インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
「ぬああああああん疲れたもおおおおおおおん。」
「そろそろ休憩の時間だ。あと十分だから頑張れ。」
「いや、そんな事より東雲さん。そもそもなんで俺がここに居るんだよ。俺一番関係ないじゃん。」
「それは花沢さんに聞け。」
今俺達は花沢さんの家に居る。そして、花沢さんのIS学園の受験勉強を手伝っている。
いや、東雲さんがここに居るのはいい。一応受験資格があるんだから。でも男の俺がなんで受験勉強の手伝いをやらなくちゃいけないんだ。
その疑問に花沢さんが答える。
「かみやんって頭いいでしょ。だから勉強のコツとか教えてもらおうかと思ったんだけど。」
「勉強のコツか…まぁ、無いことも無いな。」
「えっ、本当にあるんだ。教えてよ。」
花沢さんが身を乗り出して俺の話を聞く。俺は彼女に勉強の極意を伝授する。
「頑張る。」
「え?」
「だから、頑張るんだ。」
「いや、頑張ってるわよ。」
「だから勉強のコツだよ。頑張って、頑張って、頑張る。それだけだ。」
「なんだ、そんなことか。期待して損した。」
落胆している花沢さんに、俺は話を続ける。
「結局努力を積み重ねるしかないんだよ。優雅に水面を泳ぐ白鳥も水の中で必死に水を掻いてるんだ。そして今お前は何をしてる?」
「えっ、モン○ンだけど…」
「死ねぇ!」
「じゃ、今から二十分の休憩ね。何か飲み物もって来るわ。」
「てめぇ、結局五分しか勉強してねーじゃねーか。」
「あんまり細かいこと言ってるとハゲるわよ。」
「うるせー。それより早く何か持って来い。」
「はいはい。」
花沢さんが部屋から出る。この部屋に居るのは俺と東雲さんだけだ。
「どう?学校には慣れた?」
「もう一ヶ月経ったからな。流石に慣れたよ。」
「そうそう、花沢さんから聞いたけど剣道の全国大会で優勝したんだって?すげえじゃん。」
「そういうお前だって野球の全国大会で優勝だろ。それも二回も。いや、小学校を含めると三回か?」
「いやー、今年度の大会以外は俺の力じゃ無いからねぇ。」
「ん?一年からレギュラーだったと聞いていたが。」
「田口次郎。俺が知ってる限り世界一野球が上手い男だよ。その人一人の力で優勝できたんだ。」
「野球が世界一上手い男?プロ含めてか?それは大袈裟じゃないか?」
「プロ含めてだよ。嘘だと思うなら今年の甲子園を見てみるといい。あれは正直ビビる。」
何だこの会話、気持ち悪い褒め合いから始まって最後には人の自慢話。女の子と二人きりで密室にいる状況がこんなにもキツいものだとは思わなかった。俺は会話に困り、テレビのリモコンを押す。
「速報です!世界初の男性IS操縦者が発見されました!」
テレビを点けた瞬間、キャスターが興奮気味に速報を伝えた。
「「な、なんだってー!」」
俺と東雲さんは驚く。俺達はかぶりつくようにテレビを見る。
キャスターは続けて喋りだす。
「世界初のIS男性操縦者の名前は織斑一夏、なんとあのブリュンヒルデ織斑千冬の弟で篠ノ之束氏とも交流のある人物であるそうです!」
俺は瞬時に理解する。こいつだ。こいつが主人公だ。そしてバナージだ。
テレビに織斑一夏の写真が映し出されている。イケメンだ。主人公フェイスはこのオリ主フェイスより一歩先を行っていた。
「……」
「……い…ちか…」
東雲さんの顔を窺う、恋する乙女の顔をしていた。そして俺は彼女にフラグが立たないことを知る。
しかし『いちか』か、態度がやけに馴れ馴れしいな。知り合いなのだろうか?
「いちか?知り合いなのか?」
「…ああ、もう何年も会って無いが初めてできた友達なんだ…」
「何・・・だと・・・?」
なんと!あのぼっち東雲さんに友達が居たとな!?これは花沢さんに報告せねば!
「政府関係者の情報によりますと、公式発表はでは無いが織斑一夏君はIS学園にするのでは。とのことです。」
キャスターの隣に居るコメンテーターが、「いやー織斑君はイケメンですねー。」と「今年のIS学園の入試希望者が増えちゃいますねー。」とか喋っている。今日は二月十四日だ。まだ願書締め切ってないのかIS学園は。
ちなみに花沢さんと東雲さんからチョコレートを貰えた。チ○ルチョコ一個。しかも二人で一個。嬉しくて涙が出そうだった。(大嘘)
テレビの中のキャスターとコメンテーターがコメントをしている時、キャスターに追加の原稿が届く。
「先ほどのニュースに関連してもう一つニュースです。全国の小学校、中学校、高校の男子全員を対象としたIS適性調査が行われる模様です。」
これだ。オリ主イベントだ。このイベントをクリアして俺はオリ主として世界に名を轟かすことになるのか。そしてIS学園だ。主人公織斑一夏君と共に女の園に飛び込み、そこでバトルしたり女の子とキャッキャウフフしよう。
そんなことを考えていると、部屋の扉が開き花沢さんがお盆を持って入ってきた。
「おまたせ!アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」
この真冬にアイスティーしか無いのか。
すると東雲さんが喋る。
「よし、勉強を続けるぞ。」
「いや、東雲さん。今から休憩がてらモ○ハンしたいんだけど。」
まだするかこの女は。
「モ○ハンはさっきもしただろう!そんなのではIS学園に行けないぞ!さぁ、勉強するぞ!」
「うっ…」
東雲さんが捲くし立てる。普段東雲さんは、数少ない友達を不機嫌にさせるのが怖いのか花沢さんに対して強気に出ることは無い。でも今の東雲さんは違った。そうだ、これは恋の力だ。織斑一夏への恋心が彼女を後押しする。
花沢さんもそんな東雲さんに対して気圧される。俺も気圧される。
まぁ、俺も勉強することに対して反対ではない。俺も適性調査をクリアし織斑一夏のようにIS学園に通うことになるはずだ。IS学園で恥ずかしい思いをしないために勉強しよう。
こうして俺達は夜まで勉強をすることとなった。東雲さんは誰よりも真剣に勉強していた。
勉強が終わり俺達は花沢さんの家から出る。花沢さんも玄関先まで見送りに来てくれた。
花沢さんの家の玄関先には黒い車が停車しており、そこには黒服を着たヤクザが二人立っていた。ヤクザコワイ!
ヤクザは無言でドアを開け東雲さんを待っている。
しかしこいつら無礼だな。お嬢やその御学友に対して挨拶の一言もないのか。これはケジメ案件だ。
別れの挨拶をし、東雲さんは車に乗り込む。車はゆっくりと走り出す。
俺と花沢さんはそれを見送り、花沢さんが俺に話しかける。
「ねぇ、かみやん。やっぱりヤクザは怖いわね。」
「そうだな。」
「そういえば、東雲さんに何かあったの?私が帰ってきたら急に真剣に勉強しだしたけど…」
「ああ、お前あのニュース知らなかったのか。」
「ニュース?なにがあったの?」
俺はスマホを取り出しブラウザを起動させる。次に検索窓に織斑一夏と打ち込み画像検索をかける。
ニュースのキャプチャー画像を発見し、それを花沢さんに見せる。
「あらやだ、カッコイイ。で、誰このイケメンは?」
「織斑一夏。世界初の男性IS操縦者だ。」
「男性IS操縦者!?」
「彼はかのブリュンヒルデ織斑千冬の弟で、篠ノ之束とも交流があるそうだ。」
「まさにサラブレッドって感じね。」
「さらに衝撃的事実をお伝えしよう。彼は東雲さんの初めての友達だ。」
「何・・・だと・・・?」
「さらにさらに衝撃的事実をお伝えしよう。俺の見た限り東雲さんは彼に惚れている。と言うわけで最初の疑問にお答えしよう。恋の力だ。それが彼女をああさせた。」
「ファッ!?」
衝撃的事実の連続に彼女は目を白黒させる。
ここで俺は彼女に残酷な事実を告げる。
「彼はにIS学園行くらしい。IS学園…百倍どころの騒ぎじゃなくなるだろうな。まだ願書締め切ってないらしいし。」
「うっ…」
「少なくとも一人増えた。」
「ううっ…」
「恋する乙女は強いぞ。」
「うわああ…」
「モ○ハン、今だけでもやめたら?」
「それだけは無理。」
「やっぱりお前にIS学園は無理だ。」
頑なな花沢さんを背に俺は家路を辿る。
花沢さんはともかく東雲さんのIS学園行きは応援したい。しかし東雲さんはIS学園行きを家族に認めさせることが出来るのだろうか?ヤクザの娘なら俺達の知らないしがらみも多そうだ。IS学園に行く理由が惚れた男に会いに行くためなのだから、猛反対されそうな気がする。
そんなことを考えながら道を歩く。ああ寒い、早く家に帰って熱い風呂に入りたい。そして母さんの作った夕食を食べ、あったかいフートンにくるまり寝たい。今日は勉強しすぎて疲れたから早く寝よう。
転生オリ主藤木紀春15歳の冬はまだ終わらない。
ついに主人公がIS学園行くことを認識します。
ここまで長かった。そしてこれからも長い…
東雲さんとオリ主が二人きりでテレビを見る状況を作りたくて悩んでいましたが、ここでも花沢さんが活躍してくれました。
台湾戦があるのでそろそろあとがきを終わります。見て頂きありがとうございます。