インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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うわああああ!カミーラ可愛いよおおおっ!


第16話 オリ主の帰還

「帰りたい……」

「頼むよ、居てくれよ」

 

昼休みの屋上、そこでは女の戦いが繰り広げられていた。

一夏にイカれた女達の弁当勝負だ。

 

そんなものに参加したくはなかったが、一夏に強引に引っ張られて連れてこられた。

 

「何であんた達も居るのよ……」

 

鈴がボソッと言った言葉が耳に入る、だから俺だって居たくないんだってば。

あんた達ということは鈴にとっての邪魔者は俺だけではないわけで、そこにはシャルルも居た。

 

「ええと、本当に僕が同席してもよかったのかな?」

 

シャルルは遠慮がちに言う、しつこい様だが僕は同席したくないです。

しかし、一夏に強引に連れてこられた俺は購買で何も買うことが出来ず今日の俺の昼食はこの三人娘の弁当のお裾分けしかない。

ちなみにシャルルはちゃっかりと購買で売っているパンを確保しているようだった。

 

「ほら、あんたも食べなさい。何も持ってきてないんでしょ?」

 

さりげなく鈴が俺にそう言う、しかし俺が思うにこれは一夏への間接的なアタックだと思う。

一夏の友達である俺に優しくしてさりげなく自分をアピールする算段なのだろう。

 

でもボク、それに食いついちゃう。だっておなか空いてるもん。

 

それを察した残りの二人も俺の懐柔作戦に乗り出す。

 

「藤木、私のも食べろ」

「紀春さんも、お一ついかがですか?」

 

一夏のために作られたであろう弁当が俺の前に並ぶ、うわあうれしいな。

そんな感じで全員のお弁当交換会が始まった。

 

彼女達の作る弁当はうまかった、多分愛だね。

しかし、その最中事件は起こったのだった。

 

「サンドイッチか、そういえば最近全然食ってないな」

「あら、紀春さん。どうぞお食べになってください」

 

そう言ってセシリアさんがサンドイッチの入ったバスケットを差し出す。

見た目は凄くうまそうだ、メシマズの国の生まれのセシリアさんが作ったとはとは思えないその出来栄えが俺の食欲をそそる。

 

「では、失礼します」

 

と言い、サンドイッチを一口齧る。

 

……甘い! そして何だこの匂いは!

見た目とは完全にかけ離れた味が俺の舌を襲う、多分これはバニラエッセンスだ!

 

「うげえええっ、誰かっ水を……」

 

俺の突然の豹変に皆の動きが一瞬止まり、俺の水を求める声に反応できなかった。

俺はとっさにシャルルが飲もうとしていたペットボトルを奪い取った。

 

「あっ、それ僕の……」

「すまん! 後で同じものを買ってやるから」

 

そう言いながら俺はペットボトルに口をつけ飲み始める。

何が入ってるかラベルを確認する余裕なんてなかったのが今回の敗因なのだろう。

 

「ゴホァ!」

 

その味を知ってしまった瞬間、俺は頭痛に襲われる。そしてそのまま意識を失ってしまった。

 

ペットボトルには黄色いラベルが貼られており、そこに『午○の紅茶』と書かれていた。

レモンティー、俺の嫌いなレモンが入ってる紅茶だ、俺はレモンが気絶するほど大嫌いなのだ。

それは生まれる前から……カズトさんとアイスティーを飲もうとした時からこうだった。

理由は、謎だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目に遭った……」

「災難だったな、しかしあんなにもレモンが嫌いだったとは」

「俺にも理由が解らないんだが、レモンを見ただけで頭痛がするんだ。口に入れたのなんて初めてだよ」

 

学校も終わり、俺は一夏と今日あったことを駄弁りながら寮で休んでいる。

その時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 

「どうぞー」

 

俺がそう声を発すると、ドアが開かれ山田先生が入ってきた。

 

「お邪魔します」

「邪魔すんなら帰って」

「藤木君、もうその手には乗りませんよ」

「ちっ!」

 

このネタはもう山田先生に通用しないのか……

 

「で、今回は何の用です?」

「藤木君! またお引越しです!」

「え?」

 

その疑問に答えるようにシャルルが現れる。

 

「ごめん、僕のせいで……」

「もしかして……」

 

俺はこの部屋から追い出されるのか。

 

「はい、そのもしかしてです!」

「俺、特別室に逆戻り?」

「はい、お願いできますか?」

 

ちょっとイラッとした、毎度毎度この人は俺のことを怒らせる。

何だ? 山田先生はドMなのか?

 

「なんなんですか! また特別室ですか!? いや特別室に行くのは構わないさ! あそこにシャルルを住まわせるのは何か違う気がしますし! でももっと早く言ってくれてもいいんじゃないですか!? 何で当日に言うかなぁ!?」

「すっ、すみません! デュノア君の受け入れでバタバタしてまして、すっかり忘れてたんです!」

「本当にここの教師は努力が足りないなあ!」

「おっしゃる通りです、でも決まってしまったことなので」

「……はぁ、解りましたよ。ここで山田先生を怒鳴っても何も解決しませんし」

 

ここでの生活ももう終わりか、さようならフカフカベッド。こんにちわ、特別室。

あれ?そういえば……

 

「そういえば寮の増設の件はどうなったんです?あれからもう二ヶ月ほど経ちますけど」

「ええと、それがですね……」

「それが?」

「明日、新しい転校生が来る予定でして、彼女の部屋になる予定なんですよ」

 

転校生……まだ居るのかよ。多すぎやしないか?

 

「ではお聞きしますが、なんでその転校生の部屋が確保されててシャルルの部屋、いや俺の部屋が確保されてないんですか?」

「それはこちらの不徳の致すところでして……」

「もういいですよ、どうせ俺は特別室から逃げ出せないんだ……お前達はいいよなぁ」

 

そう言いながら一夏とシャルルを見る、二人とも苦笑いしていた。

このままやさぐれて兄弟でもつくろうかと思いたくなってくる。

 

「すみません、お引越しのお手伝いしますから」

「別にしなくていいですよ、私物のほとんどは特別室に置きっ放しにしてますから」

「そうですか、ということで引越しお願いします」

 

そう言い山田先生はまた逃げるように出て行った。

 

「なんか、ゴメン。僕のせいで……」

「いや、お前に罪は無い。気にするな」

 

見送るシャルルを尻目に、俺は普段使っている衣類と私物を持って部屋から出た。

目指すは特別室、あの部屋が俺を待っている。

 

廊下を歩き、特別室のドアを開ける。

特別室は俺が出て行ったあの日と変わらない姿で俺を出迎えてくれた。

 

「ただいま……」

「おかえり藤木君!」

 

壁の穴から声がした、お隣さんも元気なようだ。

 

「藤木君、1025室から追い出されたんだって?」

「何で知ってるんだよ」

「私達って結構な事情通なのよ、IS学園で知らないことは無いってくらいにね」

 

お隣さんとは初めて会ったとき以来顔を合わせてないし実は名前も知らない、しかしこの関係が心地よく感じる。

特別室だって悪い事だらけでは無いのかもしれない。

 

「へぇ、そうなんだ。だったら教えてくれないか?明日転校生が来るらしいんだがどんな奴か知ってるか?」

「転校生、ああ多分彼女ね。」

 

マジで知ってるのかよ、彼女らが事情通であってもまだ転入してもない転校生のことまで知ってるとは。

 

「あんたらすげえな、知ってるとは思わなかった」

「ええと、名前はラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ出身ね。もちろん代表候補生よ」

「転入できる奴っていったらそれ位しか思い浮かばないもんな、他には何かあるか?」

「どうやら軍人らしいわよ、しかも少佐だって」

「少佐!?そのラウラ・ボーデヴィッヒって何歳だ?」

「藤木君と同じよ。そんな歳で少佐なんて凄いわね」

「いやいやいやいや、15で少佐なんて凄いどころかおかしいだろ。そもそも15で軍人ってのがおかしいだろ」

 

かの赤い彗星でさえ少佐になったのは20歳であったはずだ、しかも大きな戦いがあるわけでもないのに15歳で少佐って絶対に何かあるに決まってるじゃないか。まるでチートだ。

 

「確かにそうよね、何かワケありなのかしら」

「ワケあり転校生は勘弁して欲しいんだがな……」

 

今日来た転校生であるシャルルだってそうだ。

俺は彼の存在によって特別室に逆戻りだし、レモンティーを飲まされた。

しかも彼自身に悪いところが無いのが性質が悪い。

 

「と、いうわけで今私達が解ってることはこれくらいね」

「ありがとう、恩に着るよ」

「報酬は夜這いでいいわよ」

「だからそれはやめてくれって」

「先っぽだけでいいから!!」

「それって、普通男の台詞だろ」

 

そんなこんなで夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして朝になりSHRが始まる。

転校生が来た、確かに来た。

お隣さんから聞いた情報は正しく、彼女の名前はラウラ・ボーデヴィッヒである。

 

「でも何でまたこのクラスなんだよ?」

「俺に聞くなよ……」

 

山田先生より彼女の紹介がされる中、一夏と小声で話す。

他のクラスメイトもざわざわと騒いでいる。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

 

その短い会話で、俺は違和感を覚える。

織斑先生は基本的に生徒を苗字で呼ぶ、織斑、藤木、篠ノ之、オルコット、凰、デュノア。

俺達は確かにそう呼ばれてきた。しかし彼女はラウラと呼ばれる。ボーデヴィッヒではない。

そして、それに返したラウラ・ボーデヴィッヒだってそうだ。彼女は織斑先生を先生と呼ばずに教官と呼んだ。

この二人、過去に何かあったに違いない。

 

そして、彼女を見て俺はある懸念を浮かべた。

いや、まだそうと断定するには早すぎる、少し様子を見てからでもいいだろう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「あの、以上ですか」

「以上だ」

 

以前の一夏と似たような自己紹介をする。しかし誰もズッコケないのは彼女が放つある種の威圧感が茶化してはいけない雰囲気を醸し出しているからなのであろう。

 

自己紹介を終え、ラウラ・ボーデヴィッヒが俺と一夏の間に立つ。

 

「どっちが織斑一夏だ?」

 

あれ? この子知らないんだ、だったら少し遊んであげよう。

 

「ふっ、俺が織斑一夏だ。サインでも欲しいのか――あぷぱ!」

 

思いっきり殴られた、そして俺は痛みを感じるよりも早く意識を失った。


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