それと、今回は独自設定がありますので、少し疑問を持つかもしれません。
博麗神社にあるミズナラの木の近くで、サニーとルナはジンが作った糸電話で遊んでいた。
「聞こえるー?」
「うん、聞こえる♪ 聞こえる♪」
「本当! 凄いわね、どんな仕組みなのかしら?」
「うーん・・・」
「気になるんだったら、作った本人に聞いてみたら?」
スターは読書を一旦止め、二人にそう言った。
すると二人は、スターの意見に大いに感心する。
「その手があったわ! 流石スターね!」
「それじゃ、ジンのところに向かいましょ」
「ついでに、お酒ももらいましょ♪」
こうして三人は、神社を目指して歩き出す。
その途中、ある物を発見した。
「あれ? あれはなんだろう・・・?」
「どうしたのルナ?」
「うん、あれを見て」
ルナが指した方向には、奇妙な塔が立っていた。
サニー達に案内された霊夢、魔理沙、ジンの三人は突如現れた鉄塔を調べていた。
「これまた凄いな、いつ建てたんだ?」
「そんな訳ないでしょ、これはきっと外から来た物よ」
「外からか・・・ジン、これは一体なんなんだ?」
「ああ、これは―――」
「これは電波搭よ」
声と共に現れたのは紫であった。
「なんだ紫か、こんなところで何をしているんだぜ?」
「ちょっと珍しいものを見かけてね」
「電波搭って言ってたけど、一体何なの?」
「電波搭ってのは、携帯電話やテレビを放映するのに使われる物なんだ」
「携帯電話って?」
「遠くで連絡取れる通信端末よ。貴女の陰陽玉とジンの浮遊玉みたいにね」
「それじゃ、この電波搭を使えれば、何処からでも話が出来るの?」
「どうだろうな・・・使われなくなって、かなり経つからな」
ジンは、電波搭の一部を払う。
塗装は完全に剥がれ、全体的に錆が目立っていた。
「そう言えば、最近の電波搭は凄いわよ。なんと、雲まで突き抜ける高さなのよ」
「嘘だな。そんな高い人工物なんて、作れる訳ないぜ」
「あら、本当の事なのに・・・ねえジン?」
「ああ。確か、一番高い奴で、六百メートルはしたな」
「六百メートル?」
「今の長さの定義よ。こっちだと、約百五十丈ってとこかしら?」
「百五十丈!? いくら何でもそんなの建てられる訳ないわ!」
「本当にあるんだが・・・証明が出来ないな」
ジンの一言で、紫はある事を思いついた。
「あら、証明なんて簡単じゃない。
自分の目でちゃんと見れば、本人達も納得するわよ」
「え? まさか・・・」
「そう。電波搭巡り、スキマツアーってところかしら」
―――――――――――
北海道札幌市、そこにジン達は来ていた。
「はーい、こちらが北海道の電波搭、さっぽろテレビ搭でーす♪」
紫は、バスガイドの服を着て、ノリノリで電波搭の説明をしていた。
一方、サニー達三人は興味津々で聞いているが、霊夢、魔理沙、ジンの三人はやや呆れ気味である。
「そこの三人、ノリが悪いわよ。せっかく旅行気分が台無しじゃない」
「・・・・・・色々と突っ込みどころが多すぎて、どうリアクションして良いのか分からん」
「そうね・・・それに、この服窮屈なのよね」
霊夢達が着ているのは、いつもの服装ではなく、目立たないように外来の服を着ていた。
「仕方ないじゃない、いつもの巫女服なんか着たら、目立ちすぎよ」
「それはそうだけど・・・」
「まあ、似合っているからいいじゃないか」
「そ、そう・・・?」
「ああ、たまにはこういう服を着ればいいと思うぞ」
「ま、まあ、気が向いたらね」
そう言う霊夢だが、何処か嬉しそうであった。
そんな一方、魔理沙達は紫と話していた。
「ところで、妖精が外に出て大丈夫なのか?」
「普通だったら、外に出た瞬間に存在を維持出来ないでしょうね」
「え?」
「私達って、結構危ない状態・・・?」
「大丈夫よ。私の能力で、存在を維持出来るようにしてあるから。
だけど、あまり離れ過ぎると消えてしまうから気を付けてね」
「は、はーい・・・」
「さてと・・・そこのお二人さん、いちゃつくのはそこまでにしなさい」
「い、いちゃついていないわよ!」
「あら、怖い怖い。さて、次に行くわよ」
紫達はスキマの中に入り、次の場所へと向かった
―――――――――――
それから名古屋、瀬戸、大阪、福岡などにおもむいた。
夕方頃には、日本で有名な東京タワーを観光していた。
「これが東京タワーよ」
「これまた凄いな・・・」
「いろんなやつを見たけど、これが一番大きいわね・・・」
「東京タワー。これを知らない日本人はいないほど、有名な電波搭だ」
「すっごい! 空まで届きそう!」
「あらあら、そんなにはしゃいじゃって、まだまだ大きい電波搭はあるのよ」
「ええ!? まだこれより大きい物があるの!?」
「いや、いくら何でもこれ以上のは建てられないだろ?」
驚く反応を見て、紫は楽しそうに笑った。
「ふふ、最初に言ったわよね? 最近のは凄いんだから」
「確かに、俺も最初に見た時は圧倒されたな」
「そんなに凄いんだ! 早く見ようよ!」
「ええ、それじゃ―――」
「待ってくれ紫」
紫がスキマを開こうとした時、突然ジンが呼び止めた。
「あら? どうしたのジン?」
「どうせ見るなら夜の方が良いんじゃないか?」
それを聞いた紫、納得した表情をする。
「なるほど、確かに夜で見た方が綺麗ね。それじゃ、一旦休憩にしましょう」
「ここ辺りなら、中華が美味いな。食べに行くか?」
「さんせーい♪ ちょうどお腹好いたし」
「ちょっと待ちなさい。お金はどうするのよ?」
「あ、そうだったぜ。私達は外の金なんて持ってなかった」
「ふふ、お金のことは任せなさい。たんまりとあるから」
(・・・出どころを聞いたらマズそうだな)
こうしてジン達は、中華料理店で食事をし、日が落ちるのを待った。
―――――――――――
夜、一行は光輝く搭。東京スカイツリーを見て心底驚いていた。
「うわぁ・・・すげぇ・・・」
「綺麗・・・・・・」
「凄い大きいわ!」
「本当・・・・・・でも、倒れたりしないのかしら?」
「その辺りは、ちゃんと設計してあるんだろう」
「だけど・・・これだけの物なら、凄く時間が掛かったでしょうね」
「ええ、これが建設されるのには九年は掛かったらしいわ」
「九年か・・・」
「妖怪にしてみれば短いかも知れないが、俺達人間にしては長い年月だ」
「そうね、人はどこまで行くのかしら?」
光輝くスカイツリーを見ながら、ジン達は感傷に浸った。
こうして、電波搭巡りは終わりを迎えた。
―――――――――――
翌日。ジン達は、遊びに来た早苗に電波搭巡りの話をしていた。
「いいなー、いいなー。私も行きたかったなー」
ジン達の話を聞いていた早苗は、心底羨ましそうに呟いた。
「まあまあ、土産があるんだ。それで機嫌を直してくれ」
ジンは、買ってきたお土産を早苗に渡した。
「流石はジンさん。こういう気づかいはしっかりしていますね」
お土産に機嫌を良くしたのか、早苗は嬉しそうに笑った。
「それにしても驚いたよな。まさか、あんなデカイ搭を建てられるんだもんな」
「東京スカイツリーですか?」
「ああ、本当に天まで届きそうな高さだったな。
さしずめ、現代のバベルの搭だぜ」
「その例えは止めろ。いかにも崩れ落ちそうだぞ」
「でも、ああゆうのを建てれば参拝客も増えるかしら?」
「それは良い考えですね。私も神奈子様に頼んでみましょう」
(辞めといた方が良い気がするんだが・・・)
そんな話をしていると、森の方から奇妙な音が聞こえ始めた。
「何の音だ?」
「森の方からだな」
「見にいきましょう」
四人は、音がした方へと向かって行った。
音を頼りに森を進む四人。
そして、森の奥で見たものは、幻想入りした電波搭に木が絡まっていく姿であった。
「何だこれは・・・?」
「あっ、霊夢さん達だ」
電波搭の近くにいたサニー達は、霊夢達の姿を見ると駆け寄った。
「これ、あんた達がやったの?」
「はい、ここを私達の神社にしようと思って」
「神社に? 何でまた?」
「人間が神社を特別な場所にするように、ここを私達妖精の特別な場所にするんです。つまり―――」
「「「妖精神社です」」」
霊夢達はサニー達の言葉に呆気に取られるが、直ぐに笑みを浮かべる。
「まあ、害が無さそうだし。好きにすると良いわ」
「本当ですか!」
「電波搭を御神体にするのか・・・御利益は一体何なんだ?」
「えっとですね――」
「遠くの仲間の――」
「絆を繋げるように」
「・・・そうか、良いご利益だな」
「ありがとう♪ それじゃ、私達は準備があるから」
そう言ってサニー達は、ここを神社にする準備を始める。
もっとも、それが正しいものかは別であるが――。
「これは強敵が現れたな御二人さん?」
「なに言っているのよ? 所詮は素人、私とは年季が違うのよ年季が」
「そうですよ。これでも立派な巫女なんですから!」
「まあ、立派はどうかはさておき、俺は好きだなこういうのは。
遠く離れた仲間の絆を繋ぐなんて、ロマンチックじゃないか」
「まあ、確かにそうね」
「案外、ダークホースになるかもな」
そんな話をしながら、新たな御神体になっていく電波搭を眺める四人。
この日を境に、幻想郷に小さな妖精の神社が出来たのであった。