東方軌跡録   作:1103

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パソコンが壊れたので、携帯から投稿しました。
なにぶん不馴れなもので、誤字脱字があるかも知れません。


ニジイロダケを手に入れろ!

秋と言えばキノコ狩り。

そんな訳で、ジンはサニー達を連れて魔法の森を訪れていた。

 

「魔理沙が居れば良かったんだが・・・・・・」

 

「留守なら仕方ないわ。私達だけでキノコ狩りをやるわよ!」

 

「自信満々ね、サニーは」

 

「いつも思うんだけど、その自信は何処から来るのかしら?」

 

そんな他愛のない話をしていると、ジン達は絶好の採取場所に到着する。

 

「よーし、毒キノコを取らないように、各自気をつけろよ」

 

「「「はーい!」」」

 

元気良く返事をした三人は、早速キノコを取り始めた。ジンも三人に遅れないように、行動を開始した。

 

キノコ狩りを開始してから数十分後、四人の籠は徐々にキノコで一杯になっていた。

 

「どうやら、私が一番キノコを集めたようね」

 

「なに言っているの、サニーのは毒キノコが入っているじゃない」

 

「ちょっとぐらいなら大丈夫よ」

 

「霊夢さん達も食べるって事を忘れてない?」

 

「あ・・・・・・」

 

「やっぱり忘れていたわね・・・・・・」

 

「う、うるさいわね! ちょっとぐらいなら死にはしないわよ!」

 

「そのちょっとで死ぬのが人間なんだが・・・・・・」

 

そんなやり取りをしていると、何処からか声らしき物が聞こえて来た。

 

「何か聞こえないか?」

 

「え?」

 

四人はその場で耳をすます。声は徐々にはっきりと聞こえて来る。

 

「ひあーー!?」

 

「鈴仙!?」

 

その声の主は鈴仙であった。

彼女は勢い良くジンにぶつかり、押し倒すようにジンを下敷きにして倒れる。

 

「いたた・・・って、ジン!? どうしてここに!?」

 

「いてて・・・それはこっちの台詞―――」

 

「グオォォ!」

 

ジンが言う前に、森の奥から大きな唸り声が聞こえて来る。

それを聞いた鈴仙は、直ぐ様立ち上がる。

 

「いけない! あいつが来る!」

 

「あいつ?」

 

「説明は後! とにかく逃げるわよ! 貴女達も早く!」

 

「え? え?」

 

「ま、待ってー!」

 

鈴仙はジンの手を取ると、彼を連れてその場を走り去った。

事情が掴めないサニー達であったが、危険だと感じ取り鈴仙の後に必死について行くのであった。

 

 

しばらく走った後、安全を確認した一同はようやく一息をつくのであった。

 

「ここなら大丈夫そうね」

 

「鈴仙・・・手をそろそろ・・・・・・」

 

「え? あ! ご、ごめん!」

 

鈴仙は慌ててジンの手を離した。少し気まずい空気になったが、サニーがある疑問を鈴仙に投げ掛ける。

「と、ところで、一体何から逃げていたですか?」

 

「それは――――」

 

「森の主からだぜ」

 

声と共に現れたのは魔理沙であった。その他にもアリス、ていの姿が確認出来た。

 

「魔理沙さんに、アリスさん。それに―――」

 

「永遠亭の妖怪兎ね。それにしても、三人ともボロボロじゃない。一体どうしたの?」

 

スターの質問に、ていが力無く答えた。

 

「さっきも言ったけど、森の主に襲われたからだよ・・・・・・」

 

「森の主?」

 

「そう、長年魔法の森に住んでいる妖さ。普段は森の奥で静かに暮らしているんだが、自分のテリトリーを荒らされるのを極端に嫌うから、テリトリーに入った奴を問答無用で襲うんだ」

「なるほど・・・でも、何でテリトリーに入ろうとしたんだ?」

 

「ニジイロダケを手にいれる為よ」

 

「「「「ニジイロダケ?」」」」

 

ニジイロダケ。それは数年に一度しか生えない伝説のキノコ。

その用途は様々で、魔法薬や治療薬、さらに料理にも使える万能のキノコである。

 

「へぇー、そんなキノコがあるのか・・・初耳だな」

 

「一般の人には、あまり知られていないキノコなのよ。

だけど、あの主は長年魔法の森に居るせいか、魔法に対する抵抗が異常に強いのよ」

 

「私達魔法使いの天敵だから、こうして共同戦線を張っているんだぜ」

 

「物が物だから、少しでも成功率を上げないとね」

 

 

「鈴仙を囮にして、その間にキノコを採ろうとしたんだが・・・・・・」

 

「戻って来るのが早すぎて、取れなかったんだよね・・・・・・」

 

三人は意気消沈の溜め息を吐く。先程まで気づかなかったが、三人の姿はボロボロで、主に追い掛け回された様子がはっきりと分かる程であった。

 

「それで三人ともボロボロなのか・・・・・・」

 

「鈴仙がしっかりと囮になってくれなかったせいだよ」

 

「いくら私でも、あんな怪物を一人で相手にするのは無理よ」

 

「そんな事を言ってもなあ・・・相手に魔法が効かない以上、私とアリスじゃ囮にすらならないぜ」

 

「私は非戦闘員だから、囮なんて無理うさ」

 

「つまりは、やる気は無いってわけね・・・・・・」

 

魔理沙とていの答えを聞いて、鈴仙はガクッと肩を落とす。そんな鈴仙の肩を叩きながら、ジンはこんな事言った。

 

「一人が辛いなら、二人でどうだ?」

 

「え?」

 

「協力してやるよ。もちろん、ニジイロダケは皆で山分けだ」

 

ジンは自信あり気にそう言った。

こうしてジン達は、魔理沙達と協力して、ニジイロダケを採る事になった。

 

 

ジンの作戦はこうである。

先ずはジン、鈴仙、サニー達で先に主のテリトリーに入。サニーとルナの能力で、姿と音を消して移動し、スターの能力で主の位置を補足する。そして主の姿を確認すると、サニー達はその事を魔理沙達に知らせ、そのままニジイロダケ奪取しに向かい、その間ジンと鈴仙は囮となる作戦である。

「作戦は以上だ。何か質問は?」

 

「はい」

 

「なんだ魔理沙?」

 

「どうしてサニー達をこっちに寄越すんだ? 逃げるのなら、三人の能力は有効だろ?」

 

「いや、今回に限ってそれは無い。鈴仙の話によると、その主はテリトリーから出るか、見失うかで追跡を止めるらしいから、三人の能力だと囮にならなくなる可能性がある。

逆に言うと、魔理沙達に必要な能力だ」

 

「どういう事だ?」

 

「先ず、スターの能力で主の位置が分かるから、鉢合わせになる心配が無い。仮に鉢合わせになっても、サニーとルナの能力で逃げ切る事が出来るだろ」

「ほほう、なかなか考えているね」

 

「でも大丈夫なの? あの主は結構速いわよ」

 

「大丈夫、鈴仙と俺ならどんな地形でも走破出来る。そうだろ鈴仙?」

 

「え!? えーと・・・あ、もしかしての兎術の事?」

 

「ああ、その兎術だ」

 

「兎術って何だてい?」

 

「私も知らないよ。何で私に聞くの?」

 

「兎だから」

 

「兎だからって聞かないで欲しいね」

 

「まあまあ、教えてやるから。いいか、兎術ってのは――――」

 

兎術―――それは一種の移動技術である。あらゆる環境、地形であっても効率的に移動する技術である。その姿は、まるで跳ねる兎の姿に見えるから、兎術と呼ばれたらしい。

外で言うと、パルクールやフリーランニング様な物である。

 

「だから悪路であっても大丈夫だから、安心して囮を任せてくれ」

 

「お、言い切ったな。それじゃ任せたぜ二人とも」

 

「ああ。それじゃ行くぞ皆」

 

そう言うと、ジンは鈴仙とサニー達を連れて、森の奥へと向かい出した。

 

―――――――――――

 

歩いてから十数分後、ジン達は森の主を発見する事が出来た。

 

「あれが主か・・・・・・」

 

「まるで熊みたいね」

 

「こっちに気が付いていないみたいね」

 

「どうするの?」

 

ルナがジンにそう聞くと、ジンはこれからの手順を分かりやすいように説明をし始める。

 

「今から言う事を良く聞くんだ。

サニー達はこのまま魔理沙達の所に行って来て、そのままニジイロダケを採りに行って欲しい。

稼げる時間は精々十数分位だから、時間をきにするようにな」

 

「時間って言われても、時計を持って無いわよ」

 

「俺のを貸してやる」

 

ジンは腕時計を外すと、それをサニーつけて上げた。

 

「十分過ぎたら、急いで離脱するように、欲張るとろくな事が起きないからな。それとスター」

 

「何かしら?」

 

「主の位置をちゃんと把握しておいてくれ、もしそっちに行くようだったら皆に知らせて欲しい」

 

「わかったわ」

 

「それじゃ、各自武運を祈る」

 

「「「了解!」」」

 

ジンは敬礼のポーズを取ると、サニー達も見よう見まねの敬礼を取り、魔理沙達の所に向かった。

 

「随分信用しているのね、あの妖精達を」

 

「サニー達か? ああ見えて結構やるんだよ」

 

「そうには見えないけど?」

 

「まあ、失敗は多いけどな。

さて、こっちもそろそろ始めるか。準備はいいか鈴仙?」

 

「だ、大丈夫よ・・・・・・」

 

「そんな緊張しなくていいだろ、肩の力を抜け」

 

「そうは言われても・・・・・・」

 

「一度は逃げ切れたんだろ? それなら大丈夫だって」

 

「ジン・・・・・・」

 

ジンは、鈴仙の手を握り締めた。すると、先程まで震えていた手は、次第に治まり始めた。

 

「落ち着いたか?」

 

「うん、ありがとう」

 

「それじゃ、改めて行くぞ」

 

そう言って、ジンは石を主に投げつける。

主はジンと鈴仙の姿を確認すると、勢い良く向かって来る。

 

「走るぞ鈴仙!」

 

「ええ!」

 

二人は同時に駆け出した。

―――――――――――

 

ジンと鈴仙が囮になっている頃、魔理沙達はニジイロダケが生息している場所に辿り着いていた。

 

「ここだな」

 

「「「うわー」」」

 

そこには虹色輝くニジイロダケがあった。

それを見たサニー達は、一目散にニジイロの元に向かって走り出し、ニジイロダケを採り始める。魔理沙達も、用意した篭にニジイロダケいれ始めた。

 

「さっさと採ってずらかろうぜ」

 

「そうね、あの二人が囮になっているとはいえ、あまり悠長にしている時間は無いわね」

 

「そもそも、ちゃんと囮をしてくれているのかな? ジンはともかく、鈴仙は臆病だからね」

 

「スター、ジンと鈴仙の様子はどんな感じだ?」

 

「ちょっと待ってて」

 

魔理沙の要請を受けたスターは、能力を使い。ジン達の動きを見始める。

スターの能力から見ると、ジンと鈴仙は一切スピードを落とさず、主から逃げていたのである。

二人がいる場所は、あちらこちらに木の根が剥き出しており、普通なら満足に走れないものだが、二人はそれをものともせずに移動している様子であった。

 

(一体どうやったら、こんなに速く移動が出来るのかしら?)

 

「どうしたんだスター?」

 

「何でもないです。取り合えず、向こうはちゃんと囮をしていりみたいですよ」

 

それなら良いが、いつこっちに来るかも分からないから、ちゃんと見張りをしてくれよ」

「はーい♪」

 

スターは元気良く返事をし、再び二人の様子を見るのであった。

 

―――――――――――

 

魔法の森の奥地は高低差が激しい上に足場が悪く、とても走れるような地形ではなかった。しかし、ジンと鈴仙は兎術を駆使し、足場が悪いこの場所であっても、まるで兎の様に跳びながら移動していた。

 

「ジン! 遅いわよ!」

 

「鈴仙が速すぎるんだよ!」

 

同じ兎術であっても、ジンと鈴仙とではまったく違っていた。

ジンは、小まめに段差を跳ぶに対して、鈴仙は地形を大いに利用し、より素早く跳んで移動していた。

 

(ブランクがあってこれか、依姫が残念がるのも分かるな)

 

 

ジンは、改めて彼女の素養の高さを知った。

 

 

それから十数分後、ジン達は予定通りテリトリーから離れ、魔理沙達との合流地点へと向かった。

 

「よ、ようやくついた・・・・・・」

 

疲労が貯まっていたジンは、その場で腰を降ろす。一方鈴仙は、息を切らせてはいるが、まだまだ余力を残している様子であった。

 

「ふぅ、やっぱり鈍っているわね・・・大分動きが鈍くなってたわ」

 

「よく言うよ、あれだけ速く動ける癖に」

 

「そんな事無いわよ。以前に比べたら、かなり遅くなっているわ」

 

(という事は、前はもっと速かったってことか・・・やれやれ)

 

彼女の隠された実力に、内心舌を巻くジンであった。

そんな時、鈴仙はジンにこんな事を言って来た。

 

「それにしてもジン、貴方は兎術を何処まで教えて貰ったの?」

 

「ん? 基礎だけだが」

 

「え!? 基礎だけなの!」

 

「期間が一ヶ月程度だったからな、依姫から教わったのは殆ど基礎だけだ」

 

「道理で危なかっしい兎術を使う訳ね・・・・・・」

 

「そんなに危なかっしいか?」

 

「そうよ、地形を利用しきれていないし、跳躍しか使っていないじゃない。

今回はそんな高低差がなかったから良かったけど、場所によっては危険よ」

 

「そうなのか・・・色々と教わりたいが、依姫は月だからな・・・・・・」

 

「な、ならさ、私が教えてあげようか?」

 

「鈴仙が?」

 

「ほ、ほら、私も依姫様に稽古をつけて貰った事があるから、それなりに教えられると思うわ」

 

「良いのか?」

 

「もちろん!」

 

「それじゃ、時間が空いた時に頼んでもいいか?」

 

「ええ、良いわよ!」

 

この時鈴仙は、内心ガッツポーズを取っていた。

普段、あまり会う機会が恵まれていなかったので、これを機に会う口実が出来た事に、鈴仙は喜んでいたのだ。

 

「どうした?」

 

「い、いえ、何でもないわ! そ、それにしても、皆遅いわね」

 

「話によると、かなりの奥地だからな・・・主と鉢合わせしていなければ良いが・・・・・・」

 

「心配無用だぜ」

 

その言葉と共に、魔理沙達が現れた。どうやら無事に済んだらしい。

 

「大丈夫みたいだな」

 

「ええ、おかげさまで、ニジイロダケを採れたわ」

 

そう言って見せたのは、篭一杯のニジイロダケであった。

 

「へえ、これがニジイロダケか」

 

「綺麗ね・・・・・・」

 

「これも二人のおかげよ。ありがとう」

 

「これくらい有れば、実験に困らないぜ」

 

「お師匠様も、これなら満足するね」

 

 

魔理沙、アリス、ていの三人は満足の笑みを溢す。

そんな三人に、ジンはある事を提案する。

 

「どうせなら、ニジイロダケを使って打ち上げをしないか? 料理にも使えるんだろ?」

 

「お、いいねぇ。博霊酒と合わせれば最高だな」

 

「貴女は博霊酒を飲みたいだけでしょ・・・でもまあ、美味しい組み合わせになりそうね」

 

「なら、私達が腕によりをかけて料理するわ。ルナもスターも良いわね?」

 

「良いわねって・・・やるのは私とスターなんだから・・・・・・」

 

「まあまあ、私もルナの料理に期待しているわよ」

 

「ちょっと! 私に全部押し付けないでよ!」

 

「あら? 私はアピールチャンスを作って上げただけよ? ねえジン」

 

「ん?」

 

「料理が出来る女の子は好き?」

 

「もちろん、大好きだ」

 

ジンは親指を立てながらそう言った。

 

「ね♪」

 

「そ、そう? それなら私が作って上げる」

 

「よーし、それじゃ博霊神社にいくぜ!」

 

こうしてジン達は、博霊神社で打ち上げする事になった。

―――――――――――

 

博霊神社で打ち上げをする事になったのだが、あれやこれやと何故か人が集まってしまい。いつもの宴会となってしまった。

理由としては―――――。

 

「運命が見えたから」

 

「美味しそうな匂いがしたから」

 

「楽しそうな音楽が聞こえて来たから」

 

「鈴仙達から聞いたから」

 

――――等があった。

そんな訳で、宴会騒ぎとなっている。

 

「おーいジン、酒が切れたぞー」

 

「はいはい、今持って来る。やれやれ・・・今度からは宴会用の酒をもっと用意した方が良いな・・・・・・」

 

「まったく、どうしてうちの神社は、こうも妖怪が集まるのかしら?」

 

霊夢はぼやきながら、ジン達が都って来たニジイロダケを食べていた。

 

「良いじゃないか、俺はこういうのは好きだぞ」

 

「まあ・・・私も嫌いじゃないけど・・・・・・」

 

「ちょっとジン! 霊夢ばかり相手してないで、私の相手をしなさいよ!」

 

そう言って、ジンにヘッドロックを掛ける鈴仙。彼女は酔うと強気になる傾向があるので、こうしてジンに対しても容赦をしなくなっていた。

 

「れ、鈴仙、落ち着いてくれ・・・・・・」

 

「私は至って冷静よ。さ、こんな貧乳巫女なんて放っておいて、私と楽しみましょ♪」

 

「ちょっと待ちなさい、誰が貧乳ですって?」

 

「貴女意外いないじゃない」

 

「言ってくれるわね・・・その喧嘩買った!」

 

「良いわよ、私の真の実力を見せてあげるわ!」

 

二人はそう言い放つと、上空へと飛び上がり、弾幕勝負を始めるのであった。

 

「良いぞやれー!」

 

「鈴仙負けるなー!」

 

「勝てよ霊夢ー!」

 

宴会参加者達は、彼女達の弾幕を花火代わりに楽しむのであった。

 


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