そして、書いている最中にもっと早く思いついていればと、後悔しました。
理由は後書きに書きます。
「・・・・・うっ」
ジンは頭の痛みで目を覚ます。
辺りを見ると、ここは自分の部屋ではなく、神社の広間であった。
「そうだ・・・・・昨日は宴会だったな・・・・・」
ふと、すぐ近くに霊夢、魔理沙、萃香が寝ていたので起こさず、神社にある毛布を持って来て、それをそっと掛ける。
「他は帰ったみたいだな・・・・・うっ」
再びの頭痛。思わず頭をさすると、何やら固い物がついていようだった。
「なんだ・・・・・?」
それを確認するため、鏡を見る。するとそこには――――。
「な、なんだこりゃー!?」
そこには紛れもなく、鬼の角が生えていた。
―――――――――――
「いやージンが鬼だったとは、これは驚きだぜ」
「本当にね、もっと早く言ってくれれば良かったのに。
危うく退治するところだったわ」
「待て! 俺は鬼じゃなくて人間だ!」
「そうは言っても、こんな立派な角があるじゃないか」
「こら! 触るな萃香!」
「それにしても、一体どうしてこんな事になったんだ?」
「それはこっちが聞きたい・・・・・」
「それについては私が説明します」
「歌仙じゃないか、久し振りだね」
「ええ、出来れば貴女には会いたくはなかったけどね萃香」
「知り合いなのか?」
「ああ、こいつはお―――」
「仙人です。茨華仙と申します」
「華仙か、俺は―――」
「ジンですね。
噂はかねがね聞いています。
なんでも、愽麗神社の福の神だとか」
「俺はそんな大層なものじゃない。
それよりも、角が生えた原因は何だ?」
「確証はありませんが、貴方は人妖の可能性があるんです」
「人妖? 何なんだそれは?」
「その昔、まだ妖怪の力が強かった時代では、妖怪と人が交わる事が、極まれにあったんです。
そして、生まれた者を半妖と呼ばれます」
「霖之助がそうだな」
「そして、その半妖がさらに人と交わると、生まれた子の妖怪の血は更に薄まり、それを何世代も重ねれば、ほぼ人と変わらくなるのです」
「つまり・・・・・俺の祖先は鬼って訳か?」
「そうなります」
「それなら、何で急に鬼になったのよ?」
「それは分かりませんが、何かの切っ掛けで、彼に宿っている鬼の血が目覚めたんでしょう。
何か、心当たりはありませんか?」
「心当たりってもな・・・・・昨日は宴会をしたぐらいだな」
「・・・・・あ」
「どうしたの萃香? 何か心当たりがあるの?」
「いや~ジンと飲みくらべしていただろ。
あの時途中でお酒が切れちゃったから・・・・・」
「切れちゃったから?」
「・・・・・・・・・鬼の名酒、鬼神一発を開けたんだ」
「鬼神一発ですって!?」
「何だ? 鬼神一発って?」
「鬼神一発。鬼が造る酒の中で最高峰と呼ばれる物よ。
だけど、余りにもの強い酒だから、鬼以外の妖怪が飲めば確実に酔い潰れるし、人間何かが飲めば、下手すれば死ぬわ」
「「「死ぬ!?」」」
「萃香! 貴女はなんて物を彼に飲ませたのよ!」
「ちょっと熱くなりすぎて、鬼神一発を思わず出しちゃったんだよ」
「萃香、貴女は暫く宴会参加禁止ね」
「ええ!? そんな殺生な・・・・・」
「黙らっしゃい! 危うくジンを殺すところだったのよ!」
「ううっ・・・・・」
「やれやれね・・・・・。
何はともあれ、これで原因はわかったわ」
「どういう事だ歌仙?」
「つまり、鬼神一発を飲んだ事により、貴方に眠る鬼の血が目覚めてしまったようね」
「それで? どうやって元に戻れるの?」
「それは―――」
「それは?」
「・・・・・・・・分からないわ」
「え!? 分からないのかよ!」
「仕方ないでしょ、人妖が妖怪になる例は少ないのよ」
「はぁ・・・・・こうなったら様子を見るしかないわね」
「大丈夫なのかこれ・・・・・」
結局、人に戻る術が分からず仕舞いで、しばらく様子を見る事になった。
―――――――――――
それから一週間が経過したが、ジンは相変わらず鬼のままであった。
一時は、神社の評判が落ちるのでは無いのかと心配になったが、逆に鬼になったジンの姿を見ようと、人や妖怪達が集まるようになった。
「あら、新聞の記事は本当だったのね」
「げっ、幽香」
ジンの前に現れた女性は風見幽香。
幻想郷最恐の妖怪で、ジンが最も苦手とする妖怪である。
「それが参拝客に対する礼儀かしら?」
「お前が参拝する柄じゃないだろ。
大方、鬼になった俺を笑いに来たんだろ?」
「あら、バレちゃった」
「悪ぶれもなく肯定するとは・・・・・」
「だって、貴方が慌てふためく姿を想像すると、ゾクゾクするもの♪」
「誰か、このサディスティック妖怪をどうにかしてくれ」
「冗談よ。ただの興味本位で来ただけ。
それにしても、立派な角ね・・・・・触ってみても?」
「まあ・・・・・別に構わないが」
「それじゃ遠慮なく」
そう言って幽香は、ジンの角に触れ始めた。
「へぇ・・・・・固くて大きくて・・・・・立派なモノね」
「お前が言うと、卑猥に聞こえるのだが・・・・・?」
「気のせいよ。
それじゃ、私は帰るわ。触らせてくれてありがとう」
「ああ、気を付けて帰れよ」
ジンはそう言うと、幽香は微笑みを返し、神社を後にした。
次に来たのは永遠亭の住民である蓬莱山輝夜、鈴仙・優曇華院・イナバ、因幡てゐの三人である。
「あー本当に鬼になっているわね」
「うわぁ・・・・・いつか人間辞めるんじゃないかと思ったけど、まさか鬼になるとは思わなかった」
「別に、好きでこうなった訳じゃない」
「えっと・・・・・元気出してね。
きっと元に戻れるよ」
「ありがとな鈴仙。
お前は永遠亭の良心だな」
「ちょっと、贔屓しないでよ~」
「そうだそうだ」
「だったら、少しは慎みを持て、いつも鈴仙に迷惑かけているんだろ」
「ジン・・・・・」
「む~、そんな事言うジンなんてこうよ! てゐ!」
「おー角を引っこ抜けー」
「ち、ちょっと二人とも!?」
「おい! 止めろバカ!
イテテテ!!」
「中々抜けないわね」
「そんな簡単に抜けたら苦労しない」
「むぅ・・・・・つまらないな」
「大丈夫ジン?」
「まあ、何とか・・・・・」
「・・・・・・・・」
「鈴仙?」
「もしかして、鈴仙も触ってみたいの?」
「え?」
「うわ~鈴仙いやらしい~」
「そ、そんな訳・・・・・」
そう否定する鈴仙だが、チラチラとジンの角を見ていた。
そこでジンは――――。
「別に触っても良いぞ」
「え? 良いの・・・・・?」
「ああ、さっきの二人みたいに乱暴に扱わなければな」
「そ、それじゃ・・・・・」
鈴仙はゆっくりと角を触り始める。
最初は恐る恐るとだが、徐々に感触を確かめるように―――。
「てゐーどうやら私達はお邪魔虫のようね」
「そのようでー」
「鈴仙の邪魔しないように帰りましょう」
「はーい」
鈴仙が角を触っている間に、輝夜とてゐは帰って行ってしまった。
鈴仙が、二人が帰っているのに気づいたのは、それから暫く後の事だった。
次にやって来たのは、寺子屋の子供達と、その引率として来た慧音と藤原妹紅である。
「ジン先生が鬼になってるー」
「先生、悪い事でもしたのー?」
「角、触らせてー」
「こらお前たち! すまないなジン。
噂を聞いて、どうしても会いに行きたいと言って来てな」
「別に構わない、子供ってのは好奇心が強いからな」
「それにしても、まさか本当に鬼になっているとはな・・・・・正直、ガセだと思っていたよ」
「俺も、これがガセなら良かったんだがな・・・・・」
「まあ、気落ちするな。
そのうち解決案も見つかるだろう」
「ありがとう慧音、少し気持ちが楽になった」
「なに、いつも世話になっているからな。
これぐらい当然だ」
「まあ、このままでも良さそうな感じはするがな」
「おい妹紅、冗談でも止めろよな」
その後、ジンは子供達の相手をした。
満足した子供達は、慧音と妹紅と共に帰って行った。
次に現れたのは、天人の比那名居天子とお目付け役の永江衣玖である。
「うわぁ、本当に鬼になっているのね」
「総領娘様、流石にそれは失礼ですよ」
「いや、その反応には慣れた・・・・・。
それにしても、天界から降りてくるなんて珍しいな」
「そりゃ、こんな面白そうな事を見逃す訳無いじゃない」
「申し訳ありません、どうしても行きたいと言って聞かないので・・・・・」
「衣玖が気にする必要は無い。
それに、天界じゃ退屈するだろうしな」
「さっすがジンね。よくわかっているじゃない」
「だが、衣玖を困らせるのは良くないぞ。
いつも苦労をかけているんだから、たまには言うことを聞いてやれ」
「む~分かったわよ。
それよりも、角を触らせてよ」
「別に良いが、手荒く扱うなよ」
「分かってるって」
天子は角をペタペタと触ると、満足して帰って行った。
こうして、次々とジンの角を触る参拝客が後に続くのであった。
―――――――――――
その夜、いつも以上の参拝客と収入で、霊夢はご機嫌であった。
「一枚~♪ 二枚~♪ 三枚~♪
フフフ・・・・・」
「霊夢・・・・・嬉しいのは分かるが、正直不気味だぞ」
「だって、こんなにお金が入るなんて滅多に無いですもの」
「俺は正直疲れた・・・・・」
「もうこのままでも良いんじゃない?」
「良くない! この体だと、色々力加減が難しいんだ―――」
そう言うと、ジンはちゃぶ台を叩き折ってしまった。
いくら人妖の鬼といっても、その力は人間の何倍もある。
その為、壊してしまった家具等が沢山あるのだ。
「別に良いじゃない。また買えば」
「あのな・・・・・少しは節約を―――」
「ジン?」
「うっ・・・・・」
ジンは頭を抱えながら、倒れてしまった。
霊夢は慌てて駆け寄る。
「ちょっとジン! 返事をしなさいよジン!」
霊夢の必死の呼び掛けも虚しく、ジンは目を覚ます事はなかった。
―――――――――――
霊夢はジンを連れて、永遠亭にやって来た。
そして、薬剤師兼医者の八意永琳にジンの診察を依頼した。
霊夢は、診察結果を応接間でずっと待っていた。
すると、永琳がやって来た。
「ジンの容態は!?」
「落ち着いて、彼なら大丈夫よ。ただ―――」
「ただ?」
「厄介な事になったのよ」
「え? それってどういう事よ?」
「詳しくは、彼と一緒に説明するわ。
入って良いわよ」
そう言うと、入って来たのは人間に戻ったジンの姿であった。
「ジン! もう大丈夫なの!?」
「ああ、何とかな」
「良かった・・・・・もう! 心配かけるんじゃないわよ!」
「悪い・・・・・」
「喜んでいるところ悪いけど、問題があるのよ。
ジン、これを飲んで頂戴」
「これは・・・・・酒か? 何でまた?」
「良いから、飲めば全てが分かるわ」
「まあいいが・・・・・」
永琳に勧められた酒を飲むジン。
すると、彼の頭に小さな角が生えて来た。
「え!?」
「どうした霊夢?」
「角が生えているわよ!」
「な、何だと!?
永琳! これはどういう事だ!?」
「簡単に言うと、貴方の体質が変化したって事よ。
お酒―――アルコール成分を摂取すればする程、鬼化して、抜ければ人間に戻るって訳」
「な、なんて面倒な体質になってしまったんだ・・・・・」
「もう治せないのかしら?」
「直ぐには特効薬は作れないわね。
暫くこの状態で生活する他無いわ」
「やれやれだな・・・・・」
こうしてジンは“酒を飲むと鬼になる程度の能力”を得てしまうのであった。
今回の話しで、ジンは二つ目の能力を得ました。
そして、前書きで書いた後悔とは、酒を飲むと鬼になる程度の能力の方をメインした方が良かったかな?ということです。
もしかしたら、タイトル詐欺になってしまうんじゃないかと、少し心配しています。
そうならないように、頑張りたいと思います。