最近ネタ不足に陥っているので、あまりリクエストに応えられるかどうかわかりませんが、可能な限り応えたいと思います。
ある日の事、ジンはサニー達と共に茸狩りをしに魔法の森に訪れていた。
「よーし、誰が多くの茸を見つけるか勝負よ!」
「違うでしょ、誰が珍しい茸を見つけるかよ」
「いーえ、美味しい茸の方が良いわよ」
「いきなり勝負方法が別れたな・・・」
「まあまあ、勝負の判定は、このキノコマスターの魔理沙様が判定してやるぜ」
茸の専門家として同行してもらっている魔理沙が、自身を持って言った。本当にこういう時は頼りになるなと、ジンは思った。
「よーしやるわよ! 一番ビリは罰ゲームだからね」
「皆頑張れよー」
「何を言ってるのジン? 貴方も参加するのよ」
「え? 俺も?」
「もちろんでしょ、皆でやるから意味があるのよ」
「・・・わかった。やるからには手加減しないからな」
「それじゃ、私がスタートの合図を出すぜ。
よーい・・・スタート!」
魔理沙の合図で始まった茸狩り競争、はたしてジンは勝利する事が出来るのか?
茸狩りが始まってしばらく経過した。
ジンは取り合えず、茸を手当たり次第集める事にした。
(美味いかどうかは知らんが、数があれば当たるだろう)
そう思い、明らかにヤバそうな茸であっても篭に入れるようにしていた。
そんな時に、サニーの呼ぶ声がした。
「みんなー! こっちに来てー!」
「何だ一体?」
不思議に思いながらも、サニーの元へ行くジン。
他の皆も同様に、サニーのところに集まった。
「一体どうしたんだ?」
「いくちを見つけたのよ!」
「いくち? 別に珍しい物じゃ―――」
「凄い数のいくちなのよ! ちょっと見てよ!」
サニーが指を差す先には、螺旋状に群生していたいくちがあった。
「これは・・・・・・」
「凄ーい! こんなたくさんのいくちなんて初めてみた!」
「悔しいけど、今回はサニーの勝ちね」
「えっへん」
サニーは勝ち誇った表情をしたが、魔理沙は何とも微妙な表情をしていた。
「うーん・・・このいくちは止めておいた方が良いな」
「え? 何で?」
「季節外れのいくちは、ろくなもんじゃないのが多いんだ」
「それじゃ、食べれないんですか?」
「いや、食べれない事は無いとは思うが・・・うーん」
どうした物かと魔理沙が考えていると、ジンはいくちを一つ摘み上げ、それを口にする。
「お、おい!」
「――――うん、かなり美味いぞ」
「え、本当?」
「ああ、これを鍋にすればもっと美味くなるんじゃないか?」
「よーし、みんなで採るわよー」
サニー達は次々といくちを取り始める。
一方魔理沙は、いくちを食べたジンの身を案じていた。
「ジン、本当に何とも無いのか?」
「ん? 特に何とも無いが?」
「そうか・・・でもなぁ」
「このいくちに何があるのか?」
「いや、私の思い過ごしなのかも知れない。あまり気にするな」
「?」
ジンは少し疑問を抱いたが、あまり深く追求する事はしなかった。
その後、いくちを採れるだけ採り、その日の茸狩りは終了した。
―――――――――――
その夜、博麗神社ではジンとサニー達が採ったいくちとその他食べれる茸で茸鍋を食べていた。
「うーん♪ 美味しいじゃないこのいくち」
「そうですね、この歯応えがたまりません♪」
「おかわり!」
「はいどうぞ」
とても好評のようで、霊夢、妖狐、針妙丸は美味しいそうに食べていた。
「それにしても、魔理沙も一緒に食べれば良かったのに」
茸狩りのあと、魔理沙も食事に誘ったのだが、珍しく誘いを断ったのだ。
そんな話をしていると、ルナがポツリと言う。
「そう言えば・・・魔理沙さん、このいくちに対してあまり良くない事を言っていたな」
その一言で、全員の箸が思わず止まる。誰もが一抹の不安を感じた。
「・・・だ、大丈夫だろ、食べても何ともなかったんだ」
「遅効性の毒かも知れないよ?」
その一言で、再び箸が止まる。既に全員がそれなりの数を食べてしまったからである。
「もうこうなったら、食べれるだけ食べてやる!」
「そうね! 毒と言っても、体を少し壊す程度の筈よ!」
「あ、おい! そんなに自分達だけで食べるな!」
ジンの制止を聞かず、サニーとスターは鍋を食べ尽くしてしまった。
―――――――――――
翌日、特に体の異変は起きず、ジン達はいつも通りに過ごしていた。
「特に異常はなかったみたいね。それだったらもっと食べておけば良かった」
「サニー達が残ったいくちを採りに行ったから、また直ぐに食べれるだろう」
「そうね、今度は揚げてみようかしら」
そんな話をしていると、魔理沙が箒を乗って神社にやって来た。
「よう二人とも」
「あら魔理沙、いくちなら残っていないわよ」
「いや、ただの様子を見に来ただけだ。もっともその様子だと大丈夫そうだな」
「やっぱり、あのいくちには何かあったのか?」
「そうだな・・・三すくみを知っているか?」
「三すくみ? 確か蛙と蛇と蛞蝓の事か?」
「ああ、不思議に思わなかったか? どうして蛇は蛞蝓に弱いか」
「そうよね・・・蛇は蛙を食べ、蛙は蛞蝓を食べるのは知っているけど・・・・・・」
「蛞蝓が蛇に勝つなんて想像出来ないよな」
「ああ、そこであのいくちが出てくるんだ」
「どうしていくちなんだ?」
「昨日見た季節外れのいくちの群生があっただろ? あれは蛞蝓が蛇を溶かし、いくちにした跡なんだ」
「え? それじゃ昨日のいくちは―――」
「蛇の成れの果てって訳」
それを聞いた二人は驚きを隠せなかった。魔理沙は言葉を続ける。
「それと文献で読んだんだが、そのいくちは溶かされた蛇によって美味しかったり不味かったり、毒を持っていたりとするから、みだりに食べない方が良いって」
「なるほど、それであんな微妙な表情をしていたのか」
「まあ、今回のいくちは当たりみたいだったな。食べておけば良かったぜ」
「それなら心配ないぞ、今サニー達が残ったいくちを採りに行ったからな」
「残念ながらそれは無理な話だ。恐らくいくちはもう残っていない」
「ん? どういう事よ?」
「蛞蝓は蛇を一晩でいくちにした後、次の晩で残さず全部食べてしまうから、恐らく食いつくされているだろう」
「え、そうなの?」
「それじゃ、あのいくちはもう食べられないのか・・・・・・」
魔理沙の話を聞いた二人は、何処か残念そうであった。
夕方、何も採れずに帰って来たサニー達に、ジンは魔理沙の話を伝えた。
「そうだったんだ・・・それじゃ何処にも残っていないわけね」
「そう言う事だ。それに、次のいくちが美味いとも限らないから、新しい群生を見つけても食べない方が良いって言ってた」
「うーん・・・こんな事ならもっと採っておけば良かった」
サニーとルナは非常に残念そうにしていた。しかしスターだけは違っていた。
「それなら、蛇を捕まえて蛞蝓に溶かしてもらえば、美味しいいくちが手に入るって事よね」
「おお!」
「流石スターね!」
サニーとルナは、スターの案に賛成していた。しかしジンは、その考えに不安を感じていた。
「お、おい、そんな安直に決めて――――」
「それじゃ、明日から蛇を捕まえに行くわよ!」
「「おおー」」
そう言って三人は、ミズナラの木へと帰って行ってしまった。
ジンはますます不安をかんじるのであった。
―――――――――――
次の日、サニー達は蛇を捕まえようと魔法の森を訪れていた。その中には、心配で同行を申し出たジンの姿もあった。
「それで、探すあてはあるのか?」
「こういう時こそ、スターの出番よ」
「そういうこと、ちょっと待ってて」
スターは能力を使い、周囲の動物の位置を探る。すると――――。
「あ、向こうに大きい反応があるわ」
「もしかして大蛇かしら!」
「行ってみよう!」
「へ? 大蛇?」
ジンは耳を疑った、確か自分達は蛇を捕まえに来た筈。するとサニーが得意気に言う。
「大蛇を捕まえて蛞蝓に溶かせば、もの凄い量のいくちが手に入るじゃない」
「いや、その前にどうやって捕まえ―――」
「皆行くわよ!」
「おおー!」
ジンの言葉を最後まで聞かず、三人は先へと行ってしまう。残されたジンはいうと―――。
(・・・いつでも逃げれるようにしておこう)
そう思いながら、サニー達の後を追うジンであった。
スターの能力頼りに森の奥へと進んで行くと、一匹の大蛇を見つける。
「うわ~大きいわね・・・」
「これよこれよ、私達が探し求めたのは」
「よーし、早速捕まえるわよー」
「「おおー」」
サニー達は、持って来た虫網を手に、大蛇に近付こうとした。
流石に黙っている訳にはいかないと思ったジンは、三人に根本的な事を告げる。
「三人とも、意気込むのは良いが・・・どうやって捕まえるんだ?」
「え? 網でこう―――」
「そんな小さい網で捕まえられるのか?」
「「「・・・・・・」」」
三人は持って来た網と大蛇を見比べる。明らかに大蛇の方が大きかった。
「ま、まあ、こんな日もあるわよ」
「こんな日も?」
「大抵いつもの事な気がする。サニーは何処か抜けているのよね」
「何よ! 二人だって気付かなかったじゃない!」
「お、おい、大きな声を出すな! 大蛇に気づかれるだろ!」
「大丈夫よ、ルナが音を消しているから」
「え? 私、能力使っていないわよ」
「え?」
すると背後から気配がした。サニーは恐る恐る振り向くと、そこには自分達を睨み付けている大蛇の姿があった。
「あ・・・・・・」
サニーは大蛇に睨まれ、動けなくなっていた。その間も、大蛇はゆっくりと口を開いていた。
「サニー!」
ジンは叫ぶと同時に、石を大蛇に投げつける。
「キッシャー!?」
大蛇が怯んだ隙に、サニーを抱え走り出す。
「皆逃げるぞ!」
ジンの言葉と同時にルナとスターも走り出した。
「キッシャー!!」
石を投げられた事に怒りを感じたのか、大蛇はもの凄いスピードでジン達に迫る。
「ジン! もっと早く! 追いつかれるわよ!」
「これが精一杯だ!」
「サニーだけずるいじゃない! 私もおぶって!」
そう言ってスターは、ジンの背中に飛び乗る。その反動で、ジンは危うく転びそうになった。
「のわぁ!? 急に飛び乗るなスター!」
「みんな待ってよ~キャア!?」
「ルナ!? くっ、サニーとスターは先に行け!」
ジンはサニーとスターを降ろすと、転んでしまったルナの元へ駆け寄ろうとする。
しかし、大蛇の方もルナに近づきつつあった。
(くっ、間に合うか!?)
ジンは全速力でルナの元へと走った。どうにか大蛇より先に彼女の元へと駆けつけた。
「ルナ! 立てるか!?」
「う、うん・・・・・・」
ルナを助け起こすジンだったが、既に大蛇が目の前に来ていた。
「ジ、ジン!」
「くっ、」
ジンはルナを庇うように抱きかかえる。それが彼が出来る精一杯の行動であった。
そんな行動を嘲笑うように、大蛇は二人に牙を向ける。
「シャアー!!」
「マスタースパーク!」
魔理沙の声と共に、マスタースパークが大蛇に放たれた。
大蛇は黒焦げになり、地面に倒れた。
「ふう、危ないところだったなジン」
「魔理沙か・・・・・・助かった」
ジンは危険が去った事に、安堵した。
すると向こうから、サニーとスターが駆け寄って来た。
「「ルナー!」」
「サニー! スター!」
それを見たルナも、二人の元へ駆け寄る。三人はお互いの無事を噛み締めあった。
「ところで、どうしてこんな所に?」
「実は―――」
その後、ジンは魔理沙にこれまでの事情を説明した。
「なるほどな、確かにその方法なら安全かつ美味しいいくちを手に入るな。だが、いくらなんでも大蛇はハードル高すぎるだろ。私が来なかったら、喰われていたぞ」
「面目ない・・・・・・」
「まあ、無事だったから良いさ。もうこんな無茶をするんじゃないぞ」
「ああ、わかった」
「よろしい、それじゃ私は帰るからな。ジンも気をつけて帰れよ」
そう言って魔理沙は、その場を去って行った。
ジンもサニー達を呼び、帰る事にした。
―――――――――――
後日、魔理沙がいつものように博麗神社を訪れる。しかし、境内には誰もいなかった。
「おかしいな・・・裏手か?」
気になって裏手に回ると、そこには何やら準備をしているジンの姿があった。
「何をしているだジン?」
「お、来たか魔理沙、見ての通りいくちを焼こうとしているんだ」
そう言ったジンの側に、いくちが置かれていた。
「そのいくち・・・もしや」
「ああ、蛇のいくちだ」
「こりないなお前らも、今度は毒に当たるかも知れないのに」
「これは大丈夫だ。捕まえた蛇を蛞蝓で溶かした物だから」
ジンの話によると、サニー達は諦めきれず、再度蛇を捕まえに行ったらしい。
今度は大蛇ではなく、小さめの蛇を幾つか捕まえて、それを蛞蝓に溶かしたのだ。
こうして出来たのが、今ジンの手元にあるいくちである。
「ふーん、意外とやるもんだなあの三人」
そんな話をしていると、薪を持って来たサニー達がやって来た。
「ジーン、薪持って来たよー。あ、魔理沙さん」
「よお、邪魔してるぜ」
「魔理沙さんも、いくちを食べに来たんですか?」
「え、あー、私は―――」
どうしたものかと悩んでいると、ジンが魔理沙に言う。
「せっかくだし、食べて行けよ。ついでに酒もでるしな」
「本当か!? よし! その話のったぜ!」
魔理沙がそう言うと、ちょうど酒の用意をして来た霊夢、妖狐、そして霊夢の肩に乗っている針妙丸がやって来た。
「ジン、そっちの準備は出来た――って、魔理沙じゃない」
「あら、魔理沙さん。こんにちは」
「魔理沙も、いくちを食べに来たんだね」
「おう、美味しいって言うからには、期待しているぜ」
魔理沙はとても楽しそうに笑った。
こうして、いくちは皆で美味しく食べたのである。