あと一話の後、漫画関連の話しを中心になるかもしれません。
妖怪の山にある天狗の里。そこにある酒場で、文と楓は何やら話をしていた。
「つまり、宝探しをしている間、私に不正を働けと?」
「不正とは心外ね、ただ目を瞑って欲しいとお願いしているのよ」
「それを不正って言うのよ。もしバレたら、私はただでは済まないのよ?」
「バレなきゃ良いのよ」
「はあ・・・貴女のその考えは、ある意味尊敬するわ」
「いや~それほどでも♪」
「褒めていないわよ。まったく・・・・・・」
そう言って、楓はグラスに入った焼酎を飲む。
飲み干しと、文に向けて返事をする。
「良いわよ。一度だけ、警備を緩めて上げるわ」
「流石♪ 持ちべきは友ね♪」
「ただし、それなりに危ない橋を渡るんだから、分け前はそれなりに貰うわよ」
「もちろん、それで良いわ。それじゃ、成功を祝って―――」
文は楓のグラスに焼酎を注ぎ、自分のグラスを掲げる。
「乾杯といきましょう」
「そうね、それじゃ―――」
「「乾杯」」
二人はグラスを当て、宝探しの成功を祈るであった。
―――――――――――
それから数日後。一同は妖怪山の麓に集まっていた。
メンバーはジン、霊夢、魔理沙、妖狐、サニー、ルナ、スター、針妙丸、小鈴、マミゾウ、文の十一人である。
「さて、それでは皆さん、宝探しに出発しますよー、準備は良いですかー?」
「文センセー」
「なんでしょう魔理沙くん?」
「妖狐とマミゾウが喧嘩していまーす」
「え? いきなりですか?」
魔理沙が指した方を見てみると、妖狐とマミゾウが火花を散らしていた。
「何で狸ハバアがこんなところにいるんですか? お呼びじゃないですよ?」
「若輩狐が、口の聞き方がなっとならんのう。少しは目上を敬え」
「貴女に敬うぐらいなら、祟り神を敬った方がマシです」
「本当に口だけは達者じゃのう。満足に人に化けれん、半人前の癖に」
「ムッキー! 密かに気にしている事を!」
二人の口論がエスカレートしていく。その様子を見かねかジンは、二人の間に入った。
「はいそこまで、二人とも喧嘩しない」
「ジンさんは黙っていて下さい! これは私と狸ハバアの――――」
「シャラップ!」
ジンは叫びながら、妖狐の頭を叩いた。妖狐は叩かれた頭を擦りながら、ジンに抗議をする。
「いったーい! 何で叩くんですか!」
「お前がしつこくマミゾウに絡むからだろうが、少しは慎め」
「はーい・・・・・・」
「マミゾウも、あまり妖狐の挑発に乗らないでくれ、年長者なんだから」
「いや、すまんのう・・・・・・」
「良いか、俺達はチームなんだ。いがみ合いなんてしていると、見つけられる物も見つけられ無いぞ」
「わかりました・・・・・・」
「うむ、以後気をつけよう」
こうしてジンは、二人をなだめる事に成功したのであった。
その様子を見ていた小鈴は、素直に感心していた。
「妖狐さんだけじゃなくて、マミゾウさんまでなだめるなんて・・・・・・」
「仲介はジンの専売特許だからな。もっとも、話を聞かない奴には無意味だがな」
「幻想郷では、話を聞かない方々の方が多いですから。まあ、その為に霊夢さんがいるんですけどね」
「それってどういう意味ですか?」
「霊夢の場合、相手の話を聞かずに退治するからな」
「まさに、サーチアンドデストロイですね」
「ほほう、そんなに退治されたいのなら、お望み通り退治してあげるわよ!」
話を聞いていた霊夢は、お払い棒と札を取り出し、臨戦体勢に入る。
それを見たジンは、慌てて霊夢を止めようとする。
「ちょっと落ち着け霊夢! 本当の事を言われたからって、怒るんじゃ―――」
「うるさーい!」
霊夢は怒りの矛先をジンに向け、彼に夢想封印を叩き込むのであった。
―――――――――――
「皆さーん、はぐれないようについて来て下さいねー」
文はそう言いながら、一行の先頭を歩いていた。
今歩いている場所は、妖怪山の中腹辺りで、いつもなら白狼天狗が警告しにやって来るのだが、その様子がまったくなかった。
「それにしても、よく許可が貰えたな」
「まあこう見えても、色々コネがありますから。
それよりもジンさん、霊夢さんの夢想封印を喰らって、よく無事でしたね」
「霊夢が手加減してくれたおかげだ。本気だったら、即永遠亭送りだ」
「それだけでは無いような気もしますが・・・・・・」
「他にも、華仙の修行を受けているからな、体が丈夫になったんだろう」
「はあ・・・華仙さんですか」
「文も会った事あるんじゃないか? 山に住んでいるだし」
「ええ、まあ・・・」
文は何処が歯切れ悪そうであった。何か事情があると考えたジンは、これ以上この話に触れない事した。
しばらく歩いていると、後ろの方から声がした。
「まっ、待ってくださ~い・・・・・・」
「もう、遅いわよ小鈴」
「早くしないと日が暮れちゃうわよ」
「早く早く」
サニー達に急かされながら、ヘトヘトに歩いている小鈴の姿があった。
ジンは心配になり、小鈴の側に歩み寄った。
「大丈夫か小鈴?」
「はい、なんとか・・・・・・」
「あんまり無理はしない方が良いぞ、なんならおんぶするか?」
「い、いえ! 私は全然平気です! さあ! 先に行きましょう!」
そう言って、小鈴はそそくさと先に行ってしまう。
ジンは心配に思いながらも、その後を追おうとしたその時――――。
「のわぁ!?」
突然背中やらに重みを感じる。見てみると、サニーが背中に乗っていた。
「お、おいお前―――」
「歩くの疲れたー、おぶってよジン」
「サニーだけずるい! 私もおぶってー」
「わ、私もー」
続いてスターとルナが、ジンにねだって来た。ジンはやれやれと苦笑した。
「仕方無いな、しっかりと捕まっていろよ」
「「「やったー♪」」」
ジンは三人をおぶりながら、歩き出すのであった。そんな様子を見ていたマミゾウと妖狐と針妙丸は―――。
「むう~、私もおぶって欲しいな・・・・・・」
「止めておけ、既に店員オーバーじゃろう」
「それなら、小槌で小さくなる? それならジンのポケットに入れるよ」
「おおー、ナイスアイディアです。それでは早速―――」
「これ、無闇矢鱈に小槌を使うでない。幽閉されてしまうぞい」
「そ、それは嫌だな・・・辞めておこう」
「そんな事よりも、子狐の姿になった方が良いのではないのか?」
「その手がありました!
狸ハバアの案に乗るのは癪ですが」
そう言って、妖狐は狐の姿になり、ジンの元へ駆け寄った。
その様子を見ていた針妙丸は、何処か羨ましそうに見ていた。
「御主も行ったらどうじゃ?」
「え? で、でも・・・・・・」
「子供が遠慮する事はなかろう。なんなら、儂がおぶるぞ?」
「だ、大丈夫! こう見えても旅慣れているから!」
そう言って、針妙丸は先へと行ってしまった。
「やれやれ、素直に甘えておれば良いものを・・・難しい年頃じゃろうか?」
そう呟きながら、針妙丸の後を追うマミゾウであった。
―――――――――――
その後一行は、やや開けた場所で休憩をとっていた。
そんな中、地図を見て神妙な顔をしている文の姿があった。
「おかしいですね・・・確かにこの近くの筈ですが・・・・・・」
「何がおかしいんだ?」
するとジンが、文に対して聞いて来た。文は、ジンに地図を見せながら、説明をし始めた。
「それがですね、目印となる大ケヤキが見当たらないですよ。地図上だと、この近くにあるんですが・・・・・・」
「どれどれ・・・確かに、この辺の筈だが――――」
「「「キャアー!!」」」
「悲鳴!?」
「行って見ましょう!」
二人は急いで、悲鳴が上がった場所へと向かう。
するとそこには、尻餅ついている小鈴とそこから少し離れた場所に霊夢達が居た。しかし、彼女達は迂闊に動けずにいた。何故なら、小鈴の目の前には大きな虎がいた。
「な、何でこんな所に虎が―――」
「そんなのは後よ、早くこっちに注意を引かないと」
「気をつけるのじゃよ皆の集、虎は龍と並ぶ生き物じゃ、舐めて掛かると痛い目に合うぞ」
「分かってるって、それじゃ――――ジン!?」
魔理沙は驚きの声を上げる。何故なら、ジンが不用心に虎に近づいていたからである。
「ちょ、ちょっと! 危ないわよ!」
「いや、大丈夫だ」
そう言って、ジンは虎の頭を撫でていた。虎は襲うどころか、気持ち良さそうに撫でられていた。
「こ、これは・・・・・・?」
「すっごーい! 虎を手懐けた!」
「いや、手懐けたっていうか、華仙の虎なんだ」
「華仙の?」
「ああ、何でも不審者を追い返す為に、放し飼いをしているらしい」
「物騒な事をしているのね、人が襲われたらどうするのかしら?」
「華仙の話によると、手を出さなければ襲っては来ないらしい。それに、一般人ならこんな所に来ないだろう?」
「それは言えているわね」
「って事は、華仙の邸がこの近くにあるって事だろ? それなら寄って行こうぜ」
「そうですね、こんな所よりもキチンと休めそうですし」
「「「さんせーい!」」」
「おいおい、こんな大人数で来たら迷惑だろう」
「そ、そうですよ、相手の都合にだってありますし・・・」
魔理沙の案に、ジンと文は賛成しかねていた。そこにマミゾウが、二人を説得をし始める。
「そうは言っても、こんな所では、妖類いに教われるかも知れん。それなら、件の仙人の邸の方が安心して休めるじゃろう」
「それはそうだが・・・・・・」
「なんなら、そこの虎に聞いてみれば良いではないか。意志の疏通が出来るんじゃろう?」
マミゾウに言われ、ジンは虎の方を向き、華仙の邸に行っていいかと尋ねる。
「・・・・・・華仙の邸に行っていいか?」
すると虎は静かに頷き、華仙の邸に案内するかのように歩き出した。
「良いみたいだ」
「そうか、それでは早速―――小鈴殿?」
一行が虎の後を追おうとしている一方、小鈴は未だに地べたに座っていた。
「どうしたの小鈴ちゃん?」
霊夢が心配そうに尋ねると、小鈴は少し恥ずかしそうに呟く。
「こ、腰が抜けて立てません・・・・・・」
「ま、まあ仕方無いないのう。いきなり虎に出くわしたんじゃ。腰だって抜けるもんじゃ」
「す、すみません・・・・・・」
「ほら、立てるか?」
ジンは手を差し出し、小鈴を引っ張り上げる。
「あ、ありがとうございます」
「歩けるか?」
「は、はい、それぐらいは大丈夫です」
「それじゃ行こう。華仙の邸なら、ゆっくり休める筈だ」
こうしてジン達は、華仙の邸にお邪魔する事にした。
―――――――――――
邸に到着した一行は、客室でこれまでの経緯を華仙に説明をしていた。
「なるほど、それでこっちに来た訳ね」
「いきなり来て悪かったな、しかもこんな大人数で」
「別に構わないわ。それよりも、貴方達が探している大ケヤキだけど―――」
「何か知っているですか?」
「知っているも何も、うちの庭にあるわよ」
「でかした! それじゃ早速―――」
「ちょっと待てお前ら」
霊夢、魔理沙、妖狐の三人は立ち上がり、早速ケヤキの木に向かおうとした所をジンに制止させられる
「何よ?」
「どうした? 宝は目の前なんだぞ」
「ここは華仙の所有地なんだぞ。持ち主に無断で掘り起こすのは良くない」
「確かにのう、もの事には節度があるものじゃ。下手な行動して、所有主を怒らせたら、それこそ一大事じゃよ」
「「「うっ・・・」」」
ジンとマミゾウの言葉に、三人はおずおずと座り直した。
そして改めてジンは、掘り起こす許可を華仙から求めた。
「華仙、悪いんだが、ケヤキの木を調べさせてくれないか?」
「別に良いけど・・・・・・そんな大層な物があるのかしら?」
「それは調べてみれば分かる」
こうして、華仙の許可を貰った一行は、大ケヤキの所に向かった。
大ケヤキに到着すると、早速根本を掘り起こしてみる。すると、中から大きめの箱が出て来た。
「来た来た来た♪」
「まさか、本当にあるなんて・・・・・・」
「だけど、鍵が掛かっていますよ?」
「面倒だから、ぶっ壊しちまえ」
「そんな乱暴な―――」
小鈴が言い終わる前に、魔理沙は箱の鍵を壊し、中身を開けた。
「さーて、ご開帳―――」
魔理沙が箱の中身を見ると、言葉が詰まってしまった。何故なら、中身は金銀財産では無く。古びた置物の類いが入っていたからである。
「なんだこれ?」
「どうやら、これが宝らしいのう」
「えー、これが?」
「何かしょぼいね」
「想像していたのと違うわね」
「いやいや、見た目で判断してはならぬ。こういう物は、骨董としての価値がある場合もあるのじゃ」
「つまり、鑑定してみなければ分からないって事ですか?」
「そうじゃな、これが宝かガラクタかは、鑑定してからのお楽しみじゃ」
「こんな事なら、霖之助さんを連れて来れば良かった」
「まあまあ、目当ての物は見つかったんですし、記念撮影しませんか?」
「記念撮影って・・・それ新聞用にするつもりでしょ」
「あはは、バレちゃいましたか」
「良いじゃないか、記念になるんだし。華仙も一緒にどうだ?」
「え? 私は何もしていないわよ」
「細かい事は良いから」
「ちょ、ちょっと」
華仙は、ジンに強引に引っ張られ、箱の所に連れて来られる。他の皆も、箱を中心に集まって来た。
「それじゃ撮りますよー。はい、チーズ」
文はカメラのシャッターを切った。
―――――――――――
それから数日後。天狗の里の酒場で、文は事の顛末を楓に話していた。
「それで? その置物は宝だったの?」
「いや~それがね、それなりの価値はあったんだけど・・・・・・」
「何よ、勿体ぶらずに話なさいよ」
「実は――――」
文は話始める。
掘り起こした置物を霖之助に鑑定して貰うと、かなりの価値があったのだが、破損があった為、価値が下がってしまっていた。
因みに、原因は無理矢理抉じ開けた事による物だった。
「何よ、それじゃ文しか得していないじゃない。あ~あ、がっかりだわ」
「まあまあ、今回は私が奢るから、機嫌直して」
「それじゃ、一番高い酒を――――」
「ちょ、ちょっと! いくらなんでもそれは――――」
「良いスクープを撮れたんでしょ? だったら良いじゃない」
「それとこれとは話が別よ!」
楓は高級酒を頼もうとして、文はそれを必死に止めようとしていた。そんな彼女達のテーブルの上には、あの時の記念写真が一枚置かれていた。