻撃を一切受け付けないというある意味夢の塗料なんだ」
「う、うおお……まさに夢の塗料ですね」
そんなのを全身に塗ったISが登場すれば革命的な事態になっただろう、少なくともイグニッション・プランのライバル機のブルー・ティアーズやエネルギー兵器しか持っていない白式相手ならほぼ完封できる性能を持つ事になる。
「しかし、そんな夢の塗料にも一つ問題があった」
「問題? 一体何なんです?」
「コストが馬鹿みたいに高い」
確かにそんな夢の塗料の事だ。コストもかなりのものになるだろう、しかしそれが会社を傾けるまでに至るとは流石に無理があるんじゃないだろうか?
そんな事を考えていると、せっちゃんは白衣のポケットから小瓶を取り出した。そこにはエメラルド色の液体、多分それがエムロードなのだろう。
「さて、ここで問題だ。この小瓶の中にある塗料100mlのお値段は日本円で幾らだろう?」
「開発経費を込みで考えるとやはりべらぼうに高いんでしょうね。……1億円位ですか?」
「残念、正解は1000億だ」
1000億、それは一般的なISを遥かに凌ぐお値段だ。
「はああああああああっ!? 幾らなんでも高すぎでしょう!?」
「そしてこの剣、エムロードにはその塗料のエムロードが贅沢に200ml使用されている。剣の内部機構にも一応金が掛かっているんだがそんなのこの塗料の値段からすれば端金だろう。ちなみにこの武装群の中で一番安い武器はアンカーアンブレラだな、値段はたったの40万だ」
「そ、そりゃデュノア社も傾きますわ。っていうかそんなにまでしてこの塗料を作らなくてもよかっただろうに」
「しかし実用化されれば世界最強のISの一角に名乗りを上げるには十分だっただろう、デュノア社はそれに賭けていたのさ」
「無謀な賭けだ」
「会社は既に傾き始めていたんだ、無謀な賭けに挑戦せざるを得なかったのさ。というわけで、ボクたち開発チームはデュノア社がMIEになった後すぐにこの塗料の回収に向かったんだ。しかし回収できたのはたったの1000ml、その剣五本分だ。そして吸収合併のゴタゴタに巻き込まれて製法は既に失われている、まぁ仮に製法が残っていても作るわけにはいかないが。というわけで大事に使ってくれよ」
「でも、そんな貴重な塗料を何でわざわざ剣に? 盾でも作って塗ればもっと強力な装備になったんじゃないんですか?」
「そこは開発チームでも意見が割れた、しかしボクの独断で剣に塗らせてもらった」
「何故?」
「もったいなさ過ぎる、盾に塗れば入手したエムロードを全て失う事になってしまう。それが万が一盗まれてみろ、一兆の損失だぞ」
確かにそれは怖いものがある、俺だって以前の戦いで虎子さんの盾を盗んだわけだし決して他人事の話ではない。
「ま、まぁそうですね。でもそれって剣に塗る理由じゃないですよね? そんなに貴重な塗料なら剣にすら塗る必要すらなかったのでは?」
「確かにそうだ、しかし君の新専用機の仮想敵を考えたらそうはいかなくなった」
「仮想敵? サイレント・ゼフィルスとか打鉄・改ですか?」
「いや、違う。白式だよ」
白式か、なんだか話が穏やかじゃなくなってきた気がする。
「白式が仮想敵? その心は」
「白式はキミと同じ男性IS操縦者織斑一夏が乗るISだ。となればいずれ誰もが思うだろう、藤木紀春と織斑一夏どちらが強いのかってね」
「たった一人の比較対象ならそれとの争いは避けられないと」
「そういう事だ、キミが織斑一夏と本気で争う日がいつになるのかは解らない。しかしそう遠くない未来に確実に起こると思うよ、僕は。なら出来るだけの事はしてあげたいじゃないか。なんてたってキミは三津村の広告塔、キミにはボク達の未来も懸かっているんだから」
「そう言われちゃ、負けられないですね」
そうだ、俺だって多くの人に支えられているんだ。そして俺はオリ主、主人公たる一夏の栄光を奪い取るために生まれた男だ。ならば絶対に負けるわけにはいかない。
「とまぁ、話が逸れたが続けよう。白式はそのワンオフによって世界最強と言って差し支えない攻撃力を手にしている。特にエネルギー兵器は無効化するらしいな、そうなればその攻撃に耐えるには物理防御しかない」
「そうなりますね、零落白夜はISのシールドですら無効にする恐ろしい武器だ」
「そして近距離戦では無類の強さを誇る、キミと織斑一夏の模擬戦のデータがいくつかあるがその中でキミは勝つにしろ負けるにしろ射撃戦で戦っている」
「そりゃ、あのワンオフは怖いですもん。いくら物理防御と言った所で、盾や実体剣で防ぐには限度がある。だったら比較的安全な射撃戦に持ち込むしかない」
特徴がはっきりしている白式はある意味非常に戦いやすい相手だ、オールラウンダーであるヴァーミリオンなら一夏の苦手な距離を取っての戦いでもその力を発揮できる。
「そこで出てくるのがこのエムロードだ。最強のワンオフとも言える零落白夜とて所詮はエネルギー兵器だ、エネルギー兵器を受け付けないこの剣ならキミは近距離でも白式と対等に戦うことが出来る」
「エムロードで零落白夜を受け止めろって事ですね」
「そういう事だ。ちなみにエムロードが何故両刃の剣になっているかと言うと、万一片方の刃が刃こぼれしても裏返して使うためだ。刃こぼれした所を攻撃されると流石に無力だからな」
「へぇ、両刃の剣なんて今時珍しいと思ってましたけどそういう意図があったんですね」
そこまで白式対策が施されているのか、この剣は。となれば一夏と全力で戦う日は来るとせっちゃんは本気で思ってるのか。
「そして次はエムロード第二の機能だが」
「エネルギー兵器に強いだけじゃなくまだあるんですか」
「まぁ、それに比べれば大した機能じゃないんだが刀身を超音波振動させることにより切断力を強化してる。というわけで見た目以上に鋭い剣になっているぞ、これは。但し内部電源の関係で140秒しか使用出来ない、無闇に使わない方がいいだろう」
「ほうほう、必殺技みたいな感じですか」
「いや、必殺技はそれじゃない」
「え、別に必殺技があるんですか?」
なんだろう、急にロマンのかほりがしてきたでござる。
「ああ、ある。エムロード内部の配管を通して塗料を溶かす中和剤を流し込み、内部電源を使って刀身をオーバーヒートさせることにより塗料を気化させる事が出来る。そしてエムロードの内部電源が10パーセント以下の時は使用が出来ない、このモードは電力を食うからな」
「ん? でも塗料を気化させればいい事あるんですか?」
「気化した塗料は霧状となって機体の周りに残る、つまり短い間だがエネルギー攻撃に対する耐性を得ることが出来る」
「つまり塗料のエムロードが本来目指した最強モードを再現できるという事ですか」
「ああ、そうだ。ボクの想定としてはこのモードを発動させ、エネルギー攻撃の雨の中を突っ切り、そのまま敵を切り裂くという感じか。まぁ、他にも使い方はあるかもしれないがそれはキミ次第だ。ちなみにこのモードの事をエッケザックスと名付けてみた」
「なんだかエムロード一本で白式の武装群に対抗しようとする姿勢がひしひしと伝わってきますね」
「仮想敵だからな」
エムロードは零落白夜に耐え、エッケザックスは雪羅のシールドと同じような効果を持っている。白式が仮想敵であるのが嘘ではないというのがよく解ってくる。
「解っているとは思うが、エッケザックスを使えばエムロードの塗りなおしが必要になる。つまりエッケザックス使用には2000億のコストが掛るのを忘れるな、使うときは状況を見極めて使えよ?」
「強力な反面リスクは莫大か……うん、まさにロマンだな」
「しかし、エッケザックスは正しいロマンのあり方をしていると思うぞ」
「そうっすね、普段は使わなくてもいいんだし、まさに切り札って感じだ」
「まぁ、そう思っていてくれて構わない。後、これも解ってると思うが塗料のストックは四回分しかない。つまりエッケザックスを使用できるのは五回までだ。ということでエムロードの説明は終了だ、次に銃の説明をしようか」
「ほいほい」
エムロードの隣に置いてある銃に目を移す、銃はまぁまぁ大きいがこの大きさならなんとか片手で持てるだろう。しかし、取り回しは悪そうだった。
「名称は試製強粒子砲、こちらは一撃必殺を目的に開発された銃だ」
「一撃必殺ですか、あまり得意ではないですね」
一撃必殺、その言葉にはロマンしか感じない。そしてロマンと言えば不動さん、不動さんと言えば思い起こされるのが彼女が開発したロマン兵器という名の欠陥武装たち。
「なんだか急に悪い予感がしてきた……」
「……すまない、実は不動がまたやりやがった」
「やっぱり不動さんですか! というか止めてくださいよ、せっちゃん不動さんの上司でしょう?」
「ボクの知らない間に開発計画に捻じ込まれていて気付いたらこの有様だ、本当にすまない」
「だったらせめて新専用機の武装に組み込まないでくださいよ!」
「そういう訳にもいかない、一応これにも開発コストが掛っている。となれば一度運用して良いか悪いかをキミに判断してもらわないといけないんだ」
「使うまでもなく却下です。というかそういうのは三下テストパイロットにやらせてください、有希子さん以外にもウチにテストパイロット居ましたよね?」
「駄目だ。この試製強粒子砲、食うエネルギーの量が半端じゃない。キミの新専用機ならともかく、ヴァーミリオンでは運用すら不可能だ」
「だから嫌いなんだよ、ロマンは! というか今すぐ不動さんを処罰してくださいよ! 会社の金を使って勝手にこんな物作るなんてケジメ案件でしょう!?」
「残念だがそれも出来ない、今の新専用機開発チームはロマン派が多数を占めていて発言力も高い」
「あんたその開発チームのリーダーだろうに!」
「確かにそうだ、しかしリーダーだからこそ部下の成果は認めないといけないんだ。そして新専用機開発チームの中でもロマン派は高い技術力と発想を持っている、だから彼らを切り捨てる事は出来ない。ボクだって辛いんだ、だからキミも我慢してくれ」
「こっちも命賭けて戦ってるんだよう……」
不動さんはどこまで俺に迷惑を掛ければ機が済むのだろうか、もう本当に嫌になる。
「し、しかしボクなりに改良はしたんだぞ! 少なくとも最大出力で撃つと自壊するとか、急にベクターキャノンモードに移行するとか、一撃撃つ度に冷却に二分以上掛るとかいうのは無くなった!」
「それガチで産廃じゃないですか!」
お仕置きだ、もう一度不動さんに会ったらお仕置きしてやる。学級裁判で有罪になった時に行われる位すんごい奴を。
「ま、まぁ無理に使えとは言わない。そこはキミの技量でうまく戦ってみてくれたまえ」
「射撃武器はこれと空飛ばないビットしかないんですよ! 使わざるを得ないじゃないですか!」
「そ、そうだな。すまない……」
この状況に流石のせっちゃんも慌てたような表情をする、いつもクールな仮面を付けている彼にしては珍しい事であった。
「はぁ、もういいですよ。これで武装の説明は終わりですか?」
「あ、ああ。一応この機体の新機能についても説明して終わりだな」
「新機能? そもそも新型に新機能もクソもないでしょうに」
「いや、今までのISには装備されていない装備がある」
「また不安になってきた……」
もうロマンは嫌なのだ。
「これは完全にボク開発だから安心してくれ、実用性や安定性は充分に保障する」
「だったらいいですけど……」
俺がそう言うとせっちゃんが俺の新専用機の後ろに回りこみ、そしてそこから俺に手招きをする。
そして、俺は招かれるままに新専用機の後ろにやって来た。
「さて、この機体には普通のISには在るものが一切存在しない。何か解るか?」
そう言われて新専用機の背中を眺める、背部に装備された三枚の板状で銀色の羽がその根元で一まとめにされているものが一対あるだけで変な所は見当たらないはずなのだが……いや、違う。これは……
「ええと……あれ? 推進翼の噴出口が見当たらないですけど」
「その通り、この機体には通常の推進翼は存在しないんだ」
「だったらどう飛べって言うんですか、もしかしてPICのみで飛べって言うんじゃないでしょうね?」
「勿論違う、通常の推進翼の代わりにこの機体はプラズマ推進翼を採用している」
「プラズマ推進翼?」
プラズマ推進翼とはなんぞや、語感から言って超電磁的なものを感じる。
「プラズマ推進翼の原理などキミには理解できないだろうから説明は省くが、これにより今までに無い加速性能や運動性を獲得している。その気になれば全速力で飛びながら連続で方向転換も可能だ」
「よく解らないんですけど、兎に角めっちゃ凄いんですね?」
「そうだ、使いこなせば通常のISなど余裕で完封出来る代物だ」
「そして使いこなすのが非常に難しいと」
「超絶な反射神経と集中力が必要になる。しかし、キミなら使いこなせると信じているよ」
「俺に期待しすぎるとがっかりしますよ?」
「そう言ってくれるな、キミはこの三津村を背負って立つ人間だ。期待するなという方が無理がある」
だそうだ。まぁ、人に期待されるのは今までの生活で慣れっこだ。ならばその期待に答えるのが男気というものだ、そのためにも頑張ろう。
「水無瀬博士、この機体の説明は以上でよろしいですか?」
「ああ、待たせたね。次は楢崎君の番だ」
「楢崎さんの番? まだ何かあるんですか?」
その言葉に楢崎さんがにっこりと笑う、そして楢崎さんがこんな笑みを見せる時というのはいつも俺にとって碌でも無い時だ。
「ええ、そろそろこの機体の名前を発表するわよ」
「名前? この機体の名前はプロトタイプ・ヴァーミリオン・カスタム、略してPVCじゃないんですか?」
「もう略語を付けてるのね、でもそれはあくまで開発名称よ。そんなプラスチックっぽいダサい名前じゃないわよ?」
「ボクはあれも充分ダサい名前だと思うんだが……」
「そうでしょうか? 仮にダサいとしてもこれから藤木君の活躍で世間には格好いい名前と認識されますよ?」
「えっ、この機体の名前ってそんなにダサいんですか?」
「藤木、覚悟しておけ」
またまた急に雲行きが怪しくなる、一体どんな名前なんだ。
「では発表するわよ、この機体の名前は……」
「名前は?」
なんだか急に緊張してきて思わず俺は唾を飲み込む、そして楢崎さんが再度口を開くのを待った。
「オリ主よ」
「…………はい?」
…………なんてこったい。
……オリ主