インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第13話 復讐者のエントリー

アリーナで共に訓錬していたセシリア達と別れた後も、私は訓錬を続けていた。

私は一夏の周りの人間と明らかにISに関して劣っている、専用機などもっていないからそれは当然のことなのだろうがそれでも不安なのだ。

一夏が私から離れていってしまう、そんな気がしてならない。

専用機持ちの彼女達はそれについて行くことが出来るのだろうが、私ではそうはいかない。

専用機を持っていないのであればせめて腕でそれをカバーしよう、そう思い私は訓錬を続けていた。

 

しかし、もう夕方か……アリーナの使用期限が迫っている。そろそろ寮に帰ろうか。

そんな事を思っていた時だった。

 

「篠ノ之おおおおお! 箒いいいいい!!」

 

その声と共に私の体が大きく蹴り飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土煙が晴れ、打鉄を装着した篠ノ之箒が立ち上がる。

 

「貴様何者だ!? ……藤木!? どうして……」

「どうしてだと? お前が俺に行った仕打ち、俺は思い出したぞ」

「思い出した? ――ッ!」

「木刀のプレゼントありがとう、しかしアレにそんな意味が込められていたとはな!」

 

あの木刀、多分俺のアナ○を突き刺したものだろう。

彼女はその処分に困り俺に渡したというわけだ。

完全に舐められてる、奴を許してはおけない。

 

「お返しにこれをやるよ、取っておけ!」

 

俺はレインメーカーを展開し、彼女に向け発射する。

発射される直前に彼女は横に飛び、それを回避する。狙っていた場所に大きな土煙が残る。

俺は回避した彼女を睨む。

 

「あれは事故だったんだ、そもそもお前が私にセクハラするからだろう!」

「事故だったら許されるのか!? セクハラされたから許されるのか!? 俺の純ケツを強引に奪っておいてお返しが俺のケツに刺さった木刀一本か!?」

「悪かったと思っている、すまなかった」

「罪の意識があるならその報いを受けろや!」

 

その言葉の終わりにまたレインメーカーを発射した。

しかし、彼女はまたそれを回避する。

レインメーカーは反動が大きく、連射できるように出来ていない。不動さんは大口径の浪漫を追求したといっていたが、この銃は正直言って欠陥品だ。そして俺は彼女のように浪漫を理解できる人間ではない。

しかし、相手は打鉄。多分射撃系の武器は積んでないだろうし、彼女の戦闘スタイルから射撃をしてくることはないだろう。

俺は霧雨を展開し、構えた。

 

「何を言っても聞いてもらえそうにないようだな」

「誠意ってのを言葉で表すのは限界があるだろ?」

「……そうだろうな」

 

彼女も近接ブレードを構える、やってやる。

 

周りを静寂が包む、飛び出してしまいたいが彼女は剣道の達人。

ISで戦うことに関しては勝っているとは思うが、下手に攻撃するとむしろこちらがやられてしまうだろう。

 

長いような、一瞬の出来事のような時間が過ぎ去る。彼女が俺に突撃してきた。

素早い上段の打ち下ろしを受け止めると鍔迫り合いに移行する。

鍔迫り合いを長く続けていてはいつか邪魔が入ってくるだろう、そう思い彼女の剣を弾き横薙ぎの胴打ちを放つが彼女はサイドステップで避けた。

 

やはり強い、ISで戦ってることで俺に有利だと思っていたが、彼女はそれを腕でカバーしている。

射撃武器や機動力で圧倒しても俺の心は晴れないだろう。故に俺は今霧雨を使っている。

 

今度は俺から突撃する、俺の振り下ろしは彼女が横へ体を逸らすだけで回避しお返しの振り下ろしを受ける。

しかしそれは俺の狙っていたことだ、肩に受けた近接ブレードを抱き、レッドラインを彼女の左腕に装着した。

ワイヤーを伸ばしながら、五メートルほど後ろへ後退する。

 

「悪いね、これが俺のやり方だ」

「……」

 

彼女はワイヤーを切ろうと近接ブレードをワイヤーに振り下ろすがそれをワイヤーが弾く。

彼女の斬撃にも耐えるとは……このワイヤー凄いな。

 

しかし、ここで大問題が発生した。

俺が冷静になってしまったのだ。

この私闘の落とし所が全く見えなくなっており、どうすればいいか解らない。

このまま篠ノ之さんをボコボコにして終わりにするべきか?いやそれは駄目だろう、そんな事出来ない。

ならこの戦闘の空気を無視して謝ろうか?いやむしろ篠ノ之さんがやる気マンマンのようだ。

 

しかし、そこへ救世主が現れた。もちろん我らが主人公織斑一夏だ!

一夏はワイヤーを零落白夜で切り裂き、俺に相対する。

後ろの篠ノ之さんの頬が染まる、こんな時でもそれかよ。

 

「もうやめるんだ! 紀春!」

 

どう答えよう? ここでハイ止めますなんて言ってもカッコがつかない。

ここは強気に出て、一度反応を見るべきか。

 

「止めるな一夏! 今更やめられるかよ!」

 

さぁ一夏、どう出る?

 

「そうか……だったら仕方が無い」

 

一夏が構える。

えっ? いきなり戦うの? もうちょっと粘れよ、俺も頑張って落とし所見つけるからさ!

 

「どうした紀春、構えろよ」

 

ええい! ここで考えても仕方ない、ここはある程度粘ったらカッコ良く負けよう!

そして記憶喪失のフリでもして全部水に流すか!

よし! 決まった! なるべく悪役っぽく台詞を返そう。

 

「お前如きが俺に敵うとでも思っているのか?」

 

そう言い、霧雨を構える。

一夏とは何度か模擬戦をしているが、空中ドリフトを習得したからか今のところ俺の全戦全勝だ。

いい感じの台詞を言えて、心の中でガッツポーズをする。

さあ一夏! 掛かって来い! お前に勝利をプレゼントしよう!

 

「……そうだな、俺だけじゃお前には敵わないだろうな」

 

え? 一夏だけじゃ敵わない?

ってことはもしかして……

 

その瞬間、俺の足元にレーザーが着弾した。

 

「紀春さん! わたくしには深い事情は解りませんがおやめになってください!」

 

げえっ! セシリアさん!

 

ハイパーセンサーの視界で確認すると、後ろの上空でセシリアさんがライフルを構えていた。

ヤバイ、ヤバイぞこれ。セシリアさんが来てるってことはアイツも多分居る。

 

「紀春、もうやめたほうがいいんじゃない? 流石にアンタでもあたし達全員を倒すのは無理よ」

 

ああ、やっぱり居るよ。

 

鈴がゆっくり一夏の隣に降り立つ、それを見たセシリアさんの顔がちょっと不機嫌な感じになる。

こいつら何か勘違いしてないか?ここはお前らの恋愛イベントの場じゃないんだぞ。

 

しかし、状況が更に悪くなったぞ……これで勝つのは絶対に無理だ、しかし未だに落とし所が見つからない。

一夏……お前が篠ノ之さんを謝らせてくれないかな? そうすれば状況を打開するチャンスが出来ると思うんだが……

 

「止めるな一夏! これは私と藤木の戦いだ!」

 

うぎゃああああああ! お前何言ってんだよ! レッドライン外れて強気になった&一夏にかっこいい所見せたいのは解るが自重してくれ!

 

どうしよう、このまま篠ノ之さんと戦ったら俺が勝っちゃうぞ。

流石にみんなの見てる前で量産機にボコボコにされるのは恥ずかしいし、流石に霧雨だけで戦ってたらやる気が無いのがばれちゃうから射撃も使わないといけないし。

 

優勢になって篠ノ之さんをボコボコにしたらまた一夏達が止めに入るだろう。

そうすればまたこの状況がやってくる。

 

「藤木……すまなかったな、お前の気が晴れるまでとことんやり合おう。もちろん一対一だ」

 

その言葉を聞いた瞬間天啓が来た、俺が恥をかかずに負ける方法は一つしかない。

むしろ全員を巻き込んで戦おう、もうそれしか方法は無い。

よし、カッコイイ悪役的な台詞は……

 

「何を付け上がってる? お前が俺に一対一で勝てるわけないだろう。全員で掛かって来い」

 

一夏達の表情が強張る、もう俺が出来ることは全力で戦うことだけだ。

出来るだけ粘ろう、集団でボコボコにされてそのまま負けましたじゃかっこ悪い。

 

「紀春……あんた……」

「何だ? 怖気づいたか鈴、全員で掛かって来いと言ったんだぞ。俺は別に構わん」

「解ったわよ、やってやるわよ! あんたの目、覚まさせてあげる」

「やれるもんならやってみろ!」

 

その言葉が試合開始のゴングとなった。

俺と鈴が激突する、一合打ち合った後鈴がもう一度剣を振り下ろすが俺はそれを上空に飛翔し回避する。

その瞬間、鈴にレーザーが襲い掛かった。

 

「ぐっ! あんた! 何してんのよ!」

 

どうやら俺の背中を狙ったセシリアさんが鈴に誤射してしまったらしい、俺は戸惑っているであろうセシリアさんに突撃し盾の先端で突いた。

その衝撃でセシリアさんが吹っ飛ぶ。

 

「紀春! やめてくれ!」

 

そう言い一夏が雪片弐型で俺に切りかかる、俺はすぐさま体勢を立て直しその攻撃を霧雨で防いだ。

 

「さっきも言っただろ! 今更やめられるか!」

 

そのまま競り合っていると、嫌な予感がして霧雨を引き後退する。

俺と一夏の間に不可視の衝撃が走る。

 

「嘘!? 龍砲を避けるなんて」

 

こんな日に限ってオリ主シックスセンスが冴え渡る。どうせなら今日ではなく、篠ノ之さんにア○ルを刺された日に冴え渡って欲しかった。

そして警告して欲しかった、セクハラ発言はやめなさいと。

 

真下から撃った鈴が驚愕する中、俺は鈴に向かって突撃を掛ける。

姿勢制御をして鈴を踏みつけそのまま地面まで降りる。踏みつけられた鈴は苦しそうな表情をする。

 

「あんた、ここまでやるなんて。意外だったわ」

 

俺も意外に思う、なんでここまで出来るんだろう?

おっと、ここでカッコイイ悪役台詞でも言って場を盛り上げないと。

 

「そうか、お褒めに預かり光栄だよ」

「そこだ!」

 

今度は篠ノ之さんの斬撃が俺を襲う、びっくりして右手を出したらまたしても予想外な事が起きた。

 

「何……だと……」

 

俺の右手は篠ノ之さんの近接ブレードを右手だけで受け止める。正確には親指と人差し指でつまむ様に受け止めた。

どういうことだろう、こんな時に限って俺の強さが有頂天だ。四人に囲まれ集団リンチを受ける予定だったのだがむしろ圧倒している。自分でも怖くなってきた。

 

「余所見すんじゃないわよ!」

 

その瞬間真下から衝撃が走る、多分鈴が龍砲とやらを撃ってきたのだろう。

俺は上空へ吹っ飛ばされた。

よし、チャンスだ! この攻撃を機にとことんやられてしまおう!

しかしそんな考えが許されるほど甘くはなかった。

 

「ぐはぁっ!!」

 

龍砲にに吹き飛ばされた俺を待っていたのは一夏だった。

一夏が俺と衝突し、今度は一夏が吹き飛ばされる。

空中で静止しているとまたレーザーが襲ってきたので盾で防御した。

 

「紀春さん、以前もう一度わたくしと戦ったら絶対に勝てないとおっしゃっていましたがあれは嘘のようですね」

 

復活したセシリアさんが俺を見据える、しかし俺だってここまでやれるとは思ってなかったんだ。

 

「悪かったな」

 

余裕の笑みでそう答える、今は俺が悪役だ。もうそう答えるしかなかった。

 

「全力でお相手いたしますわ。覚悟してください」

 

セシリアさんがライフルを構える。気づくと、俺の周りの四方を囲まれていた。

 

「さて、仕切り直しだ。そろそろ終わらせてやる」

 

今の絶好調すぎる俺が言うと強ち不可能じゃないから困る。

とにかくこれから何としてでも敗北への活路を見出さなければ、もし勝ってしまったら俺には事態の収拾は不可能だ。

 

俺が言ったが先か、一夏、篠ノ之さん、鈴が突撃してきた。俺はそれを更に高く飛び上がることで回避する、流石にこれは向こう側のミスだ。戦術選択が甘すぎる。

激突した三人は一瞬動きを止める。

そしてそれを見逃す俺ではない、セシリアさんの放つライフルの弾を避けながら三人が集まっている所に突入し、三人に至近距離からレインメーカーを放つ。

そのままの勢いで三人にタックルすると三人が三方向に吹っ飛んで行った。

 

その瞬間、今度はセシリアさんがビットの攻撃を放つ最初の二、三発は食らうが、その後の攻撃は空中ドリフトを駆使し全部避けた。ちなみにだが普段はこんな芸当出来はしない。

 

ついでに回避しながらサタデーナイトスペシャルでビットを全て打ち落としておいた、もちろん普段はこんなこと出来ない。

っていうか今日のサタデーナイトスペシャルは百発百中だった。何かがおかしい、いやこの戦闘を始めてから全ておかしいか。

 

「オモチャは全て片付けておいたぞ、次はお前だ」

 

ビットの操作に付きっ切りだったセシリアさんにサタデーナイトスペシャルを突きつける。

しかし、俺はその時確信していた。今度こそ負けることが出来ると。

一夏のISが復活したからである、そんな表示が俺の視界に現れる。

もう終わりにしよう、このがら空きの背中に零落白夜を叩き込め。それで終わりだ。

 

「紀春うううううううっ!」

 

一夏が怒りの形相で俺に襲い掛かる、俺はセシリアさんに銃を突きつけながらハイパーセンサーの視界でそれを見つめていた。

 

しかし幸運の女神はまたしても俺の味方をしてしまう。

 

「えっ? ――ぐわあっ!!」

 

俺、一夏、セシリアさんの三人がまとめて吹っ飛んだ。俺達は三人まとめて放物線を描きアリーナの壁に激突した。

 

俺は今起こった事の原因を探す、アリーナの反対側に鈴の姿が見えた。どうやら龍砲で味方ごと砲撃されたようだ。

これで戦える奴は俺とセシリアさんと鈴だけになった。

 

篠ノ之さんはレインメーカーを受けてリタイヤしたし、一夏は俺に斬りかかる直前に零落白夜が消えてしまった。つまり龍砲を受ける前にリタイヤしてしまったわけだ。

 

俺は突突を展開し鈴の居る方向に突撃した。

その時、ついに俺に幸運の女神が舞い降りる。

 

「させませんわ!」

 

その言葉と共に背中にセシリアさんの放つレーザーが着弾したからだ、俺が体勢を崩すと今度は龍砲が襲い掛かってきた。

 

「これで……終わりよっ!」

 

俺は弾丸の雨を前後から受ける、衝撃で意識を失いそうになる。

ついに俺の敗北の時間がやってきたと思うと嬉しくて仕方ない。

ゴリゴリ減るシールドエネルギーを見つめる。それがゼロになった瞬間俺は歓喜と共に今度こそ意識を失っていった。


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