実は最新話が節分の話しでしたので、それを参考にして書きました。
新年が過ぎ去り、二月となった。
霊夢達はもうすぐ迫る節分に向けて、準備をしていた。
「~♪」
「霊夢さん、豆を持って来ましたよ」
「そこに置いてちょうだい」
妖狐は霊夢に言われた通り、豆が入った袋を置いた。
「しかし、凄い量の豆ですね・・・」
「そりゃそうよ、豆まき大会をするのだから、これぐらいは用意して置かないと」
そう言って霊夢は、煮たった大豆を桶に入れる。
桶の中には、大量の大豆が入っていた。
「たくさん来てくれると良いですね」
「来るわよ、その為に色々と準備をしているんだから」
霊夢は妖狐が持って来た豆を鍋に入れ、再び煮出し始めるのであった。
「ところで、ジンさんは?」
「ジンには、サニー達と針妙丸を連れて、材料の買い出しに行っているわ」
「え? サニー達はともかく、針妙丸がですか?」
「そうよ、小槌の魔力が戻ったから、体を大きくしてジンの買い物について行ったわ」
―――――――――――
人里の市場に、ジンはサニー、ルナ、スター、針妙丸を連れてやって来ていた。
「こんなものか。皆、買い物付き合ってくれてありがとう、御礼に好きな物を買って良いぞ」
「「「「やったー♪」」」」
ジンにそう言われ、四人ははしゃぎながら店を見て回った。
「どれにしようかしら?」
「何でも良いって言ってたんだから、遠慮する事無いわ」
「でも、持ち物があるんだがら、一杯買ったら持ちきれないわよ」
「そっか・・・ねえ、針妙丸はどうするの?」
「私はこれ、新しい裁縫セット♪」
針妙丸は嬉しそうに、新品の裁縫箱を見せた。
「え? そんなのが良いの?」
「うん、使っていたやつは古くなってたから、新しいのが欲しかったんだ」
四人は楽しそうに話していると、背後から近づく影があった。
「そんなよりお菓子の方が―――」
「ん? どうしたの皆?」
「う、後ろ・・・・・・」
「後ろ?」
針妙丸は不思議そうに後ろを振り向く、するとそこに巨大な大鷲が立っていた。
「「「「うわー!?」」」」
四人は大慌てで、ジンの後ろに隠れた。
ジンは四人に、落ち着かせるよう言い聞かせた。
「落ち着け四人とも、この大鷲は竿打と言ってな、華仙のペットだ。だから襲ったりしない」
「え? そうなの?」
「ああ、そうだよな竿打?」
ジンの問いに応えるように、竿打は大きく頷いた。それを見て、四人は安堵する。
「ところで、どうしてこんな所に?」
ジンがそう訪ねると、竿打は手振り身ぶりで事情を説明し始めた。
「何々?“お使いを頼まれたのだけれど、何を買うのか忘れてしまった”って?」
ジンの理解が正しかったのか、竿打は嬉しそうに頷いた。
「ジン、大鷲の言っている事がわかるの?」
「まあ・・・何となく意志疎通が出来るぐらいだ。これも修行の成果だな」
「「「「おおー!」」」」
四人は尊敬の眼差しでをジンに向けた。ジンは照れくさそうに、そっぽ向く。
「と、ともかく、このままじゃ、華仙に怒られるんだな竿打?」
その言葉に、竿打は大きく頷く。余程困っているのか、その動きはとても激しかった。
「仕方ない・・・手伝ってやるよ」
その言葉が嬉しかったのか、竿打はジンに抱きついた。
「お、おい、そんな抱きつくなよ・・・」
「ねえ、私達は?」
「霊夢達が待っているから、先に帰ってくれ」
「え~、何でも買ってくれるんじゃないの?」
「また今度埋め合わせするから、頼むよ」
「しょうがないわね・・・一つ貸しだからね」
「ああ、頼む」
そう言ってジンは、荷物をサニーに達に渡し、先に帰らせた。
「さて、先ずはいつも買い物している店に行くか」
ジンは竿打と共に、市場を歩き出した。
店にたどり着いたジン達。幸いにも、店主が買い物の品を覚えていた為、華仙が頼んでいた品物はすんなりと買えた。
「鷲がいつも買い物に来るから、大体何を買うのか覚えてるよ」
「いや助かる。ダメもとだったんだが、聞いてみるもんだな」
「これくらい御安い御用だよ」
ジンは品物が入った袋を竿打に手渡した。
「ほら、次からは忘れずにしろよ」
竿打は受け取り、大きく頷いてから、空へと飛び去った。
すると、後ろから声を掛けられた。
「こんにちはジン」
ジンは後ろを振り返る。そこには買い物袋を携えた咲夜の姿があった。
「咲夜か、こんにちは」
「あの大鷲と知り合いなのかしら?」
「まあな、知り合いのペットなんだ。咲夜も、竿打の事を知っているのか?」
「ここでは有名よ、以前は年寄りの大鷲が来てみたいだけど」
「そうなのか・・・全然知らなかったな」
「ところで、貴方も節分の準備で?」
「ああ、神社主催の豆まきをするんだ。良かったらレミリア達と一緒に参加しないか?」
ジンがそう誘うと、咲夜は少し困った表情をする。
「気持ちはありがたいんだけど・・・御嬢様は豆まきが嫌いなのよ」
「そうなのか?」
「ええ、だからうちでは鬼門巻きを食べるだけなのよ」
「鬼門巻き? 恵方巻きじゃなくて?」
「そうよ、鬼門の方角である北東を向きながら食べるのよ。意味は無いけど」
「そ、そうか・・・・・・それにしても、豆まきが嫌いか・・・」
ジンは咲夜の言葉で、ある事を考えるようになった。
―――――――――――
その夜、ジンは昼間の咲夜の話を霊夢に話ていた。
「まあ、レミリアが豆まきが嫌いなのは知っていたけど、それがどうしたの?」
「何て言うか・・・ちょっと釈然としないんだよな。皆が楽しめないなんて」
「世の中そんなものでしょ、出来る事もあれば、出来ない事もあるんだから」
「まあ、それはそうなんだが・・・俺としては、皆が楽しめるような節分がしたいんだ」
「どうするのよ? まさか豆まきをしないって言わないでしょうね?」
「そこまで言うつもりはない。そんな事すれば、折角萃香に鬼役を頼んだのに、申し訳無い」
「それじゃどうするのよ?」
「それは・・・考え中だ」
その言葉を聞いた霊夢は、溜め息をつきながら立ち上がる。
「考えるのは良いけど、節分の日はもうすぐよ。早めに考えをまとめて頂戴ね。
それじゃ、おやすみ」
そう言って霊夢は、居間を出ていった。
霊夢が行った後、ジンは寝転がり、天井を見つめた。
「・・・妙案がまったく浮かばないんだよな・・・・・・一体どうしたものか」
ジンはその後も考え続けたが、結局その日は何も思い付かなかった。
―――――――――――
それから数日後、この日は華仙の修行を受ける日で、ジンは華仙の邸で修行を行っていた。
いつも通り、座禅をしているのだが――――。
「・・・・・・むっ」
華仙は手に持っている警策で、ジンの肩を叩く。バシンという音が、道場に鳴り響く。
「くっ・・・・・・」
「乱れているわよジン」
痛みに耐えながらも、ジンは座禅を続けるが、その後何回も、警策で叩かれるのであった。
それから座禅が終わり、次の修行を行おうとした時、華仙に呼び止められる。
「ジン、そこに座りなさい」
そう言われ、ジンは素直に座り、華仙もまたジンの目の前に座りだした。
「それで? 何を悩んでいるの?」
「え?」
「今日の様子を見れば直ぐにわかるわ。その状態では、修行を行っても身に入らないでしょう?」
「ま、まあ・・・・・・」
「迷える者を導くのも、仙人の仕事よ。遠慮せずに話して」
そう言われて、ジンは気が楽になり、悩み事を打ち明ける事にした。
「実は・・・神社で行う予定の節分についてなんだが・・・・・・」
「せ、節分!?」
節分――という言葉に、華仙は上擦った声をあげた。
「どうした?」
「い、いえ、何でもないわ・・・・・・」
「? そうか、話は戻すが―――」
ジンは華仙に、誰もが楽しめるような節分にするにはどうすればいいか訪ねた。
「なるほど、それで悩んでいたのね」
「そうなんだ、何かいい案はあるか?」
「う~ん、そうね・・・あ、これなら良いんじゃない」
華仙は思いついた案を、ジンに伝えるのであった。
―――――――――――
節分当日。博麗神社では、多くの参拝客で賑わっていた。
そして鳥井には、“節分、豆料理大会”という看板が掛かっていた。
「揚げ豆腐はいかがですかー? 油揚げもあるよー」
「田楽ー、田楽はいらんかねー」
神社の境内には、多種多様な屋台が出ており、それぞれが豆に関する料理を出していた。
「物凄い盛況だな、豆料理大会は」
「自分から提案しておいて何だけど、ここまで人が来るとは思わなかったわ」
魔理沙と華仙は、鬼門巻きと書かれた屋台の所で、境内の様子を眺めていた。
すると咲夜が、太巻きを持って来た。
「私としては大助かりよ。このイベントで、御嬢様の機嫌が良くなったから」
「それは良いが・・・これは豆料理なのか?」
「いいえ、普通の太巻きよ。それでこっちが豆料理」
咲夜が次に出したのは、淹れたてのコーヒーであった。
「コーヒーが豆料理・・・・・・」
「何でもありだな・・・・・・」
二人は太巻きを食べながら、コーヒーを飲んだ。すると魔理沙が、ある疑問を口にする。
「ところで、どうして豆料理大会になったんだ?」
すると華仙はカップを置き、話始めた。
「鬼の由来を知っている?」
「いや、あまり知らないぜ」
「鬼とは、隠など隠された物から来ていて、人間の内部から生まれてくる物なの。
だから、大半の鬼は元人間なのよ」
「確かに、ジンなんか鬼に変身出来るからな」
「だから、豆や豆料理を食べて、鬼を追い出すのが、この大会の趣旨なのよ」
「ふーん、それじゃ豆まきはしないのか、ちょっと面白くないな・・・・・・」
魔理沙はつまんなさそうに呟く。すると華仙は、悪戯な笑みを浮かべた。
「豆まきはしないけど、代わりの物を撒くのよ」
「へ? それってどういう――――」
「鬼が来たぞー!」
すると境内の方から声が上がる。するとそこには萃香と、鬼人になっているジンの姿があった。
二人が出てくるのと同時に、霊夢が声を上げる。
「みんなー! 鬼が来たわよー! さあ、雪をぶつけて追い払えー!」
霊夢はそう言いながら、ジンと萃香と目掛けて雪玉を投げる。他の者も、霊夢と同じように投げ始める。
「何だ一体?」
「豆まきならぬ、雪まきね」
「見れば分かるが・・・どうして雪なんだ?」
「雪には雪ぐという言葉があってね、清め祓うという意味があるから、豆の代わりにちょうど良いでしょ?」
「そういうものか?」
「そういうものよ」
二人はしばらく雪まきの様子を眺めた。
楽しそうに雪を投げる子供達の姿を見て、魔理沙は我慢できず立ち上がる。
「私も混ざってくるぜ!」
「いってらっしゃい」
華仙は魔理沙を見送り、彼女はその様子を静かに眺めた。
―――――――――――
鬼役をしている萃香は、とても楽しそうにしている一方、ジンは戸惑いながらも、鬼の役をしていた。
「お、鬼だぞー、食べちゃうぞー」
「「「鬼は外ー」」」
「うわっぷ! ぺっ、ぺっ、口に入―――痛っ!」
すると頭に痛みが走る。投げつけられた雪の中に、石が入っていた。
「誰だ! 雪に石を入れて投げた奴は!?」
ジンは辺りを見回すと、いかにも悪辣な笑みを浮かべた正邪とていの姿があった。
「お前らかー!」
ジンは二人に向かって走り出す。しかし―――。
「今よ! 者共ー!」
「「「おおー」」」
するとレミリア、フランの二人が子供達を引き連れ、ジン目掛けて雪を投げ始めた。
「うわっ! ちょっと待っ―――」
「「「「鬼は外ー」」」」
大量の雪玉を投げられ、ジンはたまらず逃げ出す。その後を、全員に追いかける。
「「「「鬼は外ー」」」」
「ただで済むと思うなよー!」
ジンは叫びながら、逃げ続けるのであった。
博麗神社の節分は、人も妖怪も大いに楽しめるものとなった。