東方軌跡録   作:1103

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今回は、パッと思いついた話しです。
ちょっと内容が薄い気がしますが・・・


霊夢の風邪

桜は散り、徐々に日差しが暑くなる時期。

博麗の巫女である博麗霊夢は風邪で寝込んでいた。

 

「霊夢、大丈夫か?」

 

「う、うん・・・ゴホッ、ゴホッ」

 

「あんまり無茶をするな。ほら、お粥を作ったぞ」

 

「ありがとう・・・」

 

「熱いから気を付けろよ」

 

「うん・・・」

 

ジンは霊夢にお粥を渡した。そして霊夢はそれをゆっくりと口にする。

 

「美味しい・・・やっぱりジンのお粥は最高よ」

 

「ありがとう。もっとも、それしか作れないがな」

 

「それだけで十分よ。

間違っても、お粥以外は作らないように」

 

「わかってる。自分の力量ぐらい把握している」

 

そんな他愛の話をしながら、霊夢はお粥を平らげた。

 

「ごちそうさま」

 

「お粗末さまでした。さて――」

 

ジンは立ち上がり、片付けし始める。

 

「それじゃ、神社の事は俺に任せて、今日はゆっくり休んでくれ」

 

「お願いね」

 

「任せろ」

 

こうして、霊夢抜きの一日が始まった。

 

 

今の博麗神社での役割を簡単に説明すると、退治請負、売店員、黄金酒虫の世話、ミズナラの御神木の案内等である。最近では、博麗酒を酒屋に配達する仕事が出来た。

退治請負は霊夢が担当し、酒虫の世話と配達はジンが、御神木の案内はサニー達がそれぞれ担当している。

売店員は最初はジンが担当していたが、今では手が空いている人がやるようになっている。

 

「それじゃ人里に行くから、留守と霊夢の事を頼んだぞ」

 

「「「はーい」」」

 

サニー達に見送られながら、ジンは配達に向かった。

 

―――――――――――

 

配達が終わると、ジンはそのまま買い物をする事にした。風邪で寝込んでいる霊夢の為に、少しでも精のつくものを食べさせたいからである。

 

「さて、何を買えばいいものか・・・ん?」

 

ふと、偶然にも薬の販売をしている鈴仙を見掛ける。

 

(そうだな、鈴仙なら風邪の時に何を食べさせたら良いかわかるかも知れない)

 

そう思ったジンは、鈴仙に声を掛ける事にした。

 

「おーい鈴仙ー」

 

「ん? あ、ジンじゃない。こんにちは」

 

「こんにちは、今日も訪問販売か?」

 

「ええ、そっちは?」

 

「こっちは配達と買い物だ。その事で聞きたい事があるんだ」

 

ジンは鈴仙に、霊夢の風邪の事を話した。

 

「あの霊夢が風邪ね・・・」

 

「ああ、それで何を食べさせたら良いか教えて貰えないか?」

 

「別に良いわよ」

 

鈴仙は自分が知る限りの事をジンに教えた。

 

「私が知っているのはそれぐらいよ」

 

「ありがとう、助かる」

 

「それぐらい良いわよ。なんなら、簡単な診察をしておこうか?」

 

「いや、十分だ。ありがとう鈴仙」

 

「そう・・・あ、そうだ、良かったらこれ使って見て」

 

そう言って、一つの小瓶をジンに手渡した。

 

「これは?」

 

「師匠の新薬、体の不調を整えるらしいわ」

 

新薬、という言葉に不安を抱くジンだったが、鈴仙の好意を無下にするわけもいか無いので、それを受けとる事にした。

 

「ありがたく使わせて貰う」

 

「お大事にね」

 

鈴仙に礼を言ったジンは、市場に向かう事にした。

 

―――――――――――

 

神社に戻ると、そこにはサニー達の他に魔理沙と天子の姿があった。

 

「あ、おかえりなさい」

 

「よお、ジン」

 

「こんにちはジン」

 

「二人とも、遊びに来ていたのか」

 

「遊びに来たのはそこの魔法使いだけよ。

私は暇だから、手伝いに来たのよ」

 

「別に良いだろ、それよりも霊夢の奴はどうした?」

 

「霊夢なら、今日は風邪で寝込んでいる」

 

「なに!? 本当か!」

 

「ああ、今は大人しく寝ているから、静かにしてもらって良いか?」

 

「わかったぜ。ところで、昼はどうするつもりなんだ?」

 

「俺はお粥しか作れないからな、ルナに頼もうと思っている」

 

「それなら、私に任せて欲しいんだが」

 

「え? 魔理沙さん、料理出来たんですか?」

 

「これでも一人暮らしだからな、それなりに作れるぜ」

 

「・・・人が食べれる物よね?」

 

「おい! 失敬だぞ! 私をなんだと思っている! そこまで言うなら、私の料理の腕を見せてやる!」

 

「お、おい!」

 

魔理沙はジンが持っていた買い物袋を奪い、そのまま神社の台所に走って行った。

 

 

居間のテーブルの上には、魔理沙が作った料理の数々があった。

どれも、芳ばしい香りを漂わせていた。

 

「「「「「おお!」」」」」

 

「どんなもんだ。私だって、これくらいは作れるぜ」

 

「これは意外な一面ね・・・」

 

「どれも美味しそう♪」

 

「それじゃ、いただき―――」

 

「待ちなさい!」

 

食べようとしたその時、天子が突然止めた。

 

「どうした天子?」

 

「みんな騙されてはいけないわ。見た目が良くても、味が悪い事だってあるのよ」

 

「お前・・・難癖つける気か?」

 

天子と魔理沙の間に火花が散る。

 

「天子、それはいくらなんでも失礼だぞ。先ずは食べてから――」

 

ジンは魔理沙の料理を躊躇なく、口に入れた。

 

「ど、どう・・・?」

 

「・・・うん、普通に美味いぞ」

 

「ほれ見たことか」

 

「ほ、本当に?」

 

天子も恐る恐る料理を口にする。

 

「・・・本当だ。美味しいわね」

 

「だから言っただろ、一人暮らししているから、それなりに料理出来るって」

 

「だって、あんなゴミ屋敷に住んでいるんだから、料理なんかしていないって思ったのよ。そもそも、あんな所でどうやって料理するのよ?」

 

「喧嘩を売っているなら、買うぜ」

 

「あら? やる気?」

 

「二人とも辞めろ! 病人がいるんだぞ!」

 

ジンの制止の言葉に、魔理沙と天子は大人しく引き下がる。

 

「取り合えず天子、魔理沙に謝れ」

 

「何で私が―――」

 

天子はジンの鋭い目に睨まれ、言おうとした言葉を飲み込んだ。

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

「魔理沙、悪かったな。せっかく作って貰ったのに」

 

「いや、わかって貰えたのなら別に―――」

 

「それはそうと、また物が増えて来たのか? 蒐集するのは個人の勝手だが、やり過ぎるとまた涌くぞ?」

 

「こ、怖いことを言うなよ! トラウマが甦るだろうが!」

 

「だったら、少しは自重した方が良い。だいたい――――」

 

「あ! 用事を思い出したから、今日は帰るぜ! じゃあな!」

 

魔理沙はそそくさと外に出て、逃げるように神社を去った。

 

「・・・逃げたね」

 

「逃げたわね」

 

「はあ・・・あの様子じゃ、またゴミ屋敷なっていそうだな」

 

そんな事を呟きながら、ジンは魔理沙の料理を霊夢の所に運ぶのであった。

 

 

霊夢の所に食事を持って来たジンは、彼女が寝ている間の出来事を話した。

 

「そう、私が寝ている時にそんな事が」

 

「ああ、まったく持って意外だったな」

 

「魔理沙は自分から作ったりはしないからね」

 

「ところで霊夢、体調はどうだ?」

 

「寝ていたら、だいぶ良くなってきたわ」

 

「どれどれ・・・」

 

ジンは霊夢の額に手をやる。若干熱いが、それでも今朝より熱が下がっていた。

 

「うん、だいぶ落ち着いて来たな・・・って、どうした?」

 

「な、何でもないわよ・・・」

 

「? そうか・・・あ」

 

ジンは何かを思い出したかのように、ポケットの中の小瓶を取り出す。

 

「それは?」

 

「鈴仙から渡された新薬だ。何でも、飲めば体調が良くなるらしい」

 

「それって・・・大丈夫なの?」

 

「まあ、流石に危険な物は販売しないだろ。不安なら、試しに俺が飲んでみるが」

 

「良いわよ、そこまでしなくて」

 

霊夢はジンから薬を受け取り、それを飲んだ。

 

「どうだ?」

 

「うーん・・・特に変わったところは無いわね」

 

「即効性じゃないみたいだな。ともかく、後は寝てて良いぞ」

 

ジンは食べ終わった食器類を片付け、部屋を後にする。

それを見送った霊夢は、再び眠りについた。

 

 

霊夢が目を覚ますと、既に日は落ちていた。

 

「うわ、もう夜なの・・・どれくらい寝てたんだろう・・・」

 

霊夢は起き上がり、体の体調を確認する。

熱は完全に下がり、体のだるさは無くなっていた。

 

(うん、もう大丈夫そうね)

 

すると、小さくお腹の虫がなってしまった。

慌てて回りを見る。幸いな事に、部屋には自分しかいなかった。

 

「ほっ・・・良かった、誰にも聞かれなくて」

 

「聞かれたらまずい事でもあるのか?」

 

「うわぁぁぁ!?」

 

突然入って来たジンに、霊夢は驚き、思わず声を上げて飛び退いた。

一方ジンは、怪訝な表情で霊夢を見る。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないわよ! いきなり背後から声を掛けないで!」

 

「悪かったって、そんなに驚くなよ」

 

「驚くわ!」

 

霊夢は声を荒げに言う。

そんな霊夢の姿を見ていたジンは、何故か微笑んでいた。

 

「な、何よ・・・」

 

「いや、すっかり元気になったな、と思って」

 

「おがげさまで」

 

「腹へっているだろ? ルナの作り置きがあるぞ」

 

「そうね、ちょうどお腹すい――――ジン?」

 

「なんだ?」

 

「もしかして・・・聞いていた?」

 

「・・・・・・人は誰でも腹が減るもんだ」

 

「~~~!!!」

 

霊夢は顔を真っ赤にして、ジンに向けて枕を投げ付けた。

 

―――――――――――

 

次の朝、霊夢はいつもの巫女服に着替え、お祓い棒を手にして――――。

 

「さあ、今日は頑張るわよ!」

 

楽園の素敵な巫女は、その日はいつも以上に張り切っていた。


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