インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

34 / 102
第20話 不信のタッグトーナメント

「そういえばさ、紀春ってタッグパートナー決めたの?」

「ああ、決めたよ。結構強い奴が居たんで、そいつにお願いした」

「へぇ、誰なの?」

「教えるわけないだろ、俺達はお互い敵同士なんだぞ。敵に情報はくれてやらないのさ」

「ズルイな、俺達はバレてるってのにお前は隠してるなんて」

「勝手にそっちがばらしたんだろ。まあ、あえて言うならウチのチームは強いぜ、俺は本気で優勝狙ってるからな。もちろんお前達にも負けるつもりはない」

「そうか、それは楽しみだ。でも俺達だって専用機持ち二人で組んでるんだ、俺達だって負けるつもりはさいさ」

 

現在俺と一夏とシャルルは更衣室でトーナメントの開始まで待機している、更衣室に設置されたモニターからは観客席の様子が映し出されており、そこには各国の政府関係者や、研究所員、企業のエージェントたちの姿が映し出されている。

その中に俺の良く知る人も居た。

 

「楢崎さんと不動さんも観客席に居るのか、こりゃ恥ずかしい所は見せられないな」

「知り合いでも居たのか?」

「ああ、三津村の秘書と俺の機体の開発担当だ。授業参観に来られたみたいでやりにくいな」

「ふーん、会社勤めは辛いねぇ」

 

一夏はまるで興味なさそうに言う、多分コイツの頭の中はラウラのことでいっぱいなのだろう。

セシリアさんや鈴のことで思うことがあるようだ。まぁ、ラウラのやった仕打ちは褒められたものではないと思う。

そんな奴とタッグを組む俺も大概だと思うが。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒのことが気になるのか?」

「まぁ、な……自分の力を試せもしないってのは、正直辛いだろ」

 

一夏の顔が歪む、それを見たシャルルが一夏を宥める。

 

「感情的にならないでね。彼女は、おそらく一年の中では現時点での最強だと思う」

「そうなのか? 俺はてっきり紀春が最強だと思っていたが」

「またその話かよ、何度も言うが俺は最強じゃないって。あれは運が良かっただけだ」

 

以前ラウラを襲撃した時だって俺は全く役に立たなかった、現在一年生最強なのはラウラに間違いないだろう。

 

そんな時更衣室のモニターが切り替わる、トーナメントの対戦表が映し出された。

 

「あっ、対戦相手が決まったみたいだね」

「俺達はAブロックの第一試合か、相手は――っ!」

 

一夏とシャルルの顔が驚愕に染まる、そして二人は振り返り俺を見る。

トーナメントの対戦表によると第一試合は俺とラウラのペアと一夏とシャルルのペアが戦うことになっていた。

 

「紀春、お前どういうつもりだよ!」

 

一夏が怒鳴る、俺と奴が組むなんて一夏としても予想外だったのだろう

 

「……言ったろ? 俺は本気で優勝を狙ってるって」

「だからって……なんでラウラ・ボーデヴィッヒなんかと!」

「奴が強いからさ、それ以外に理由は無い」

 

もう一つの目的である奴が踏み台転生者であるかという確認もあった、しかしそんな事を一夏達に喋るわけにはいかない。

 

「じゃあな、急がないと試合開始時刻に間に合わなくなる」

 

そう言い、俺は更衣室を後にした。

一夏、怒ってるだろうな……しかし俺もオリ主としての役目を果たさないといけないのだ。

 

一夏から主役の座を奪い取る、そのために必要なのはきっと勝利だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑一夏は私がやる、お前は手を出すな」

 

ピットで試合開始までの準備をしていると、ラウラがそう言った。

 

「ああ、別にお前の邪魔をするつもりは無い。しかし気をつけろ、一夏は土壇場には強いぞ」

 

一夏は主人公だ、主人公ってのはピンチになれば強くなるものだ。

そしてラウラは踏み台転生者だ、普段は強いがいざとなれば役に立たなくなるだろう。

つまり、この戦いに勝利するためには俺の動きが重要になるはずだ。

 

「私が織斑一夏に負けると?」

「一夏のワンオフは脅威だ、あれを食らえば一撃で勝負を決められる。俺達が絶対的に有利ってわけでもないんだよ」

「貴様……何が言いたい?」

「敵を舐めるな。それだけだ」

「私は軍人だ! ISをスポーツか何かと勘違いしている奴に負けるわけがない!」

 

ラウラは急に怒り出す、自分の実力に自信があるのだろうが、そんな奴は大概足元を掬われるものだ。

コイツとタッグを組んだのは間違いだったかな?

 

「……解ったよ、好きにしろ」

 

俺達のチームの実力は一番だろうが、コンビネーションの訓錬なんて全くしてない、不安は尽きることはないのだ。

しかし時間は待ってくれない。

さぁ、俺が望んだ闘争の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一戦目で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」

「そりゃあなによりだ。こっちも同じ気持ちだぜ」

 

俺達はISを装備したままアリーナに降り立つ。

ラウラと一夏はやる気マンマンだ。

ふとシャルルを見ると、彼女も真剣な面持ちで俺を見る。

 

張り詰めた空気の中、俺達の試合開始が告げられた。

 

一夏が瞬時加速(イグニッション・ブースト)でラウラに迫る、それに対してラウラは右手を突き出し、ラウラのISの不思議兵装であるAICで一夏は動きを封じられた。

ラウラが、レールカノンで一夏に射撃を試みようとするがそこにシャルルが迫る。

しかし、俺だって黙って見ているわけではない。ヒロイズムを展開し、シャルルの居る方向に移動しながら三発連射する。

二発は外れるが、一発がシャルルに着弾する。しかし着弾の衝撃をシャルルは無視しラウラを襲う。

 

ラウラはシャルルに横槍を入れられ一夏を開放してしまい、一夏はその隙にラウラから距離を取る。

 

「おい! 邪魔者はちゃんと抑えておけ!」

「はいはい、悪うございましたね。なにぶん射撃は苦手なもんでね」

 

ラウラが通信を繋げ俺を罵倒する、コイツの本性が見えた気がする。

まあ、俺達にコンビネーションなんて無いのだから分断するのは悪い手じゃない。

俺はサタデーナイトスペシャルを両手に展開し、牽制に撃ちながらシャルルを追いかけまわした。

 

「紀春は僕を狙ってるのかな?」

「カワイイ子のケツを追い掛け回すのは嫌いじゃないんでね」

「可愛いって……今は戦闘中だよ!?」

 

軽く口説いてみると、シャルルの顔が心なしか赤く染まる。

コンバットパターン・ロミオ、口説いて相手をかく乱する戦闘法は俺の基本戦術だ。

どうやら、シャルルにも効いているようだ。

 

「どうだ? 俺と付き合ってみないか?」

「それ、他の子にも言ってるでしょ」

「いや、お前だけだよ。マジで好きなんだ」

「山田先生に聞いたよ、紀春は戦闘中に口説いてくるから気をつけろって!」

「……マジで山田先生がそんな事言ったの?」

「そうだ……よっ!」

 

山田先生……何でバラすんですか、しかも男とされているシャルルにそんな事言うなんてホモ展開でも期待してるんですか?

ホント、IS学園の女には碌な奴が居ないな。

 

そんな会話と弾丸の応酬からシャルルは急旋回で抜け出し、一夏の元へ飛ぶ。

俺もドリフトで後を追うが、旋回性能が天と地ほどの差があるので大きくシャルルと差を開けられる。

 

一夏は苦戦しているようでラウラから逃げ回っていた。

AICを持つラウラに対して近接装備しかない一夏は圧倒的に分が悪い、シャルルもその事が解っているようでショットガンでラウラに射撃を行う。

 

俺は突突を展開し瞬時加速(イグニッション・ブースト)でシャルルを追いかける。

シャルルは俺の突撃を回避するために射撃を中止し大きくバランスを崩す、とりあえず俺の目論見は成功した。

瞬時加速(イグニッション・ブースト)の勢いで壁が迫るが、姿勢制御して壁を踏みつけ頭からの激突を避ける。

 

「藤木! 抑えていろと言っただろう!」

「完全には無理だって、向こうは二人で一緒に戦いたいみたいだし」

「この役立たずが!」

 

またラウラに怒られる、しかし俺にだって出来ない事だってあるんだ。

そして、一夏達はその隙に大きく距離を開けた。

俺もラウラから距離を取る、近づいて邪魔したらまた怒られるからね。

 

さて、仕切りなおしだ。

そんな事を考えていると一夏は俺に、シャルルはラウラに向かって突撃する。

いい選択だと思う、一夏ではラウラ対して勝ち目は薄いだろう。

それに一夏の零落白夜は俺にだって脅威だ、この組み合わせが一番あいつらにとって有利に進むだろう。

 

「紀春うううっ!!」

「そんなに熱くなるなって、クールな奴のほうがモテると思うぞ。俺は」

 

俺は右手に霧雨を展開し、一夏と切り結ぶ。

零落白夜の影響か、霧雨から火花が散り少しずつ削れていく。

やはり、一夏相手に近接戦闘は危険か。

 

「セシリアや鈴がアイツに何をされたのか解っているのか!? どうしてアイツと組んだ!?」

「だから言ったろ? 俺は勝つためにラウラと組んだって。本当だったらお前かシャルルと組みたかったんだが先を越されちゃ仕方ないだろ?」

「いや、それだけじゃないはずだ。のほほんさんに聞いたぞ、元々は四組に居る代表候補生と組みたがっていたって」

「振られたんだよ。言わせんな恥ずかしい。それに布仏さんは俺がラウラと組もうとしてることは知っていたはずだ。お前、最初から俺が誰と組むのか知ってたんじゃないか」

「いや、そこまでは聞いてない」

「そうか。それより一夏……」

「……何だ?」

「ボディが甘いぜ!」

 

俺は空いてる左手で盾を掴み、盾の先端で一夏の腹を突いた。

一夏が一瞬よろめく、その隙に俺は大きく後ろに後退し突突を展開し、瞬時加速(イグニッション・ブースト)で再度一夏に迫った。

 

「そんなの、見え見えなんだよ!」

 

その言葉と共に一夏は俺の突撃を回避する、この突撃当たったことがあったっけ?

あ、無人機と戦った時に一回だけ当たったな。でもアレはたっちゃんのアシストがあったから成功したようなもんだ。

まあ、俺の狙いは一夏じゃないので落ち込む必要は無い。

 

俺はドリフトで方向を変え、ラウラに攻撃を加えているシャルルの下を目指す。

シャルルはラウラに対し中距離で射撃を繰り返しており、ラウラもAICがあるためダメージを負っているわけではないようだがそれでも攻めあぐねているようだった。

俺はそんなシャルルの背中に突突を突き刺すため加速をつける。

 

「させるかっ!」

 

また、旋回性能の低さが仇になった。シャルルの背中を突き刺そうとしている直前に横から一夏のタックルを食らい、俺は吹き飛ばされる。

 

二、三回地面をバウンドし、なんとか停止する。

そしてそこに迫る一夏、俺はなんとか体勢を立て直し膝立ちで零落白夜の振り下ろしを盾で防御するがこちらの盾も霧雨同様、火花を散らせながら削れていく。

ヤバイ、ピンチだ。

 

「ラウラ! ヘルプ!」

「自分で何とかしろ!」

 

やっぱりラウラは助けてくれない、こいつに少しでも期待した俺が馬鹿だったとでもいうのか。

とにかく自分の事は自分で何とかしないといけないようだ。

 

ふと思いついて、右手で地面の土を抉る。そしてそれを一夏に投げつけた。

 

「うわっ!?」

 

一夏は突然現れた目潰しに驚いたの振り下ろす力が弱まる。

更に俺は一夏に持っていた盾を押し付け、その場から離脱した。

 

「卑怯なっ!」

「卑怯で結構!」

 

サタデーナイトスペシャルで弾幕を張り、一夏から逃れる。一夏は俺に追撃を試みるがそれをラウラのワイヤーブレードが阻む。

 

「お前の相手はこの私だ!」

 

さっきまで俺に一夏を押し付けて助けもしてくれなかったのによく言う。

しかし、今の状況ではありがたい。盾を失ってしまった俺は大幅に防御力がダウンしているし零落白夜を防ぐにも霧雨はもう使い物にならない。

突突を盾代わりに使うのはいささか無理があるだろう。

 

「盾を失ったなら、もう紀春は怖くないね!」

 

そんな俺に現実はまたしても非情だ。ラウラの相手から解放されたシャルルが俺に迫ってくる。

 

「ちいっ!」

 

俺はシャルルから逃れながら、牽制にサタデーナイトスペシャルを撃つ。

試合開始直後と立場が逆転する。シャルルとしては俺をさっさと倒して一夏の救援に向かいたいところなのだろう。

やはりここでも旋回性能の差がネックになってくる。

直線でどれだけ引き離そうと、アリーナは俺の全力で飛べるほど広くはないしドリフトで旋回するとスピードが落ちる。

そのドリフトの合間にシャルルは正確な射撃で俺のシールドを少しずつ削っていく。以前の山田先生と同じ戦法を取られていた。

一難去ってまた一難。サタデーナイトスペシャルの残弾も残り12発、レインメーカーは役立たずだし、ヒロイズムは狙って撃つ武器だ。この状況は俺にとってあまりにも危ない。

何とかして状況を打開しないと……

 

とにかく距離を離して迎え撃つ体勢を整えないと俺としてはどうにもならない。

瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使用しアリーナの端から端まで一気に移動する。

また壁を足で踏みつけ激突を回避し、追って来るシャルルをヒロイズムを展開し待つ。

その先で俺を待っていたのは驚愕だった。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)だと!? お前使えたのかよ!?」

「今初めて使ったからね!」

 

シャルルが弾幕と共に俺に迫る、俺は今度こそやられてしまうのだろうか?

 

あれ? この動きどこかで見たことがあるぞ?

えーっと……そうだ! 群馬で有希子さんが散々俺に食らわせてきたとっつきを使ったコンバットパターンに良く似てる動きだ!

 

有希子さんは弾幕と共にとっついてきたわけじゃないけど、俺を倒す時に有希子さんはいつも瞬時加速(イグニッション・ブースト)から盾をキャストオフさせとっつきを俺に食らわせてた。

これ、もしかしたら逆転できるかも知れないな。

 

俺の予想通りにシャルルが俺をとっつきで倒そうと考えてるのなら、狙われるのは腹だ。

それを防ぐにはどうすればいい? いや、ここはライフで受ける! そして守ったら負ける! 攻めろ!

 

俺は壁を背にシャルルを待ち構え、左腕を背中で隠す。シャルルより先に銃弾が俺に襲い掛かるが気合で耐え抜く。

 

「これで、終わりにさせてもらうよ!」

 

案の定シャルルは盾をキャストオフさせとっつきを俺の腹に向かって放つ。

俺はこれをまたしても気合で耐え抜いた。

 

「ぐぅっ!!」

「まだまだっ!」

 

シャルルは俺にトドメを刺すつもりだろうが、全ては俺の目論見通りだ。

俺はシャルルがとっつきを放つ前に左手に展開していたレインメーカーを両手で構える。

俺とシャルルの距離はゼロだ。

 

「えっ!?」

「待ってたよ、この瞬間を」

 

左手でトリガーを引く、シャルルは至近距離から放たれたレインメーカーの散弾を全て受け吹っ飛んでいった。

 

吹き飛ばされたシャルルが立ち上がろうとするがシャルルの乗るISは煙を吹き、動かなくなった。

 

「くぅっ、もう少しだったのにな……」

「さっきの動きは知っていたんでな、お前がパイルバンカーを出してくるだろうと予想していたがうまくいったよ」

「僕の動きが読まれてたっていうの!?」

「俺の先生が同じような動きをしていたのを覚えていただけだ。シャルル、運が無かったな」

「紀春の先生って?」

「三津村のテストパイロットだよ、彼女もラファール・リヴァイヴを使っていた」

「そうだったんだ……必死でやってたんだけど、紀春に読まれてたなんて何か悔しいな」

「悪いな、俺ってまぁまぁ強いんだ」

 

そう言い残し、俺はラウラと一夏の居る方向へ向かう。

勝利は目の前だが、あの踏み台が余計なことをしないとは限らない。気を引き締めていこう。




タッグ戦闘回前編終了、明日は後編です。

しかし、年末は本当に忙しい……騎士様としての勤めもあるし、地球防衛も難航しているし、年が明けて一月の後半になると大統領として活動しないといけないもんだから大変です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。