東方軌跡録   作:1103

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今回は宝探しの話しです。よく分からない説明文がありますが、スルーしてください。
それと最近思ったのですが、文章で表現するのは中々難しいものです。


宝の行方 前編

鈴奈庵の自宅にある小鈴の部屋で、ジンは彼女に英語を教えていた。

 

「そこは助動詞を―――」

 

「えっと・・・こうですか?」

 

「ああ、それで良い。小鈴は物覚えが良いな」

 

「いや~、それほどでも~」

 

「謙遜するな。これなら問題なく、パチュリーと通文出来るな」

 

あの魔法辞典の一件以降、パチュリーと小鈴は定期的に、手紙のやり取りをしていた。しかし、そこである問題が生じていた。それは字の違いである。

幻想郷では、紫が言葉の境界を弄っているおかげで、どんな言語でも通じるようになってはいるが、文字はそうはいかなった。パチュリーは英語、小鈴は日本語の文字しか書けなかった。

幸いにも、小鈴は能力で英文は読めるのだが、書くとなると、英語に疎い彼女では、一文書くだけでも大変であった。

そこで、それなりに英語を教養しているジンに教えてもらっているのである。

 

「ありがとうございますジンさん。これで苦労せずに済みます」

 

「これぐらい御安い御用だ。他に困った事があれば、力になるぞ」

 

「困った事・・・そう言えば」

 

「ん? 何かあるのか?」

 

「困った事では無いんですけど、気になる物があるんです」

 

そう言って、小鈴は一本の古びた巻物を取り出した。

 

「それは?」

 

「たまたま書庫を整理してたら、出てきたんですが・・・内容がさっぱりなんです」

 

「小鈴の能力でも、内容が分からないのか?」

 

「はい、文字は読めるのですが・・・・・・」

 

「ふむ・・・」

 

ジンは巻物を拡げてみる。そこには日本語で書かれているが、何処をどう読んでも、文章にはならなかった。

 

「何だこれは? 悪戯書きか?」

 

「私も最初はそう思ったんですけど、立派な木箱に入れられていたんです」

 

そう言って、小鈴は巻物が入っていた木箱をジンに見せた。

それは素人が見ても分かるほど、立派な木箱であった。

 

「確かに、悪戯書きを入れるにしては立派だな」

 

「はい。残念ながら、題名は掠れて消えてますけど」

 

「うーん、そうだな・・・・・・」

 

ジンはどうしたものかと考え、やがて一つの案を思い浮かぶ。

 

「そうだ、霖之助に鑑定してもらおう。何か分かるかも知れない」

 

「霖之助って・・・香霖堂の霖之助さんの事ですか?」

 

「ん? 小鈴は霖之助の事を知っているのか?」

 

「はい、あそこで外来本を仕入れたりしているので」

 

「なるほど、それなら納得だ。早速行ってみよう」

 

二人は、巻物の正体を知るべく、香霖堂に向かうのであった。

 

―――――――――――

 

香霖堂に着いた二人は中に入ると、店主の霖之助と遊びに来ていた魔理沙の姿があった。

 

「いらっしゃい。おや? ジンに、小鈴ちゃんじゃないか」

 

「珍しい組み合わせだな」

 

「こんにちは霖之助さん、魔理沙さん。

今日は、霖之助さんに鑑定をお願いしに来ました」

 

小鈴は巻物を霖之助に見せる。すると魔理沙が、興味津々で近づく。

 

「ん? なんだなんだ?」

 

「小鈴の所にあった巻物だ。どんな物か、霖之助に鑑定して貰おうと思って」

 

「ん? それなら僕より、彼女の能力が適任じゃないのかな?」

 

「普通の巻物なら、そうなんでしょうが・・・・・・」

 

「ふむ、どうやら曰く付きらしいね。わかった、鑑定してみよう」

 

そう言って、小鈴から巻物を受け取り、能力で鑑定をし始める。すると霖之助の表情が変わった。

 

「これは・・・・・・宝の隠し場所を記した物らしい」

 

「「「宝!?」」」

 

霖之助の言葉に、三人は声を上げて驚いた。

 

「香霖! 宝は一体何処にあるんだ!?」

 

「落ち着いてくれ魔理沙。

恐らくこの巻物に書かれてある暗号を解かない限り、わからないよ」

 

「解けないのか?」

 

「残念だけど、僕の能力じゃ、これが宝を記した巻物という事しか分からないよ」

 

「それじゃジンは?」

 

「うーん、やってみないと何とも言えないが・・・・・・」

 

「よーし、暗号の解読は任せた! 解いたら教えろよ! 絶対だぞ!」

 

「お、おい!」

 

魔理沙は巻物をジンに押しつけ、そのまま帰って行ってしまった。

途方にくれたジンを見て、霖之助はどうするか訪ねる。

 

「それで、君はどうするんだい?」

 

「どうするって言われてもな・・・正直、あんまり乗り気が――――」

 

「そんな事言わずにやりましょうよ! 私も手伝いますから!」

 

小鈴はジンの両手を掴み、力強く言った。

ジンは小鈴の意気込みに負け、結局暗号の解読を受け持つ事になってしまった。

 

―――――――――――

 

その夜。毎度同じ様に、今日の出来事を霊夢達に話していた。

 

「え!? お宝の地図!?」

 

「正確には、宝を記した暗号文だけどな」

 

「それで!? 解けるんですか暗号!」

 

霊夢と妖狐は、ジンの話に物凄く食いついていた。

ジンはやや呆れながらも、二人に巻物の写しを見せた。

 

「これなんだが・・・解るか?」

 

「どれどれ―――さっぱりだわ」

 

「意味不明な羅列ですね・・・・・・」

 

「これが暗号なら、何か規則性がある筈なんだ。それを見つければ―――」

 

「暗号が解けるって訳ね」

 

「ああ、その筈だ」

 

そう言って、ジンは写しをしまった。

すると針妙丸が、興味津々に呟く。

 

「それにしても宝か・・・一体どんな物なのかな?」

 

「そんなの決まっているでしょ、金銀財宝よ」

 

「もしかしたら、埋蔵金かも知れませんよ」

 

「今年の博麗神社は金運が良いわ~♪」

 

霊夢と妖狐の二人は、未だ見ぬ宝に胸を踊らせていた。

そんな二人を見て、ジンはやれやれとため息をつく。

 

―――――――――――

 

それから数日が経過した。

鈴奈庵では、ジンと小鈴とが暗号の解読に挑んでいたが、既に難航しており、二人の回りには、暗号解読の本が散らばっていた。

 

「一体どうしたら解けるんだ・・・・・・」

 

「むぅ~こんなに難しいなんて~」

 

「やっぱり素人じゃ、ここいらが限界か・・・・・・」

 

諦めかけていたその時、一人の女性が鈴奈庵に訪れた。

 

「小鈴殿、買い取りの査定に―――何をしておるのじゃ?」

 

「あ、マミさん」

「マミゾウ」

 

鈴奈庵に訪れたのはマミゾウであった。

マミゾウは、二人の様子を繁々と見ていた。

 

「一体二人で何をしておるのじゃ?」

 

「ああ、暗号を解いていたんだ」

 

「暗号?」

 

「はい、宝の在りかを記した暗号です」

 

「ほうほう、宝とな」

 

マミゾウは興味深そうに、二人の話を聞いていた。そして、机に置かれた暗号の巻物を手にする。

 

「これが暗号が書かれた巻物か・・・」

 

「そうなんですが、中々解けなくて・・・・・・」

 

「ああ、正直困り果てている」

 

「ふむ・・・ん?」

 

するとマミゾウは何かに気づいたように、暗号の文字の匂いを嗅ぐ。

そして、得心がいったという表情をした。

 

「なるほど、そういうことじゃったか」

 

「マミさん? どうしました?」

 

「小鈴殿、水を少々借りるぞ」

 

「え、ええ、いいですけど・・・何に使うんですか?」

 

「こう使うんじゃよ」

 

するとマミゾウは、巻物に水を掛けてしまった。

 

「ああ! マミさん!?」

 

「何をするんだ!?」

 

「まあまあ、二人とも落ち着くんじゃ、よく見てみい」

 

そう言って、マミゾウは巻物の方を指す。すると文字が消え、代わりに地図が浮かび上がる。

 

「これは・・・」

 

「単純な仕掛けじゃ、水に溶けやすいのとそうでないもので書かれておったのじゃよ」

 

「水を掛ければ、溶けない墨だけが残る仕掛けだったんですね」

 

「確かに霖之助は、宝を記した物とは言ってはいたが・・・まさか、暗号がフェイクとは思わなかった」

 

「まんまと引っ掛かりましたね」

 

「まあ、分かれば単純な物じゃよ。それよりも、宝はどの場所じゃろうか?」

 

三人は地図を覗き込む、宝が記された場所は、妖怪山の中腹辺りであった。それを見たジンは――――。

 

「諦めよう」

 

「ええ!? いきなり何を言っているんですか!」

 

「いや、ここはジンの言うとおり、諦めた方が良さそうじゃな」

 

「マミさんまで・・・一体何が駄目なんですか?」

 

「場所が問題なんだよ。ギリギリだが、天狗のテリトリー入っているんだ」

 

そう、宝がある場所は、天狗達の領域のギリギリの場所にあった。もしかしたら、天狗の領域に宝があるかも知れない可能性をジンは危惧していた。

 

「そんな、バレずにやれば良いんですよ! ギリギリ入っていないかも知れませんし!」

 

「白狼天狗の目を掻い潜り、宝を探すのか? 奴等は千里眼を持っているんだぞ」

 

「じゃ、じゃあ、夜の内に掘り出すとか・・・・・・」

 

「いや、それは危険じゃろう。夜の山は暗く、下手をすれば命の危険ある」

 

「それにもしバレたら、争いの火種になるかも知れない。あいつらはネチッコイからな」

 

「そうじゃな、古来より争いの原因は富の奪い合いじゃ。そう言った意味では、これはなかった事にした方が穏便に済むのう」

 

「ええ~折角場所がわかったのに・・・・・・」

 

「今回は縁がなかったと思うのじゃな」

 

こうして、宝探しは終わりを迎える――――ように見えた。

 

「ちょーと待ったー! 諦めるのはまだ早いですよ!」

 

声と共に現れたのは、文であった。

天狗である彼女が現れた事に、ジンとマミゾウは警戒する。

 

「なんだ文? 言っておくが、天狗のテリトリーに入って宝探しをするつもりは無いぞ」

 

「いえいえ、別にその事でとやかく言うつもりはありません。むしろ逆です」

 

「逆?」

 

「私と手を組みませんか?」

 

文は怪しく微笑むのであった。


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