紅魔館の廊下を歩く、咲夜とジン。
そして、レミリアの部屋の前に来た。
「お嬢様、ジン様をお連れしました」
「来たわね。入って来て頂戴」
「失礼します」
咲夜はそう言って、扉を開く。
そこには、この紅魔館の主。レミリア・スカーレットがいた。
「ようやく来たわねジン。
紅魔館に来たのなら、まず私に挨拶するのが礼儀じゃない?」
「悪かったレミリア。図書館の整理に夢中になり過ぎて・・・・・」
「まったく、貴方のそういうところ、直した方がいいんじゃない?」
「これは性分だ。死んでも直らないと思うぞ」
「そうみたいね。
まあ、せっかく来てくれたのだし、少し話していきなさい」
「まあ、それもいいか」
「咲夜。ジンに紅茶を」
「畏まりました」
レミリアの命令に従い、咲夜は紅茶を入れ、ジンに差し出した。
「どうぞジン様」
「ああ、ありがとう」
それを受け取り、一口飲むジン。
口には、ほのかな香りと甘さが広がってきた。
「相変わらず、咲夜の紅茶は美味いな」
「当たり前じゃない。
咲夜はうちの自慢のメイドよ」
「恐れ入ります。茶菓子も用意しておりますので、ご自由にお取りください」
こうしてささやかな、お茶会が始まった。
「それにしても、貴方が幻想郷に来てもう半年ね・・・・・・・・早いものね」
「そうだな、最初は色々驚きの連続だったな」
「驚きって・・・・・私的には、貴方が生きている事に驚いているわ」
「それって、俺の運命を見た感想か?」
「そうね、私の“運命を操る程度の能力”の一端で、運命予知が出来るって事は話したわよね?」
「ああ、聞いた」
「それで、半年前に見た貴方の運命の殆どが死の運命だったのよ。
確率的に言えば、生存率0.1ぐらいだったわ」
「生存率低く!?
じゃあ何か? あの時、一歩でも間違えたら死んでいたのか?」
「そうよ。けれど、貴方は死ななかった。興味深いと思わない?」
「あー・・・・・それで俺を拉致しようとしたのか・・・・・」
「あの時は申し訳ありません・・・・・お嬢様の命令は絶対なので」
「咲夜は悪くない。悪いのはこの吸血鬼だろ」
「ちょっと! そんな言い方しなくていいじゃない!
そりゃ、ちょっとやり過ぎたと思っているわよ・・・・・」
「地下に監禁するのをちょっとじゃないだろ。
そのお陰で死にかけ・・・・・・・・」
ジンは突然言葉を止め、扉の方に目をやる。
すると扉を壊し、飛び込んで来た少女が現れた。
「ジンー♪」
ジンは少女を受け止め――――る事はせず、少女の突進をかわす。
「え?」
「お嬢様!?」
そしてそのままレミリアに直撃した。
「あれ? お姉様だ。ジンは・・・・・・・・・・いた♪」
気を失っているレミリアを尻目に、少女であるはジンに駆け寄った。
「もうジンったら! レディは優しく受け止めなきゃ駄目なんだよ」
ジンを叱るように言う少女名はフランドール・スカーレット。レミリアの妹である。
半年前、彼女と弾幕勝負をしてジンは勝った事がある。それが要因なのか、フランはジンになついている。
そんなフランに、ジンは静かに答えた。
「お前の突進を受け止めたら、俺は粉々になるぞ」
「え? お姉様は大丈夫だったよ?」
「それは、お前と同じ吸血鬼だからだ。
人間だったら、一溜まりも無い」
「あ・・・・・・・ごめんなさい・・・・・」
「・・・・・・・まあ、もう少し加減を覚えれば良いさ。その時はちゃんと受け止めやるよ」
「本当! 約束だよ!」
「ああ、約束だ」
二人は指切りをし、ささやかな約束を結ぶのであった。
その時、復活したレミリアは、フランに対して―――。
「ちょっとフラン! 私にぶつかっておいて、ごめんなさいも無いの!」
「あ、お姉様起きたんだ」
「あ、じゃない! 私を何だと思っているの!」
「運命が見えるのに、かわせなかったお姉様が悪いじゃない。
ジンは察知してかわしたよ?」
「そう言えばそうだな。運命予知出来るんなら、フランの行動も予見出来ると思うんだが?」
「うっ・・・・・そ、それは・・・・・」
「レミリア?」
「それに関しては、私が解説いたします。
ざっくり説明致しますと、お嬢様が関知出来るのは強い運命―――妹様がお部屋に来るという事は知っておりましたが、どの様に入って来るかまでわからないのです」
「ふーん、運命が見えると言っても、全部分かるものじゃ無いのか」
「そうよ。強い運命はあまり変化はしないけど、弱い運命は絶えず変化しているわ。それを全部把握するのは、いくらわたしでも不可能なのよ」
「そうなのか、思っていた以上に凄くは無いのか・・・・・」
「う・・・・・うー!」
「それはともかく、ジン」
「なんだ?」
「弾幕ごっこをしよ♪」
(うっ・・・・・やはり来たか)
ジンはこうなる予感をしていた。
別に、弾幕勝負がという訳では無く。相手がフランだからという事である。
彼女は未だに加減が出来ないので、一発でも当たれば重傷、当たりどころが悪ければ死である。
(普通なら、そんな死闘は二度と御免なんだが・・・・・)
「わくわくわく♪」
目を輝かせているフランに対して、断ることなど出来る筈もなく。ジンは―――――。
「・・・・・・・・わかった。やる、やってやる」
「わーい♪ やったー♪」
こうして、命懸けの弾幕ごっこが始まるのであった。
―――――――――――
紅魔館の周囲には、日差しを遮る赤い霧が立ち込めており、これからはジンとフランの弾幕勝負が始まろうとしていた。
美鈴は審判、レミリア、咲夜、パチェリー達はギャラリーとして来ていた。
「それではルールを確認します。
制限時間は十分。それまでにジンさんに三回当てればれば妹様の勝ち。
十分間避け続けるか、全てのスペルカードを攻略出来たらジンさんの勝ちです。
よろしいですね?」
「うん!」
「それでいい」
「それでは・・・・・始め!」
美鈴の合図で、両者は動き出した。
「先ずは小手調べだよ」
そう言ってフランは、弾幕を撃つ。
ジンは持ち前の能力を使い。弾道を読んでかわす。
「どうしたフラン。この程度じゃ、俺に当てれないぞ」
「そうみたいだね。それじゃ、本番行くよ!
“禁忌 クラウベリートラップ”!」
フランは最初のスペルカードを発動させる。
すると魔法陣が現れ、四方からジンに目掛けて弾幕を撃って来る。
「くっ、」
流石のジンも、全ての弾道を視界に納める事は出来ない。そこで、当たる弾道だけに絞り、次々と弾幕をかわし続けた。
そして、一枚目のスペルカードが終了した。
「先ず一枚目だ」
「まだ一枚目だよ!
二枚目“禁忌 レーヴァテイン”!」
フランは二枚目のスペルカードを発動。
フランの両手から、紅く光る光の剣が発生した。
「フラン、そのスペルカードじゃ俺には届かない」
「わかってるよ。だから、もう一工夫するんだよ。
三枚目“禁忌 フォーオブアカインド”!」
「なっ!?」
するとフランが四人に分身。
その分身達も、本物と同じ様にレーヴァテインを発生させていた。
「ちょっと待て! スペルカードの重ね掛けってありなのか!?おい審判!!」
「え? えっと・・・・・ルール項目には特に書いていないので――――ありです!」
「ありかよ!?」
「「「「それじゃジン。行くよ!」」」」
四人のフランが一斉に襲い掛かる。
ジンは攻撃の軌跡を視ながら、それをかわして行くが、絶え間なく続く攻撃に次第に追い詰められて行く。
「くっ」
「「「「貰った!」」」」
四人のフランの同時攻撃。
逃げ場は無い、誰もがそう思った瞬間。一人のフランが怯んだ。
「きゃあ!」
一人が怯んだお陰で、逃げる隙が現れ、ジンは攻撃をかわした。
「ふぅ、危なかった」
「「「「攻撃してくるなんて卑怯だよ!!」」」」
「卑怯なものか、そもそも弾幕勝負ってのはそういうものだろ? なあ美鈴?」
「えっと・・・・・確かにそうですね。今のは有りです!」
「「「「むむむ・・・・・でも次は――――」」」」
「次は無い。そろそろ効力が消える」
「あ・・・・・」
ジンの言葉通り、フランの分身が消え、彼女一人に戻ってしまった。
「二枚目と三枚目クリアだ。まだ続けるか?」
「もちろん! 行くよ!」
そう言って、四枚目を取り出した。
「ラストスペルカードブレイク。
俺の勝ちだな」
「う~負けたー」
「妹様のスペルカードはゼロ。勝者はジンさんです!」
「相変わらずの避けっぶりね」
「まあ、彼の能力は弾幕勝負において真価を発揮するから、当てるのは至難の技よ」
「そうですね。時を止めてナイフを設置しても、直ぐにかわされてしまいましたから」
「まあ、それでも完全無欠って訳じゃないのよね・・・・・」
パチェリーは咲夜と美鈴に目を配らす。
それを見た二人は小さく頷いた。
「今回は負けたけど、次は負けないからねジン」
「ああ、わかった」
「妹様、そろそろ館にお戻りになりましょう」
「え~~」
「そろそろパチェリー様の魔法が解けますし、館に戻らないと危ないですよ」
「フラン。あまり咲夜を困らせない」
「・・・・・うん、わかった」
フランは渋々、咲夜と共に館に戻って行った。
それを確認すると、ジンはガクッと膝をついた。
「やっぱり・・・・・フランの弾幕に当たっていたのね」
「ああ・・・・・最後のスペルカードの時にちょっと・・・・・」
ジンが手で抑えていた脇腹は、赤い血で染まっていた。
「パチェリー、治せる?」
「一応、だけどしばらく痛むわ」
「やらないよりはマシだな・・・・・パチェリー頼む」
「わかったわ」
パチェリーは傷口に手をやり、呪文を呟く。
すると、みるみる傷口が塞がって行く。
「今日は風呂を控えた方が良いわ。
それと、傷を塞がっているけど、一応診て貰った方が良いわ」
「ああ、そうしておく・・・・・」
「服は・・・・・一応後で咲夜に用意させておくわ。
そのままで帰ると、霊夢になんて言われるかわからないでしょ?」
「それは助かる。ありがとうレミリア」
「こちらこそ、いつもフランの相手をしてくれて」
「相手をするのは良いんだが、もう少し手加減を覚えさせておいてくれよ」
「ふふ、わかったわ」
「それとジン」
「ん? どうしたパチェリー」
「以前、貴方が読みたかった本を見つけたから。はいこれ」
そう言って、一冊の本をジンに差し出した。
「おお! 外では絶版した幻の一冊! 貸してくれるのか?」
「いいえ、それは貴方に上げるわ」
「良いのか? 外だと、プレミアついて数十万するぞ?」
「良いわよ。どうせ読まないし、それなら読んでくれる人に持った方が、本も喜ぶでしょ?」
「そうか・・・・・それならありがたく貰う。
ありがとうパチェリー」
こうして、紅魔館の訪問を無事に終わるジンであった。
因みに、怪我の事は結局霊夢にばれてしまい。物凄い追求を受けてしまうのだが、それはまた別の話である。
紅魔館に行こうはこれで終わりです。
レミリアの能力については完全に推察の上に、上手く表現できませんでした。
わかりづらいと思うので、これはスルーして下さい。
それと、カリスマブレイクも狙ってみましたが、中々上手く行きません。自分で読んでも露骨な感じがします。
今回は反省が多かったので、次に生かせたいと思います。