因みに自分は、旧作はネット上でしか知らず未プレイで、にわかです。
それでも、あるキャラが好きになり、出してみようと考えました。
博麗神社の境内で、霊夢は何処かへと出かけようとしていた。
「それじゃ行って来るから、留守番お願いね」
「ああ、気をつけてな」
出掛ける霊夢を見送るジン。
今日彼女は、畑を荒らす悪戯妖怪を退治に出掛けたのである。
「さーて、仕事をするか」
こうしていつもの業務が始まるのであった。
霊夢の留守を預かったジンは、妖狐や針妙丸とサニー達と共に参拝客の相手をしていた。
そんな時に、一人の女性が神社にやって来た。
「おや? 見ない間に随分変わったねえ」
女性は興味深く境内を見ていた。
そんな女性に、妖狐は接客を行う。
「いらっしゃませー。何をお求めですか?」
「ん? あんたは・・・・・・」
「はい?」
女性は繁々と妖狐を見ると、何でもないよう振る舞う。
「いや、何でもない。ところで、霊夢はいるかい?」
「霊夢さんは今出掛けています。帰りは夕方頃だと思います」
「そうかい、久々に帰って来たから、顔を見たかったんだが・・・・・・」
「良ければ、言伝てを承りますが?」
「そうして貰うよ。ところでお前さんは?」
「私は霊夢さんの式神の妖狐です」
その言葉に、女性は驚きの声を上げた。
「式神!? あの霊夢が式神を作ったのかい!」
「え、ええ・・・・・・と言っても、術式は別の人が作りましたけど」
「何だ、そういう訳か。まあ、あの子が真面目に式神を作る筈も無いか」
「あの・・・失礼ですけど、霊夢さんとどういう関係ですか?」
「うーん、難しい質問だね。
宿敵でもあるし、保護者的でもある。まあ、腐れ縁みたいなものだね」
女性は何処か楽しげに話した。するとそこに、ジンがやって来た。
「どうした妖狐? トラブルか?」
「あ、いえ、霊夢さんのお知り合いが訪ねて来て―――」
「知り合いか、霊夢なら今いないぞ」
「それは聞いたよ。だから言伝てを頼もうかと思って」
「わかった。ところで御名前は?」
「私かい? 私は―――魅魔だよ」
それは聞いた事の無い名前であった。最も、霊夢は多数の知人がいる為、自分が知らない知人もいるのだろうと、ジンはそう考えた。
「魅魔って言うのか、わかった。霊夢が帰ったら伝えておく」
「そうして貰えると助かる。
ところで、あんたは霊夢とどんな関係だい?」
魅魔は興味津々に聞いて来た。どうやら、この手の類いの話が好きなのだろう。
「どんな関係・・・居候と家主かな?」
「え? あんたここに住んでいるの?」
「まあ、そうだな」
「ジンさんだけじゃ無いですよ。私や針妙丸、近所には光の三妖精のサニー達も住んでいます」
「これはまあ、私がいない間に随分と人があつまったねえ」
「その口振りからすると、魅魔は昔ここにいたのか?」
「そりゃそうだよ。なんたって私は――――博麗神社の神だからねえ」
「「・・・・・・え?」」
魅魔のとんでもない発言を聞いたジンと妖狐は、しばらく口が開いたままであった。
―――――――――――
神社の客間に魅魔を案内したジンは、彼女に御茶を出していた。
「なるほど、魅魔は霊夢の修行時代からの知り合いなのか」
「まあね、今の霊夢はどうだい? 修行を怠けて、妖怪に負けたりはしていないかい?」
「妖怪に負ける霊夢の姿は想像出来ないな・・・どっちかと言うと、情け容赦ない感じだが」
「昔は半人前の癖に、修行嫌いだったから、よく失敗したりしていたんだよ」
「へえ、そうなんだ・・・あの霊夢が」
「幻滅した?」
「いや、むしろ新鮮に思えた」
ジンは魅魔から霊夢の昔話を興味深く聞いた。
すると今度は魅魔の方から、幻想郷の近況について聞いて来た。
「しばらく幻想郷を離れていてな、近況を知りたいんだが」
「知る限りの事を話すよ。先ずは――――」
ジンは魅魔に、ごく最近の出来事を話した。
その中で魅魔は、紅魔館、永遠亭、守矢神社、命蓮寺に大層興味を抱いた。
「私がいない間に、幻想郷は随分と変わったねえ。よし」
すると魅魔は突然立ち上がり、ジンにこう言った。
「早速行ってみるか。ジンと言ったね、案内を頼むよ」
「え? 俺が?」
「私は帰って来たばかりだから、詳しい場所は知らない。そうなると、必然的に案内は必要だろ?」
「そ、それはそうだが――――」
「なら決まり! それじゃ行くよ!」
「へ? あ! ちょ―――」
魅魔は有無言わさず、ジンを連れて飛んで行ってしまう。
客間には、湯呑みだけが残されていた。
―――――――――――
強引に案内に駆り出されたジンは、半ば諦めを感じ、魅魔の案内を引き受ける事にした。
「最初は何処に行くんだい?」
「そうだな、最初は紅魔館にしよう」
「確か、外来の吸血鬼が住んでいる館だね」
二人はまず、霧の湖に建っている紅魔館に向かう事にした。
霧の湖に到着すると、待っていたのはチルノ、大妖精の二人と出会う。
「あ、ジンだー」
「こんにちはジンさん」
「こんにちは、チルノに大。何処に遊びに行くのか?」
「うん! これから皆のところに遊びに行くんだよ! ジンも一緒に来る?」
「今日は先約があるから、また今度な」
「そっかー、それじゃまたねー」
「失礼します」
そう言って、チルノと大妖精は何処かへと飛び去って行った。
「あの妖精と知り合いなのかい?」
「ん? まあな」
「そうか・・・あのチルノって妖精、中々の力を持っているね」
「分かるのか?」
「まあね、でも、力の使い方がまだわかっていないようだが」
「チルノはあまり賢くは無いからな。でも、良い子だぞ」
「そりゃわかるよ。妖精ってのは純粋な存在だからね。それじゃ、気を取り直して館に向かうとするか」
二人は紅魔館に向かって歩き出した。
―――――――――――
紅魔館の門に辿り着いた二人。そこには、いつも通り立って寝ている美鈴の姿があった。
「なんだい? このやる気の無さそうな門番は?」
「美鈴って言うんだ。寝ている事はスルーして欲しい」
「どうするんだい? このまま入るかい?」
「いや、それじゃ不法侵入だ。起こすつもりだ」
そう言って、ジンは美鈴を呼び掛ける。
「おーい! 起きろ美鈴ー!」
「はっ!? 寝てません! 寝てませんよ咲夜さん!」
美鈴は周囲を見回し、咲夜がいない事を確認すると、ホッと胸を撫で下ろす。そして、ジンの姿を確認すると、慌てて取り繕うとした。
「こ、これはジンさん! 本日はどのような御用で?」
「えっと、ちょっと彼女に紅魔館を案内しようと思って」
「彼女・・・そちらの女性ですか?」
「魅魔だよ。よろしく、寝坊助門番さん♪」
「うっ・・・・・・」
悪戯な笑みを浮かべながら、魅魔は美鈴にそう言った。美鈴はその言葉に反論出来ず、言葉を詰まらせる。
「さ、さてはおき、館の案内ですか? いくらジンさんでも、許可無く館内を彷徨かせる訳にはいけません」
「やっぱり、アポ無しは難しいか・・・・・・」
ジンは残念そうに呟く、そんな彼の姿を見た美鈴は、どうにか出来ないかと考え、ある事に思いつく。
「あ、少し待っていただけませんか? 咲夜さんに聞いて来ます」
「門から離れて良いのか? 」
「はい、ジンさんなら勝手に入る事は無いですし。それに、ジンさんみたいな良識のある方を無下に帰すなんて出来ませんし」
「咲夜に怒られないのか?」
「咲夜さんは・・・・・・大丈夫です! 怒られ慣れていますから!」
「そんな開き直らなくても・・・・・・」
「それじゃ行って来ます!」
そう言って、美鈴は館へと入って行った。それからしばらくすると、美鈴が咲夜を連れて戻って来た。
「ジンさん! 許可が降りました!」
「ありがとう美鈴、おかげて助かった」
「いえいえ、ジンさんの為なら、これぐらい御安い御用ですよ」
「そのやる気を、少しでも仕事の方に回して欲しいけど」
「うっ・・・・・・」
「さて、それではジン様、魅魔様、ご案内致します」
仕事モードの咲夜に案内させられ、紅魔館に入って行くジンと魅魔。
案内されたのは、いつも通りの客室であった。
「それでは、お嬢様を御呼び致しますので、しばらく御待ち下さい」
そう言って、咲夜は部屋から出て行った。
それからしばらくして、咲夜はレミリアを連れて戻って来た。
「こんにちはジン。貴方も色々とお節介焼きね」
「こんにちはレミリア、今日はいきなり来て悪かったな」
「別に良いわよ。アポ無しで来る奴等が多いし、寧ろ貴方みたいに礼儀正しく訪れる方が珍しいのよ」
レミリアは溜め息をつきながら呟く。
確かに、言われてみれば殆どの人物が不法侵入をしている。例えば、普通の魔法使いやら、新聞記者の天狗など、彼女達に比べると、ジンは比較的に良識ある人物である。
「それで? そこにいる幽霊が博麗神社の神?」
「幽霊って・・・・・・魅魔が?」
「貴方気づいていなかったの? 彼女は幽霊、しかも悪霊の類いよ」
レミリアにそう言われ、改めて魅魔を見る。すると魅魔は、やや不機嫌そうにレミリアを睨んでいた。
「ほう? 客人をいきなり悪霊扱いとは、館の主にしては礼節がなっていないんじゃないか?」
「あら? 本当の事を言ったでだけど、気に触ったのなら謝るわ」
「本当に生意気な小娘ね」
両者の間に火花が飛び散る。
どうしてこうなったと、ジンは頭を抱えた。
「おい二人共、喧嘩は――――」
その時であった。突然紅魔館が揺れだした。
「地震!?」
「いえ、これは恐らく地下からの衝撃かと」
「地下から? パチュリーが何かやっているのか?」
「いえ、恐らくは図書館に侵入した泥棒を追い払おうとしているのだと思います」
「泥棒・・・魔理沙の奴か」
「ん? 魔理沙の奴が来ているのかい?」
「魅魔は魔理沙とも知り合いなのか?」
「知り合いも何も、私の弟子だよ」
「そうなのか?」
「ああ、これは師匠として、弟子の成長を見なくちゃねえ」
「それでは、地下の図書館にご案内致します」
こうして、魔理沙がいるであろう地下図書館に向か事になった。
―――――――――――
地下図書館に到着すると、既に魔理沙とパチュリーが弾幕勝負をしている最中であった。
「毎度毎度! 本を盗みに来て!」
「盗みに来てはいないって、死ぬまで借りるだけだ」
「それを盗むというのよ!」
毎度恒例となった魔理沙とパチュリーの戦い。
流石のジンも、止めるつもりは無く、傍観に徹する事にした。
「ふーん、あの魔女、中々の実力者だねえ」
「当たり前でしょ、パチェは私の親友なんだから」
レミリアはパチュリーの事を自慢気に言った。
すると対抗するように、魅魔も魔理沙の事を自慢気に言う。
「だけど、魔理沙のパワーには敵わないね。あいつの出力は並の魔法使いの三倍だよ」
「むっ、パチェは七の属性を操るのよ! そこらの魔女と一緒にしないで」
「いくら使える属性が多くても、所詮器用貧乏。魔理沙の敵じゃないよ」
「なんですってー!」
「なんだい? やるか?」
再び火花を散らす魅魔とレミリア、流石にこれ以上は不味いと判断したジンは、二人の口論を止めようとする。
「おい二人共、その辺に――――」
「それならば、弾幕勝負で決着をつければ良いではないでしょうか?」
咲夜はまさに、火に油を注ぐような発言をした。
その言葉に、二人はすっかりやる気になった。
「私は構わないよ。その方がスッキリする」
「そうね、折角だしチーム戦にしましょう。丁度三人ずついるんだし」
「ん? “三人ずつ“?」
ジンは地下図書館にいる人数を数えた。
今戦っている魔理沙とパチュリー、それを観戦している自分、魅魔、レミリア、咲夜、因みに小悪魔は既に避難済みのようでこの場にはいなかった。
「もしかして・・・俺も入るのか?」
「もちろん、あんたは私のチームだよ」
こうしてジンは、流されるまま魅魔チームに入ってしまった。
チーム戦になったという事で、魔理沙とパチュリーの弾幕勝負を一時中断し、事情を二人に話した。
「よーし! 魅魔様の手前、無様な姿はみせられないぜ!」
「はりきっているな魔理沙」
「当然! 帰って来た魅魔様に、私の成長振りを見せるチャンスだからな!」
「期待しているよ魔理沙」
「はい!」
魔理沙はいつも以上にやる気を出していた。
一方、パチュリーは魅魔に対して、かなり警戒をしていた。
「気をつけてレミィ。あの霊、かなりの魔力を持っているわ」
「私が悪霊ごとき遅れるとでも?」
「油断大敵ですよお嬢様」
「わかってる。出し惜しみなしの全力でいくから」
そう言って、レミリアは自身の魔力を解放する。どうやら魅魔に対して、全力でいくつもりのようだ。
「それじゃ始めましょうか悪霊さん? あまり簡単に負けないでよね」
「小賢しい小娘だ。年季の違いを見せてやるよ!」
「いくぜパチュリー! 全力全快でいくからな!」
「ふん! 返り討ちにしてやるわ!」
「取り合えず、御手柔らかにな咲夜」
「ええ、御互いいい勝負にしましょう」
こうして、団体戦による弾幕勝負が始まるのであった。
レミリアチームと魅魔チームによる団体弾幕戦。
結果的に言えば、魅魔チームの勝利であった。
魔理沙とパチュリーは相討ちとなり、ジンは咲夜を足止め、その間に魅魔はレミリアに打ち勝ち、その後二対一になり咲夜は敗北したのだ。
「よし! 私の勝ちだね」
「う~、こんな筈じゃ・・・・・・」
「まさか魔理沙があそこまでやるなんて・・・・・・」
「お見事でした。今回はこちらの完敗ですね」
「いや、ギリギリだった。魅魔が来てくれなきゃ、咲夜には負けてたよ」
(ついでに、手心を加えていなかったら魅魔が来る前にやられていたな)
魅魔は大層満足している一方、魔理沙は何故か落ち込んでいた。
「ううっ・・・・・・せっかく魅魔様がいるのに、相討ちで終わってしまった。情けないぜ・・・・・・」
「そんな事無いさ。十分強くなったね魔理沙」
魅魔はそう言って、魔理沙の頭を優しく撫でた。
魔理沙はやや恥ずかしそうで、何処か嬉しそうに笑った。
本作での東方旧作の立ち位置は、霊夢の修業時代の話しとしています。
単独で飛行出来ない辺り、何となく未熟な感じがしたので、この設定にしました。