インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

37 / 102
第23話 Sister

翌日、朝のニュースを食堂で眺めていると三津村グループがデュノア社を買収することが発表された。

俺はいつものメンバーと食事を摂っており、皆一様に驚きのコメントを寄せる。

デュノア社は三津村グループの傘下に入ることとなり、社名をMitsumura Industry Euro 通称MIEとして再始動し、役員は全員更迭されその椅子には三津村の人間が座ることになるという。

 

「紀春、これ知っていたのか?」

「一応ね、シャルルはMIEの所属になるらしいよ。昨日三津村の秘書から聞いた」

「へぇ、もしかしてアレがうまくいったってことか?」

「おう、多分うまくいったんじゃないかな?」

 

アレっていうのはシャルルの身柄についての懸念だろう。

 

「アレってどういうことですの? 教えて頂けますか?」

 

一夏の言葉にセシリアさんが疑問符を飛ばす。

 

「おっと、これは企業秘密だ! 悪いが教えることは出来ないな!」

「一夏だって企業の人間じゃないでしょうに」

「一夏は仕方ないんだよ、色々事情があってな」

「何それ、訳わかんない」

 

そんな鈴の言葉をスルーし、食事を続ける。

ちなみにこの場にシャルルは居ない、なにやら用事があるとかでどこかへ行ってしまった。

そして、食事を終えた俺達は教室に向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤木君! 織斑君からデュノア君に乗り換えるつもり!?」

 

俺が教室に入ると、まずそんな声を掛けられた。

 

「早速ホモ談義かよ……勘弁してくれ」

 

教室でも三津村がデュノア社を買収したニュースで盛り上がっており、どうやら俺が金にモノを言わせてシャルルを強引にホモの道に引き摺りこもうとしている設定で話が進んでいるようだった。

 

「もうやだ、この学園……」

「俺だってやだよ……」

「今回は俺が当事者なんだぞ、お前はいいよなぁ」

 

また俺はやさぐれる、本当に兄弟を作ってしまいそうだ。

あ、よく考えたらこの学園で俺以外の男っていったら一夏だけじゃん。これで兄弟なんて言い出したら本当にホモになってしまう。

俺と一夏が机に突っ伏す、男は本当につらいですね。寅さん。

 

俺が往年の映画スターに想いを馳せているとそこに山田先生が現れた、山田先生はこの空気をなんとかしてくれるだろうか。

 

「み、みなさん、おはようございます……」

 

教室に入ってきた山田先生はふらふらとした足取りで教壇に立つ。多分駄目だ、山田先生には期待できそうにない。

 

「今日は、ですね……みなさんに転校生を紹介します。転校生といいますか、すでに紹介は済んでいるといいますか、ええと……」

 

山田先生はなにやら歯切れの悪そうな口調でそう言う、しかしまた転校生か、ここまでくると多すぎるどころか非常識だ。しかもまた一組かよ、他のクラスはそんなにも椅子が足りていないのだろうか……

 

「じゃあ、入ってください」

「失礼します」

 

そこに入ってきたのは今日から俺と共に話題の渦中にいる人物だった。

 

「MIE所属のシャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

クラスメイトが騒ぎだす、そんなクラスメイトにスカート姿のシャルル、いやシャルロットがぺこりとお辞儀をした。

 

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした。ということです」

 

山田先生は乾いた笑いを溢しながらそう言う、多分山田先生はこれから部屋割りとかについて頭を悩ませなければいけないのだろう。

クラスメイトたちはそんな山田先生の苦悩を他所に騒ぎ続ける。

 

「え? デュノア君って女……?」

「と言う事は……あぁ^~紀春がノンケになる^~」

「でも織斑君が同室なわけだし……」

「なんだよそれ! 普通の三角関係じゃん! つまんねーなオイ」

「いや、ここは真実を知った紀春が一夏の下に戻るということも……」

「私達の希望はもうそれしか残されてないのか……」

 

乙女たちはあることないことを妄想し続けている、胃が痛くなってきた……

そんな時、教室の壁が破壊されISを纏った鈴が一組に乱入してきた。

 

「一夏ああああああっ!!!! あたしはホモも他の女も許さないわよ!!!」

 

ヤバイ、多分鈴は衝撃砲を放ってくる気だ! 現在俺のISは不動さんによって本体と武装の修理に出されたいる為、待機形態のブレスレットは所持していないので防ぎようがない!

しかも、角度的に鈴が衝撃砲を放ってくると俺も巻き添えを確実に食らうわけで……

ざんねん!!わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!! ということになってしまうのだ!

嫌だ! まだ死にたくない! 俺はまだ童貞卒業してないんだぞ! 一発やるまで死ねるか!!!

 

俺が童貞ソー・ヤングを心の中で熱唱しているその間にも鈴の衝撃砲が俺達に迫る。

しかし、俺達は死ぬことはなかった。

そう、俺達の前に救世主が現れたのだ、その名は踏み台転生者、ラウラ・ボーデヴィッヒ!

 

「助かったぜ、サンキュ。……っていうかお前のISもう直ったのか? すげえな」

「……コアはかろうじて無事だったからな。予備パーツで組みなおした」

「へー。そうなん――むぐっ!?」

 

一夏はラウラに胸倉を掴まれ、強引に唇を奪った。

俺の心の中では、ズキュウゥゥンという効果音が鳴る。

はっ、いかんいかん。ここは小粋なBGMでも流して場を盛り上げないと……

 

「At last at last ohh……」

 

そんな俺の小粋なBGMをバックに踏み台は語る。

 

「お、お前は私の嫁にする! 決定事項だ! 異論は認めん!」

「……嫁? 婿じゃなくて?」

 

たしかにそうだ、一夏は男なので婿のほうが正しいはずなのだが……

いや、ラウラは踏み台転生者。

確かに踏み台転生者たる者、主人公を嫁呼ばわりするのは当然か。

なのはの世界ではなのはを嫁呼ばわりする踏み台が多く居たもんだ、となるとオリ主である俺の役目はそんなラウラを嗜めることだ。

いや、ちょっと待てよ……これは……マズイ。

俺はこの先起こることを想像する、今から俺の想像の内容を説明させていただくが面倒なので台本形式を採らせて頂きたい。

 

ラウラ「うおおおおおっ! 嫁えええええっ! 肉壷ワッショイ!!」

一夏「いやああっ! 誰か助けてええっ!」

俺「やめなよ、一夏が嫌がっているでしょ」

ラウラ「うるせーよ! ダボ! タヒねよ! オリ主」

俺「オリ主パンチ!」(ドコォ!!

ラウラ「うわー! オリ主強い! 覚えてろよ~~~!」

俺「フッ、悪は去った……一夏、大丈夫か?」

一夏「オリ主素敵! 抱いて!」

俺「よかろうもん」

 

そこでなんやかんやあって、二人は幸せなキスをして終了。

 

駄目だ、ここでオリ主の役目を果たせばホモ一直線だ。

あれ? 俺って別に一夏狙ってるわけじゃないしホモじゃないよな?

なんだ、ならこのままでいいじゃないか。

 

俺がそんな事を考えている間に教室の状況は進む、一夏とラウラの事に俺が関与してもたぶん良いことはないだろう。

故に俺は衝撃砲が飛んでこようと、レーザーが飛んでこようと無視を続ける。

現在ISを持っていない俺は彼女達に対してあまりにも無力だ、弱者は強者の暴虐に身を屈め耐え抜くしかないのだ。

 

「紀春! 助けてくれ!」

 

一夏は迫り来る攻撃をラウラに守られながらなんとか凌いでるがその顔に余裕は全く無い。

 

「俺今ISもってないんだ、俺にあいつらと生身で戦えと?」

「そこを何とか!」

 

そう言い、一夏は俺を突き飛ばす。突き飛ばされた先には篠ノ之さんが居た。

 

「藤木……お前も私の邪魔をする気か?」

「えっ? 篠ノ之さん何で真剣なんて持ってるんですか? 銃刀法違反ですよ」

 

目の前の篠ノ之さんは薄ら笑いを浮かべ、俺に真剣を突きつける。

 

「IS学園内は治外法権だ、帯刀も許されているんだ」

「へぇ、そうなんだ。僕知らなかったよ」

「ああ、という事で私の邪魔をするのなら死んでもらわなければならない。許せ、藤木。痛みは一瞬だ」

「痛みは一瞬でも、その後永遠に眠らなきゃならないのが嫌だなぁ」

 

そう言い、俺は以前篠ノ之さんに貰った木刀、通称尻穴丸を構える。

この尻穴丸、部屋に置いておくのも邪魔なので教室に置きっぱなしにしているものだ。

そして尻穴丸の本来の持ち主である篠ノ之さんには多分何を言っても通用しないだろう、ならば実力行使でこのピンチを切り抜ける必要がある。

 

「ふっ!」

 

篠ノ之さんの掛け声と共に一陣の風が吹き、尻穴丸が真っ二つにされる。

やはり剣術の達人にこんな棒切れて戦いを挑むというのがそもそもの間違いだったのか……

 

「藤木、さよならだ。お前のことは忘れない」

「ひぃっ!?」

 

篠ノ之さんの刃が俺に迫る直前、篠ノ之さんが動きを止めた。

剣先は俺の眉間の数センチ前で止まり、眉間がじりじりとした不快感に襲われる。

 

「嫁だけではなく兄にまで手を出そうとは……全く持って許し難い女共だ」

「くっ、これは……」

 

篠ノ之さんはラウラのAICにより拘束されてしまったようだ。

ん? 今コイツ変なこと言わなかったか?

 

「……とにかく、俺は助かったのか。ありがとう、ラウラ」

 

コイツは踏み台だ、しかし礼を失するようなことはしてはいけないと両親から教えられてきた俺は素直にラウラに感謝の意を述べる。

 

「いや、兄の為だ。これ位どうということもない」

「は? 兄ぃ!?」

 

ラウラの兄発言によって荒れ模様だった教室が静まる。

 

「私がVTシステムに囚われている時、兄が言ったことを私は確かに聞いたんだ。『俺と一緒に地獄に落ちよう』、確かに兄はそう言った筈だ」

「ああ、確かにそんな事も言ったが……」

 

アレはなんとなくノリで言っただけで深い意味はない。なんでそれが兄に繋がるのだろうか。

 

「私はあの言葉の意味が全く解らなかった、だから部下のクラリッサに聞いてみたんだ。クラリッサはあの言葉の本当の意味を教えてくれた、『あの言葉は兄弟になってほしいと言っているようなものだ』と……思い返せば思い当たる節が多かった、孤立していた私をタッグパートナーに誘ったり、怒りのあまり暴走した私に対して兄は鉄拳制裁を食らわせた。女の顔をISで殴るなんて普通の人間には出来ない、しかし兄は私のために心を鬼にして私を殴った、今思えばあれは愛ゆえの行動だったんだな」

「……えっ?」

 

ラウラの超理論に俺は全くついていけない、ラウラをタッグに誘ったのは単にラウラが強かったからであり、ラウラを殴ったのはただ単にムカついたからである。そして『地獄に落ちよう』発言は確かに矢車兄貴の台詞をパクったものだが、そんな意図は全くなかった。

しかしラウラは俺の行った行動全てをポジティブに捉える。

ヤバイ、あの時殴った衝撃でこいつの頭は本格的にイカレたのかもしれない。俺はドイツに謝罪と賠償をしなければならないのだろうか?

そしてマズイ、このままじゃ俺がラウラの兄ということになってしまう。踏み台の兄なんて御免被る。

 

「さぁ、兄よ! 兄が私を妹だと認めてくれればこの話はハッピーエンドで終わる! 兄弟盃を交わそうではないか! もちろん対等に五分の盃でいいな? 兄が不満なら、六:四までなら私も妥協しよう!」

「ファッ!?」

 

話が飛躍しすぎて訳のわからない事になっており、何故か兄弟盃を交わすことまで強要されている。

何でカタギの俺が兄弟盃なんて交わさなきゃならんのだ?

 

「ちょ、ちょっとおかしいよ!」

「黙っていろ男女! これは私と兄、家族の問題なのだ!」

「いや黙らないね! カタギの紀春が兄弟盃なんて交わせるわけないでしょ! それに矢車兄貴に妹なんて居ないんだ!」

 

シャルル、いやシャルロットがラウラに反論するがシャルロットも混乱しているのか反論が滅茶苦茶だ。

 

「時代は変わったんだ、それに私はどう足掻いたって女にしかなれない。故に弟にはなれないが妹だっていいじゃないか! クラリッサもそのほうが萌えると言っていたぞ! さぁ! 兄よ! 兄弟盃だ!」

 

一夏のことは嫁呼ばわりする癖に、自分のこととなると常識的なんだね。

そんな事を考えているとラウラが俺に笑顔を向け、俺はその顔を見てしまった。

後々に思えばこれが敗因なのだろう。

 

しつこいようだがラウラ・ボーデヴィッヒは踏み台転生者である。そして踏み台転生者というものは数々のチートを与えられているもので、その代表格と言えば王の財宝だったりUBWだったりするわけだが、もっと大切なものを忘れているのではないだろうか?

そう、踏み台チートの真の代表格、それはニコポ・ナデポである。

 

そして俺は現在そのニコポを一身に受けていた、これがニコポか! ラウラの眩しい笑顔に俺のオリ主ハートが折れそうになる。

そうだ俺はオリ主だ! オリ主が踏み台にニコポされたらかっこ悪いだろうが! 耐えろ! 耐えるんだ俺!

 

「兄よ! 私が妹であると言うことを認めてくれ!」

「うん、いいよ」

 

ニコポには勝てなかったよ……

 

「紀春! それでいいの!?」

 

シャルロットが驚いた様子で俺に聞いた。

 

「ニコポされたんだから仕方ないじゃん……」

「にこぽ? なんだそりゃ?」

 

一夏の疑問を俺は華麗にスルーした。

そんな感じで俺とラウラは織斑先生を媒酌人に義兄弟の盃を交わし、IS学園に地獄兄妹が誕生したのであった。




イ、インスパイアされただけだから全く問題ない(震え声)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。