インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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東雲さん本格始動。


プロローグ 第6話 ガール・ミーツ・オリ主

ホームルームの後、東雲さんはクラスメイトに取り囲まれる。

彼女の席は窓側の一番奥。俺の反対側に位置することになる。ちらりと彼女を見ると、花沢さんが声を掛けてきた。

 

「なに?惚れたの?」

「そういうわけじゃないけど…まぁ、顔とおっぱいはナイスだな。」

「そういうことは外で言っちゃだめよ。すぐに通報されるわよ。」

 

女性しか乗れないISのお陰で世界は急速に女尊男卑化していった。以前彼女が欲しかった俺は、繁華街でナンパを試みたことがあるが即通報されてしまった。自分で言うのも何だが、俺のオリ主フェイスはなかなか整っていると思う。『※ただしイケメンに限る。』はこの世界じゃ通用しないらしい。

 

ナンパをした時のことを思い出す…

 

「やぁ!お嬢さんいいおっぱいしてますね!僕とお茶でもしませんか?」

「いやああああああああ!おまわりさああああああん!」

 

とりあえず容姿を褒め、さりげなくお茶に誘う。俺に落ち度があったように思えない。

あれか、彼女好みの顔じゃなかったのだろうか。それともナンパの仕方が古かったか。素人童貞の前世のナンパスキルは皆無だったが、ナンパの仕方が古かったとは言えいきなり通報はやりすぎだ。きっと彼女は女尊男卑に染まりきったド畜生なのだろう。俺のオリ主アイをもってしても心の内まで見通すことは出来ない。

俺はオリ主脚力を駆使しおまわりさんから逃走した。

 

思い出すとイライラしてきた。今日の放課後は久しぶりに野球部に行こう。そして後輩をピッチングマシン代わりにして憂さを晴らそう。

 

おっと、授業が始まる。一時限は英語か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤木君、この英文を読んでみてください。」

「ペ~ラペ~~ラ、ペラペラペ~ラペ~~~ラ~~。」

「ペラペラ言ってないでちゃんと読みなさい。」

「はい、すいません。」

 

千本ノックも追加だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、篠ノ之箒は今日から織朱大学付属中学校に通うこととなった。転校の挨拶をした後、いつも通りクラスメイトからの質問責めに遭う。私はいつも通り適当に返事をする。

しばらくしてチャイムが鳴り、授業が始まる。

 

「藤木君、この英文を読んでみてください。」

 

英語の先生が言う。藤木と呼ばれた男子が立つ。彼の席は廊下側の一番奥であり彼が英文を読むのだろう。

 

「ペ~ラペ~~ラ、ペラペラペ~ラペ~~~ラ~~。」

 

一瞬教室が静まりかえる。何だこの男は。彼は先生に注意された後、普通に英文を読んで座った。

彼はヘラヘラしながら隣の女子と会話しているようだ。改めて言おう、何だこの男は。

私はあの男が現代の軟弱な男を象徴するかのような奴に思えた。一夏はこんな男とは違って芯のある強い男だった。

…いやいかん、いつも男性を一夏と比べてしまうのは私の悪い癖だ。きっと彼にも彼なりの良いところがあるのだろう。

あるのだろう。

あるのだろうか?

あるかもね。

あったらいいな。

あるのかな?

無さそうだ。

 

授業に集中しよう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業も全て終わり放課後になる。帰り支度をしていると声を掛けられる。

 

「東雲さん!」

 

東雲さんとは私が今ここで名乗っている苗字だ。篠ノ之だと余計に危険だからと重要人物保護プログラムの役人に付けられた。平仮名に直すと一文字しか変わってないが、もう少しマシな名前は無かったのだろうか。

そんなことを考えながら振り返ると同じクラスの女子がいた。あの藤木の隣の席の女子だ。

 

「ええと…」

 

私は彼女の名前を知らない。

 

「私の名前は花沢。山下先生が学校の中を案内してあげなさいって言ってたから…時間は大丈夫かな?」

「時間なら大丈夫だ。案内を頼む。」

 

私は花沢さんに連れられて校内を巡った。

 

校内巡りも佳境に入りグラウンドに案内される。そんな時誰かの叫び声が聞こえた。

 

「いよっしゃあああああああ!死ぬ気で取って来いやああああ!」

 

甲高い音がした一瞬後、鈍い音と共にグラウンドに土煙が上がる。

土煙が晴れた場所に野球のユニフォームを着た少年が倒れていた。

 

「何やっとんじゃあああああ菊地いいいいいいい!!その位の球ぐらい取らんかい!!レギュラーになりたくないんかああああ!!!」

 

その声を聞いて菊地と呼ばれた少年が立ち上がる。

 

「なりたいです!!もう一球お願いします!!」

「ええ返事じゃあ!ならこれで死ねよやぁー!」

 

菊地君に打球が襲い掛かる。さっきよりも一回り大きな土煙が上がった。

土煙が晴れたとき、菊地君はしっかりと立っていた。

 

「ようやった菊地いいいい!!」

「はい!!ありがとうございます!!」

 

藤木が胡散臭い広島弁を喋りながらノックを打っていた。

何だこれは、私は夢でも見ているのだろうか。私が驚いていると花沢さんが話しかける。

 

「ああ、あれね。織中野球部名物地獄千本ノック。」

「地獄千本ノック?」

「クラスメイトに田口君って男子がいるんだど知ってる?そのお兄さんが考え出した練習法よ。よく解らないけど凄く効果的らしいんだって。」

「はぁ…」

「でもあの球を打てるのが今じゃかみやんしか居ないから来年からは無くなっちゃうみたい。」

「ん?かみやん?」

「今ノック打ってるあいつのあだ名。一緒のクラスで藤木紀春って言うんだけど知ってる?あの英語の授業でペラペラ喋ってた。」

「ああ、それなら知ってる。しかし、かみやんとはあだ名が本名に全く掠っていないな。」

「馬鹿と天才は紙一重。それの紙一重から取ってかみやん。紙一重っていうか、馬鹿と天才の間を行ったり来たりしてる変人よ。」

「行ったり来たりの変人とはどういうことだ?」

「テストの成績は毎回学年トップを取り、部活の野球ではエースで四番。そして全国大会優勝の立役者。そんな反面、精神修行だーって言って一週間断食してたら食欲が抑えきれなくなって変なキノコを食べて救急車で運ばれたり、真冬にこの学校の裏山にある滝で滝行してたり。あと一昨年の夏休みは部活と大会サボって山篭りしてたらしいわ。ちなみに夏休みの宿題を全くやってなくて先生に凄く怒られてたわね。あ、そうそう。知り合う男子全員に「撃てませぇん」って言わせていたわね。何だったのかしらあれ。」

「それは…なんというか。」

 

「危ない!」

 

花沢さんと話しているとそんな声が聞こえた。グラウンドの方向を見ると私達に向かって打球が飛んできていた。

私は携帯している竹刀袋から竹刀を取り出し、その打球を打ち落とした。

 

「ワザマエ!」「タツジン!」

 

遠くからそんな声がした。

グラウンドの方角を見ると藤木がこちらに駆け寄ってきていた。

 

「いやあ~ごめんごめん、怪我は無い?」

「いや、私は大丈夫だが。」

「って、東雲さんか。いや、本当に申し訳ない。」

 

藤木は頭を下げる。花沢さんによる藤木の評価と今の態度で私は藤木に対する評価を改める。全国大会で優勝するなんて並々ならぬ努力をしてきたのだろう。私も同じだから解る。いや、私とは違うか…

 

「私には謝ってくれないの~?」

「なんだ、お前居たのか。帰っていいよ。」

「ダイナマイトキック!!」

 

花沢さんに対し横柄な態度を取った藤木は、花沢さんの放った蹴りを顔面に受け吹っ飛んでいった。花沢さんの評価も改める。花沢さんはつよい(確信)彼女に逆らってはいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と花沢さんは気絶している藤木を見守っていた。

保健室に連れて行こうと花沢さんに言ったところ、花沢さんは五分もしたら勝手に復活するから心配ないと言った。少なくとも私よりも藤木に詳しい花沢さんがそう言うのならそうなんだろう。私は花沢さんに従った。

 

しばらくすると藤木が起き上がる。花沢さんの言ってたことは正しかったようだ。

 

「あれ?花沢さん、俺なんでこんなところで寝てるんだ?」

「さぁ、私もかみやんが倒れてるって教えられて今来たばかりだから解らないわ。」

 

藤木が地面に座り花沢さんに話しかける。それに対して花沢さんは嘘を吐く。私はそれを見てみぬ振りをする。

 

「で、今度は何処からの記憶が無いの?」

「始業式が終わった直後までは覚えている。」

 

なんだ、このやり取りは。まるで何度も藤木が記憶喪失になってるみたいじゃないか。

 

「じゃあ、今日の重要な出来事は一つだけだったし気にしなくていいわよ。はい、こちら東雲箒さん。転校生よ。」

「東雲箒です。」

 

私は花沢さんに合わせて自己紹介をする。

 

「これはおご丁寧に、藤木紀春です。」

 

藤木が立ち上がりお辞儀をする。私は藤木の所作に違和感を覚える。

藤木に背を向け花沢さんに問いかける。

 

「藤木の性格が変わってないか?」

「かみやんの性格は常にブレブレだから気にしたら負けよ。」

「そうなのか…解った。」

 

しばらく二人と会話した後、校門に黒い車と黒服を着た男が居るのに気づく。

どうやら重要人物保護プログラムから迎えが来たようだ。

 

「すまない、迎えが来ているようだ。そろそろ帰らせてもらう。」

「そうか、じゃあまた明日。」

「また明日~。」

「――ッ!」

「あれ?東雲さんどうかした?」

 

重要人物保護プログラムに入って以来、また明日なんて言ってくれた人物はどれだけ居ただろうか。

何気なく言われた言葉に衝撃を受ける。

 

「また明日、っておかしかった?」

「いや、そうでもないが…」

「明日も会うんだから、また明日って言うのが当然でしょ?」

「そうだな。一度会ったら友達で、毎日会ったら兄弟だって言うしな。」

「何それ?かみやんと兄弟なんて死んでも嫌なんですけど。でも、そうね私達友達じゃない。」

「そうだよ(便乗)」

 

友達、そんなことを言われたのはいつ以来だろうか。

 

「そうだな、私達は友達だ。」

 

藤木と花沢さんに別れを告げ車に乗る。

転校初日に二人の友人が出来た。友達と呼べる人が出来たのは、一夏以来いつ振りだろう?

…………………………………

あれ、私の友達少なすぎ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は東雲さんの背中を見送っていた。やがて東雲さんは黒い車に乗り込み、車は発進した。

 

「ねぇかみやん。私気づいたことがあるの。」

「ああ、俺もだ。」

 

花沢さんも気づいたか。まぁ、あれはあからさまだった。

こんな時期に転校してくること。友達の件でのあの挙動不審な態度。そして極めつけはあの黒い車と黒服の男達だ。

 

「東雲さん、ぼっちだったのね。」

「ヤクザの娘なんだ、簡単に友達なんて出来るわけ無いだろう。」

「そうね…普通の人なら怖がっちゃうもんね。」

「だからこそ俺達が彼女に友達の良さってものを教えていかないとな。」

「そうね、彼女にはやさしくしてあげないとね。私にはIS学園があるから長くは付き合うことが出来ないけど。」

「だからお前にIS学園は無理だって。」

「そんなことないわ、私はやれば出来る子よ。」

「だったら3DSは預かっておいてあげよう。」

「それだけは無理。」

 

 

紙一重のかみやんこと転生オリ主藤木紀春15歳の冬はもうちょっとだけ続くんじゃ。




ぼっちのヤクザ娘東雲さん視点で書きました。雰囲気出てるのか心配です。

花沢さんは私的にかなり便利なキャラです。この後の話を数話既に書いているのですが、本当に便利です。

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