それと、自分は煙草を吸わないので、何かおかしな点があるかもしれません。
ここは博麗神社の回りにある森。そこに、光の三妖精ことサニー、ルナ、スターの三人が、宝探しをしていた。
「みてみて♪ ガラス玉よ♪」
「こっちは水晶を見つけたわ。サニーは?」
「ふっふっふ・・・じゃーん! 万華鏡!」
「「おお!」」
三人は拾った物を、互いに見せあっていた。ここは幻想郷と外の境にあり、こうして外の物が流れて来たりするので、宝探しにうってつけでの場所である。
「よーし、今日はこんな物ね。帰ってお昼にしましょ」
三人は、拾った物を持って、ミズナラの木へ帰っていく。その途中、ルナはあるものを見つける。
「ん? なんだろうこれ・・・・・・」
「どうしたのルナ?」
「こんなのを拾ったんだけど・・・・・・」
そう言って、拾った物を、サニーとスターに見せる。
それは手のひらサイズの箱で、外には英語が書かれていた。
「なにこれ?」
「変な文字、中に何が入っているのかしら?」
「ちょっと待ってて、開けて見る」
ルナは箱を開けると、中から数本の紙巻きが入っていた。
「なんなのかしら・・・・・・?」
「ジンに聞いてみない? 何か知っているかも知れないし」
「そうね。それじゃ、早速神社に行くわよー!」
こうして三人は、この紙巻きの正体を知るため、神社へと向かった。
―――――――――――
神社に到着した三人は、境内で掃除をしているジンに、早速聞いて見ることにした。
「ジーン!」
「ん? どうしたんだ三人とも? 何か変な物でも拾ったか?」
「そうなのよ。よくわからない物だから、ジンに聞けば、何かわかるかもって」
「どれどれ・・・・・・っ!?」
ジンはルナが持っている箱を見た瞬間、無言でそれを取り上げた。
ジンの行動に、三人は驚きを隠せなかった。
「え? え?」
「ジ、ジン?」
「ちょっと! いきなり何をするのよ!」
「いきなり取り上げて悪いと思っている。だけど、これはお前達が持って良い物では無いんだ」
「ちょっと! それは私達が拾ったお宝よ! 返してよ!」
「駄目なものは駄目だ。サニー達に悪いが、これは処分させて貰う」
そう言って、ジンは炎獸を召喚し、それを灰も残さず燃やし尽くした。
「ああ! 私達の宝が・・・・・・何て事をするのよ! ジンなんて大っ嫌い! 行くわよ二人とも!」
そう怒りながら、サニーはその場を去って行ってしまった。ルナとスターは、戸惑いながらも、サニーの後について行くのであった。
―――――――――――
ミズナラの木に帰った三人だが、サニーは未だに不機嫌であった。
「まったく! いきなり何なのよもう!」
「お、落ち着いてサニー・・・・・・」
「これが落ち着いていられる!? 私達の宝が燃やされたのよ!」
「宝かどうかはともかく、ジンが理由無しに、あんな事をするとは思えないのよ」
「確かに・・・どんな時でも、私達が拾った物がどんな物か教えてくれたよね」
「わかった! きっとあれは、私達が手にしたら都合が悪い物なのよ! だからああやって、有無言わさず燃やしたのよ!」
「そうなのかな・・・?」
「きっとそうよ! 行くわよ二人とも!」
「行くって?」
「もちろん、あの箱を拾った場所よ。きっとまだ落ちている筈よ」
「ちょ、ちょっと待ってよサニー!」
こうして三人は、箱を拾った場所へと向かった。
―――――――――――
三人は再び神社近くの森に戻って来た。
「確かここ辺りだった筈・・・・・・」
「待って! 誰かいるわ!」
スターがそう言った矢先、少し先にジンと妖狐の姿があった。
「ジンと妖狐? 一体何をしているのかしら?」
三人は、ジンに見つからないようにして、木の影から様子をうかがうことにした。
「よーし、こんなものか。妖狐、そっちはどうだ?」
「はい、こっちもあらかた回収終わりました」
そう言って、妖狐はビニール袋を持ってジンの元にやって来た。その中には、サニーが拾った物と同じ箱がギッシリと入っていた。
「あっ、取られたのと同じ奴だ!」
「何で集めているのかな?」
三人は、ジンと妖狐の会話を聞き耳を立てた。
「こんな物が幻想入りしているなんてな・・・・・・まったく、迷惑な事だ」
「そんなに危険な物なんですか?」
「危険っていえば、危険だな。特に、サニー達みたいな妖精が使えば、取り返しのつかない事になるかも知れない」
「そんな物には見えないですけど・・・・・・」
「これは煙草の一種なんだ。最近の奴だと、こういう紙巻のタイプが多いんだ」
「なるほど・・・確かに危険ですね」
「そうだろう。だから、あいつらが手にする前に処分しないとな」
「わかりました。僭越ながら、お手伝いたします」
「ありがとう妖狐」
「えへへ・・・・・・♪」
ジンは妖狐の頭を撫でて礼を言うと、彼女は嬉しそうに笑う。
その後二人は、そのまま神社へと帰って行った。
二人が去った後、サニー達が木の影から出て来た。
「やっぱり、あれは私達が手にすると、ジンにとって都合が悪いのよね」
「どうするの?」
「もちろん! あの紙巻きを手に入れて、ジンに仕返しをするのよ!」
「仕返しって、どうするの?」
「これまでのジンの会話を聞くと、あの紙巻きは私達妖精が手にすると、都合が悪いらしいわ」
「ふむふむ・・・・・・」
「つまり! あの紙巻きは私達妖精の力を増幅させる効果があるのよ! だからジンは、私達から紙巻きを取り上げたのよ!」
「おお! サニーにしてはまともな推理だ!」
「でも、本当にそれだけかしら・・・・・・」
「とにかく、あの紙巻きを手に入れるわよ!」
こうして三人は、他にも落ちていないか、辺りを探し回るのであった。
―――――――――――
あの後、三人は辺りを探し続けたが、結局見つからず、ミズナラの木に帰っていた。
「あーも、全部取られていた」
「ここまでやるなんて、よっぽど私達に渡したく無いのね」
「もう諦めたら?」
「何言っているのよルナは! 諦めたら、そこで試合終了よ!」
「でも、もう彼処に落ちていないし・・・・・・」
「あっ、香霖堂なら置いてあるかも」
「それよ! あの店主なら拾っているかも知れないわ!」
こうして三人は、紙巻きを求め、香霖堂へと向かった。
―――――――――――
香霖堂に訪れた三人は、目当ての物を見つける事が出来た。しかし、いざ買おうとしたら、店主の霖之助に止められてしまう。
「悪いけど、これは君達には売れないよ」
「ええー!? どうしてよー!」
「それは君達が妖精だからさ」
「どういうこと?」
「これは煙草と言って、嗜好品の一つなんだよ。
だけど、これには人体に有毒な物がたくさんあるから、自然の具現である妖精が使ってはいけないんだ」
「そんなの嘘よ! 有毒なら、どうして人間はそれを使うのよ!」
「確かに・・・体に悪いのなら、使ったりしないわよね」
「それは、煙草には中毒性があるからだよ。一度やり始めると、なかなか止められないんだ」
「なら、最初からやらなければ良いじゃない?」
「そ、それは・・・・・・」
「そんな適当な事言っても、私達は騙されないわよ!」
「騙してなんかいない。ともかく、これは君達には売れない。良いね」
そう言って、霖之助は煙草を全て仕舞ってしまってしまうのであった。
―――――――――――
香霖堂の外。三人はこれからの事を話し合っていた。
「どうするの?」
「どうもこうも無いわ! こうなったら、意地でも煙草を手に入れてやるんだから!」
「サニー・・・なんか自棄になってない?」
「なっていない!」
「自棄かどうかはさて置いて、どうやって手にいれるの?」
「ふっふっふ、こうなったら盗むしか無いわ」
「ええ!? 泥棒わ駄目だって、ジンが――――」
「あんな奴の言うことなんて聞く必要は無い! 行くわよ二人とも!」
そう言って、サニーは二人を連れて、香霖堂に盗み入る事にした。
三人は最初に、香霖堂の裏口に向かった。ドアノブを捻ると、案の定鍵が掛かっていた。
「鍵が掛かっているわね・・・・・・どうするの?」
「ふっふっふ、ここで私の新必殺技が出番ね!」
「新必殺?」
「見てなさい! 必殺サニーレーザー!」
サニーは光の焦点を操り、ドアを焼き切った。
「すごーい!」
「流石サニーね!」
「ふふん♪ さーて二人とも、煙草を手にいれるわよ!」
「「おー!」」
三人は意気揚々と、裏口から入る。そこは、様々な物が置かれた物置になっていた。
「うわー、すごーい」
「こんなに集めていたなんて・・・・・・」
「ほら二人とも、呆けて無いで探すわよ」
そう言って、探し始めるサニー。ルナとスターも、一緒に探し始めた。
「うーん・・・ここには無いみたいね・・・・・・スター、そっちはどう?」
「こっちには無いみたい。ルナの方は?」
「ちょっと待っ―――きゃあ!?」
ルナは探している最中に、足をつまずき転んでしまう。
「もう、何をしているのよ」
「いたたた・・・・・・ん?」
ルナが起き上がろうとした時、目の前に一箱の煙草が転がって来た。
「あっ! あったわよ!」
「本当! でかしたわよルナ!」
「それじゃ、早く行きましょう。店主に見つかると、厄介だわ」
三人は煙草手にし、香霖堂を抜け出すのであった。
―――――――――――
煙草を手に入れた三人は、さっそく煙草を使うことにしたのだが――――。
「これって、どう使うのかしら?」
「そう言えば、使い方を知らなかったわね・・・・・・」
「それじゃ、宝の持ち腐れじゃない!」
「こんな時、ジンだったら分かるかも知らないけど・・・・・・」
「「「はあ~・・・・・・」」」
三人は大きく溜め息をつく。そんな時、一人の女性がやって来た。
「ん? お前ら確か、神社にいる妖精じゃないか」
「あ、貴女は焼き鳥屋さんの――――」
「私は藤原妹紅だ。ところで、こんなところで何をしているんだ?」
「それは・・・って、ああー!」
サニーは、妹紅がくわえている物を見て声を上げた。それはまさに、サニー達が使い方が分からずにいた煙草であった。
「なんだよ? いきなり声を上げて・・・・・・」
「お願いします妹紅さん! 私達に煙草の使い方を教えて下さい!」
サニーは土下座をしながら、妹紅に頼み込む。
突然の事に、妹紅は戸惑っていた。
「待て待て待て! いきなりなんだ? どうしてこんな物の使い方を知りたいんだ?」
「実は――――」
サニーはこれまでの経緯を妹紅に話した。
「なるほどね・・・・・・それで、煙草の使い方を知りたいのか」
「はい! それを吸って、ジンにギャフンと言わせたいんです!」
「あははは。残念だけど、これはお前らが思っているような物じゃない。だけど、そんなに使い方を知りたいのなら、教えてやるよ」
「本当ですか!」
「ただし、私の条件をクリアしたらだけど」
「条件?」
「なに、簡単な事さ。私が吐く煙を蒸せずに吸えるかだ」
「そんなの簡単よ!」
「そうかい、それじゃ行くよ」
そう言って妹紅は、煙草を吸い、煙を出した。その煙をサニーは吸うが、その瞬間、言い様の無い悪臭がサニーを襲う。
「うっ、げほっ、げほっ、な、何よこれ!」
「それが、煙草の正体さ。ぶっちゃけ、毒そのものなんだよ」
「な、何でこんなのを吸っているんですか?」
「さあね、何が切っ掛けだったのかは忘れた。だけど、一度癖になると止められないんだよ」
そう言うと、妹紅はサニーが持っていた煙草を、ヒョイッと取り上げた。
「あっ・・・・・・」
「そんな訳で、これはお前たちには無用な物だ。私が預かっておこう」
そう言って、その場を去ろうとする妹紅。その時、彼女は何か思い出したか、数歩あるいて立ち止まる。
「あ、そう言えば言うのを忘れていたが。煙草の毒は非常に強力で、子供が飲み込むと死に至るらしい。だから、お前達も気をつけろよ」
それだけ言うと、妹紅は今度こそ帰って行ってしまった。
―――――――――――
ミズナラの木に帰った三人は、意気消沈になっていた。せっかく手に入れた煙草が、まさかあんな代物だとは思わなかったからである。
「あーあ、何だか疲れちゃったわね」
「そうね、あっちこっち行って、手に入れた煙草が、あんな物だったなんて」
「・・・・・・」
スターとルナが話している一方、先程から会話に入っていないサニー。そんなサニーに、ルナが声を掛ける。
「それで、どうするのサニー?」
「・・・・・・どうするって、何を?」
「ジンに、どう謝るかってこと」
「な、なんで私が謝らなくちゃ、いけないのよ!」
「だって・・・結局のところ、ジンは私達の事を思って、煙草を取り上げたわけなんだし」
「そうね。それに引き替えサニーは、ジンの事を“大っ嫌い!”って、言っちゃったし」
「それは・・・ジンが説明無しに燃やすからよ! 私は悪くない!」
「でも、このまま仲直りしないと、これからジンが庇ってくれないかも知れないわよ?」
「うっ」
「それに、いつも持って来てくれる。三時のおやつも、持って来てくれないかも知れない。正直、デメリットしか無いと思うわ」
「ううっ・・・・・・」
二人の言い分も、ジンに謝らなくちゃいけない事も、理解しているサニーだったが、どうも素直になれない部分があった。
そんな時に、外から呼び掛ける声が聞こえた。
「おーい、サニーいるかー?」
三人は窓から外を見ると、そこにはジンが立っていた。
「あ、ジンだ」
「えっ!?」
「サニーに用があるみたいね。ちょうど良いじゃない。謝っちゃえば」
「え、ちょっと!?」
サニーは二人に押されるように、外に放り出されてしまった。サニーは、心の準備が出来ないまま、ジンの前に立ってしまう。
「あっ、うっ、な、何しに来たのよ!」
戸惑うあまり、つい出してしまった言葉に、サニーは大きく後悔し、それを木の中で聞いていたルナとスターは、大きく溜め息をつく。しかし、ジンが出した言葉は、三人の思いも寄らない物であった。
「いや、サニーに謝りに来たんだ」
「えっ?」
「何の説明も無しに、あんな事をしたら、怒るのは当然だ。悪かったサニー」
謝り出すジンに、サニーおろか木の中で様子を見ていたルナとスターも驚きを隠せなかった。
「それで御詫びとして、これを持って来たんだ」
そう言って、ジンが取り出したのは、煙草の箱であった。
「煙草?」
「いや、これはココアシュガレットと言ってな。煙草を模したお菓子なんだ」
そう言ってジンは、箱を明け、中身を見せる。中には、煙草の形をした棒状のお菓子が入っていた。
「食べてみな。美味しいと思うから」
「う、うん・・・・・・」
サニーは恐る恐る、ココアシュガレットを口にする。すると、サニーの顔が輝いた。
「美味しい~! これ凄く美味しいわ!」
「喜んでくれて、何よりだ」
サニーが喜んでいるのを見て、ジンは微笑み、手を出す。
「仲直り、してくれるか?」
「・・・しょ、しょ~がないわね! まあ、私は心広いから、特別に仲直りしてあげるわよ!」
「そうか。ありがとうサニー」
そうして、二人は握手を交わす。
口にはしなかったが、サニーはジンと仲直り出来た事を、心から嬉しかったのであった。
―――――――――――
それから数日後。ジンは縁側で、新聞を読んでいた。
見出しには――――。
“藤原妹紅、香霖堂の窃盗容疑! 決め手は、商品に印された、香霖マーク!”
――――と、書かれていた。
「ふーむ・・・妹紅は窃盗するような奴じゃないからな。誰かに嵌められたか?」
そんな事を考えながら、新聞を畳むジン。そんな時、サニー達がやって来た。
「ジーン! スッゴいのを拾ったよー!」
そう言って、彼女達が持って来たのは、光輝く透明な石であった。ジンはそれを見て、何となくダイヤモンドを連想した。
(まさか・・・ダイヤモンド? いや、そんなわけ無いか。大方、よく似せたガラス玉だろう)
「どうしたの?」
サニーが心配そうに聞くと、ジンは微笑みながら答えた。
「いや、とても綺麗だなって思っただけだ」
「そうでしょ! こんなに綺麗な石は、早々に無いわ!」
サニーは楽しそうに笑った。そんな彼女を見て、ジンも釣られて笑う。
「それでね。これ、ジンにも分けてあげる」
「え? 良いのか?」
「うん。一杯あるから、少しぐらいどうってこと無いわ」
「そうか、ありがとうサニー」
「ふふん♪」
ジンがガラス玉を受けとると、サニーは満足そうに笑うのであった。
因みに、サニー達が拾ったのは本物ダイヤモンドで、ジンがそれを知るのは、もっと後の事である。
今回、妹紅さんに喫煙してもらいました。自分的ですが、何となく喫煙しているイメージあったので。
最初はマミゾウさんにしようかと思ったのですが、彼女はキセルを使うので、やめときました。