東方軌跡録   作:1103

35 / 194
今回は三月精の話しを、大幅にアレンジした物です。
それと、今回は独自設定がありますので、少し疑問を持つかもしれません。


電波搭巡り

博麗神社にあるミズナラの木の近くで、サニーとルナはジンが作った糸電話で遊んでいた。

 

「聞こえるー?」

 

「うん、聞こえる♪ 聞こえる♪」

 

「本当! 凄いわね、どんな仕組みなのかしら?」

 

「うーん・・・」

 

「気になるんだったら、作った本人に聞いてみたら?」

 

スターは読書を一旦止め、二人にそう言った。

すると二人は、スターの意見に大いに感心する。

 

「その手があったわ! 流石スターね!」

 

「それじゃ、ジンのところに向かいましょ」

 

「ついでに、お酒ももらいましょ♪」

 

こうして三人は、神社を目指して歩き出す。

その途中、ある物を発見した。

 

「あれ? あれはなんだろう・・・?」

 

「どうしたのルナ?」

 

「うん、あれを見て」

 

ルナが指した方向には、奇妙な塔が立っていた。

 

 

サニー達に案内された霊夢、魔理沙、ジンの三人は突如現れた鉄塔を調べていた。

 

「これまた凄いな、いつ建てたんだ?」

 

「そんな訳ないでしょ、これはきっと外から来た物よ」

 

「外からか・・・ジン、これは一体なんなんだ?」

 

「ああ、これは―――」

 

「これは電波搭よ」

 

声と共に現れたのは紫であった。

 

「なんだ紫か、こんなところで何をしているんだぜ?」

 

「ちょっと珍しいものを見かけてね」

 

「電波搭って言ってたけど、一体何なの?」

 

「電波搭ってのは、携帯電話やテレビを放映するのに使われる物なんだ」

 

「携帯電話って?」

 

「遠くで連絡取れる通信端末よ。貴女の陰陽玉とジンの浮遊玉みたいにね」

 

「それじゃ、この電波搭を使えれば、何処からでも話が出来るの?」

 

「どうだろうな・・・使われなくなって、かなり経つからな」

 

ジンは、電波搭の一部を払う。

塗装は完全に剥がれ、全体的に錆が目立っていた。

 

「そう言えば、最近の電波搭は凄いわよ。なんと、雲まで突き抜ける高さなのよ」

 

「嘘だな。そんな高い人工物なんて、作れる訳ないぜ」

 

「あら、本当の事なのに・・・ねえジン?」

 

「ああ。確か、一番高い奴で、六百メートルはしたな」

 

「六百メートル?」

 

「今の長さの定義よ。こっちだと、約百五十丈ってとこかしら?」

 

「百五十丈!? いくら何でもそんなの建てられる訳ないわ!」

 

「本当にあるんだが・・・証明が出来ないな」

 

ジンの一言で、紫はある事を思いついた。

 

「あら、証明なんて簡単じゃない。

自分の目でちゃんと見れば、本人達も納得するわよ」

 

「え? まさか・・・」

 

「そう。電波搭巡り、スキマツアーってところかしら」

 

 

―――――――――――

 

 

北海道札幌市、そこにジン達は来ていた。

 

「はーい、こちらが北海道の電波搭、さっぽろテレビ搭でーす♪」

 

紫は、バスガイドの服を着て、ノリノリで電波搭の説明をしていた。

一方、サニー達三人は興味津々で聞いているが、霊夢、魔理沙、ジンの三人はやや呆れ気味である。

 

「そこの三人、ノリが悪いわよ。せっかく旅行気分が台無しじゃない」

 

「・・・・・・色々と突っ込みどころが多すぎて、どうリアクションして良いのか分からん」

 

「そうね・・・それに、この服窮屈なのよね」

 

霊夢達が着ているのは、いつもの服装ではなく、目立たないように外来の服を着ていた。

 

「仕方ないじゃない、いつもの巫女服なんか着たら、目立ちすぎよ」

 

「それはそうだけど・・・」

 

「まあ、似合っているからいいじゃないか」

 

「そ、そう・・・?」

 

「ああ、たまにはこういう服を着ればいいと思うぞ」

 

「ま、まあ、気が向いたらね」

 

そう言う霊夢だが、何処か嬉しそうであった。

そんな一方、魔理沙達は紫と話していた。

 

「ところで、妖精が外に出て大丈夫なのか?」

 

「普通だったら、外に出た瞬間に存在を維持出来ないでしょうね」

 

「え?」

 

「私達って、結構危ない状態・・・?」

 

「大丈夫よ。私の能力で、存在を維持出来るようにしてあるから。

だけど、あまり離れ過ぎると消えてしまうから気を付けてね」

 

「は、はーい・・・」

 

「さてと・・・そこのお二人さん、いちゃつくのはそこまでにしなさい」

 

「い、いちゃついていないわよ!」

 

「あら、怖い怖い。さて、次に行くわよ」

 

紫達はスキマの中に入り、次の場所へと向かった

 

―――――――――――

 

それから名古屋、瀬戸、大阪、福岡などにおもむいた。

夕方頃には、日本で有名な東京タワーを観光していた。

 

「これが東京タワーよ」

 

「これまた凄いな・・・」

 

「いろんなやつを見たけど、これが一番大きいわね・・・」

 

「東京タワー。これを知らない日本人はいないほど、有名な電波搭だ」

 

「すっごい! 空まで届きそう!」

 

「あらあら、そんなにはしゃいじゃって、まだまだ大きい電波搭はあるのよ」

 

「ええ!? まだこれより大きい物があるの!?」

 

「いや、いくら何でもこれ以上のは建てられないだろ?」

 

驚く反応を見て、紫は楽しそうに笑った。

 

「ふふ、最初に言ったわよね? 最近のは凄いんだから」

 

「確かに、俺も最初に見た時は圧倒されたな」

 

「そんなに凄いんだ! 早く見ようよ!」

 

「ええ、それじゃ―――」

 

「待ってくれ紫」

 

紫がスキマを開こうとした時、突然ジンが呼び止めた。

 

「あら? どうしたのジン?」

 

「どうせ見るなら夜の方が良いんじゃないか?」

 

それを聞いた紫、納得した表情をする。

 

「なるほど、確かに夜で見た方が綺麗ね。それじゃ、一旦休憩にしましょう」

 

「ここ辺りなら、中華が美味いな。食べに行くか?」

 

「さんせーい♪ ちょうどお腹好いたし」

 

「ちょっと待ちなさい。お金はどうするのよ?」

 

「あ、そうだったぜ。私達は外の金なんて持ってなかった」

 

「ふふ、お金のことは任せなさい。たんまりとあるから」

 

(・・・出どころを聞いたらマズそうだな)

 

こうしてジン達は、中華料理店で食事をし、日が落ちるのを待った。

 

―――――――――――

 

夜、一行は光輝く搭。東京スカイツリーを見て心底驚いていた。

 

「うわぁ・・・すげぇ・・・」

 

「綺麗・・・・・・」

 

「凄い大きいわ!」

 

「本当・・・・・・でも、倒れたりしないのかしら?」

 

「その辺りは、ちゃんと設計してあるんだろう」

 

「だけど・・・これだけの物なら、凄く時間が掛かったでしょうね」

 

「ええ、これが建設されるのには九年は掛かったらしいわ」

 

「九年か・・・」

 

「妖怪にしてみれば短いかも知れないが、俺達人間にしては長い年月だ」

 

「そうね、人はどこまで行くのかしら?」

 

光輝くスカイツリーを見ながら、ジン達は感傷に浸った。

こうして、電波搭巡りは終わりを迎えた。

 

―――――――――――

 

翌日。ジン達は、遊びに来た早苗に電波搭巡りの話をしていた。

 

「いいなー、いいなー。私も行きたかったなー」

 

ジン達の話を聞いていた早苗は、心底羨ましそうに呟いた。

 

「まあまあ、土産があるんだ。それで機嫌を直してくれ」

 

ジンは、買ってきたお土産を早苗に渡した。

 

「流石はジンさん。こういう気づかいはしっかりしていますね」

 

お土産に機嫌を良くしたのか、早苗は嬉しそうに笑った。

 

「それにしても驚いたよな。まさか、あんなデカイ搭を建てられるんだもんな」

 

「東京スカイツリーですか?」

 

「ああ、本当に天まで届きそうな高さだったな。

さしずめ、現代のバベルの搭だぜ」

 

「その例えは止めろ。いかにも崩れ落ちそうだぞ」

 

「でも、ああゆうのを建てれば参拝客も増えるかしら?」

 

「それは良い考えですね。私も神奈子様に頼んでみましょう」

 

(辞めといた方が良い気がするんだが・・・)

 

そんな話をしていると、森の方から奇妙な音が聞こえ始めた。

 

「何の音だ?」

 

「森の方からだな」

 

「見にいきましょう」

 

四人は、音がした方へと向かって行った。

 

 

音を頼りに森を進む四人。

そして、森の奥で見たものは、幻想入りした電波搭に木が絡まっていく姿であった。

 

「何だこれは・・・?」

 

「あっ、霊夢さん達だ」

 

電波搭の近くにいたサニー達は、霊夢達の姿を見ると駆け寄った。

 

「これ、あんた達がやったの?」

 

「はい、ここを私達の神社にしようと思って」

 

「神社に? 何でまた?」

 

「人間が神社を特別な場所にするように、ここを私達妖精の特別な場所にするんです。つまり―――」

 

「「「妖精神社です」」」

 

霊夢達はサニー達の言葉に呆気に取られるが、直ぐに笑みを浮かべる。

 

「まあ、害が無さそうだし。好きにすると良いわ」

 

「本当ですか!」

 

「電波搭を御神体にするのか・・・御利益は一体何なんだ?」

 

「えっとですね――」

 

「遠くの仲間の――」

 

「絆を繋げるように」

 

「・・・そうか、良いご利益だな」

 

「ありがとう♪ それじゃ、私達は準備があるから」

 

そう言ってサニー達は、ここを神社にする準備を始める。

もっとも、それが正しいものかは別であるが――。

 

「これは強敵が現れたな御二人さん?」

 

「なに言っているのよ? 所詮は素人、私とは年季が違うのよ年季が」

 

「そうですよ。これでも立派な巫女なんですから!」

 

「まあ、立派はどうかはさておき、俺は好きだなこういうのは。

遠く離れた仲間の絆を繋ぐなんて、ロマンチックじゃないか」

 

「まあ、確かにそうね」

 

「案外、ダークホースになるかもな」

 

そんな話をしながら、新たな御神体になっていく電波搭を眺める四人。

この日を境に、幻想郷に小さな妖精の神社が出来たのであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。