東方軌跡録   作:1103

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今回はとある旧作キャラを出したいが為に書いたものです。
好き勝手に書いたので、キャラが崩壊しているかも・・・・。


アリスとジンの人形劇

魔法の森にアリスの家があった。

そんな彼女の家に、魔理沙が遊びに来たところで、今回の話が始まるのである。

 

「おーい、遊びに来たぞアリスー」

 

元気よくドアを叩く魔理沙、するとドアが開き、アリスが現れるのだが、いつもと様子が違っていた。

 

「あら、いらっしゃい魔理沙」

 

「って、アリス! どうしたんだその右手は!?」

 

魔理沙はアリスの右手を見て声を上げる。彼女の右手には痛々しく包帯が巻かれていたのだ。

 

「ちょっとね、御茶を溢して火傷したのよ」

 

「おいおい、大丈夫か?」

 

「少し不便だけど、人形を操れば多少は大丈夫だから。

それよりも、困った事があるの、少し相談に乗ってくれないかしら?」

 

「珍しいな、お前が相談を持ち掛けるなんて、面白そうだから乗ってやるぜ」

 

「貴女ならそう言うと思っていたわ」

 

「それで? 相談ってのは?」

 

「実は、人里でやる予定の人形劇についてよ」

 

アリスの話によると、彼女は定期的に人里で人形劇を披露しているのだが、肝心の利き手が使えず、このままだと劇に支障が出てしまう事らしい。

 

「何か方法は無いかしら?」

 

「永遠亭に行って、火傷を瞬時に治す薬でも貰えばいいじゃないか?」

 

「冗談でしょ? あんな酷い薬は二度と使わないわよ」

 

「へ? 一体どうしたんだ?」

 

「確かにそういう薬はあったけど、副作用が酷いのよ」

 

「そ、そうなのか・・・じゃあ、パチュリーに協力して貰うとか?」

 

「頼りになるけど・・・対価を要求されそうね」

 

「ああそういえば、お前の魔導書を欲しがっていたな」

 

「一応これ、魔界の国宝だからあげる訳にはいかないのよ」

 

「そのわりには、使わないよな」

 

「これを使って負けたら、大抵酷い目に合うんだもの」

 

アリスは嫌な事を思い出したのか、深いため息を溢す。

その後二人で何かいい案が無いか話し合うが、結局妙案は思い付かなかった。

 

「やっぱ、中止にするしか無いじゃないか?」

 

「出来ればそれだけは避けたいのよ。劇を待っている子供達をガッカリさせたく無いから・・・・・・」

 

「でもよ、片手だけでやれるのか? しかも利き手じゃないんだろ?」

 

「それは・・・・・・」

 

「無理してやっても、劇の質が落ちるだけだぜ。世の中には、諦めが肝心な時もあるさ」

 

「それは分かっているけど・・・でも、諦めたく無いのよ」

 

「・・・よし、私に任せろ!」

 

「何か思いついたの?」

 

「力になってくれそうな奴に心当りがあるんだ。少し待ってくれよな」

 

そう言った魔理沙は、アリスの家を後にし、ある場所へと向かうのであった。

 

―――――――――――

 

「――――ってな事があったんだよ霊夢」

 

魔理沙は博麗神社に訪れ、ことの経緯を話していた。

 

「それで? 私にどうしろと?」

 

「いや、何かいい方法があれば教えて欲しいんだが」

 

「難しいわね・・・やっぱり今回は諦めるべきだと思うわ。それか――――」

 

「何かあるのか?」

 

「利き手代わりの助手を見つけるとか?」

 

「無茶をいうなよ、あいつ以外で人形を操る技術を持った奴は知らないぜ」

 

「そうね、一から仕込むとしても時間が足りないし、やっぱり諦めるしか――――」

 

その時、霊夢はあることを思い出し、頭を抱えたのである。

それを見た魔理沙は、不思議に思い、霊夢に聞くのであった。

 

「どうした霊夢? そんな頭を抱えて?」

 

「・・・一人だけ心当りがあるのよ。人形を操る事が出来る奴」

 

「え!? それは一体誰だ!?」

 

「あんたも知っている奴よ。出来れば関わらせたく無いけど」

 

「勿体ぶって無いで教えろよ!」

 

「ジンよ」

 

その名前を聞いて、魔理沙の思考が止まってしまった。

しばらくして、ようやく我に返った魔理沙は、驚きの声を上げる。

 

「ジンだって!? あいつそんな事出来たのか!?」

 

「つい最近の話よ。本人によると、術の練習の一環としてやっているみたい」

 

「多芸な奴だとは思ったが、そこまで出来るとは・・・・・・」

 

「と言っても、アリスに比べると児戯に等しいわ。人形を歩かせる程度だもの」

 

「うーん、微妙だな・・・でも、まったく出来ないよりはマシかもな。良し!」

 

すると魔理沙は箒を股がり、宙に浮き始める。

 

「それじゃアリスにこの事を話に行くから、ジンにもこの事を伝えておけよ」

 

そう言って、魔理沙は空へと飛び去って行くのであった。

 

「はあ、とことん厄介事に巻き込まれるわねアイツは・・・・・・」

 

ため息を吐きながらも、霊夢はジンにこの事を伝える為動くのであった。

 

 

アリスを連れて戻って来た魔理沙。

すると境内には既に、霊夢とジンの姿があった。

 

「話は聞かせて貰ったが、俺なんかで大丈夫なのか?」

 

「それをこれから見極めるのよ。早速だけど見せて頂戴」

 

「わかった、あんまり上手とは言えないが、やってみる」

 

そう言ってジンは、人形に術を施す。すると、人形は起き上がり動き始める。

 

「お、動いたぞ!」

 

「ちょっと静かにして魔理沙」

 

アリスはジンが操る人形の様子をじっと観察し始めた。そしてしばらくして、彼女が出した結論は――――。

 

「ギリギリ及第点ね。これなら頑張り次第で何とかなりそうだわ」

 

「それじゃ―――」

 

「ええ、劇の手伝い。お願い出来るかしら?」

 

「俺で良ければ力になる」

 

「ありがとうジン。それじゃ早速、私の家で泊まり込みで特訓するわよ」

 

「「「え?」」」

 

アリスの予想外の言葉三人は固まってしまう。

我に返った霊夢は、慌てて言う。

 

「ちょ、ちょっと、そこまでやるの!?」

 

「当たり前でしょ、ジンの腕前じゃとても劇なんて出来ないわ。しかも時間が無いから、泊まり込みでやるしか無いのよ」

 

「そ、それは分かるけど・・・・・・」

 

「御願い霊夢、ジンを貸してくれない?」

 

「・・・わかったわよ。本人が了承している以上、私がとやかく言う権利は無いもの」

 

霊夢は不満そうに言うが、ジン本人が引き受けてしまっていたので、これ以上言うつもりはなかった。

こうしてジンは、アリスの家で劇の練習をする事になった。

 

―――――――――――

 

アリスの家に着いて最初に行ったのは、人形の制作であった。

 

「なあ、これは劇に何か関係あるのか?」

 

「大有りよ、私と貴方じゃ人形の操り方は違うけど、魔力――――霊力とも言っていいかしら、それらで人形を動かしているのは共通しているのよ」

 

「ふむふむ」

 

「他人の作った人形だと、自分の魔力が通しづらいのよ。だから自分の魔力を通しやすい人形を作る必要があるのよ」

 

「それで自作か?」

 

「そうよ、自分で作った物ほど魔力は通しやすい物は無いわ」

 

「なるほど、だから人形全部手作りなのか」

 

「ええ、だから人形制作から始めなくちゃいけないのよ」

 

「わかった」

 

アリスの説明に納得したジンは、再び人形制作を再開させた。

ジンはアリスの指示に従いながら、丁寧に人形を作っていく。

 

「意外と器用ね貴方」

 

「まあな、昔はプラモとか良く作っていたから、こういう作業は慣れている」

 

「プラモ?」

 

「あー・・・プラスチックモデルの略で、誰でも簡単に模型が作れる代物だ」

 

「ふーん・・・あ、そこはもうちょっと太く」

 

「わかった」

 

こうして、人形制作は夜通し行われるのであった。

 

―――――――――――

 

ジンがアリスの家で泊まり込みで劇の練習を開始してから数日が経過した。

 

「それじゃ、永遠亭に言って来るから、留守番と練習をしっかりやってね」

 

「ああ、わかった」

 

アリスを見送ったジンは、彼女に言われた通り練習を始めた。

当初は歩く事ぐらいしか出来なかったが、今では多少のアクションが出来るようになっていた。

しばらく練習をしていると、呼鈴が鳴った。

 

「ん? 誰だろう? 魔理沙―――は違うだろうな。アイツなら律儀に呼鈴をならす訳無いか」

 

アリスの交友関係をいまいち知らないジンは、誰だろうと思いながら来客を応対しようと扉を開いたその時―――。

 

「アリスー♪ 母さんが遊びに来たよー♪」

 

見知らぬ女性にいきなり抱きつかれてしまう。

 

「う、うわ!?」

 

「まったく、手紙を寄越さないから心配したんだよー・・・あれ? 妙に背が高いような・・・・・・」

 

「神綺様! それはアリス御嬢様ではありません!」

 

「え?」

 

メイドらしき女性の言葉で、神綺と呼ばれる女性は抱きついているのがアリスでは無いことに気づく。

 

「なっ!? 貴方は一体誰! アリスを何処にやった!」

 

「え? 俺は―――」

 

答えようとしたその瞬間、メイドから放たれた剣によってジンは張りつけにされてしまう。

 

「うわぁ!? いきなり何をするんだ!」

 

「黙りなさい賊が! アリス御嬢様を何処に監禁しているのか、正直に答えなさい!」

 

「監禁!? 一体何の話をしているんだ!」

 

「お黙りなさい! 貴方には黙秘権はありません! 洗いざらい話して貰いますよ!」

 

メイドが持つ剣が、不気味に光だした。

 

 

それからジンは、椅子に縛りつけられ、メイドの尋問受けた。

それは夕方まで続き、ジンはグッタリとしていた。

 

「いい加減、アリスの居場所を吐きな!」

 

「だから言っているだろ・・・アリスは永遠亭っていう所に行ったんだって」

 

「信じられません、話に聞くと病院らしき所らしいですが、幻想郷にそんな場所があるなんて聞いた事がありませんよ」

 

「・・・つかぬこと聞くが、最近の幻想郷の情勢を知らないのか?」

 

「まったく知らないわ」

「まったく知りません」

 

「二人は幻想郷の住人じゃないのか?」

 

「私は魔界人です。そしてこの方は――――」

 

「魔界の神、神綺よ」

 

「申し遅れましたが、私は神綺様に仕えている夢子と申します」

 

夢子と名乗ったメイドは、先程までとは違く、礼儀正しく御辞儀をした。しかし、直ぐ様ジンに敵意を向ける。

 

「私達は幻想郷の情勢に疎いので、貴方がそれを利用して騙している可能性があります。故に、信用出来る証拠を御見せ下さい」

 

「そんな事を言われてもなあ・・・二人はアリスとどんな関係なんだ?」

 

「私達? 色々とあるけど、私はアリスの母親よ」

 

「え? アリスの母親?」

 

「そうよ、今日は久々に遊びに来たんだけど――――」

 

「家にいたのは俺って訳か・・・」

 

「その通り、わかったならアリスを何処にやった白状しなさい」

 

もう何回にもなるこの問答、ジンはややうんざりしていた。

こうなったら、アリスが早く戻って来る事を願うしかないとジンは思った。

その願いが叶ったのか、ドアが開く音がし、アリスの声が聞こえた。

 

「ただいまー、買い物したら遅くなちゃって――――」

 

アリスはそう言いながら居間に行くと、言葉を失ってしまう。

 

「母さんに夢子!? どうしてここに!?」

 

「ア、アリスー! 心配したよー!」

 

「アリス御嬢様! お怪我はございませんか!?」

 

「え? えっと・・・・・・」

 

いきなりの事で戸惑うアリス、すると神綺と夢子はアリスの利き腕に包帯が巻かれている事に気づく。

 

「アリスその手は!?」

 

「ああこれは――――」

 

「おいお前! さっきはアリスに指一本触れて無いと言ったが、これはどういう事だ!」

 

「え?」

 

「やはり嘘をついていたのですね。いいでしょう、これからは尋問では無く、拷問と行きましょうか」

 

神綺は六枚の羽を展開し、夢子は剣を構える。

そこでアリスは、ジンが椅子に縛りつけられている事に気づく。

 

「ジン!? どうして椅子なんかに!?」

 

「・・・・・・二人に説明を頼む」

 

「もう二人とも! 何をしているのよ!」

 

アリスは怒りながら、二人の誤解を解こうとするのであった。

 

 

日は沈み、外はすっかり夜なった頃。アリスのお陰でジンの誤解はすっかり解け、四人で晩ご飯を楽しんでいた。

 

「いや~悪かったわね。アリスの友人だと思わなかったわ」

 

「まったくもう、母さんは早とちりしやすいんだから」

 

「その原因はアリス御嬢様にもあると思いますが? 最近ろくに神綺様に手紙を出していないのですから」

 

「そ、それは悪いと思っているわよ」

 

「まあまあ、こうして元気な愛娘の姿を見れたんだから、良ししようじゃないか夢子」

 

「神綺様がそうおっしゃるなら・・・・・・」

 

「ところで、ジンと言ったわね。アリスとどんな関係?」

 

「え? さっきも言ったが友達――――」

 

「そんな建前じゃなくて、アリスと何処までいっているかって事よ」

 

「か、母さん! 私とジンはそんな関係じゃ―――」

 

「男性を家に招き入れている時点で、ただの友人とは言えないのでは?」

 

「そ、それはそうだけど・・・・・・」

 

夢子の指摘に、どう返答しようか困っているアリス。そんな彼女にジンは助け船を出した。

 

「アリスと俺はただの友人だ。それに、今は劇の練習で泊まっているだけで、いつもはこんな事はしていない」

 

「そ、そうよ! 変な誤解はしないで!」

 

「そう・・・少し残念ね。もしかしたら、孫の顔が見られると思ったんだけど」

 

その言葉を聞いたアリスとジンは、思わず咳き込む。

 

「ゴホッ、ゴホッ、何を言ってるのよ母さん!」

 

「いやだって、母親としてはそういうのを期待と言うか――――」

 

「もう馬鹿な事を言わないでよ! ほら、ジンからも何か言って――――」

 

するとアリスは気づく、ジンが何処か悲しい表情をしていた事に。

 

「ジン? どうしたの?」

 

「いやちょっと、親の事を思い出して・・・・・・」

 

「あ・・・・・・」

 

「俺は親に孫の顔すら見せてやれなかったなって思ってな・・・・・・」

 

「ジン・・・・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

「わ、悪い、湿っぽくなって、今のは忘れてくれ」

 

ジンは明るく振る舞うが、それは無理してやっている事だと三人は感じ取っていた。

しばらく重苦しい空気が流れた。

このままだと不味いと思ったジンは、劇の話を切り出した。

 

「そうだ! 近い内に人里で人形劇をやるから、良かったら見に来てくれないか?」

 

「え、良いの?」

 

「ああ、せっかく来てくれたんだし、アリスの人形劇を見て欲しいんだ。

なあアリス?」

 

「私は別に構わないけど、貴方もその劇に参加するのよジン」

 

「わかっている。成功するように頑張るさ」

 

その後、先程の重い空気は消え、団欒と食事を楽しむのであった。

 

―――――――――――

 

劇公開当日、アリスとジンは人里の広場で人形劇を公開していた。

劇の内容は、七人の猫が幻の魚を求めて冒険するというものであった。

ジンは七人の猫のリーダーを担当し、アリスは残る六匹とその他の登場人物を片手で操っていた。

劇は順調に進み、物語は最終局面を迎えた。

 

(良し、このまま――――)

 

その時アクシデントが起きてしまう、アリスの操っている人形の一つの魔力糸が切れてしまう。

 

(や、やば―――)

 

人形が倒れそうになった瞬間、人形は持ち直した。

 

(え?)

 

アリスは一瞬驚いたが、理由は直ぐにわかった。ジンが片手で術を行使し、倒れ掛けた人形を支えていたのだ。

アリスは直ぐ様魔力糸を人形に繋げ、劇を再開させるのであった。

 

 

劇は無事に終わり、アリスとジンは後片付けしていた。

 

「ありがとうねジン、最後のフォローは助かったわ」

 

「無我夢中だったが、上手くやれて良かった。

片手だと支えるのがやっとだ」

 

「慣れてくれば、両手で十数体の人形を同時に操れるようになるわよ」

 

「それまでに何年掛かるやら」

 

そんな話をしていると、霊夢率いる博麗神社一行、サニー達、魔理沙、魅魔、神綺、夢子がやって来た。

 

「なかなか良かったわよ二人とも」

 

「皆も来ていたの?」

 

「そりゃ気になったからな。でも、上手くいって良かったぜ」

 

「ありがとうね、お陰で劇は上手くいったわ」

 

「それじゃ、成功を祝ってパァーやろうじゃないか! 神綺の奢りでね」

 

「ええ! 私!?」

 

「良いじゃないか別に、魔界神なんだろう? それくらい甲斐性を見せなよ」

 

「ううっ・・・そこまで言うなら、何でも奢ってやるわよ!」

 

「良いのですか神綺様?」

 

「良いの! 可愛いアリスの為なら、何だって奢っちゃうわ!」

 

「もう! 恥ずかしい事を言わないでよ母さん!」

 

そんなやり取りをしながら、一行は里にある高級店で打ち上げをするのであった。

因みに、この打ち上げで神綺は多大な支払いをする羽目になったのは言うまでもない。




今回アリスの設定ですが、魔界人にして神綺の娘という設定にしています。
それと主人公ですが、何でもそつなくこなすが、専門家に比べると劣る器用貧乏という事にしました。

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