インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
お見苦しい点も多々あるとは思いますが、やさしくアドバイスを頂けるとうれしいです。
「とりあえず転生してもらうから」
「はぁ……そうですか」
「しかも、オリ主としてな」
「マジですか!?」
壁も床も天井も白い部屋。
俺は今、その部屋にある白いソファーに座っている白いスーツを着たおっさんと向かい合って言葉を交わしている。
「転生ってことは、やっぱり死んだんですかね? 俺」
一日を終えてベットに潜り込み、明日は金曜か学校行きたくねぇな。とか考えながら眠りについたはずだ。決して数々のオリ主を生み出した暴走トラックに身を任せた覚えはない。ついでに轢かれそうな見ず知らずガキを命懸けで助けようと思う程お人好しでもない。
「いや、そういうわけじゃないんだよ」
「あれ? 違うんですか?」
「結構ややこしい話になるから詳細は省くけどまぁ納得してくれ」
「あい、わかりやした」
下っ端っぽく返事をしてみる、余計に反抗してもいいことは無いだろう。
テンプレ的に考えてこのおっさんは神様っぽいし、不興を買って第二の人生を得るチャンスをふいにしたくはない。
それにオリ主だ。前回の地味な人生が嫌だったというわけではないし、気の置けない友人たちに囲まれての生活に未練が無い訳ではない。あ、他にも未練あった。彼女とかほしかったわ。第1の人生は大学三年生の夏に素人童貞のまま終わってしまった。マジで彼女ほしかった。
とにかく、オリ主の地位を確立できれば本来の主人公や周りの人々達と一緒に壮大な冒険の旅に出ることができるかもしれない。以前の人生とは違うド派手な人生だ。目くるめくスペクタクルに身を任せセンセーショナルな人生を歩むのだ。そして何より彼女が欲しい!!!!!
いかん、興奮してきた。
「あら、素直じゃない」
目の前のおっさんがいきなりオネェ口調で喋りだす、こいつホモか。
「反抗的になるのが良いとは思えないですから。それにオリ主ですよね? 少しは期待しちゃいますよ」
荒れ狂う内面とホモの嫌悪感とは裏腹に爽やかな笑顔で返す俺。しかしオリ主か、俺はどんな世界に行くのだろう? 出来れば日常物とか恋愛物とかは勘弁していただきたい。
せっかく物語の世界に行くのだからバトルがしてみたいものだ。殺し殺されが好きなわけでは無いが、男の子に生まれたからにはそういうモノに大なり小なり憧れを抱いてしまうのは仕方の無いものではないだろうか。
ああ、ついでにTSも簡便な。さらにNTL NTRはダメ、ゼッタイ。
嗚呼、バトルがしたい。「波あああーーーー」とか撃ってみたい。宇宙戦艦に艦長として乗って「撃てえええーーーーー」とか言いたい。ファンタジーな世界でモンスターに魔法を撃ちまくりたい。人型機動兵器に乗って無双してみたい。生身でもいいから無双したい。「奴は化け物か!?」とか言われたい。ついでにファンネルとかハイパーオーラ斬りとかを「踏み込みが足りん!」とか言われながら切り払いされたい。そして何より彼女が欲しい!!!!!
ヤバイ、興奮しすぎて頭がおかしくなってる。
「ええ、期待していいわよ。バトルも彼女も思いのままの所へ連れてってあげるわ。まぁ、彼女は頑張り次第だけどね」
「えっ?」
このホモ俺の心を読んでやがるのか!?
「まぁ、神様みたいなもんだし心くらいは読めるわよ。そしてご想像の通り私はゲイよ」
「失礼なこと考えてすいませんでした!」
白いソファーの上で高速土下座をする。コメディー系主人公必須スキルであろう高速土下座は既に身に付いているらしい、転生先の未来を見たようで少しゲンナリした。
しかしながら、そのお陰でマグマのように熱く煮え滾る心も少しクールダウンしてきた。
これからはこのホモ神様に真摯に接しよう。天罰を食らって墓地に送られたらたまったもんではない。いや、死んでいる俺は既に墓地にいるのではないだろうか? ならば
「許してあーげない♪」
ああ、終わった……俺はこのまま除外エリアに送られてしまうのか……
「……こともないわ」
「『こともない』とは?」
「私はゲイよ」
「はい。そして俺はノンケです」
嫌な予感がする。
「解るわね?」
「どういうことでしょうか?」
今更だが、この部屋の温度は適温だ。しかし俺の額やらそこかしこから脂汗が滲み出してくる。
「私はゲイよ」
「それはさっき聞きました」
「汗臭い男、嫌いじゃないわ」
「ひっ!?」
ホモ神様のねっとりとした視線が絡みつく! 汗を搔いてるはずなのに体が寒い!
「やらないか」
「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」
勢い良くソファーを飛び降り白い部屋の隅に走る!
怯えながらホモ神様を見ると白いスーツを脱いでおり、これまた白い褌一丁の姿で立ち上がっていた。どうやらナニも勃ち上がってるようだ!
「ひいいいいいいいい!!!」
ホモ神様はゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる。
俺との距離約10メートル。その距離が0になった時、俺は
「ゼッタイ気持ちよくしてあげるから、怖がらなくてもいいのよ?」
「ごめんなさい!ごめんなさい!! 許してください!!!」
「だから、許してあげるって♪」
「それも許してください!!!!!」
半ば無意識のうちに土下座を繰り返し、涙を流しながら許しを請う。
男にはプライドを捨ててでも守り抜かなくてはならないモノがあるのだ。
俺のプライドなんてスポーツ紙の一面に広告を出してるスーパーの特売品と同じくらい安い。特売品のプライドで満足して頂けるかは疑問の余地が残るが、今はこれしかないのだ。
ホモ神様との距離約3メートル、俺は渾身の力を込めて床に自分の額を叩きつけ押し黙った。凄く痛かったが、血は出ていないようだ。
一つ、足音がした。
「……」
もう一つ足音がした。
三つ目の足音を聞いた時、視界にホモ神様の足の親指が映った。ゴツゴツした足だが、やけに爪が綺麗だった。きっとお手入れを欠かしていないのだろう。
四つ目の足音と共に反対側の親指が映る。やはり爪が綺麗だ。
「立ちなさい」
もうオリ主とか転生とかどうでも良かった。
俺は、泣きながら立ち上がる。しかし、俯いたままでホモ神様の顔を見ることはできなかった。
「……」
「冗談よ♪」
俺の両肩にホモ神様の手が置かれる、顔を上げるとホモ神様は慈愛に満ちた表情で微笑んでいた。俺は救われたのだ、涙は未だ止まらない。
「ううっ……」
「だーいじょうぶだから…ねっ?」
ホモ神様の引き締まったボディに抱きしめられる。下腹部に何か硬いモノが当たっている気がするが、きっと気のせいだろう。そんな状況で俺はなんとかボロ雑巾のように成り果てた精神を立て直す。そう、きっとこれは試練なのだ。これから行くバトル有りの世界ではもっと精神的に追い詰められることもあるかも知れない。
そうだ! 俺はオリ主だ! 主人公だ! 主人公ならばどんな絶望的状況でも諦めてはいけない! 未だ見ぬ仲間達のことを思え! 未来の彼女が俺を待っているぞ! ホモ神様も俺を応援してくれている! この試練を乗り越え、転生先の世界で闘争と栄光と愛を手に入れるのだ! Be cool ! GET WILD! 生きることから逃げるな! Space on your hand! その手で宇宙をつかめ!! ガンバレ、俺☆
ボロ雑巾の心に火を付け、特売品のプライドを磨き上げる。そして自分で自分を鼓舞し、白い床を踏みしめる。瞳に炎を宿し、ホモ神様の抱擁を解いた。俺はホモ神様の顔をじっと見る。
「あら、急にいい顔になったわね。抱きしめられたのが嬉しかったのかしら?」
「そういうわけではありませんけど……俺はオリ主になる男です。主人公は不屈で無いといけないと思うんですよ」
「そうね、絶望的な状況から不屈の闘志で立ち上がる展開とかはいかにも主人公らしい展開と言えるわね」
まぁ、俺はホモに迫られて怯えてただけなんですけどね。
「数々のご無礼、誠に申し訳ありませんでした」
俺は、直角にお辞儀をした。額にナニか硬いモノが当たった気がしたけど気のせいだろう。そうに決まってる。
迫られる前に考えた通り、このホモ神様に真摯に接しよう。先ほど、やれオリ主だ主人公だとほざいてみたがそれはホモ神様の厚い胸先三寸で決まることだ。俺はまだオリ主ではない。
「ええ、少し傷付いちゃった」
「なら、掘るんですか?」
ホモ神様の熱い抱擁で、俺には大統領魂やバーニング・ソウルにも負けない熱いオリ主魂を獲得している。今ならマインドクラッシュにも耐えられるはずだ。
「いいえ」
「ん?」
「慰めてもらうのよ」
ズキュウウゥン!
ホモ神様は、俺の両頬に手を当て俺の唇を唐突に奪った。唇が強引に開かれホモ神様の舌が俺の口内を蹂躙する。ネチャネチャと音をさせながら舌が絡み合う。ホモ神様から発せられるちょっと良い匂いが俺の不快感を増長させ、俺の熱いオリ主魂は初恋のレモン味と共に儚くも砕け散った。
そして身も心も陵辱された俺は、とうとう意識を手放してしまった。
ホモ神様には勝てなかったよ……
きっと掘られてたら、即死してたな俺……
「…ついさっきまでの記憶がないんです」
「どこら辺からないのかしら?」
「『そしてご想像の通り私はゲイよ。』って言われたあたりから……」
「そこからなら、大した話はして無いから大丈夫よ。それにしてもびっくりしたわ。急に気絶するから」
「俺になにかあったんですか?」
「急にこんなところに放り込まれてストレスが溜まってるんでしょう。何か冷たいものでも飲む? って言ってもアイスティーしか無いんだけど」
「あっ、頂きます」
壁も床も天井も白い部屋。
俺は今、その部屋にある白いソファーに座っている白いスーツを着たホモ神様と向かい合って言葉を交わしている。
俺とホモ神様との間に白いテーブルが突如として現れ、その上は二つのアイスティーのグラスが置かれている。
「あっ、レモンもあるわね。入れる?」
ホモ神様は輪切りになったレモンを載せた皿を差し出す。
レモンを見ると俺は急に不快感を催し、さらには頭痛がしてくる。
「レモン……うっ 頭が……」
「大丈夫!?」
「レモンを見ると急に頭痛が……なんでなんだ?」
「よく解らないけど、レモンを入れるのはやめたほうがよさそうね」
と言うと、ホモ神様は皿に載っていたレモンを全て(約一個分)自分のグラスに投入する。
ホモ神様はレモンがお好きなようだ。
気を取り直してグラスに刺さったストローに口をつける。……うまい。前世で紅茶を飲む機会なんてペットボトルと紙パック以外ではほとんど無かったが、本物の紅茶を飲んだことが無いわけではない。数少ないそれらと比較してもこのアイスティーのレベルは違った。神様となると何気なく取り出したアイスティーでもこんなに違うものなのかと思い知らされる。
「じゃ、そろそろ本題に入りましょうか」
「本題?」
「あなたが転生する世界のことよ」
「ああ、俺オリ主になるんだった」
気絶したり、レモンのせいで頭痛がしたりして忘れていたが、そんな話だった。
「そうそう、転生オリ主っていったらチートが付き物ですけど俺は何か貰えたりするんですかね?」
「チートは無いわ」
「あら残念」
もちろん不満を言うつもりは無い。このホモ神様に逆らってはいけないと俺のゴーストが囁くからだ。
銀髪オッドアイでゲートオブバビロン! とかアンリミテッドブレイドワークス! とか出来るとか考えていたのは内緒だ。ああ、そういえば心読まれてるんだったな。ぜんぜん内緒じゃなかったわ。
しかし、これはだめだ。これじゃよくある踏み台だ。
「賢明ね」
「ありがとうございます」
やっぱり心読まれてた。
「だったら、転生先について教えてくださいよ。それとも俺が選んでいいやつなんですかね?」
「転生先については教えられないし、あなたが選ぶことも出来ないわ。ごめんなさいね」
「そりゃまた残念」
「まぁ、時期が来れば解るだろうしそんなに気にしなくても大丈夫よ」
『時期が来れば解る』その言葉に引っかかった。
それはつまり時期が来ないと解らないということだ。と言う事は少なくとも現代または近未来が舞台になるのだろうか?
少なくともファンタジー世界やSF世界なら時期とやらが来る前に世界のことについて知れるはず。そしてそこから大体の作品の予想ができるはず。
ついでに、なのはやギアスとか作品に対して重要な土地があるものは除外だ。海鳴市やブリタニアは作品本編に関わってくるであろう俺が転生する前から存在しなくてはならないはずだし、存在が解った時点で作品に巻き込まれるには早すぎるはずだ。少なくとも幼稚園児ぐらいの頃からバトルモノの世界に飛び込むなんて酷すぎるのでそれは無いと思いたい。
いや、この考えには盲点がある。俺の知らない作品に転生する場合だ。
日本全国の市町村全部の名前とか知ってるわけじゃないし、そもそも外国に転生した場合は解らない事だらけだ。
『時期が来たら解る』ということは題名とあらすじくらいは知っているはずだが、今時ネットで掲示板とかを見てる奴なら話題のアニメやラノベのあらすじなら自然に知ってしまうものだろう。
そして俺はそういう奴だ。娯楽と言えばもっぱらゲームでアニメとかはあまり見ない。
いや、全く見ないってわけじゃ無いんだけど、そんなに見ない。でもサザエさんだけは毎週見る、特別面白いわけじゃないけど何故か見ちゃう。
サザエさんの話はひとまず置いておこう。しかし、考えるたびに盲点が見つかる。
そもそもなぜ転生先を二次元に限定しているのだ?もしかしたら銃弾と爆発物が飛び交うアクション映画とかの世界かもしれないし、渋いオッサン達が鎬を削るハードボイルドな世界かもしれない。
思考は加速を続け、わけのわからない事になっている。そんな時ホモ神様が声を掛けてきた。
「何か物凄い勢いで考えているわね」
「ああ、すいません。ワクワクが止まらなくて」
ホモ神様のことを忘れて考えすぎてしまった。
「まぁいい線言ってたから特別に教えちゃうけど、現代または近未来って所は合ってるわよ。ついでに日本も正解ね」
「そうなんですか!? ありがとうございます」
ホモ神様はアイスティーに入っているレモンを咀嚼しながら話しかける。ってかそのレモン食っちゃうんですか。しかも皮ごとですか。
「そういえば転生する世界の話でしたけど、何を話すんですか?」
「もう話しちゃったじゃない。チート無し、転生先の世界は秘密ってことを言いたかったのよ。ちょっと内容喋っちゃったけど」
「そうだったんですか……」
ホモ神様がおもむろに立ち上がり、俺に声を掛ける。
「じゃあ、そろそろイク?」
「結構喋っちゃいましたね」
俺も立ち上がる。
「そうね、こんなに喋ったのは久しぶり。楽しかったわ」
「そうですか。それはよかった。」
何時間も喋ったつもりは無いが、ホモ神様としては長く感じたようだ。
神には人には解らない孤独があるのだろう。俺はこのホモ神様に感謝している。彼は俺に新しい人生と栄光を与えてくれる。そんな彼に少しでも報いるのことが出来たのなら幸いだ。
「私が与えるのは新しい人生だけよ。栄光を掴み取れるかはあなた次第」
「解りました。俺、頑張ります」
「応援してるわ」
ホモ神様は白い壁の一つを睨むと壁がひび割れ穴が開いていく。
穴の向こうには宇宙が広がっていた。
「わぁ」
「所謂次元の狭間って奴よ。そこに飛び出して流れに身を任せれば、あなたの新しい人生に辿り着くことが出来るわ」
「綺麗だ……」
「……」
ホモ神様も黙って次元の狭間を眺める。彼はいい奴だ。ホモだけど。
「じゃあ、そろそろ行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
「そうだ、最後に一つ質問が」
「答えられるものならいいわよ」
俺はホモ神様をまっすぐ見つめる。
「ホモ神様の名前ってなんなんですか? ってか名前あるんですか?」
「名前はちゃんとあるわよ。カズトっていうの」
「カズトさんですか……」
俺はカズトさんに微笑む。カズトさんも俺に微笑む。
さぁ、今度こそ行こう。
「ありがとうございましたカズトさん。行ってきます……さようなら」
「ええ、さようなら」
俺は次元の狭間へ飛び込んだ。次元の狭間に重力は無いようで、しばらくそのまま浮いていたが少しずつ狭間の奥に引っ張られる感覚が強くなっていく。俺はカズトさんに手を振る、白い部屋からこっちを見ているカズトさんも小さく手を振る。
狭間の奥のほうを向くと引っ張られる感覚が急に強くなる、慌てて白い部屋の方を振り向くとカズトさんはまだ手を振っている。
しかしそれもすぐに見えなくなり、俺は仕方なく狭間の奥に顔を向ける。
悲しいわけじゃないのに何故か涙が流れた。
しばらくして俺は光に包まれ意識を失った。
文字数稼ぎをしようと思ったらホモが勝手に暴れだした。後悔している。