ちょっと内容が薄い気がしますが・・・
桜は散り、徐々に日差しが暑くなる時期。
博麗の巫女である博麗霊夢は風邪で寝込んでいた。
「霊夢、大丈夫か?」
「う、うん・・・ゴホッ、ゴホッ」
「あんまり無茶をするな。ほら、お粥を作ったぞ」
「ありがとう・・・」
「熱いから気を付けろよ」
「うん・・・」
ジンは霊夢にお粥を渡した。そして霊夢はそれをゆっくりと口にする。
「美味しい・・・やっぱりジンのお粥は最高よ」
「ありがとう。もっとも、それしか作れないがな」
「それだけで十分よ。
間違っても、お粥以外は作らないように」
「わかってる。自分の力量ぐらい把握している」
そんな他愛の話をしながら、霊夢はお粥を平らげた。
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした。さて――」
ジンは立ち上がり、片付けし始める。
「それじゃ、神社の事は俺に任せて、今日はゆっくり休んでくれ」
「お願いね」
「任せろ」
こうして、霊夢抜きの一日が始まった。
今の博麗神社での役割を簡単に説明すると、退治請負、売店員、黄金酒虫の世話、ミズナラの御神木の案内等である。最近では、博麗酒を酒屋に配達する仕事が出来た。
退治請負は霊夢が担当し、酒虫の世話と配達はジンが、御神木の案内はサニー達がそれぞれ担当している。
売店員は最初はジンが担当していたが、今では手が空いている人がやるようになっている。
「それじゃ人里に行くから、留守と霊夢の事を頼んだぞ」
「「「はーい」」」
サニー達に見送られながら、ジンは配達に向かった。
―――――――――――
配達が終わると、ジンはそのまま買い物をする事にした。風邪で寝込んでいる霊夢の為に、少しでも精のつくものを食べさせたいからである。
「さて、何を買えばいいものか・・・ん?」
ふと、偶然にも薬の販売をしている鈴仙を見掛ける。
(そうだな、鈴仙なら風邪の時に何を食べさせたら良いかわかるかも知れない)
そう思ったジンは、鈴仙に声を掛ける事にした。
「おーい鈴仙ー」
「ん? あ、ジンじゃない。こんにちは」
「こんにちは、今日も訪問販売か?」
「ええ、そっちは?」
「こっちは配達と買い物だ。その事で聞きたい事があるんだ」
ジンは鈴仙に、霊夢の風邪の事を話した。
「あの霊夢が風邪ね・・・」
「ああ、それで何を食べさせたら良いか教えて貰えないか?」
「別に良いわよ」
鈴仙は自分が知る限りの事をジンに教えた。
「私が知っているのはそれぐらいよ」
「ありがとう、助かる」
「それぐらい良いわよ。なんなら、簡単な診察をしておこうか?」
「いや、十分だ。ありがとう鈴仙」
「そう・・・あ、そうだ、良かったらこれ使って見て」
そう言って、一つの小瓶をジンに手渡した。
「これは?」
「師匠の新薬、体の不調を整えるらしいわ」
新薬、という言葉に不安を抱くジンだったが、鈴仙の好意を無下にするわけもいか無いので、それを受けとる事にした。
「ありがたく使わせて貰う」
「お大事にね」
鈴仙に礼を言ったジンは、市場に向かう事にした。
―――――――――――
神社に戻ると、そこにはサニー達の他に魔理沙と天子の姿があった。
「あ、おかえりなさい」
「よお、ジン」
「こんにちはジン」
「二人とも、遊びに来ていたのか」
「遊びに来たのはそこの魔法使いだけよ。
私は暇だから、手伝いに来たのよ」
「別に良いだろ、それよりも霊夢の奴はどうした?」
「霊夢なら、今日は風邪で寝込んでいる」
「なに!? 本当か!」
「ああ、今は大人しく寝ているから、静かにしてもらって良いか?」
「わかったぜ。ところで、昼はどうするつもりなんだ?」
「俺はお粥しか作れないからな、ルナに頼もうと思っている」
「それなら、私に任せて欲しいんだが」
「え? 魔理沙さん、料理出来たんですか?」
「これでも一人暮らしだからな、それなりに作れるぜ」
「・・・人が食べれる物よね?」
「おい! 失敬だぞ! 私をなんだと思っている! そこまで言うなら、私の料理の腕を見せてやる!」
「お、おい!」
魔理沙はジンが持っていた買い物袋を奪い、そのまま神社の台所に走って行った。
居間のテーブルの上には、魔理沙が作った料理の数々があった。
どれも、芳ばしい香りを漂わせていた。
「「「「「おお!」」」」」
「どんなもんだ。私だって、これくらいは作れるぜ」
「これは意外な一面ね・・・」
「どれも美味しそう♪」
「それじゃ、いただき―――」
「待ちなさい!」
食べようとしたその時、天子が突然止めた。
「どうした天子?」
「みんな騙されてはいけないわ。見た目が良くても、味が悪い事だってあるのよ」
「お前・・・難癖つける気か?」
天子と魔理沙の間に火花が散る。
「天子、それはいくらなんでも失礼だぞ。先ずは食べてから――」
ジンは魔理沙の料理を躊躇なく、口に入れた。
「ど、どう・・・?」
「・・・うん、普通に美味いぞ」
「ほれ見たことか」
「ほ、本当に?」
天子も恐る恐る料理を口にする。
「・・・本当だ。美味しいわね」
「だから言っただろ、一人暮らししているから、それなりに料理出来るって」
「だって、あんなゴミ屋敷に住んでいるんだから、料理なんかしていないって思ったのよ。そもそも、あんな所でどうやって料理するのよ?」
「喧嘩を売っているなら、買うぜ」
「あら? やる気?」
「二人とも辞めろ! 病人がいるんだぞ!」
ジンの制止の言葉に、魔理沙と天子は大人しく引き下がる。
「取り合えず天子、魔理沙に謝れ」
「何で私が―――」
天子はジンの鋭い目に睨まれ、言おうとした言葉を飲み込んだ。
「・・・・・・ごめんなさい」
「魔理沙、悪かったな。せっかく作って貰ったのに」
「いや、わかって貰えたのなら別に―――」
「それはそうと、また物が増えて来たのか? 蒐集するのは個人の勝手だが、やり過ぎるとまた涌くぞ?」
「こ、怖いことを言うなよ! トラウマが甦るだろうが!」
「だったら、少しは自重した方が良い。だいたい――――」
「あ! 用事を思い出したから、今日は帰るぜ! じゃあな!」
魔理沙はそそくさと外に出て、逃げるように神社を去った。
「・・・逃げたね」
「逃げたわね」
「はあ・・・あの様子じゃ、またゴミ屋敷なっていそうだな」
そんな事を呟きながら、ジンは魔理沙の料理を霊夢の所に運ぶのであった。
霊夢の所に食事を持って来たジンは、彼女が寝ている間の出来事を話した。
「そう、私が寝ている時にそんな事が」
「ああ、まったく持って意外だったな」
「魔理沙は自分から作ったりはしないからね」
「ところで霊夢、体調はどうだ?」
「寝ていたら、だいぶ良くなってきたわ」
「どれどれ・・・」
ジンは霊夢の額に手をやる。若干熱いが、それでも今朝より熱が下がっていた。
「うん、だいぶ落ち着いて来たな・・・って、どうした?」
「な、何でもないわよ・・・」
「? そうか・・・あ」
ジンは何かを思い出したかのように、ポケットの中の小瓶を取り出す。
「それは?」
「鈴仙から渡された新薬だ。何でも、飲めば体調が良くなるらしい」
「それって・・・大丈夫なの?」
「まあ、流石に危険な物は販売しないだろ。不安なら、試しに俺が飲んでみるが」
「良いわよ、そこまでしなくて」
霊夢はジンから薬を受け取り、それを飲んだ。
「どうだ?」
「うーん・・・特に変わったところは無いわね」
「即効性じゃないみたいだな。ともかく、後は寝てて良いぞ」
ジンは食べ終わった食器類を片付け、部屋を後にする。
それを見送った霊夢は、再び眠りについた。
霊夢が目を覚ますと、既に日は落ちていた。
「うわ、もう夜なの・・・どれくらい寝てたんだろう・・・」
霊夢は起き上がり、体の体調を確認する。
熱は完全に下がり、体のだるさは無くなっていた。
(うん、もう大丈夫そうね)
すると、小さくお腹の虫がなってしまった。
慌てて回りを見る。幸いな事に、部屋には自分しかいなかった。
「ほっ・・・良かった、誰にも聞かれなくて」
「聞かれたらまずい事でもあるのか?」
「うわぁぁぁ!?」
突然入って来たジンに、霊夢は驚き、思わず声を上げて飛び退いた。
一方ジンは、怪訝な表情で霊夢を見る。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ! いきなり背後から声を掛けないで!」
「悪かったって、そんなに驚くなよ」
「驚くわ!」
霊夢は声を荒げに言う。
そんな霊夢の姿を見ていたジンは、何故か微笑んでいた。
「な、何よ・・・」
「いや、すっかり元気になったな、と思って」
「おがげさまで」
「腹へっているだろ? ルナの作り置きがあるぞ」
「そうね、ちょうどお腹すい――――ジン?」
「なんだ?」
「もしかして・・・聞いていた?」
「・・・・・・人は誰でも腹が減るもんだ」
「~~~!!!」
霊夢は顔を真っ赤にして、ジンに向けて枕を投げ付けた。
―――――――――――
次の朝、霊夢はいつもの巫女服に着替え、お祓い棒を手にして――――。
「さあ、今日は頑張るわよ!」
楽園の素敵な巫女は、その日はいつも以上に張り切っていた。