先に内容を書いてから、タイトルを書くので、ピッタリのタイトルが中々思いつきません・・・。
なるべく内容に合ったタイトルを心がけています。
ここは妖怪山にある天狗の里。
そこにある大掲示板に、一部の新聞が張り付けられていた。
“文々新聞。
氷の妖精の偉業! 春の湖に氷の橋を掛ける。”
そう書かれた見出しと、氷の橋を背景にピースポーズを取っているチルノの写真があった。
「文の奴、またスクープを取ったらしいな」
「またかよ、これでいくつ目だ?」
「最近の文々新聞はネタが豊富だな、一体何処で見つけているんだろう?」
「大方、ネタの木でも見つけたんじゃないか?」
「はは、違いない」
そんな天狗達の会話を横で聞いていた一人の少女がいた。
彼女の名は姫海棠はたて、文のライバル記者である。
(文の奴・・・今に見ていなさい! 文々新聞以上のスクープを取って見せるわ!)
はたては打倒文々新聞と、激しく闘志を燃やすのであった。
家に戻ったはたては、早速どうスクープを見つけるか考え始めた。
(うーん・・・やっぱり念写だけじゃ限度があるわねぇ・・・)
彼女の能力、“念写する程度の能力”なのだが、正確に言えば遠隔撮影ではなく、念写機にキーワードを入力して念写をする物で、どちからかと言うと検索向けの能力である
それ故に、未知の物を探すのはあまり適していない能力なのだ。
(癪だけど、文みたいに足で探さなきゃ。だけど、闇雲に探しても見つかるわけ無いし・・・どうしょうかしら?)
はたては頭を捻りながら考えていると、先程の天狗達の会話を思い出す。
「ネタの木か・・・・・・」
何かを思ったのか、はたては念写機にネタの木とキーワードを打ち込んだ。
「・・・なーんて、そんなのある訳―――」
すると、念写機からピロリンと音が鳴る。これは該当有りを知らせる音である。
「え? うそ!?」
まさかの該当有りに、はたては驚き、慌てて画像を見る。そこには、一人の青年が写っていた。
―――――――――――
新聞発行から数日前、人里のとある料理店に、ジン、文、チルノ、大妖精の四人が何やら打ち上げをしていた。
「氷の橋製作、お疲れ様です」
「おおーお疲れー」
「お疲れさまです」
「お疲れ様」
四人は互いのコップを当て、乾杯をした。
「いやー、まさか本当に出来るとは思わなかったわ」
「へへん♪ あたいの実力さ!」
「もうチルノちゃんったら、ジンさんのおかげでもあるんだよ」
「俺は少し知恵を貸しただけだ。後は全部チルノの力だよ」
「それでも大したものよ、まさかあんな方法を思いつくなんて」
ジンが思い付いた方法とは塩を使うことであった。
詳しい説明は省くが、氷に塩を振り撒くと、周囲の温度をさらに下げる働きを持つので、ジンはそれを利用したのである。
先ず、チルノにかなり大きめの氷塊を幾つか作ってもらい、湖に浮かべる。次に氷塊と氷塊を隣接させ、その間に水をかけ、塩を振り撒く、そうする事により氷塊同士がくっつくのである。
その作業を何度も繰り返して、橋を作ったのである。
「ちょっとした理科だ。勉強すれば誰だって思いつく」
「おおー! あたいも勉強すれば、ジンみたいに凄いこと思いつく?」
「まあ・・・頑張れば」
「よーし! あたいも勉強するぞー♪」
「三日坊主にならなければいいんだけど・・・・・・」
「はは・・・否定できない」
チルノの勉強宣言を余所に、文はジンにある質問をする。
「ところで、ジンはどうしてチルノのお手伝いを?」
「ああ、大した事では無いんだが―――」
事の発端は、ふてくされているチルノと偶然に出会い。理由を訪ねてみると――――。
『湖を凍らそうとしたけど、こう暖くちゃもう凍らないよ』
そうチルノは言った。するとジンは、こう返した。
『湖全面は無理だが、氷の橋ぐらいなら作れるかも』
そう言い、チルノに氷の橋計画を持ち出したのである。
「なるほど、黒幕は貴方だった訳ね」
「黒幕とは人聞きの悪いな。俺はチルノに手を貸しただけだ」
「まあ、貴方がそう言うのなら、そう言う事にしましょう」
「そうして貰えると助かる。ほら注いでやる」
「あら、ありがとう」
ジンは文のコップに酒を注ぎ、それを見た文は艶やかに笑った。
―――――――――――
新聞発行から数日後、はたては密かに博麗神社に訪れていた。
(念写によると、ここに住んでいるのよね)
はたては隠れながら境内の様子を覗いた。すると、一人の少女が掃除をしている姿を見つける。
「~♪ ~♪」
(あれは化け狐? どうして神社なんかに?)
疑問を抱いていると、そこに例の青年がやって来た。
しかし、念写の姿と違い、彼の額に鬼の角が生えていた。
(ええ!? 鬼!? あ、そう言えば、博麗神社に住んでいる鬼の人妖がいるって聞いた事があるわね)
それは随分と前だが、文々新聞にもその事が掲載されていたが、当時は殆どの天狗が信じていなかったのだ。
(まさか、彼がそうだったの・・・・・・)
はたては、青年の事をじっと観察する事にした。
「それじゃ行ってくる。留守番頼むな」
「はい、行ってらっしゃいジンさん」
ジンと呼ばれた青年は、狐の少女に見送られながら、荷馬車を担いで石段を降りていった。
(何処に行くのかしら?)
はたては、ジンの後をつけることにした。
―――――――――――
人里に続く街道を、ジンは荷馬車を引きながら走っていた。
普通の人間なら先ず出せないスピードではあるが、天狗であるはたてには、まるで歩いているような速さなので、見失う事はなかった。
(あの荷馬車、一体何を積んでいるのかしら?)
荷の中身が気になるものの、ジンに気づかれない距離を保つはたて。すると、ジンの目の前に二体の妖怪が立ちはだかる。
「おうおう! 命が欲しかったら、荷馬車を置いていきな!」
「兄貴はこう見えても狂暴さ、言う通りにした方が身のためさ」
(あいつら・・・確かここ最近暴れている追い剥ぎ妖怪ね)
追い剥ぎ妖怪とは、この妖怪達の通り名である。
普段は自分達より弱い妖怪や妖精から、金品や荷物など強奪する悪徳妖怪である。
何故人間を襲わないかというと、博麗の巫女が怖いからである。
「・・・・・・」
「おらおらどうした? 怖くて声も出ないのか?」
「お前たちが最近暴れている追い剥ぎ妖怪か?」
「あ? だとしたらどうなんだよ?」
「遠慮なくぶっ飛ばす」
ジンはそう言うと、兄貴と呼ばれた妖怪に対してアッパーカットをぶちかます。
「ぐへぇ!?」
「あ、兄貴!?」
兄貴は上空数十メートルまで飛ばされ、そのまま地面に落下した。
残された子分は、ただ呆然としていた。
「おい」
「ひぃ!」
ジンに声を掛けられた子分は、思わず悲鳴を上げてしまう。
そんな子分の様子を無視し、ジンは言った。
「二度と追い剥ぎしないと誓え、さもないと―――」
「わ、わかりましたー!」
子分はそう叫びながら、気絶している兄貴分を抱え、走って逃げて行った。
それを見たジンは、満足そうな顔をして、再び荷馬車を引き走り始める。
その一部始終をはたてはしっかりとカメラに撮っていた。
(まさかいきなりネタをてに入るなんて・・・これはもしや、本当にネタの木かも知れない!)
そう思ったはたては、ジンの尾行を続行する事にした。
―――――――――――
人里についたジンは、早速居酒屋に行き、店主に博麗酒を納品していた。
(なるほど、こうして人里に博麗酒が出回っていたのね)
博麗酒は大変な人気があり、今では中々手に入るのが難しい酒になっていたのである。
ジンは納品を終えると、今度は市場へと向かった。
(今度は何をするのかしら?)
はたてはその後を密かに追った。
市場についたジンは、日用雑貨が売られている場所に訪れた。どうやら日用品を買いに来たらしい。
(うーん・・・思ったより普通ね)
何か起こるか期待していたはたてだが、あまりにも普通の買い物にやや残念そうな顔をしていた。
そこに、小さな子供達がやって来た。
「「「ジン先生ー」」」
「ん? お前らか、一体どうした?」
「あのね、猫のミミが朝から見かけないの」
「俺らずっと探してんだけど、見つからないんだよ。
でも、ジン先生なら見つけられるよな?」
「なるほどな・・・わかった、探してやろう」
ジンは子供達の頼みを聞き入れ、猫を探し始めるのであった。
その後、無事に猫を見つけたジンは、子供達に感謝されながら帰路につこうとしていたが、不意に足を止めた。
「・・・そろそろ後をつけるのはやめて貰えるか?」
ジンがそう言うと、はたては物影から現れた。
「バレていたのね」
「まあ、ついさっき気づいたばかりなんだが・・・・・・お前は?」
「私は、花菓子念報の発行者の姫海棠はたてよ」
「花菓子念報?」
「私の作った新聞よ。まあ、あまりメジャーじゃないけど・・・・・・」
「つまり文と同じ記者か? 」
「まあね、最も私の方が優秀だけど」
「そのわりには、花菓子念報はマイナーみたいだが?」
「これから有名になるの! その為には、貴方を取材させて欲しいんだけど・・・いい?」
「何で俺なんか?」
「今日一日貴方を観察したら、興味を持ったのよ。
お願いできない?」
「まあ・・・時間を取らせないなら」
「取らせない取らせない♪ それじゃ、近くの店で話を聞かせて貰うわ」
そう言って、はたてはジンの手を取り、近くの喫茶店に向かい出したのである。その時、半鐘の音が鳴り響く。
「これって――――」
「ああ、何処かで火災が発生したんだ」
ジンは空を見上げ、煙を確認すると、一目散に走って行った。
「あ! 待ちなさいよ!」
はたても、急いでその後を追って行った。
現場に到着すると、とある店が燃えていた。
周囲には火消しと、河童達の消防団が消火活動を行っていた。
「これは、酷いわね・・・・・・」
「まあ、火消しと消火団が来ているから心配は無いだろう」
そんな事を話していると、一人の女性が店の中に入ろうとしているのを、火消し達に止められている姿を見つけた。
「放して! まだ店の中に夫が!」
「無茶だ! もう火の手が上がっているんだ! 今入れば、あんたが死ぬぞ!」
どうやら店の中に店主が取り残されているらしい、その声を聞いたジンは、一目散に走った。
「え!?」
「お、おい! あんた!」
火消し、消防団の制止振りきり、火の手が上がる店へと入って行ったジン。
それから数十分後、燃え盛る店の中から、ジンは女性の夫である店主を抱えて出て来た。
「ああ! 貴方!」
「気絶しているだけだが、一酸化炭素中毒かも知れない。急いで永遠亭に運ぼう」
ジンはそのまま店主を永遠亭に運んで行ったのである。
―――――――――――
永遠亭に運び込まれ、治療を施された店主は無事に一命を取り止めた。
一方ジンは、鬼人になっていたおかげで、大した火傷もなく、軽い手当てで済んだ。
永遠亭を出ると、そこにははたての姿があった。
「大丈夫?」
「まあなんとか」
「いつもあんな事をしているの?」
「まさか、偶々だ。いつもやっていたら、命が幾つあっても足りないからな」
「それもそうね」
「さてと、それじゃ取材は――――」
「また今度にするわ。貴方も疲れているだろうし、それにさっきの火災についての記事に書きたいから」
「そうか」
「それじゃまたね、えーと・・・・・・」
「ジンだ」
「ジンね。それじゃまたねジン」
そう言って、はたては帰って行った。
はたてを見送ったジンも、そのまま神社へと帰って行ったのである。
―――――――――――
それから翌日、ジンはいつもの通り境内の掃除をしていると、文が血相を変えてやって来た。
「ジ、ジジジン! これはどういう事!?」
「な、何だよ文? 一体どうした?」
「これよ! この記事を見なさい!」
文が持って来た花菓子念報という新聞の記事には、昨日の火災で店主を救ったジンの姿があった。
「どうしてはたての新聞に、貴方が載っているのよ!?」
「いや、偶々居合わせただけだなんだが・・・・・・」
「くぅ~こんなスクープを逃すなんて・・・射命丸文、一生の不覚だわ・・・・・・」
文は心底悔しそうに呟いた。
そこに、タイミング悪くはたてがやって来てしまう。
「ジンいる? この前の取材について何だけど――――」
「はたて?」
「あら、文じゃない。こんなところで何しているのよ?」
「それはこちらの台詞よ。貴女こそ、ジンに何の用なの?」
「決まっているじゃない。独占インタビューよ」
「なっ!? 誰の許しを得てそんな事―――」
「誰って、そりゃジンによ」
それを聞いた文は、物凄い形相でジンを睨み付けた。
「どういう事ジン! どうしてそんな約束を!」
「いや・・・特に困る訳でも無いかと・・・・・・」
「私との約束を忘れたの! 独占インタビューを受けるって言っていたのに!」
「え? そうだったけ?」
ジンは思い返すが、その事に関してまったく記憶がなかった。しかし、彼女が言うなら、本当に約束をしたのだろうと、信じてしまう。
しかし、それを黙って見ているはたてではなかった。
「ちょっと! そんな当人が知らない約束なんて無効よ! 嘘言ってるんじゃないわよ!」
「嘘とは人聞きの悪い、私はちゃんと約束したんだから」
両者は一歩も譲らず、火花を散らし合う。
こんな時霊夢がいれば、力業で場を収めてくれるのだが、残念ながら彼女は外出中で神社にいないのである。
ジンは、どうすればいいか悩んでいたが、とうとう矛先が彼に向けられてしまった。
「それなら、どちらにインタビューされたいか、ジンに決めてもらいましょう」
「良いわ! それで白黒つけれるなら!」
「へ?」
すると文とはたては、同時にジンの方を見る。
「ジン!」
「私達の!」
「「どちらのインタビューを受けるの!?」」
この日、ジンは最大のピンチに立たされてしまうのであった。
この後ジンはどうなったのかは気になるところだが、彼なら、このピンチを切り抜けるだろう・・・・・・多分。