光の三妖精が大好きなので、彼女たちが出る妖精大戦争をやろうとは思うのですが、まだ紅魔郷をクリアしていません。
ステージ5の咲夜さんが鬼畜です。果たして、彼女を倒せる日が来るのでしょうか・・・・・。
ある日の朝。正邪は珍しく早く起きてしまった。
(まだこんな時間か・・・もう一回寝よ)
そう思い、二度寝をしようとする。その時、羽の音が聞こえた。
(なんだ?)
気になった正邪は、窓から外を覗き込む。するとそこには、飛び去る文の姿があった。
(いつも新聞を持って来る天狗か・・・・・・そうだ!)
ふと正邪は、ある事を思いつき、部屋を出た。
部屋をでた正邪は、外に立てられた郵便ポストを開ける。そこには、いつものように新聞が置かれていた。
(くひひ、新聞を抜き取ってやれば、ジンの奴はさぞ落胆するだろうな)
正邪はクスクスと笑いながら、ポストから新聞を抜き取った。その時、気になる記事が目に入った。
(ん? これは・・・・・・)
正邪は新聞を開き、その記事を読み始める。そして読み終わると、再び笑い出す。
「くっくっく・・・これは、お宝の匂いだ!」
そう言った彼女の顔は、明らかに何かをたくらんでいる顔であった。
―――――――――――
朝起きたジンは、いつものように掃除を終わらせ、郵便ポストを開けるが、その中には何も入っていなかった。
「あれ? おかしいな・・・・・・」
辺りを見回すが、新聞の影も形もなかった。新聞を見つけられなかったジンは、他の人に聞きに、居間へと向かう。
「なあ、誰かポストから新聞を取ったか?」
居間に居る針妙丸、料理をしている霊夢と妖狐にそれぞれ聞くが、全員が首を横に振った。
「知らないよ」
「私も知りません」
「あんなのを読むのは、あんただけでしょ」
「うーん・・・今日は休刊か?」
そんな事を思いながら、席につくジン。そしてそのまま朝食を食べようとするのだが、一人欠けている事に気がついた。
「あれ正邪は?」
「今日は見てないわね」
「寝坊ですかね?」
「私、起こして来るよ」
そう言って、針妙丸は席を立ち、正邪の部屋に向かって行った。
それから数分後、針妙丸は慌てた様子で戻って来た。
「大変! 正邪がいないよ!」
「「「そうか」」」
正邪がいない事に、特に気にも止めない三人は、そのまま朝食を始めた。
その様子に、針妙丸は御立腹であった。
「ちょっと酷くない!? 正邪がいないんだよ!」
「なら聞くが、正邪の荷物は全てなかったのか?」
「え? えーと・・・全部じゃなかったけど・・・・・・」
「なら、その内帰って来るだろう。そんなに心配するな」
「でも・・・・・・」
「あの天邪鬼は、しぶとさは超一級よ。放っておいても心配ないわ」
「そうですよ。お昼頃に、ころっと帰って来ますよ」
「そうかな・・・・・・?」
「そんな事よりも、正邪の分どうする?」
「残すのはもったいないから、俺が食べる」
「あ、私も食べたいから。妖狐は?」
「私は遠慮しておきます」
「それじゃ、二人で分けましょう」
霊夢とジンは、正邪の分のおかずを分けあって食べ始めた。そんな様子を見ていた針妙丸は、呆れながらも、自分の分の朝食を食べ始めた。
―――――――――――
朝食を終えたジン達は、今日の準備を始めていた。
そんな時、サニー達が慌てた様子で、境内にやって来た。
「ジーン! たいへんよたいへーん!」
「サニー? 一体どうしたんだ?」
「今日の新聞見た!?」
「え? 新聞来ていたのか?」
「その様子だと、知らないみたいね。これを見て」
そう言ってスターは、サニーが持っていた新聞を広げてジンに見せた。その新聞には、こう書かれていた。
“虹色の空中都市現わる”
「空中都市? それって・・・・・・」
「そう! もしかしたら、異変かも!」
サニーはそう叫んだ。しかしジンは、記事に対してある違和感を感じていた。
(確かに、普通に考えれば、異変なのだが・・・それにしては、なんか大人しい内容だな・・・・・・)
確かに新聞には、空中都市の事は書かれているが、文にしては大人し過ぎる内容であった。いつもなら“謎の空中都市現る!”や“新たな異変の前兆か!?”なんて事を書きそうなのだが、そんな事は無く、何故か地滑りや海の話、果てには貝の話になってしまっていた。
新聞とにらめっこしていると、霊夢がやって来た。
「ちょっとジン。サボっていないで、ちゃんと準備しなさいよ。参拝客が来ちゃうわよ」
「いや、少し気にな――――」
「大変よ霊夢さん! 異変が起きのよ!」
「なんですって!?」
「ほら! この新聞に書かれているんです!」
「ちょっと貸しなさい!」
ジンが持っている新聞をぶんどった霊夢は、空中都市の記事を見て、真剣な表情になった。
「これは・・・間違いなく異変ね」
「じゃあ、もしかして・・・・・・」
「ええ、また何か起きるかも知れないわね。そうなる前に、とっちめてやるわ」
「おお! いつに無くやる気ですね!」
「あのね、私はいつだってやる気満々なのよ?」
((((それはそれで、怖いような・・・・・・))))
「こうしちゃいられないわ。早速、異変解決の準備をしなくちゃ」
そう言って霊夢は、母屋に向かって行った。
その時の彼女は、生き生きしていたという。
準備を終えた霊夢は、早速空中都市を目撃した場所である。妖怪山に向かおうとしていたのだが――――。
「ねえ・・・本当について来るの?」
「「「はい!」」」
霊夢は頭を抱えた。何故なら、サニー達が同行を申し出たからである。
「あのね、これは遊びじゃないのよ?」
「それくらい知ってますよ」
「なら、何でついてくるのよ?」
「それはおもしろ―――じゃなくて、霊夢さんの役に立ちたいからです♪」
「足手まといよ。あんた達は大人しく留守番していなさい」
「「「えー!」」」
「文句言わない! わかった?」
「「「はーい・・・・・・」」」
霊夢の厳しい言葉に、サニー達は項垂れ落ち込む。
そんな時、ジンが助け船を出した。
「別に連れて行ってもいいじゃないか?」
「ちょ、ちょっと! あんた何を言って――――」
「妖怪山で調査するだろう? サニー達の能力なら、白狼天狗の哨戒を掻い潜れる筈だ」
「それは・・・まあ、そうだけど・・・・・・」
「たまには、力業に頼らず異変を解決してみないか?」
「うーん・・・・・・」
霊夢は少し唸りながら、サニー達の方を見た。三人は、何かを訴えるような眼差しで、霊夢を見つめていた。
「「「じー・・・・・・」」」
「はあ・・・わかったわ。邪魔をしないのなら、連れて行ってあげる」
「「「やったー♪」」」
霊夢はとうとう折れてしまい、サニー達を連れて行く事にした。
―――――――――――
妖怪山に到着した霊夢は、空中都市を見た場所に向かって、山を登っていた。
「「~♪」」
「はあ、はあ、はあ・・・・・・」
サニーとスターは、まるでピクニックに来たかのように、歌を歌いながら陽気に登っていた。一方ルナは、少しへばっていた。
「ちょっと大丈夫?」
「なんとか・・・・・・」
「それにしても、あの二人は呑気なものね。まるでピクニック気分ね」
「え? 何か言いました霊夢さん?」
「呑気なものって言ったのよ。ここは既に天狗達のテリトリーなのよ? もう少し、気を張ったらどうなのよ?」
「大丈夫ですって。私の力で姿を隠して、ルナの力で音を消して、スターの力で周囲を警戒しているんですから」
「そうそう♪ それに天狗に見つかっても、霊夢さんがいるから大丈夫ですよ」
「結局それ? 連れて来たのは間違いだったかしら・・・・・・」
やれやれと、小さくため息を吐く霊夢。そんな時、スターは何かに気づく。
「待ってみんな。ここから先に、誰かいるわ」
「もしかして天狗?」
「私の能力じゃ、そこまでわからないわ。ただ、この先に誰かいるのは確実よ」
「なら、慎重に行きましょう」
四人は慎重に、反応がある場所へと向かう。
するとそこに、正邪が立っていた。
「正邪? 何でこんなところに?」
「――――――」
「何か喋っているみたいだけど、聞こえないわね」
「ルナが音を消しているからでしょ。能力を解除して」
「わかった」
ルナは言われるがまま、能力を解除した。すると、正邪の声がはっきりと聞こえて来た。
「おかしいな・・・新聞によると、この辺りの筈なんだけどな・・・・・・」
正邪は何かを広げて見ていた。それは、ジンが今朝探していた文々。新聞であった。
「あいつが持っていたのね・・・でも何で?」
「直接聞いてみたらどうですか?」
「それもそうね。おーい正邪ー」
「うひゃあ!? ご、ごめんなさーい! ただ、道に迷っただけなんです!」
霊夢が声を掛けた瞬間、正邪は霊夢の方に土下座をかました。どうやら、天狗と勘違いしているようである。
「ちょっと正邪、私よ。霊夢よ」
「へ?」
霊夢の声を聞いた正邪は、顔を上げて辺りを見回す。どうやら、霊夢達の姿を認識出来ていないようであった。
「あ、そうか。サニー」
「わかったわ」
サニーが能力を解除すると、突然現れた霊夢達の姿に、正邪は驚き声を上げる。
「うわ!? ビックリしたなぁ・・・・・・」
「さて、改めて聞くけど、ここで何をしているの?」
「そ、それは・・・・・・」
「それは?」
「か、観光だよ! こんな記事を見たら、誰だって見に行きたいでしょ?」
そう言って、空中都市の記事を見せる正邪。しかし、霊夢の目には誤魔化せなかった。
「嘘ね。あんた目が泳いでいるじゃない」
「お、泳いでなんかない! 見てよこの純真な目を!」
「ダウト、あんたに純真って物は無いでしょうが」
「ちっ、騙されないか」
誤魔化せないとふんだ正邪は、直ぐ様霊夢と対峙する。
「バレちゃ仕方ない! 私がここに来たのは、空中都市にあるお宝を手に入れる為さ!」
「お宝ですって!?」
「そうさ。あれだけの物を出現させる力があるのなら、今度こそ下剋上をなし得るかも知れないじゃないか」
「あんた、まだ諦めていなかったの?」
「この命が続く限り、私は絶対に諦めない! いつか、弱者の為の世界を作るんだ!」
「悪いけど、幻想郷の秩序を脅かすのなら、博麗の巫女として、見逃す訳にはいかない。この場で退治してやるわ」
「やってみろ! 天邪鬼の意地、見せてやる!」
こうして、博麗の巫女と天下の天邪鬼の弾幕勝負の火蓋が切って落とされた。
―――――――――――
一方、博麗神社では、ジン達がいつものように参拝客の相手をしていた。
そんな時、魔理沙が箒に乗ってやって来た。
「おーい! 霊夢いるかー!」
「魔理沙か、あいにく霊夢は妖怪山に出掛けている」
「おっ、もしかして例の空中都市を調べにか?」
「なんだ、魔理沙も知っていたのか?」
「ああ、天狗の新聞を見て知った」
そう言って、手に持っていた新聞をジンに見せた。
「魔理沙のところにも来ていたのか・・・・・・」
「ジンのところには来てないのか?」
「そうなんだよ。サニーのところには来ていたのにな」
「おかしいですね? ちゃんとポストに入れといた筈なんですけど」
声と共に、文が空から降りてきた。
「どーもこんにちは、御二人とも」
「こんにちは文。それと、さっきの話は本当か?」
「ええ、妖精達のところに行った後、ここに寄ったから間違いないですよ」
「それなら、誰かが持ち出したって事か?」
「そうなりますね。でも、ジンさんの能力なら、犯人が誰かなんて直ぐにわかりますよ」
「そうだな、取り合えず気になるから、軌跡を見てみるか」
「その必要はないわ」
すると、霊夢とサニー達が帰って来た。それと何故か、ボロボロで縛られている正邪も一緒であった。
「お帰り、それと何で正邪がボロボロになっているんだ?」
「それはね――――」
霊夢は、これまでの経緯を話をした。
「なるほどな、それで新聞を持ち出したのか」
「こいつ、まだ懲りていないんだな」
「まあそんな訳で、空中都市を見つけられなかったから、こいつをとっちめて戻って来たわけ」
「それにしても、馬鹿ですねぇ。あの空中都市に、そんなお宝があるわけ無いのに」
「文? 空中都市について、何か知っているのか?」
「知っていなかったら、記事にしませんよ。新聞にちゃんと、正体について書いてあるじゃないですか」
「悪いが、今回の内容が分かりづらくて。何で貝の話や、太古の海の話になっているんだ?」
「おや? 知らなかったのですか? その大昔、この辺りは海だったっていう事を」
「知らない。霊夢と魔理沙は知っていたか?」
「知らないし、興味もなかったし」
「何か聞いた事があった気もしたが、覚えていないぜ」
二人のその言葉に、文はため息を吐く。
「やれやれ・・・最近の若人達は、歴史を軽んじているわね」
「悪かったわね」
「別に知らなくても、生きていくのに困らないぜ」
「はあ、まったく嘆かわしいわ。人間から歴史を取ったら、何も残らないというのに・・・・・・」
「まあまあ。それよりも、詳しく教えてくれないか文」
「ええ、いいですよ。それでは、射命丸文による、幻想郷の昔について、お話しましょう」
そう言って、文は話し始めた。
彼女の話によると、遥か昔、ここ辺りは海に沈んでいたらしく、地殻変動により浮上したと言われている。それを示すかのように、大地の下から、ある物が見つかっていた。
「それが、大昔の貝や魚の死骸なのですよ」
「大昔の死骸・・・・・・化石って事か」
「ええ。しかも最近では地滑りで、生きたままの貝が見つかったと言われているのですよ。貝の妖、蜃が」
「蜃?」
「蜃とは、蜃気楼を生み出す妖です。そもそも蜃気楼というのは、“蜃の気が見せる楼閣”という事から、“蜃気楼”と呼ばれているんですよ」
「なるほど、つまりこういう事だな。
この新聞の空中都市は、その蜃が見せた幻って訳か」
「そういう事です」
「なんだ、異変じゃなかったのね。まったく人騒がせな」
「ふむ、どうやら今回は分かりづらかった内容のようでしたね。これは反省しないといけませんね」
「ところで、その蜃っていうのは、危険な妖なのか?」
「いえ、ただ幻を見せるだけで無害です。むしろ、その幻を見て楽しむものです」
「よーし、それなら――――」
ジンは、ある事を思いつき、行動に移す事にした。
―――――――――――
その日の夜。博麗神社は宴会で盛り上っていた。しかし、いつもと様子が違い、皆酒を飲みながら、夜空を見上げていた。
「これはなかなか風情があって良いわね」
「だろ? 頑張って、見つけた甲斐があったな。貝だけに」
「それ、寒いわよ」
寒いギャグを言ったジンを小突く霊夢。二人の近くには、大きな貝の妖、蜃が置いており。夜空には、蜃が生みだした楼閣の幻が浮かんでいた。
「花見も良いけど、こういうのも新鮮ね」
「ああ。もっとも、正邪には不評らしいがな」
ジンの視線の先には、ヤケ酒を飲んでいる正邪の姿があった。彼女は真相を聞くと、酷く落胆し、ああして気分を紛れさせているのである。
「自業自得でしょ。これで、少しは大人しくなるといいんだけどね」
「そうだな。まあ、この程度で大人しくなる奴では無いと思うが」
「それは同感ね。それにしても、せっかく捕まえた蜃を、宴会に使うなんてね」
「ん? それ以外に使い道あるのか?」
「それはそうだけど・・・もっと自慢とか、見せびらかしたりしないのかなって思って」
「俺がそんな無駄な事をする奴と思っていたのか? こういうのは、皆で楽しむ物だろ?」
「・・・本当、欲が無い人なんだから。でも、そこが――――」
「ん? 何か言ったか霊夢?」
「何でもない。それよりも、お酒、なくなちゃったから注いでよ」
「仰せのままに」
ジンは、空になった霊夢の杯にお酒を注いだ。
そして宴会は、夜明けまで続くのであった。