東方軌跡録   作:1103

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もう・・・書く話が殆ど思いつきません。
あと一話の後、漫画関連の話しを中心になるかもしれません。


宝の行方 後編

妖怪の山にある天狗の里。そこにある酒場で、文と楓は何やら話をしていた。

 

「つまり、宝探しをしている間、私に不正を働けと?」

 

「不正とは心外ね、ただ目を瞑って欲しいとお願いしているのよ」

 

「それを不正って言うのよ。もしバレたら、私はただでは済まないのよ?」

 

「バレなきゃ良いのよ」

 

「はあ・・・貴女のその考えは、ある意味尊敬するわ」

 

「いや~それほどでも♪」

 

「褒めていないわよ。まったく・・・・・・」

 

そう言って、楓はグラスに入った焼酎を飲む。

飲み干しと、文に向けて返事をする。

 

「良いわよ。一度だけ、警備を緩めて上げるわ」

 

「流石♪ 持ちべきは友ね♪」

 

「ただし、それなりに危ない橋を渡るんだから、分け前はそれなりに貰うわよ」

 

「もちろん、それで良いわ。それじゃ、成功を祝って―――」

 

文は楓のグラスに焼酎を注ぎ、自分のグラスを掲げる。

 

「乾杯といきましょう」

 

「そうね、それじゃ―――」

 

「「乾杯」」

 

二人はグラスを当て、宝探しの成功を祈るであった。

 

―――――――――――

 

それから数日後。一同は妖怪山の麓に集まっていた。

メンバーはジン、霊夢、魔理沙、妖狐、サニー、ルナ、スター、針妙丸、小鈴、マミゾウ、文の十一人である。

 

「さて、それでは皆さん、宝探しに出発しますよー、準備は良いですかー?」

 

「文センセー」

 

「なんでしょう魔理沙くん?」

 

「妖狐とマミゾウが喧嘩していまーす」

 

「え? いきなりですか?」

 

魔理沙が指した方を見てみると、妖狐とマミゾウが火花を散らしていた。

 

「何で狸ハバアがこんなところにいるんですか? お呼びじゃないですよ?」

 

「若輩狐が、口の聞き方がなっとならんのう。少しは目上を敬え」

 

「貴女に敬うぐらいなら、祟り神を敬った方がマシです」

 

「本当に口だけは達者じゃのう。満足に人に化けれん、半人前の癖に」

 

「ムッキー! 密かに気にしている事を!」

 

二人の口論がエスカレートしていく。その様子を見かねかジンは、二人の間に入った。

 

「はいそこまで、二人とも喧嘩しない」

 

「ジンさんは黙っていて下さい! これは私と狸ハバアの――――」

 

「シャラップ!」

 

ジンは叫びながら、妖狐の頭を叩いた。妖狐は叩かれた頭を擦りながら、ジンに抗議をする。

 

「いったーい! 何で叩くんですか!」

 

「お前がしつこくマミゾウに絡むからだろうが、少しは慎め」

 

「はーい・・・・・・」

 

「マミゾウも、あまり妖狐の挑発に乗らないでくれ、年長者なんだから」

 

「いや、すまんのう・・・・・・」

 

「良いか、俺達はチームなんだ。いがみ合いなんてしていると、見つけられる物も見つけられ無いぞ」

 

「わかりました・・・・・・」

 

「うむ、以後気をつけよう」

 

こうしてジンは、二人をなだめる事に成功したのであった。

その様子を見ていた小鈴は、素直に感心していた。

 

「妖狐さんだけじゃなくて、マミゾウさんまでなだめるなんて・・・・・・」

 

「仲介はジンの専売特許だからな。もっとも、話を聞かない奴には無意味だがな」

 

「幻想郷では、話を聞かない方々の方が多いですから。まあ、その為に霊夢さんがいるんですけどね」

 

「それってどういう意味ですか?」

 

「霊夢の場合、相手の話を聞かずに退治するからな」

 

「まさに、サーチアンドデストロイですね」

 

「ほほう、そんなに退治されたいのなら、お望み通り退治してあげるわよ!」

 

話を聞いていた霊夢は、お払い棒と札を取り出し、臨戦体勢に入る。

それを見たジンは、慌てて霊夢を止めようとする。

 

「ちょっと落ち着け霊夢! 本当の事を言われたからって、怒るんじゃ―――」

「うるさーい!」

 

霊夢は怒りの矛先をジンに向け、彼に夢想封印を叩き込むのであった。

 

―――――――――――

 

「皆さーん、はぐれないようについて来て下さいねー」

 

文はそう言いながら、一行の先頭を歩いていた。

今歩いている場所は、妖怪山の中腹辺りで、いつもなら白狼天狗が警告しにやって来るのだが、その様子がまったくなかった。

 

「それにしても、よく許可が貰えたな」

 

「まあこう見えても、色々コネがありますから。

それよりもジンさん、霊夢さんの夢想封印を喰らって、よく無事でしたね」

 

「霊夢が手加減してくれたおかげだ。本気だったら、即永遠亭送りだ」

 

「それだけでは無いような気もしますが・・・・・・」

 

「他にも、華仙の修行を受けているからな、体が丈夫になったんだろう」

 

「はあ・・・華仙さんですか」

 

「文も会った事あるんじゃないか? 山に住んでいるだし」

 

「ええ、まあ・・・」

 

文は何処が歯切れ悪そうであった。何か事情があると考えたジンは、これ以上この話に触れない事した。

しばらく歩いていると、後ろの方から声がした。

 

「まっ、待ってくださ~い・・・・・・」

 

「もう、遅いわよ小鈴」

 

「早くしないと日が暮れちゃうわよ」

 

「早く早く」

 

サニー達に急かされながら、ヘトヘトに歩いている小鈴の姿があった。

ジンは心配になり、小鈴の側に歩み寄った。

 

「大丈夫か小鈴?」

 

「はい、なんとか・・・・・・」

 

「あんまり無理はしない方が良いぞ、なんならおんぶするか?」

 

「い、いえ! 私は全然平気です! さあ! 先に行きましょう!」

 

そう言って、小鈴はそそくさと先に行ってしまう。

ジンは心配に思いながらも、その後を追おうとしたその時――――。

 

「のわぁ!?」

 

突然背中やらに重みを感じる。見てみると、サニーが背中に乗っていた。

 

「お、おいお前―――」

 

「歩くの疲れたー、おぶってよジン」

 

「サニーだけずるい! 私もおぶってー」

 

「わ、私もー」

 

続いてスターとルナが、ジンにねだって来た。ジンはやれやれと苦笑した。

 

「仕方無いな、しっかりと捕まっていろよ」

 

「「「やったー♪」」」

 

ジンは三人をおぶりながら、歩き出すのであった。そんな様子を見ていたマミゾウと妖狐と針妙丸は―――。

 

「むう~、私もおぶって欲しいな・・・・・・」

 

「止めておけ、既に店員オーバーじゃろう」

 

「それなら、小槌で小さくなる? それならジンのポケットに入れるよ」

 

「おおー、ナイスアイディアです。それでは早速―――」

 

「これ、無闇矢鱈に小槌を使うでない。幽閉されてしまうぞい」

 

 

「そ、それは嫌だな・・・辞めておこう」

 

「そんな事よりも、子狐の姿になった方が良いのではないのか?」

 

「その手がありました!

狸ハバアの案に乗るのは癪ですが」

 

そう言って、妖狐は狐の姿になり、ジンの元へ駆け寄った。

その様子を見ていた針妙丸は、何処か羨ましそうに見ていた。

 

「御主も行ったらどうじゃ?」

 

「え? で、でも・・・・・・」

 

「子供が遠慮する事はなかろう。なんなら、儂がおぶるぞ?」

 

「だ、大丈夫! こう見えても旅慣れているから!」

 

そう言って、針妙丸は先へと行ってしまった。

 

「やれやれ、素直に甘えておれば良いものを・・・難しい年頃じゃろうか?」

 

そう呟きながら、針妙丸の後を追うマミゾウであった。

 

―――――――――――

 

その後一行は、やや開けた場所で休憩をとっていた。

そんな中、地図を見て神妙な顔をしている文の姿があった。

 

「おかしいですね・・・確かにこの近くの筈ですが・・・・・・」

 

「何がおかしいんだ?」

 

するとジンが、文に対して聞いて来た。文は、ジンに地図を見せながら、説明をし始めた。

 

「それがですね、目印となる大ケヤキが見当たらないですよ。地図上だと、この近くにあるんですが・・・・・・」

 

「どれどれ・・・確かに、この辺の筈だが――――」

 

「「「キャアー!!」」」

 

「悲鳴!?」

 

「行って見ましょう!」

 

二人は急いで、悲鳴が上がった場所へと向かう。

するとそこには、尻餅ついている小鈴とそこから少し離れた場所に霊夢達が居た。しかし、彼女達は迂闊に動けずにいた。何故なら、小鈴の目の前には大きな虎がいた。

 

「な、何でこんな所に虎が―――」

 

「そんなのは後よ、早くこっちに注意を引かないと」

 

「気をつけるのじゃよ皆の集、虎は龍と並ぶ生き物じゃ、舐めて掛かると痛い目に合うぞ」

 

「分かってるって、それじゃ――――ジン!?」

 

魔理沙は驚きの声を上げる。何故なら、ジンが不用心に虎に近づいていたからである。

 

「ちょ、ちょっと! 危ないわよ!」

 

「いや、大丈夫だ」

 

そう言って、ジンは虎の頭を撫でていた。虎は襲うどころか、気持ち良さそうに撫でられていた。

 

「こ、これは・・・・・・?」

 

「すっごーい! 虎を手懐けた!」

 

「いや、手懐けたっていうか、華仙の虎なんだ」

 

「華仙の?」

 

「ああ、何でも不審者を追い返す為に、放し飼いをしているらしい」

 

「物騒な事をしているのね、人が襲われたらどうするのかしら?」

 

「華仙の話によると、手を出さなければ襲っては来ないらしい。それに、一般人ならこんな所に来ないだろう?」

 

「それは言えているわね」

 

「って事は、華仙の邸がこの近くにあるって事だろ? それなら寄って行こうぜ」

 

「そうですね、こんな所よりもキチンと休めそうですし」

 

「「「さんせーい!」」」

 

「おいおい、こんな大人数で来たら迷惑だろう」

 

「そ、そうですよ、相手の都合にだってありますし・・・」

 

魔理沙の案に、ジンと文は賛成しかねていた。そこにマミゾウが、二人を説得をし始める。

 

「そうは言っても、こんな所では、妖類いに教われるかも知れん。それなら、件の仙人の邸の方が安心して休めるじゃろう」

 

「それはそうだが・・・・・・」

 

「なんなら、そこの虎に聞いてみれば良いではないか。意志の疏通が出来るんじゃろう?」

 

マミゾウに言われ、ジンは虎の方を向き、華仙の邸に行っていいかと尋ねる。

 

「・・・・・・華仙の邸に行っていいか?」

 

すると虎は静かに頷き、華仙の邸に案内するかのように歩き出した。

 

「良いみたいだ」

 

「そうか、それでは早速―――小鈴殿?」

 

一行が虎の後を追おうとしている一方、小鈴は未だに地べたに座っていた。

 

「どうしたの小鈴ちゃん?」

 

霊夢が心配そうに尋ねると、小鈴は少し恥ずかしそうに呟く。

 

「こ、腰が抜けて立てません・・・・・・」

 

「ま、まあ仕方無いないのう。いきなり虎に出くわしたんじゃ。腰だって抜けるもんじゃ」

 

「す、すみません・・・・・・」

 

「ほら、立てるか?」

 

ジンは手を差し出し、小鈴を引っ張り上げる。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「歩けるか?」

 

「は、はい、それぐらいは大丈夫です」

 

「それじゃ行こう。華仙の邸なら、ゆっくり休める筈だ」

 

こうしてジン達は、華仙の邸にお邪魔する事にした。

 

―――――――――――

 

邸に到着した一行は、客室でこれまでの経緯を華仙に説明をしていた。

 

「なるほど、それでこっちに来た訳ね」

 

「いきなり来て悪かったな、しかもこんな大人数で」

 

「別に構わないわ。それよりも、貴方達が探している大ケヤキだけど―――」

 

「何か知っているですか?」

 

「知っているも何も、うちの庭にあるわよ」

 

「でかした! それじゃ早速―――」

 

「ちょっと待てお前ら」

 

霊夢、魔理沙、妖狐の三人は立ち上がり、早速ケヤキの木に向かおうとした所をジンに制止させられる

 

「何よ?」

 

「どうした? 宝は目の前なんだぞ」

 

「ここは華仙の所有地なんだぞ。持ち主に無断で掘り起こすのは良くない」

 

「確かにのう、もの事には節度があるものじゃ。下手な行動して、所有主を怒らせたら、それこそ一大事じゃよ」

 

「「「うっ・・・」」」

 

ジンとマミゾウの言葉に、三人はおずおずと座り直した。

そして改めてジンは、掘り起こす許可を華仙から求めた。

 

「華仙、悪いんだが、ケヤキの木を調べさせてくれないか?」

 

「別に良いけど・・・・・・そんな大層な物があるのかしら?」

 

「それは調べてみれば分かる」

 

こうして、華仙の許可を貰った一行は、大ケヤキの所に向かった。

 

 

大ケヤキに到着すると、早速根本を掘り起こしてみる。すると、中から大きめの箱が出て来た。

 

「来た来た来た♪」

 

「まさか、本当にあるなんて・・・・・・」

 

「だけど、鍵が掛かっていますよ?」

 

「面倒だから、ぶっ壊しちまえ」

 

「そんな乱暴な―――」

 

小鈴が言い終わる前に、魔理沙は箱の鍵を壊し、中身を開けた。

 

「さーて、ご開帳―――」

 

魔理沙が箱の中身を見ると、言葉が詰まってしまった。何故なら、中身は金銀財産では無く。古びた置物の類いが入っていたからである。

 

「なんだこれ?」

 

「どうやら、これが宝らしいのう」

 

「えー、これが?」

 

「何かしょぼいね」

 

「想像していたのと違うわね」

 

「いやいや、見た目で判断してはならぬ。こういう物は、骨董としての価値がある場合もあるのじゃ」

 

「つまり、鑑定してみなければ分からないって事ですか?」

 

「そうじゃな、これが宝かガラクタかは、鑑定してからのお楽しみじゃ」

 

「こんな事なら、霖之助さんを連れて来れば良かった」

 

「まあまあ、目当ての物は見つかったんですし、記念撮影しませんか?」

 

「記念撮影って・・・それ新聞用にするつもりでしょ」

 

「あはは、バレちゃいましたか」

 

「良いじゃないか、記念になるんだし。華仙も一緒にどうだ?」

 

「え? 私は何もしていないわよ」

 

「細かい事は良いから」

 

「ちょ、ちょっと」

 

華仙は、ジンに強引に引っ張られ、箱の所に連れて来られる。他の皆も、箱を中心に集まって来た。

 

「それじゃ撮りますよー。はい、チーズ」

 

文はカメラのシャッターを切った。

 

―――――――――――

 

それから数日後。天狗の里の酒場で、文は事の顛末を楓に話していた。

 

「それで? その置物は宝だったの?」

 

「いや~それがね、それなりの価値はあったんだけど・・・・・・」

 

「何よ、勿体ぶらずに話なさいよ」

 

「実は――――」

 

文は話始める。

掘り起こした置物を霖之助に鑑定して貰うと、かなりの価値があったのだが、破損があった為、価値が下がってしまっていた。

因みに、原因は無理矢理抉じ開けた事による物だった。

 

「何よ、それじゃ文しか得していないじゃない。あ~あ、がっかりだわ」

 

「まあまあ、今回は私が奢るから、機嫌直して」

 

「それじゃ、一番高い酒を――――」

 

「ちょ、ちょっと! いくらなんでもそれは――――」

 

「良いスクープを撮れたんでしょ? だったら良いじゃない」

 

「それとこれとは話が別よ!」

 

楓は高級酒を頼もうとして、文はそれを必死に止めようとしていた。そんな彼女達のテーブルの上には、あの時の記念写真が一枚置かれていた。


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