東方軌跡録   作:1103

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二回目の家出ネタです。
自分の中では、家出しそうなキャラは鈴仙と天子と思っています。


天子の家出

博霊神社には、新しい目玉商品があった。

その名は博麗酒、ジンが捕まえて来た黄金酒虫から出る酒である。

希少種なので、他の酒虫や酒とは比べられない味であり、それを求めて連日連夜、神社を訪れる者が後を絶たなかった。

 

「どうぞー博霊酒です」

 

「押さないで、まだあるから」

 

「ほら、ルナ! 次の早く持って来て!」

 

「う、うん! わかっ――キャア!」

 

「もう、何を転んでるのよ・・・」

 

「みんな大変ね・・・」

 

「スター! サボっていないで手伝って!」

 

今日も博麗神社の面々は、忙しく働くのであった。

 

―――――――――――

 

今日の営業も無事に終わると、霊夢は楽しそうに札束を数えていた。

 

「一枚、二枚、三枚・・・ふふふふふ♪」

 

「霊夢さん・・・不気味に笑っているよ・・・」

 

「もの凄い怖い・・・」

 

「まるで般若みたい・・・」

 

「ちょっとあんた達、聞こえているわよ」

 

「「「キャアアア!!」」」

 

サニー達は霊夢に睨まれると、その場から逃げ、ジンの後ろに隠れた。

 

「おい霊夢、あまりサニー達をいじめるな」

 

「別に、いじめていないわよ」

 

「それなら良いが・・・。ところで、話があるんだが」

 

「なになに! また新しいアイディア!?」

 

「えらい食い付きだな・・・。博麗酒を人里の酒場に進出させようと思う。

今のままだと、ここまで買いに行くのはつらいと思うんだ」

 

「なるほど・・・これで更に収入が増えるわね! 流石ジンね!」

 

「いや・・・その、それほどでもない」

 

「それじゃ、前祝いとして、盛大にやるわよ!」

 

霊夢は張り切って、台所に向かった。

その姿は、とても楽しそうであった。

 

―――――――――――

 

人里の酒屋に、ジンは博麗酒を届けていた。

 

「取り合えず、今回はこれだけだ。売り行きを見ながら、徐々に増やして行こうと思っている」

 

「そんな事をしなくても売って、皆美味いって評判だよ」

 

「それでも、様子見は大事だ。それに、生産量が限られているからな・・・酒蔵でも作ろうかな・・・」

 

「もし作るなら相談に乗るよ。俺はこう見ても、酒に関して人里一番だからな」

 

「ありがとう、もしそうなったら色々頼む」

 

「任せておきな!」

 

ジンは酒屋の店主に頭を下げ、店を出た。

 

「さて、団子でも買って帰るか」

 

ジンは団子屋に足を運び、霊夢達の土産として団子を買おうとしたその時―――。

 

「なに? 金がない?」

 

「ん?」

 

ジンは声の方を見ると、団子の店員と一人の少女が何か言い争っていた。

 

「しょうがないじゃない、無いものは無いんだから」

 

「あのねお客さん。金が無いから、はいそうですかって訳にはいかないよ」

 

「うるさいわね、私は天人の比那名居天子よ!」

 

少女―――天子は高らかに自分の名前を叫んだ。

それを聞いたジンは、頭を抱えた。

 

「あいつ・・・何をやってんだ・・・」

 

ジンは呆れながらも、天子の方に近づいていった。

 

「あのね・・・天人だろうが何だろうが、食い逃げは許さないよ!」

 

「やるって言うの? 良いわよ、私の力を見せてあげるわ!」

 

「見せんで良い」

 

「アイタ!」

 

ジンは臨戦態勢の天子に対して、その辺の石で頭を殴った。

天子は殴られた部分を擦りながら、殴った来た人物を睨み付けた。

 

「いたたた・・・誰よ! この私を殴る馬鹿は!」

 

「悪かったな、馬鹿で」

 

「あら、ジンじゃない。女性を殴るなんて男としてどうなのよ? しかも石で!」

 

「お前が馬鹿な事をするからだろ?」

 

「私を馬鹿って言ったわね!」

 

「ああ言った。それがどうした?」

 

「私は天人なのよ! 馬鹿な訳無いじゃない!」

 

「・・・なら、金を忘れて、あまつさえ食い逃げしようとするのは馬鹿じゃないなのか?」

 

「まだ食い逃げしていないわよ!」

 

「それじゃ、どうするつもりなんだ?」

 

「そ、それは・・・」

 

「はあ・・・やれやれ、そこの店員」

 

「は、はい!」

 

「この子は俺の知り合いなんだ。建て替えるから、今回は見逃して欲しい」

 

ジンのその言葉に、天子は再び偉そうな態度を取った。

 

「あら、払ってくれるの?」

 

「払わないと、この店を潰すつもりだろ」

 

「そんな事しないわよ!」

 

「あーはいはい、わかったから。それでいくら?」

 

「お会計はこれぐらいになるよ」

 

「・・・マジ?」

 

「マジ」

 

ジンは天子のお代を建て替えるが、霊夢達の土産を買えなくなってしまった。

 

 

団子屋を後にし、帰路につこうとするジンに、天子が呼び止める。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「・・・なんだ? 金なら後日返してくれれば良い」

 

「そうじゃなくて! その・・・しばらく泊めてくれない?」

 

「・・・・・・へ?」

 

「だから! しばらく泊めて欲しいのよ!」

 

「何でまた?」

 

「実は今、家出をしてて・・・」

 

天子の話によると、彼女の両親と喧嘩してしまい、そのまま家出をしたらしい。

 

「なるほど、それで金もなく、行く当てもないって訳か・・・何でまたそんな事に?」

 

「べ、別に良いじゃないそんな事! 良いから泊めて頂戴」

 

「断る」

 

「何でよ!? あの兎は泊めて、私は駄目なのよ!?」

 

「何処から聞いたんだそんな事・・・。まあともかく、鈴仙とお前じゃ、決定的に違う所がある」

 

「もしかして・・・ウサミミ?」

 

ジンは無言で、天子の頭を石で殴った。

 

「違うわアホ」

 

「痛い~いちいち殴らないでよ馬鹿!」

 

「お前がアホな事を言うからだろ。良いか、お前に足りていないのは礼儀だ。

俺も、人の事はあまり言えないが、その目の上目線は止めろ」

 

「私は天人なのよ! どうしてそんな―――」

 

「なら諦めろ」

 

「うっ・・・わ、わかったわよ」

 

天子は渋々、ジンに頭を下げて頼んだ。

 

「どうか、貴方の所に泊めて下さい」

 

「・・・わかった。ただし、泊まる間は神社の仕事を手伝って貰うからな」

 

「はあ!? そんなの聞いていないわよ!」

 

「それくらいして貰わないと、霊夢を説得出来ん。嫌なら諦めてくれ」

 

「ううっ・・・わかったわよ」

 

ジンの条件に、天子は不服そうに承諾した。

 

―――――――――――

 

「帰れ」

 

神社に帰って来て、事情を聞いた霊夢の最初の言葉だった。

 

「待てよ霊夢、いきなりそれは無いだろ」

 

「あのねジン。いくら神社が裕福になっていると言っても、ただ飯食らいの居候なんてお断りよ」

 

「それは俺も賛成だが、ここにいる間は神社の仕事を手伝うって言ってるぞ」

 

「あんたが?」

 

「そ、そうよ! 天人である私が手伝うんだから、ありがたく思いなさいよね!」

 

「・・・ジン、ちょっと」

 

霊夢は天子に聞こえないように、ジンに耳打ちをする。

 

「大丈夫なの?」

 

「うーん・・・正直不安だが、こうでもしないと反対するだろ?」

 

「それはそうだけど・・・」

 

「しばらく俺が面倒見るから、頼むよ霊夢」

 

「う~ん・・・わかったわよ。言ったからには、ちゃんと責任持ちなさいよ」

 

「ああ、もちろんだ」

 

こうして、天子は博麗神社に居座る事になった。

 

―――――――――――

 

次の日から、ジンは天子に仕事を教え始めた。

彼女がこれからやるのは、黄金酒虫の壺から酒を取り出し、瓶に入れる作業である。

 

「へぇー、これが博麗酒なのね」

 

「正確には、黄金酒虫酒だ。でも、販売するなら神社の名前にした方が知名が上がるからな」

 

「あんたって、商売上手よね・・・」

 

「これぐらい、誰だって思いつく。それよりも、やるぞ」

 

ジンは天子にじょーごを手渡す。

 

「え? まさかこれで移すの?」

 

「当たり前だろ、それ以外に方法が無いからな」

 

そう言って、黙々と瓶に酒を入れていくジン。

天子も、見よう見まねで作業を始めた。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

十分後―――。

 

「・・・・・・」

「・・・・・っ」

 

三十分後――。

 

「・・・・・・」

 

「っ~~!」

 

四十―――。

 

「やってられるか!」

 

天子は我慢の限界を越え、じょーごを放り出した。

 

「おい天子、まだ一時間も経っていないぞ」

 

「はっきり言って! 地味み過ぎるのよ! 他に無いの! 私に相応しい仕事は!?」

 

「やれやれ、じゃあ売店をやってみるか? 商品を売ったり、参拝客の相手をしたり」

 

「最初からそれにしなさいよ。良いわ、やって上げるわ」

 

「・・・先行きが不安だ」

 

ジンは不安を抱きながらも、天子に売店員を任せた。

 

 

売店には、神社の様々な道具を売っていた。

霊夢の退魔道具や土産物、最近出来た博麗酒などが売られてあった。

特に、博霊酒は人気あり、これを求めて人や妖怪が毎日行列をなしていた。

それに応対しているのは天子とサニー達であった。

 

「な、何でこんなに人が来るのよー!?」

 

「喋っていないで、応対しなさいよ!」

 

「妖精の癖に! 私に指図しないで!」

 

「ほらそこ、喧嘩しないで、まだまだ客は来るんだから」

 

「ええ!? まだ来るの!?」

 

「少なくとも、売り切れるまでは来るわよ」

 

「ひえぇぇ~~~」

 

天子の悲鳴が、博麗神社に木霊した。

 

 

昼頃になると、博麗酒はようやく売り切れになり、客足もようやく落ち着いて来た。

 

「ふう・・・疲れた・・・」

 

「お疲れ様」

 

疲れて座り込んでいる天子に、ジンは冷たい水を差し出す。

 

「ありがと・・・んぐ、んぐ・・・ぷはぁ、生き返る~」

 

「売店員の感想は?」

 

「しんどいわ・・・もう少しハードルを下げて・・・」

 

「うーん・・・そうだな・・・」

 

ジンが次に何をやらせようと考えていると、霊夢が何処かに出掛ける準備をしていた。

 

「霊夢、何処かに出掛けるのか?」

 

「ええ、退治依頼が来たから出掛けるわ。夕方には戻るから」

 

その話を聞いた天子は、突然立ち上がった。

 

「それよ!」

 

「うわ!? いきなりなんだ?」

 

「私のピッタリの仕事があるじゃない」

 

「もしかして・・・妖怪退治を手伝うって言うんじゃ・・・」

 

「その通り! 私の力なら、その辺の妖怪なんてイチコロよ!」

 

「いらないわよ、私一人で十分よ」

 

「そんな遠慮しないで良いわよ。それじゃ行くわよ!」

 

「何であんたが仕切るのよ! ああもう!」

 

ずかずかと先に行く天子の後を霊夢は急いで追った。

 

「本当に大丈夫か・・・?」

 

ジンは一抹の不安を抱きながら、二人を見送るのであった。

 

―――――――――――

 

それから時間が進み、夕方になる頃に霊夢が帰って来た。

 

「お帰り・・・あれ? 天子は?」

 

「知らないわよ! あのバカの事なんて!」

 

「一体何があった?」

 

霊夢を落ち着かせて事情を聞くと、妖怪退治の時に天子が力を出しすぎて、依頼主の土地に被害を出してしまったらしい。

 

「そんな事が・・・」

 

「それだけならまだしも、自分の非を一切認めようとしないんだもの。嫌になっちゃうわよ」

 

「それで天子は?」

 

「知らない。何処かに飛んで行ったわよ」

 

それを聞いたジンは、境内を飛び出した。

 

「・・・まったく、お人好しなんだから」

 

飛び出したジンの背中を見て、霊夢は小さく呟いた。

 

―――――――――――

 

とある川原に天子は両足を抱えて座っていた。

 

「何よ・・・みんなして・・・私だって頑張っているのに・・・」

 

天子は涙を拭きながら、小さく呟いていた。

そんな時、一人の青年がやって来た。

 

「こんな所にいたのか、探したぞ」

 

「ジン・・・・・・」

 

ジンがここに来たのに少し驚く天子だったが、すぐにそっぽを向く。

 

「何よ・・・あんたまで私を悪く言いに来たの・・・?」

 

「いや、そんなつもりはない」

 

そう言って、天子の隣に座るジン。

そして、ある話をし始める。

 

「昔、俺は勉強が嫌いだったんだ。楽しければ良い、毎日そう思っていた」

 

「・・・・・・」

 

「だけど、それは社会に出て通用しなくなった。

失敗の連続、上司の叱責、それは毎日のように振り掛かって来た」

 

それはあまり語らないジンの外での話であった。

天子は黙って、ジンの話に耳を傾けた。

 

「そんな中で一番嫌だったのは、不甲斐ない自分だったんだ」

 

「え?」

 

「何をしても失敗する情けない自分。次第に俺は、自分は何も出来ないクズだと思うようになったんだ」

 

「ジン・・・」

 

「それでも支えてくれた人達がいたから、今の俺がいる」

 

「・・・何が言いたいのよあんた?」

 

「簡単に言うと、お前が頑張る限り、お前を支えてやるって言うことだよ。かつて、俺がされたようにな」

 

「・・・ぷっ」

 

「何だよ、そんなにおかしい事言ったか?」

 

「おかしいわよ。

押し掛けて来た迷惑娘を追い出すチャンスなのに、こうして追いかけて、慰めてくれるんだもの」

 

「迷惑だったか?」

 

「ううん、ありがと」

 

「礼は良いが、霊夢にはちゃんと謝れよ」

 

「わかってるわよ。でも、フォローはしてよね」

 

「ああ、御安いごよう」

 

二人はそのまま川原を後にし、博霊神社に戻って行った。

 

―――――――――――

 

それからの天子は、仕事を真面目に取り組み、徐々に慣れていった。

 

「はい、どうぞ。あ、切れちゃった。ちょっと在庫から出して来るわ」

 

「お願いね」

 

天子は、博麗酒を瓶に入れているジンの元に赴く。

 

「ジン、博麗酒切れちゃったんだけど」

 

「ああ、そこに入れたやつあるから、持って行ってくれ」

 

「わかったわ。それと、ついでに他の商品も持って行くから」

 

「そんなにいっぱい持てるのか?」

 

「私を誰だと思っているの? 天人なのよ、これくらい余裕よ」

 

そう言って、天子は酒瓶と商品を一緒に持って行った。

 

 

昼過ぎ、霊夢と天子が退治依頼受け、出掛けていた時の頃。一人の女性が訪れた。

 

「こんにちはジンさん」

 

「ああ、衣玖か」

 

「どうです? 総領娘様のご様子は?」

 

「ああ、最初は不安だったが、今はちゃんとやってくれている」

 

「それは良かったです。一時はどうなるかと・・・」

 

衣玖数日前から、度々天子の様子を見に来ていた。

連れ戻そうとはしないは、彼女なりの配慮である。

 

「それで、今日も様子を見に来ただけか?」

 

「はい、彼女の意思に反する事は、極力しない事にしておりますので。

もっとも、無理に連れ戻そうとすれば、貴方が立ちはだかりますから」

 

「まあ、本人の意思を無視して連れ戻そうとするならばな」

 

「そうなったら、他の方々も黙りませんから、しばらくは様子見をします。ですが――」

 

「ん?」

 

「総領様は、総領娘様の事を心配しておりましたよ」

 

「わかった、天子に一応話しておく。教えてれてありがとう」

 

「いえ、それでは」

 

そう言って、衣玖はその場を去って行った。

 

 

それからジンは、衣玖が訪れた事を天子に伝えた。

ただし、すでに居場所がばれている事は伏せ、探しに来ていたと伝えた。

 

「衣玖が来たのね・・・」

 

「適当に言って、追い返しておいた」

 

「何か言っていた?」

 

「そうだな、お前の両親が心配していたとも言っていたな」

 

「そう・・・」

 

「話はそれだけだ。どうするかはお前次第だが―――」

 

「?」

 

「あまり親を困らせるな。死んだ後じゃ、親孝行なんて出来ないからな」

 

「え? それってどういう意味よ?」

 

「・・・俺の親はもう死んでいるんだ。俺は親孝行もろくに出来なかった親不孝者なんだよ」

 

そう言って、ジンはその場を後にした。

 

―――――――――――

 

その夜、ジンは黄金酒虫の坪を掃除していると、天子がやって来た。

 

「ねぇジン、少し良――――」

 

「何だ?」

 

「・・・何で鬼になっているのよ?」

 

「ああ、こいつを桶に移しにはどうしても鬼の腕力が必要だからな、壷を掃除する時はいつも鬼人になるんだ」

 

「そんなに重いの?」

 

「試しに持ち上げてみるか?」

 

「良いわよ、やってやろうじゃない」

 

そう言って、天子は酒虫を持ち上げようとする。しかし、持ち上がる事はなかった。

 

「何この重さ・・・」

 

「萃香の話によると、そのぐらいのサイズじゃ、鬼じゃないと持ち上がらないって言っていたぞ」

 

「な、なるほど・・・酒虫は鬼の御供って言われる訳ね」

 

「ところで、俺に何か用か?」

 

「えっとね・・・一度天界に帰ろうと思って」

 

「そうか」

 

「・・・止めないのね」

 

「止めてほしいのか?」

 

「そ、そんな訳無いでしょ!」

 

「冗談だ」

 

「あんたね!」

 

「そう怒るなよ。お前が決めた事に、どうこう言うつもりは無い」

 

「あんたって、こういう時は淡白よね・・・」

 

「人が決めた事に口を出すつもりは無いからな。

ただし、あまりにも非常識や間違っていると思ったら遠慮なく口を出すが」

 

「あれ? 私の時は手を出したような・・・」

 

「・・・たまに手も出すかも」

 

「あんたね・・・」

 

「まあ、それはさておき、いつ頃に帰るんだ?」

 

「明日には帰ろうと思って」

 

「そうか」

 

「だから、その前に礼が言いたくて」

 

「俺は大した事はしていない。せいぜい、後押しした程度だ」

 

「それでも、ここまで頑張れたのはジンのおかげよ。

本当に、ありがとう」

 

そう言って、天子はスカートの裾を少し持ち上げ頭を下げた。それはまるで淑女のようだった。

 

―――――――――――

 

次の日、天界に帰る天子を見送くろうと、ジン達は境内に集まっていた。

 

「それじゃ、世話になったわね皆」

 

「まったくよ、今度からは家出以外で来なさいよ」

 

「あら、家出以外なら良いのかしら?」

 

「来たら来たで、手伝わせるつもりよ」

 

「良いわよ、特別に手伝ってあげる」

 

そんな話をしていると、衣玖が境内に降りて来た。

 

「総領娘様、お迎えに上がりました」

 

「あら? 衣玖じゃない。どうしてここに?」

 

「これでも空気を読めますから」

 

「それ、ぜんぜん答えになっていないけど・・・まあ、良いか。

それじゃ、私は行くわ」

 

「待てよ天子」

 

ジンは天子を呼び止め、一瓶の博麗酒を手渡す。

 

「餞別だ。親と一緒に飲みな」

 

「・・・うん、ありがとう」

 

こうして、天子は衣玖と共に天界に帰って行ったのである。

その後も、天子はたびたび博霊神社に赴き、手伝いをしてるという。




今回、少しジンの過去を書きましたが、案の定グダりました。
やはり、あんまり書かない方がいいですね。

追記、誤字があったので直しました。

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