なにぶん不馴れなもので、誤字脱字があるかも知れません。
秋と言えばキノコ狩り。
そんな訳で、ジンはサニー達を連れて魔法の森を訪れていた。
「魔理沙が居れば良かったんだが・・・・・・」
「留守なら仕方ないわ。私達だけでキノコ狩りをやるわよ!」
「自信満々ね、サニーは」
「いつも思うんだけど、その自信は何処から来るのかしら?」
そんな他愛のない話をしていると、ジン達は絶好の採取場所に到着する。
「よーし、毒キノコを取らないように、各自気をつけろよ」
「「「はーい!」」」
元気良く返事をした三人は、早速キノコを取り始めた。ジンも三人に遅れないように、行動を開始した。
キノコ狩りを開始してから数十分後、四人の籠は徐々にキノコで一杯になっていた。
「どうやら、私が一番キノコを集めたようね」
「なに言っているの、サニーのは毒キノコが入っているじゃない」
「ちょっとぐらいなら大丈夫よ」
「霊夢さん達も食べるって事を忘れてない?」
「あ・・・・・・」
「やっぱり忘れていたわね・・・・・・」
「う、うるさいわね! ちょっとぐらいなら死にはしないわよ!」
「そのちょっとで死ぬのが人間なんだが・・・・・・」
そんなやり取りをしていると、何処からか声らしき物が聞こえて来た。
「何か聞こえないか?」
「え?」
四人はその場で耳をすます。声は徐々にはっきりと聞こえて来る。
「ひあーー!?」
「鈴仙!?」
その声の主は鈴仙であった。
彼女は勢い良くジンにぶつかり、押し倒すようにジンを下敷きにして倒れる。
「いたた・・・って、ジン!? どうしてここに!?」
「いてて・・・それはこっちの台詞―――」
「グオォォ!」
ジンが言う前に、森の奥から大きな唸り声が聞こえて来る。
それを聞いた鈴仙は、直ぐ様立ち上がる。
「いけない! あいつが来る!」
「あいつ?」
「説明は後! とにかく逃げるわよ! 貴女達も早く!」
「え? え?」
「ま、待ってー!」
鈴仙はジンの手を取ると、彼を連れてその場を走り去った。
事情が掴めないサニー達であったが、危険だと感じ取り鈴仙の後に必死について行くのであった。
しばらく走った後、安全を確認した一同はようやく一息をつくのであった。
「ここなら大丈夫そうね」
「鈴仙・・・手をそろそろ・・・・・・」
「え? あ! ご、ごめん!」
鈴仙は慌ててジンの手を離した。少し気まずい空気になったが、サニーがある疑問を鈴仙に投げ掛ける。
「と、ところで、一体何から逃げていたですか?」
「それは――――」
「森の主からだぜ」
声と共に現れたのは魔理沙であった。その他にもアリス、ていの姿が確認出来た。
「魔理沙さんに、アリスさん。それに―――」
「永遠亭の妖怪兎ね。それにしても、三人ともボロボロじゃない。一体どうしたの?」
スターの質問に、ていが力無く答えた。
「さっきも言ったけど、森の主に襲われたからだよ・・・・・・」
「森の主?」
「そう、長年魔法の森に住んでいる妖さ。普段は森の奥で静かに暮らしているんだが、自分のテリトリーを荒らされるのを極端に嫌うから、テリトリーに入った奴を問答無用で襲うんだ」
「なるほど・・・でも、何でテリトリーに入ろうとしたんだ?」
「ニジイロダケを手にいれる為よ」
「「「「ニジイロダケ?」」」」
ニジイロダケ。それは数年に一度しか生えない伝説のキノコ。
その用途は様々で、魔法薬や治療薬、さらに料理にも使える万能のキノコである。
「へぇー、そんなキノコがあるのか・・・初耳だな」
「一般の人には、あまり知られていないキノコなのよ。
だけど、あの主は長年魔法の森に居るせいか、魔法に対する抵抗が異常に強いのよ」
「私達魔法使いの天敵だから、こうして共同戦線を張っているんだぜ」
「物が物だから、少しでも成功率を上げないとね」
「鈴仙を囮にして、その間にキノコを採ろうとしたんだが・・・・・・」
「戻って来るのが早すぎて、取れなかったんだよね・・・・・・」
三人は意気消沈の溜め息を吐く。先程まで気づかなかったが、三人の姿はボロボロで、主に追い掛け回された様子がはっきりと分かる程であった。
「それで三人ともボロボロなのか・・・・・・」
「鈴仙がしっかりと囮になってくれなかったせいだよ」
「いくら私でも、あんな怪物を一人で相手にするのは無理よ」
「そんな事を言ってもなあ・・・相手に魔法が効かない以上、私とアリスじゃ囮にすらならないぜ」
「私は非戦闘員だから、囮なんて無理うさ」
「つまりは、やる気は無いってわけね・・・・・・」
魔理沙とていの答えを聞いて、鈴仙はガクッと肩を落とす。そんな鈴仙の肩を叩きながら、ジンはこんな事言った。
「一人が辛いなら、二人でどうだ?」
「え?」
「協力してやるよ。もちろん、ニジイロダケは皆で山分けだ」
ジンは自信あり気にそう言った。
こうしてジン達は、魔理沙達と協力して、ニジイロダケを採る事になった。
ジンの作戦はこうである。
先ずはジン、鈴仙、サニー達で先に主のテリトリーに入。サニーとルナの能力で、姿と音を消して移動し、スターの能力で主の位置を補足する。そして主の姿を確認すると、サニー達はその事を魔理沙達に知らせ、そのままニジイロダケ奪取しに向かい、その間ジンと鈴仙は囮となる作戦である。
「作戦は以上だ。何か質問は?」
「はい」
「なんだ魔理沙?」
「どうしてサニー達をこっちに寄越すんだ? 逃げるのなら、三人の能力は有効だろ?」
「いや、今回に限ってそれは無い。鈴仙の話によると、その主はテリトリーから出るか、見失うかで追跡を止めるらしいから、三人の能力だと囮にならなくなる可能性がある。
逆に言うと、魔理沙達に必要な能力だ」
「どういう事だ?」
「先ず、スターの能力で主の位置が分かるから、鉢合わせになる心配が無い。仮に鉢合わせになっても、サニーとルナの能力で逃げ切る事が出来るだろ」
「ほほう、なかなか考えているね」
「でも大丈夫なの? あの主は結構速いわよ」
「大丈夫、鈴仙と俺ならどんな地形でも走破出来る。そうだろ鈴仙?」
「え!? えーと・・・あ、もしかしての兎術の事?」
「ああ、その兎術だ」
「兎術って何だてい?」
「私も知らないよ。何で私に聞くの?」
「兎だから」
「兎だからって聞かないで欲しいね」
「まあまあ、教えてやるから。いいか、兎術ってのは――――」
兎術―――それは一種の移動技術である。あらゆる環境、地形であっても効率的に移動する技術である。その姿は、まるで跳ねる兎の姿に見えるから、兎術と呼ばれたらしい。
外で言うと、パルクールやフリーランニング様な物である。
「だから悪路であっても大丈夫だから、安心して囮を任せてくれ」
「お、言い切ったな。それじゃ任せたぜ二人とも」
「ああ。それじゃ行くぞ皆」
そう言うと、ジンは鈴仙とサニー達を連れて、森の奥へと向かい出した。
―――――――――――
歩いてから十数分後、ジン達は森の主を発見する事が出来た。
「あれが主か・・・・・・」
「まるで熊みたいね」
「こっちに気が付いていないみたいね」
「どうするの?」
ルナがジンにそう聞くと、ジンはこれからの手順を分かりやすいように説明をし始める。
「今から言う事を良く聞くんだ。
サニー達はこのまま魔理沙達の所に行って来て、そのままニジイロダケを採りに行って欲しい。
稼げる時間は精々十数分位だから、時間をきにするようにな」
「時間って言われても、時計を持って無いわよ」
「俺のを貸してやる」
ジンは腕時計を外すと、それをサニーつけて上げた。
「十分過ぎたら、急いで離脱するように、欲張るとろくな事が起きないからな。それとスター」
「何かしら?」
「主の位置をちゃんと把握しておいてくれ、もしそっちに行くようだったら皆に知らせて欲しい」
「わかったわ」
「それじゃ、各自武運を祈る」
「「「了解!」」」
ジンは敬礼のポーズを取ると、サニー達も見よう見まねの敬礼を取り、魔理沙達の所に向かった。
「随分信用しているのね、あの妖精達を」
「サニー達か? ああ見えて結構やるんだよ」
「そうには見えないけど?」
「まあ、失敗は多いけどな。
さて、こっちもそろそろ始めるか。準備はいいか鈴仙?」
「だ、大丈夫よ・・・・・・」
「そんな緊張しなくていいだろ、肩の力を抜け」
「そうは言われても・・・・・・」
「一度は逃げ切れたんだろ? それなら大丈夫だって」
「ジン・・・・・・」
ジンは、鈴仙の手を握り締めた。すると、先程まで震えていた手は、次第に治まり始めた。
「落ち着いたか?」
「うん、ありがとう」
「それじゃ、改めて行くぞ」
そう言って、ジンは石を主に投げつける。
主はジンと鈴仙の姿を確認すると、勢い良く向かって来る。
「走るぞ鈴仙!」
「ええ!」
二人は同時に駆け出した。
―――――――――――
ジンと鈴仙が囮になっている頃、魔理沙達はニジイロダケが生息している場所に辿り着いていた。
「ここだな」
「「「うわー」」」
そこには虹色輝くニジイロダケがあった。
それを見たサニー達は、一目散にニジイロの元に向かって走り出し、ニジイロダケを採り始める。魔理沙達も、用意した篭にニジイロダケいれ始めた。
「さっさと採ってずらかろうぜ」
「そうね、あの二人が囮になっているとはいえ、あまり悠長にしている時間は無いわね」
「そもそも、ちゃんと囮をしてくれているのかな? ジンはともかく、鈴仙は臆病だからね」
「スター、ジンと鈴仙の様子はどんな感じだ?」
「ちょっと待ってて」
魔理沙の要請を受けたスターは、能力を使い。ジン達の動きを見始める。
スターの能力から見ると、ジンと鈴仙は一切スピードを落とさず、主から逃げていたのである。
二人がいる場所は、あちらこちらに木の根が剥き出しており、普通なら満足に走れないものだが、二人はそれをものともせずに移動している様子であった。
(一体どうやったら、こんなに速く移動が出来るのかしら?)
「どうしたんだスター?」
「何でもないです。取り合えず、向こうはちゃんと囮をしていりみたいですよ」
それなら良いが、いつこっちに来るかも分からないから、ちゃんと見張りをしてくれよ」
「はーい♪」
スターは元気良く返事をし、再び二人の様子を見るのであった。
―――――――――――
魔法の森の奥地は高低差が激しい上に足場が悪く、とても走れるような地形ではなかった。しかし、ジンと鈴仙は兎術を駆使し、足場が悪いこの場所であっても、まるで兎の様に跳びながら移動していた。
「ジン! 遅いわよ!」
「鈴仙が速すぎるんだよ!」
同じ兎術であっても、ジンと鈴仙とではまったく違っていた。
ジンは、小まめに段差を跳ぶに対して、鈴仙は地形を大いに利用し、より素早く跳んで移動していた。
(ブランクがあってこれか、依姫が残念がるのも分かるな)
ジンは、改めて彼女の素養の高さを知った。
それから十数分後、ジン達は予定通りテリトリーから離れ、魔理沙達との合流地点へと向かった。
「よ、ようやくついた・・・・・・」
疲労が貯まっていたジンは、その場で腰を降ろす。一方鈴仙は、息を切らせてはいるが、まだまだ余力を残している様子であった。
「ふぅ、やっぱり鈍っているわね・・・大分動きが鈍くなってたわ」
「よく言うよ、あれだけ速く動ける癖に」
「そんな事無いわよ。以前に比べたら、かなり遅くなっているわ」
(という事は、前はもっと速かったってことか・・・やれやれ)
彼女の隠された実力に、内心舌を巻くジンであった。
そんな時、鈴仙はジンにこんな事を言って来た。
「それにしてもジン、貴方は兎術を何処まで教えて貰ったの?」
「ん? 基礎だけだが」
「え!? 基礎だけなの!」
「期間が一ヶ月程度だったからな、依姫から教わったのは殆ど基礎だけだ」
「道理で危なかっしい兎術を使う訳ね・・・・・・」
「そんなに危なかっしいか?」
「そうよ、地形を利用しきれていないし、跳躍しか使っていないじゃない。
今回はそんな高低差がなかったから良かったけど、場所によっては危険よ」
「そうなのか・・・色々と教わりたいが、依姫は月だからな・・・・・・」
「な、ならさ、私が教えてあげようか?」
「鈴仙が?」
「ほ、ほら、私も依姫様に稽古をつけて貰った事があるから、それなりに教えられると思うわ」
「良いのか?」
「もちろん!」
「それじゃ、時間が空いた時に頼んでもいいか?」
「ええ、良いわよ!」
この時鈴仙は、内心ガッツポーズを取っていた。
普段、あまり会う機会が恵まれていなかったので、これを機に会う口実が出来た事に、鈴仙は喜んでいたのだ。
「どうした?」
「い、いえ、何でもないわ! そ、それにしても、皆遅いわね」
「話によると、かなりの奥地だからな・・・主と鉢合わせしていなければ良いが・・・・・・」
「心配無用だぜ」
その言葉と共に、魔理沙達が現れた。どうやら無事に済んだらしい。
「大丈夫みたいだな」
「ええ、おかげさまで、ニジイロダケを採れたわ」
そう言って見せたのは、篭一杯のニジイロダケであった。
「へえ、これがニジイロダケか」
「綺麗ね・・・・・・」
「これも二人のおかげよ。ありがとう」
「これくらい有れば、実験に困らないぜ」
「お師匠様も、これなら満足するね」
魔理沙、アリス、ていの三人は満足の笑みを溢す。
そんな三人に、ジンはある事を提案する。
「どうせなら、ニジイロダケを使って打ち上げをしないか? 料理にも使えるんだろ?」
「お、いいねぇ。博霊酒と合わせれば最高だな」
「貴女は博霊酒を飲みたいだけでしょ・・・でもまあ、美味しい組み合わせになりそうね」
「なら、私達が腕によりをかけて料理するわ。ルナもスターも良いわね?」
「良いわねって・・・やるのは私とスターなんだから・・・・・・」
「まあまあ、私もルナの料理に期待しているわよ」
「ちょっと! 私に全部押し付けないでよ!」
「あら? 私はアピールチャンスを作って上げただけよ? ねえジン」
「ん?」
「料理が出来る女の子は好き?」
「もちろん、大好きだ」
ジンは親指を立てながらそう言った。
「ね♪」
「そ、そう? それなら私が作って上げる」
「よーし、それじゃ博霊神社にいくぜ!」
こうしてジン達は、博霊神社で打ち上げする事になった。
―――――――――――
博霊神社で打ち上げをする事になったのだが、あれやこれやと何故か人が集まってしまい。いつもの宴会となってしまった。
理由としては―――――。
「運命が見えたから」
「美味しそうな匂いがしたから」
「楽しそうな音楽が聞こえて来たから」
「鈴仙達から聞いたから」
――――等があった。
そんな訳で、宴会騒ぎとなっている。
「おーいジン、酒が切れたぞー」
「はいはい、今持って来る。やれやれ・・・今度からは宴会用の酒をもっと用意した方が良いな・・・・・・」
「まったく、どうしてうちの神社は、こうも妖怪が集まるのかしら?」
霊夢はぼやきながら、ジン達が都って来たニジイロダケを食べていた。
「良いじゃないか、俺はこういうのは好きだぞ」
「まあ・・・私も嫌いじゃないけど・・・・・・」
「ちょっとジン! 霊夢ばかり相手してないで、私の相手をしなさいよ!」
そう言って、ジンにヘッドロックを掛ける鈴仙。彼女は酔うと強気になる傾向があるので、こうしてジンに対しても容赦をしなくなっていた。
「れ、鈴仙、落ち着いてくれ・・・・・・」
「私は至って冷静よ。さ、こんな貧乳巫女なんて放っておいて、私と楽しみましょ♪」
「ちょっと待ちなさい、誰が貧乳ですって?」
「貴女意外いないじゃない」
「言ってくれるわね・・・その喧嘩買った!」
「良いわよ、私の真の実力を見せてあげるわ!」
二人はそう言い放つと、上空へと飛び上がり、弾幕勝負を始めるのであった。
「良いぞやれー!」
「鈴仙負けるなー!」
「勝てよ霊夢ー!」
宴会参加者達は、彼女達の弾幕を花火代わりに楽しむのであった。