東方軌跡録   作:1103

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紅魔館に行こう 後編

紅魔館の廊下を歩く、咲夜とジン。

そして、レミリアの部屋の前に来た。

 

「お嬢様、ジン様をお連れしました」

 

「来たわね。入って来て頂戴」

 

「失礼します」

 

咲夜はそう言って、扉を開く。

そこには、この紅魔館の主。レミリア・スカーレットがいた。

 

「ようやく来たわねジン。

紅魔館に来たのなら、まず私に挨拶するのが礼儀じゃない?」

 

「悪かったレミリア。図書館の整理に夢中になり過ぎて・・・・・」

 

「まったく、貴方のそういうところ、直した方がいいんじゃない?」

 

「これは性分だ。死んでも直らないと思うぞ」

 

「そうみたいね。

まあ、せっかく来てくれたのだし、少し話していきなさい」

 

「まあ、それもいいか」

 

「咲夜。ジンに紅茶を」

 

「畏まりました」

 

レミリアの命令に従い、咲夜は紅茶を入れ、ジンに差し出した。

 

「どうぞジン様」

 

「ああ、ありがとう」

 

それを受け取り、一口飲むジン。

口には、ほのかな香りと甘さが広がってきた。

 

「相変わらず、咲夜の紅茶は美味いな」

 

「当たり前じゃない。

咲夜はうちの自慢のメイドよ」

 

「恐れ入ります。茶菓子も用意しておりますので、ご自由にお取りください」

 

こうしてささやかな、お茶会が始まった。

 

 

 

「それにしても、貴方が幻想郷に来てもう半年ね・・・・・・・・早いものね」

 

「そうだな、最初は色々驚きの連続だったな」

 

「驚きって・・・・・私的には、貴方が生きている事に驚いているわ」

 

「それって、俺の運命を見た感想か?」

 

「そうね、私の“運命を操る程度の能力”の一端で、運命予知が出来るって事は話したわよね?」

 

「ああ、聞いた」

 

「それで、半年前に見た貴方の運命の殆どが死の運命だったのよ。

確率的に言えば、生存率0.1ぐらいだったわ」

 

「生存率低く!?

じゃあ何か? あの時、一歩でも間違えたら死んでいたのか?」

 

「そうよ。けれど、貴方は死ななかった。興味深いと思わない?」

 

「あー・・・・・それで俺を拉致しようとしたのか・・・・・」

 

「あの時は申し訳ありません・・・・・お嬢様の命令は絶対なので」

 

「咲夜は悪くない。悪いのはこの吸血鬼だろ」

 

「ちょっと! そんな言い方しなくていいじゃない!

そりゃ、ちょっとやり過ぎたと思っているわよ・・・・・」

 

「地下に監禁するのをちょっとじゃないだろ。

そのお陰で死にかけ・・・・・・・・」

 

ジンは突然言葉を止め、扉の方に目をやる。

すると扉を壊し、飛び込んで来た少女が現れた。

 

「ジンー♪」

 

ジンは少女を受け止め――――る事はせず、少女の突進をかわす。

 

「え?」

 

「お嬢様!?」

 

そしてそのままレミリアに直撃した。

 

「あれ? お姉様だ。ジンは・・・・・・・・・・いた♪」

 

気を失っているレミリアを尻目に、少女であるはジンに駆け寄った。

 

「もうジンったら! レディは優しく受け止めなきゃ駄目なんだよ」

 

ジンを叱るように言う少女名はフランドール・スカーレット。レミリアの妹である。

半年前、彼女と弾幕勝負をしてジンは勝った事がある。それが要因なのか、フランはジンになついている。

そんなフランに、ジンは静かに答えた。

 

「お前の突進を受け止めたら、俺は粉々になるぞ」

 

「え? お姉様は大丈夫だったよ?」

 

「それは、お前と同じ吸血鬼だからだ。

人間だったら、一溜まりも無い」

 

「あ・・・・・・・ごめんなさい・・・・・」

 

「・・・・・・・まあ、もう少し加減を覚えれば良いさ。その時はちゃんと受け止めやるよ」

 

「本当! 約束だよ!」

 

「ああ、約束だ」

 

二人は指切りをし、ささやかな約束を結ぶのであった。

その時、復活したレミリアは、フランに対して―――。

 

「ちょっとフラン! 私にぶつかっておいて、ごめんなさいも無いの!」

 

「あ、お姉様起きたんだ」

 

「あ、じゃない! 私を何だと思っているの!」

 

「運命が見えるのに、かわせなかったお姉様が悪いじゃない。

ジンは察知してかわしたよ?」

 

「そう言えばそうだな。運命予知出来るんなら、フランの行動も予見出来ると思うんだが?」

 

「うっ・・・・・そ、それは・・・・・」

 

「レミリア?」

 

「それに関しては、私が解説いたします。

ざっくり説明致しますと、お嬢様が関知出来るのは強い運命―――妹様がお部屋に来るという事は知っておりましたが、どの様に入って来るかまでわからないのです」

 

「ふーん、運命が見えると言っても、全部分かるものじゃ無いのか」

 

「そうよ。強い運命はあまり変化はしないけど、弱い運命は絶えず変化しているわ。それを全部把握するのは、いくらわたしでも不可能なのよ」

 

「そうなのか、思っていた以上に凄くは無いのか・・・・・」

 

「う・・・・・うー!」

 

「それはともかく、ジン」

 

「なんだ?」

 

「弾幕ごっこをしよ♪」

 

(うっ・・・・・やはり来たか)

 

ジンはこうなる予感をしていた。

 

別に、弾幕勝負がという訳では無く。相手がフランだからという事である。

彼女は未だに加減が出来ないので、一発でも当たれば重傷、当たりどころが悪ければ死である。

 

(普通なら、そんな死闘は二度と御免なんだが・・・・・)

 

「わくわくわく♪」

 

目を輝かせているフランに対して、断ることなど出来る筈もなく。ジンは―――――。

 

「・・・・・・・・わかった。やる、やってやる」

 

「わーい♪ やったー♪」

 

こうして、命懸けの弾幕ごっこが始まるのであった。

―――――――――――

 

紅魔館の周囲には、日差しを遮る赤い霧が立ち込めており、これからはジンとフランの弾幕勝負が始まろうとしていた。

美鈴は審判、レミリア、咲夜、パチェリー達はギャラリーとして来ていた。

 

「それではルールを確認します。

制限時間は十分。それまでにジンさんに三回当てればれば妹様の勝ち。

十分間避け続けるか、全てのスペルカードを攻略出来たらジンさんの勝ちです。

よろしいですね?」

 

「うん!」

 

「それでいい」

 

「それでは・・・・・始め!」

 

美鈴の合図で、両者は動き出した。

 

「先ずは小手調べだよ」

 

そう言ってフランは、弾幕を撃つ。

ジンは持ち前の能力を使い。弾道を読んでかわす。

 

「どうしたフラン。この程度じゃ、俺に当てれないぞ」

 

「そうみたいだね。それじゃ、本番行くよ!

“禁忌 クラウベリートラップ”!」

 

フランは最初のスペルカードを発動させる。

すると魔法陣が現れ、四方からジンに目掛けて弾幕を撃って来る。

 

「くっ、」

 

流石のジンも、全ての弾道を視界に納める事は出来ない。そこで、当たる弾道だけに絞り、次々と弾幕をかわし続けた。

そして、一枚目のスペルカードが終了した。

 

「先ず一枚目だ」

 

「まだ一枚目だよ!

二枚目“禁忌 レーヴァテイン”!」

 

フランは二枚目のスペルカードを発動。

フランの両手から、紅く光る光の剣が発生した。

 

「フラン、そのスペルカードじゃ俺には届かない」

 

「わかってるよ。だから、もう一工夫するんだよ。

三枚目“禁忌 フォーオブアカインド”!」

 

「なっ!?」

 

するとフランが四人に分身。

その分身達も、本物と同じ様にレーヴァテインを発生させていた。

 

「ちょっと待て! スペルカードの重ね掛けってありなのか!?おい審判!!」

 

「え? えっと・・・・・ルール項目には特に書いていないので――――ありです!」

 

「ありかよ!?」

 

「「「「それじゃジン。行くよ!」」」」

 

四人のフランが一斉に襲い掛かる。

ジンは攻撃の軌跡を視ながら、それをかわして行くが、絶え間なく続く攻撃に次第に追い詰められて行く。

「くっ」

 

「「「「貰った!」」」」

 

四人のフランの同時攻撃。

逃げ場は無い、誰もがそう思った瞬間。一人のフランが怯んだ。

 

「きゃあ!」

 

一人が怯んだお陰で、逃げる隙が現れ、ジンは攻撃をかわした。

 

「ふぅ、危なかった」

 

「「「「攻撃してくるなんて卑怯だよ!!」」」」

 

「卑怯なものか、そもそも弾幕勝負ってのはそういうものだろ? なあ美鈴?」

 

「えっと・・・・・確かにそうですね。今のは有りです!」

 

「「「「むむむ・・・・・でも次は――――」」」」

 

「次は無い。そろそろ効力が消える」

 

「あ・・・・・」

 

ジンの言葉通り、フランの分身が消え、彼女一人に戻ってしまった。

 

「二枚目と三枚目クリアだ。まだ続けるか?」

 

「もちろん! 行くよ!」

 

そう言って、四枚目を取り出した。

 

 

 

「ラストスペルカードブレイク。

俺の勝ちだな」

 

「う~負けたー」

 

「妹様のスペルカードはゼロ。勝者はジンさんです!」

 

「相変わらずの避けっぶりね」

 

「まあ、彼の能力は弾幕勝負において真価を発揮するから、当てるのは至難の技よ」

 

「そうですね。時を止めてナイフを設置しても、直ぐにかわされてしまいましたから」

 

「まあ、それでも完全無欠って訳じゃないのよね・・・・・」

 

パチェリーは咲夜と美鈴に目を配らす。

それを見た二人は小さく頷いた。

 

「今回は負けたけど、次は負けないからねジン」

 

「ああ、わかった」

 

「妹様、そろそろ館にお戻りになりましょう」

 

「え~~」

 

「そろそろパチェリー様の魔法が解けますし、館に戻らないと危ないですよ」

 

「フラン。あまり咲夜を困らせない」

 

「・・・・・うん、わかった」

 

フランは渋々、咲夜と共に館に戻って行った。

それを確認すると、ジンはガクッと膝をついた。

 

「やっぱり・・・・・フランの弾幕に当たっていたのね」

 

「ああ・・・・・最後のスペルカードの時にちょっと・・・・・」

 

ジンが手で抑えていた脇腹は、赤い血で染まっていた。

 

「パチェリー、治せる?」

 

「一応、だけどしばらく痛むわ」

 

「やらないよりはマシだな・・・・・パチェリー頼む」

 

「わかったわ」

 

パチェリーは傷口に手をやり、呪文を呟く。

すると、みるみる傷口が塞がって行く。

 

「今日は風呂を控えた方が良いわ。

それと、傷を塞がっているけど、一応診て貰った方が良いわ」

 

「ああ、そうしておく・・・・・」

 

「服は・・・・・一応後で咲夜に用意させておくわ。

そのままで帰ると、霊夢になんて言われるかわからないでしょ?」

 

「それは助かる。ありがとうレミリア」

 

「こちらこそ、いつもフランの相手をしてくれて」

 

「相手をするのは良いんだが、もう少し手加減を覚えさせておいてくれよ」

 

「ふふ、わかったわ」

 

「それとジン」

 

「ん? どうしたパチェリー」

 

「以前、貴方が読みたかった本を見つけたから。はいこれ」

 

そう言って、一冊の本をジンに差し出した。

 

「おお! 外では絶版した幻の一冊! 貸してくれるのか?」

 

「いいえ、それは貴方に上げるわ」

 

「良いのか? 外だと、プレミアついて数十万するぞ?」

 

「良いわよ。どうせ読まないし、それなら読んでくれる人に持った方が、本も喜ぶでしょ?」

 

「そうか・・・・・それならありがたく貰う。

ありがとうパチェリー」

 

こうして、紅魔館の訪問を無事に終わるジンであった。

因みに、怪我の事は結局霊夢にばれてしまい。物凄い追求を受けてしまうのだが、それはまた別の話である。




紅魔館に行こうはこれで終わりです。
レミリアの能力については完全に推察の上に、上手く表現できませんでした。
わかりづらいと思うので、これはスルーして下さい。
それと、カリスマブレイクも狙ってみましたが、中々上手く行きません。自分で読んでも露骨な感じがします。
今回は反省が多かったので、次に生かせたいと思います。

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