東方軌跡録   作:1103

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今回は短めにと、少しグダグダになりました。
ネタは思い浮かんだんですが、実際に書くと上手く出来ないんですね。


地蔵の行方

人里にある一件の寺子屋。

今日はジンが特別講師で、算数を教える日である。

 

「―――であるからして、答えは・・・・・小太郎、答えられるか?」

 

「え、えっと・・・・・四ですか・・・?」

 

「正解。よく答えられたな」

 

「はい!」

 

こうして授業が続いて行くと、終業の鐘が鳴る。

 

「それでは今日はここまで、宿題を出すから、ちゃんとやるように」

 

「「「「はーい!」」」」

 

こうして、ジンの授業は終りを告げるのであった。

 

 

 

「今日もすまないな、私だけでは色々限度があってな・・・・・」

 

「俺としては、これぐらいしか出来ないけどな」

 

「それでも十分助かっている。

それに授業風景も色々と参考になっているからな」

 

「そうか、それなら良いんだが・・・・・」

 

「君の悪い所は、自分に自信が無いところだぞ。

自分をもっと信じてみろ」

 

「自分を信じるか・・・・・」

 

「君がどういう事情で、幻想郷に来たのかは知らないが、わたしは君を立派な人間だと思っているんだぞ」

 

「やめてくれ、俺は何処にでもいる普通の人間だ。

そんな立派なものじゃない」

 

「やれやれ、そう簡単に直るものではないか・・・・・」

 

「ともかく、この話しは終わりだ。

霊夢に買い物を頼まれているから、この辺で失礼させて貰う」

 

「ああ、気を付けて」

 

ジンは寺子屋を後にし、霊夢に頼まれていた買い物をするのであった。

 

―――――――――――

 

 

「――――っと、買い出しはこんなところか?」

 

ジンはメモを確認しながら、道を歩いていた。

そして、人里から少し離れた道端に、見知った人物を見つける。

 

「ん? 小町か?」

 

「おや? ジンじゃないか」

 

彼女は小野塚小町。

三途の川の船渡しをしている死神である。

最も、彼女はサボり魔としても有名でもある。

 

「またサボリか小町?」

 

「失礼だね。ただの休憩だよ」

 

(やっぱりサボリか)

 

彼女の休憩という言葉は、大抵サボリを指している事が多いのだが、ジンは言わないでおいた。

 

「こんな所で休憩しているのか?」

 

「いや・・・・・ちょっとね」

 

そう言って、小町は何もない道端を見ていた。

そこには、何かが置かれた形跡があった。

 

「そこに何か置かれていたのか?」

 

「そうだよ。ここに地蔵が置かれてあったんだけど・・・・・」

 

「誰かが持って行った?

だけど、地蔵なんか持って行く奴なんかいるのか?」

 

「ジン、今の言葉は地蔵に大して失礼だよ」

 

「? どういう意味だ?」

 

「やれやれ、あたいが説明してやるよ。

いいかい、あらゆる物に信仰が集まると神様が生まれるのは知っているだろう?」

 

「ああ」

 

「うちの映姫様は、信仰が集まった地蔵から閻魔様になったんだよ」

 

「そうなのか!?」

 

「ああ、いわば地蔵全てが英姫様の家族みたいなものなんだ。

だから、粗末な扱いをすると、地獄に堕ちるかも」

 

「そ、そうか、今後気を付ける。

しかし、家族か・・・・・」

 

するとジンは、何かを考えるように、地蔵が置かれていた場所を見つめた。

 

「ジン? どうしたんだいそんな考え込んで」

 

「いや、英姫の家族が拐われたのなら、探さなきゃいけないなと思ってな」

 

「え?」

 

「小町だって、そう思っていたから、ここに居たんだろ?」

 

「そうだけど・・・・・手掛かりはあるのかい?」

 

「賭けだが、俺の能力を使えば――――」

 

ジンは過去の軌跡を視始める。

すると、地蔵の残像がくっきりと視え始めた。

 

「どうやら、地蔵は朝方に拐われたらしい」

 

「それで、犯人は視えるかい?」

 

「待ってくれ、もう少しで―――え?」

 

「ジン? どうしたんだい?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「ジン?」

 

「・・・・・何をしているんだ魔理沙の奴・・・・・」

 

ジンが見た犯人の残像は、紛れもなく霧雨魔理沙のものであった。

 

―――――――――――

 

「つまり、魔理沙が地蔵を拐った犯人ってことかい?」

 

「理由は分からんが、視る限りそうだろう」

 

「しかし、何でまた?」

 

「俺が視えるのは動きだけだからな、こればっかりは本人に聞かないと・・・・・って」

 

二人が魔理沙の残像を追っていたら、いつの間にか博麗神社についてしまった。

 

「地蔵を持って神社に来た?

ますます分からん」

 

「まあ、本人に問いだ出せば分かるさ」

 

「まあそうだが・・・・・」

 

二人は境内に入り、神社の裏庭に向かった。

当然そこにいたのは魔理沙と霊夢であった。

 

「お帰りジン―――って小町?」

 

「珍しい組み合わせだな」

 

「魔理沙、一つ聞きたいんだが」

 

「何だぜ?」

 

「地蔵を持って来てないか?」

 

「地蔵・・・・・・・・ああ、あれか」

 

「どうして地蔵を盗んだんだい?」

 

「盗むとは人聞きの悪いな

あれは拾ったんだぜ」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「言いたい事はわかるけど、言っても無駄だと思うわ」

 

「・・・・・そうだろうな。

ともかく、持って行った地蔵は何処に置いた?」

 

「邪魔だったから、ミズナラの御神木の所に置いといた」

 

「邪魔だからって・・・・・じゃあ何故持ち出したんだ?」

 

「何か御利益があると思ったんだが、霊夢の話によれば、ただの石像って聞いたんだ

それなら、この手のひらサイズで充分だぜ」

 

「・・・・・もはや突っ込む気も起きん」

 

「やれやれ、あの地蔵もとんだ災難だねぇ」

 

「ん? 何の話だ?」

 

「良いかい、地蔵を粗末に扱う奴はねぇ・・・・・・・・・・地獄に堕ちるんだよ」

 

「はぁ? たかが石像だろ?

そんな大袈裟な――――」

 

「俺も最初にそう思ったが、小町の話によると、英姫は元地蔵らしい」

 

「え!? 本当かジン!

おい霊夢! 話が違うじゃないか!」

 

「私だって初耳よ。

今の話し本当なの?」

 

「本当さ、なんなら映姫様に直接聞くかい?」

 

「遠慮しとくわ・・・・・」

 

「ともかく、地蔵を粗末に扱えば、どうなるかねぇ?」

 

「わわわ・・・・・一体どうすれば・・・・・」

 

「普通に元の場所に戻せば良いんじゃないか?」

 

「それだ! 善は急げだぜ!」

 

魔理沙は物凄い速さで、ミズナラの御神木に向かって走り出した。

すると――――。

 

「うわーー!?」

 

「魔理沙!?」

 

「おや、どうやら厄災が降りかかったみたいだね」

 

 

―――――――――――

 

夕暮れ時、ジン達は元々地蔵が置かれていた場所に来ていた。

 

「よっこらせっと、これで大丈夫」

 

「これに懲りたら、何でもかんでも拾う癖は直せ」

 

「わかったって、それにしても、ただの石像から閻魔になるなんてな・・・・・」

 

「それが地蔵の面白いところさ。

ただの石像でも、信仰が集まれば神様になっていくこともある。

最も、そうなるまで何年も掛かるけどねぇ」

 

「そうか・・・・・神様への道程は険しいな」

 

「そんな事よりも、私お腹空いて来たんだけど」

 

「・・・・・霊夢は信仰より食い気か」

 

「だって、信仰でお腹膨れないもの。

それに、信仰ってのはお賽銭を集めるためのものでしょ?」

 

「なんて駄目な巫女なんだ・・・・・」

 

「霊夢の方が地獄に堕ちると思うぜ」

 

「いや、英姫様の話によると、地獄にすら行けないらしいねぇ・・・・・」

 

「あんた達? 何か言い残す事は?」

 

霊夢は笑顔で、御札と陰陽玉を取り出した。

 

「霊夢、一つ良いか?」

 

「なに?」

 

「あそこにミスティの屋台があるから、八目鰻を食べないか?」

 

「あら、それは良いわね。

最近景気が良いし、思いっきり食べましょ」

 

先程の怒りを忘れたかのように、霊夢は屋台に向かって行き、ジンはその後を追った。

 

「ジンの奴・・・・霊夢の扱いが上手くなったな」

 

「そりゃ、何ヵ月も一緒に暮らしてんだ。

互いの性格は把握しているだろうねぇ」

 

「性格か・・・・・そう言えば、あの二人の性格は真逆だよな」

 

「霊夢は我が強く傍若無人。

ジンは清廉だけど、自分に対して自信を持てないみたいだねぇ」

 

「そういう意味では、霊夢は自信の塊だよな。

手当たり次第退治すれば、万事OKって考えだし」

 

「そうだねぇ、だからこそあの二人は上手くいっているんだよ。

御互い、不足している部分を補うようにね」

 

「魔理沙ー! 小町ー! 置いていくわよー!」

 

「おう! 今行くぜー!」

 

「やれやれ、せっかちだねぇ」

 

こうして四人は、屋台で八目鰻を食べるのであった。

因みに小町はこの後、仕事を一日丸々サボった事を、閻魔である四季映姫に説教を受けるのであった。


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