インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第32話 栄光の影で眠れ

ラウラの無事を再度確認し、俺は一夏の下へと飛び上がる。一夏はなにやら篠ノ之さんと話しているようだ。

 

「ラブコメ中に悪いが失礼するよ。一応今は戦闘中なもんでね」

「なっ!?」

 

俺に言われた二人の顔が赤くなる、図星だったようだ。

一夏を見ると、白式の見た目が変わっている。多分二次形態移行でもしたのだろう。

つまり今回はメタ的に言うと一夏のパワーアップ回、今回は主役を譲らないといけないようだ。

 

「セカンドシフトか? 格好いいね」

「それほどでもない、早速だがアイツを倒すぞ。援護を頼む」

「いいだろう、みんなボロボロだし頑張ってくれよ」

「ああ!」

 

そう言った一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動させ福音と激突した。

さて、俺も援護に加わろう……と言いたい所だが、隣で赤くなってる紅い奴に一喝してからにしよう。

 

「おい! 何を呆けている!? 一夏が来たとはいえ福音が強いのは変わらないんだぞ!?」

「なっ!? 私は!」

「一夏を中心に態勢を立てなおす! 全員一夏の援護に回れ! 一夏! お前は好きなように戦え!」

「いいのか?」

「俺達に合わせて戦ってくれるのか? ってかそんな事お前に出来るのか?」

「いや、無理だな」

「だろうな、そういうことだみんな! 誤射には気をつけろよ!」

「了解!」

 

俺を除いた全員の声がシンクロする。あれ? 俺を除いた? ラウラは?

 

「待たせたな、私も戦列に復帰する」

「ラウラ! もう大丈夫なのか!?」

「ああ、いつまでも寝ているわけにはいかないからな」

「良かった……本当に……」

「兄よ、心配かけてすまない。私が不甲斐ないばかりに」

「いや、もういいんだ。悪いが指揮を頼む、さっきは勢いであんな感じに言ったけど指揮官役はお前が適任だ」

「解った。しかし、作戦はそのままでいいだろう」

「そうか、じゃ行こうか」

 

いやぁ、やっぱり主人公は違いますなぁ。場の空気が一気に変わっちゃったし、ラウラも復活した。憧れちゃうね。

そんな事を思いながら俺もバズーカを両手に展開する。

 

「さて、俺も頑張りましょう!」

 

俺達は漆黒に染まった空に飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄い、凄い、一夏が凄い。特に左腕が凄い。

一夏のパワーアップ回というのは伊達じゃなかった。

あの左腕の新武装、荷電粒子砲は撃てるわシールドにもなるわ、さっきは爪に変形して福音を襲っていた。

しかしあの全ての攻撃と防御に零落白夜が使用されてるようだ、強力なのはいいんだけど燃費のほうがちょっと心配……いやかなり心配だ。

攻撃の要である一夏を失えば俺達の敗北は必至、だからこうして射撃で援護をしているのだがそれもことごとく回避される。まぁ、一夏の攻撃のチャンスを増やすための援護射撃だ。今はコレでいいだろう。

 

「おーい、一夏。そんなにワンオフ使って大丈夫か?」

「……大丈夫じゃない、問題だ」

 

一夏大ピンチである。

しかし、こういう時は都合のいいことが起こるもんだ。

 

「一夏、これを受け取れ!」

 

そう言って篠ノ之さんが一夏に手を差し出す、繋がった手に光が灯る。

 

「な、なんだ……? エネルギーが回復!? 箒、これは――」

「一夏、奴を倒すんだ」

「ああ、行くぞ!」

 

なんだかイケそうな気がする。いやぁ、ご都合主義っていいもんですね。

さて、俺は援護に集中しよう。一夏が福音を落とすために決定的な隙を作らねばならない。ならば俺が選択するのは射撃武器ではない。

霧雨を右手にに展開する。

 

さて、打鉄・改よ。お前の最後の花道だ、存分に魅せてくれ。

戦闘前に言われたとおりになれば俺が打鉄・改を操縦するのはコレで最後だ。悔いの残らない戦いをしよう。

 

俺は瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一夏を追い越した。

 

「先に行って隙を作ってやる! 後は任せた!」

「ああ! 頼む!」

 

俺は福音に打鉄・改の全速力で突撃して行った、福音がエネルギー弾を乱射するがそれを壊れかけの盾で防ぐ、思えばこの盾にも何度も命を救ってもらった。そう思うと感慨深いものがある。

右手に握る霧雨はヒロイズムと並ぶ俺の武器の優等生だ。それを福音の腹部に横薙ぎで撃ちつけそのまま福音を通り過ぎる。インパクトの衝撃で霧雨は吹っ飛んでしまった。

福音は振り向き俺に射撃をしようと試みるが仲間達の援護射撃でそれを中止させられる。

空中ドリフトで福音と再度相対する、空中ドリフトももう使うことはないだろう、コレはこの機体専用の操縦技術だ。これを習得するのも結構大変だったな。

俺は突突を展開、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で福音に最後の突撃を行う。こいつには散々苦労させてこられた、これが当たった回数なんて少なすぎて覚えてない。しかし劣等生ほどかわいいものだ。だからこんな時にも俺は突突を使うのだろう。

 

さようなら、打鉄・改。この突撃が当たろうと当たらなかろうと福音は一夏によって倒されるだろう、ハイパーセンサーがそれを教えてくれる。打鉄・改、ありがとう。

 

そんなセンチメンタルを抱いて突撃し、あと数十センチで福音に突突の先端が当たろうかというところで声が聞こえた。

 

「クソガキ、お前は死ね」

 

その瞬間、消えてしまった。俺の打鉄・改が……

 

俺は突撃の勢いそのままに福音に激突する、ISがないもんだからその衝撃は俺の全身にダイレクトに伝わった。そして、銃弾からも身を守れるISスーツは衝撃を和らげてくれることはない。

 

「ごはぁっ!?」

 

血の味が口の中に満たされる、目の前が真っ赤に染まる、胸が痛くて呼吸がうまく出来ない。

そうか、罠ってこういうことだったんだ……

一夏が零落白夜を纏った剣を振りかぶる、その顔は驚いているように見えた。

そんな光景を見ながら俺は意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は零落白夜で福音を切り裂こうかという直前、紀春のISが解除され紀春は生身のまま福音に衝突した。

しかし勢いづいた俺はもう自分を止めることが出来ず、そのまま福音を切り裂いた。紀春ごと……

福音が盾になったお陰で紀春に零落白夜はほとんど当たってない、しかしその脇腹から鮮血が吹き出すのを俺は見た。

 

「えっ?」

 

ISが解除され落下していく福音のパイロットと紀春、俺は動揺し何も出来ないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮血を撒き散らしながら落下していく紀春、このまま海面まで落下してしまえば紀春はもう死んでしまうかもしれない。

そう思ったが先か、僕は全速力で紀春に近づきその体をキャッチした。

 

「がっ……ごぽっ」

 

僕の腕の中に居る紀春は血を吐き出し痙攣している。その口から再度血飛沫が飛び出し、僕の頬を赤く染めた。

その後のことは僕も良く覚えてはいない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

動揺し一歩出遅れた俺であったが紀春はシャルロットが受け止めたし、福音のパイロットは鈴が受け止めた。

俺は急いで紀春の所へ向かった。

 

「シャルロット!」

「あ……あっ、一夏? どっ、どどうしよう? 紀春が……」

 

紀春を抱きかかえたシャルロットがカタカタと震えている、その顔には血が付着しておりどう見てもパニックに陥っている。

その時俺達に通信が入る。

 

「病院に連れて行くに決まってるだろう! 織斑一夏、今はお前が一番速く飛べるはずだ! 藤木君を連れてココまで行け!」

 

その聞き覚えのない声と共に、地図が転送される。多分この地点ががここから一番近い病院なのだろう。

 

「えと、誰ですか?」

「三津村重工の不動だ! もう病院には連絡してある。早くしろ、間に合わなくなっても知らんぞ!」

 

三津村重工、紀春のサポートの人だろうか? しかし、今はそんな事を考えている場合じゃなかった。

早く行かないと紀春の命に関わる、こうしている間にも紀春の脇腹から血がドクドクと流れ出しているのだ。

 

「シャルロット、紀春を渡してくれ」

「えと、ええと……?」

「シャルロット!」

 

シャルロットを怒鳴りつける、シャルロットはその言葉に驚いたのか大きく体を震わせた。

 

「え? あ、はい……」

 

差し出された紀春を受け取り、俺は示されたガイドビーコンに従いこの空域を離脱した。

血まみれの口から吐き出される呼吸は浅い、急がなければ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、ここで待っていてください」

「はい、解りました」

 

病院に到着するとそこには数名の医師が待ち構えており、紀春はストレッチャーに乗せられ処置室へと消えて行った。

俺は他のスタッフに案内されて、個室に案内された。個室にはホワイトボードや長机、パイプ椅子が置かれている。

とりあえず俺はパイプ椅子に座りただひたすら紀春の回復を待った。

 

長いようで短いような時間が過ぎ、誰かが個室に入ってくる。

俺の知らない人だ、格好からして医者ではないようだ。

 

「織斑一夏君だね、私は三津村重工の不動奈緒だ。さっきは怒鳴ったりして悪かったね」

 

そう言い、不動さんは俺の向かいにあるパイプ椅子に腰掛けた。

 

「いえ、緊急事態でしたし別に構いません」

「早速で悪いけど聞きたいことがあるんだ、藤木君はなんでああなった? 私もモニタリングしていたけど、さっぱり理解できないんだ」

「俺だって理解できませんよ、紀春が福音に突撃を仕掛けたところで急に紀春のISが消えたんです」

「そうか……やはり、打鉄・改を調べないと原因は解らないか……時間、足りるかなぁ」

「時間?」

「うん、打鉄・改は今回の戦闘をもってIS学園に返却される予定だったんだ。明日には打鉄・改は学園に返すように言われてる」

「返却? どうしてです?」

「正確に言えば剥奪だね、藤木君は織斑先生に戦闘参加を禁止されていたんだ。あの戦いには罠があるって事でね」

「罠? ……もしかして」

「篠ノ之博士は藤木君に殺意を持っている、そして篠ノ之博士はISコアの製作者だ。コアはブラックボックスになっていて私達もその詳しい内容を知ることは出来ない。仮に、仮にだよ? ISの操作を外部から行うようなことが出来るとしたら、出来る人は限られてくる。銀の福音だってそうだ、まだ確定じゃないけど銀の福音の暴走の原因は外部からの不正アクセスが原因らしいんだ。それに君が来るまで銀の福音は執拗に藤木君を狙っていた。証拠なんて何一つ無い、でもそう考えるのが自然に思えるんだけど」

 

束さんは紀春のことを殺したいほどに嫌っている。その理由、全てはそこに繋がる。

 

「なぜ、篠ノ之博士は藤木君を殺したいんだろうね? 織斑君、君は解るかな?」

「いえ、全く」

「やっぱり解らないよね、私もさっぱり解らない。そうなると聞くしかないよね……」

「束さんにですか?」

「いや……」

 

その時、個室のドアが開かれる。

 

「この人にだよ」

 

不動さんがドアを開けた人物を顎で指す、そこには千冬姉が居た。


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