試行錯誤をしながら書いていますが、中々難しいものです。
追記 少し修正しました。
ここは何時もの博麗神社。
今日は珍しく、ジンは部屋で読書をしていた。
これは数少ないジンの趣味である。
「・・・・・・・・ふむ、中々面白かったな」
そう言って本を閉じ、部屋に積まれた本を鞄にしまい始めた。
「さて、本を返しに行くか」
今日は、紅魔館の図書館に本を返却する日なのだ。
境内に出ると、霊夢が心配そうに声を掛けてきた。
「本当に大丈夫なの?」
「霊夢は心配性だな。あそこに本を返しに何度も行っているから、大丈夫だ」
「そうなんだけど・・・・・私の勘が、妙な事に巻き込まれるって告げているのよね・・・・・」
「怖いことを言うなよ・・・・・お前の勘が外れた事なんて無いからな・・・・・」
「ともかく、行くなら気を付けて行きなさいよ」
「ああ、わかった」
「何かあったら、浮游玉ですぐ呼ぶこと。良いわね」
「了解。それじゃ行って来る」
「行ってらっしゃい」
霊夢に見送られながら、ジンは紅魔館に向けて飛び立った。
―――――――――――
ジンは空を飛んでいた。
速くは無いが、遅くは無いくらいのスピードである。
以前は、真っ直ぐ飛ぶ事すら危うかったが、半年も経てばそれなり飛べるようにはなった。
(あの時は、空を飛べるようになるなんて考えもしなかったな・・・・・)
そんな事を考えていると、急に辺りが暗くなって行く。
「な、何だ!? まだ日が昇っているのに!?」
そして等々、夜と変わらない暗さとなった。
そして、幼い少女の声が聞こえる。
「たべものくれないと、た~べ~ちゃ~う~ぞ~」
「・・・・・何だ、ルーミアか」
この少女の名はルーミア。食人妖怪である。
食人と聞けば、危険を感じるが、ジンは既に対処方を心得ていた。
「ほら、おにぎりやるから見逃してくれ」
「わーい♪」
ジンから差し出されたおにぎりを、ルーミアは嬉しそうに受け取り、それを食べ始めた。
「最近どうだルーミア? ご飯に困っていないか?」
「うん♪ ジンが教えてくれた方法をやったら、ご飯に困らなくなった♪
でも・・・・・たまには人を食べたいなー」
「それは辞めておけ、下手すれば霊夢に退治されるぞ」
「そーなのかー、じゃあ我慢する」
「そうしておけ、大人しくしている分、霊夢も手を出さないだろ」
「そーするよ」
「それじゃ、俺は行くぞ。またなルーミア」
「おー」
ルーミアと別れ、ジンは再び紅魔館へと向かった。
―――――――――――
それから何事も無く、霧の湖に到着した。
ここまで来れば、紅魔館は目前なのだが―――――。
「・・・・・そう簡単に行くわけ無いか」
そう呟いて、これから来る氷柱の軌跡を視て、体を動かす。
数秒後、軌跡になぞるように氷柱が飛んで来た。
「む、流石はあたいのライバル!今の攻撃、よくかわしたな!」
「やっぱりチルノか・・・・・」
彼女は氷の妖精チルノ。
この湖に住む妖精である。
因みに、何故ジンをライバルと見なしているかというと。
以前、弾幕勝負で負け、それ以降ライバルと勝手に見なしているのだ。
「ここであったが百年目! 決着をつけてやる!」
「わかった。わかったから、一先ず荷物を降ろさせてくれ」
そう言って、荷物を降ろしてからチルノと対峙する。
「それじゃルールを確認するぞ。今回使うスペカは何枚だ?」
「今回は五枚で行く!」
「五枚な。それじゃ、時間は十分間。スペルカードを全てブレイク又は、十分間避け続けられたら俺の勝ち。
その間に、俺に三回被弾させたらチルノ勝ち。それで良いか?」
「それで良い! あたいの力を見せてやる!」
「それじゃ、ゲームスタート!」
こうしてチルノと弾幕勝負が始まった。
そして勝負の結果は、ジンのの勝利に終わった。
「あー! 負けたー!」
「ふう、どうにか勝ったな・・・・・。
チルノ、また強くなったんじゃないのか?」
「え? そう思う?」
「ああ、以前よりかわしづらくなっていたし、スペカの使い方も上手くなっている。
実際、何回か当たりそうだったからな」
「へっへーん♪ あたいは日々しんかしているからね。
これぐらいは当然!」
「いや、そこは成長の方が適切だと思うぞ」
「そうなの? ま、どっちでも良いや。
それじゃジン。次こそ、あたいが勝つから!」
そう言って、チルノはその場から飛び去って行った。
「次こそはか・・・・・俺も負けないようにしないとな・・・・・」
ジンは荷物を拾い上げ、再び紅魔館を目指した。
―――――――――――
ようやく紅魔館に到着すると、そこには居眠りしている門番が立っていた。
「ぐぅー・・・ぐぅー・・・」
「・・・・・・・・やれやれ」
ジンはその辺の石を拾い上げ、門番に目掛けて投げた。
「――――っ! はぁ!」
門番は突然目覚め、飛んでくる石を叩きおとした。
「起きたか美鈴?」
「あれ? ジンさん? いつからそこに?」
彼女の名前は紅美鈴。
紅魔館の門番をしている妖怪であり、中国拳法の達人でもあるのだ。
「ついさっきだ。今日は借りた本を返しに来たんだ」
「そうなんですか、それではどうぞお通り下さい」
「ああ、通らせて貰うが、居眠りは程々にな」
「ははは・・・・・善処します」
ジンは美鈴の許可を貰い、門から堂々と紅魔館に入って行った。
―――――――――――
紅魔館の地下には、広大に広がる大図書館が存在していた。
ジンはそこから本を何冊か借りたりしている。勿論、魔導書以外の本ではあるが。
「小悪魔ー、いるかー?」
「はーい。
あらジンさん、今日は返却ですか?」
ジンを出迎えて来れたのは、この図書館の主―――パチェリー・ノーレッジの使い魔。小悪魔である。
彼女はここの司書をやっている。
「ああ、これが借りていた分だ」
「承りました」
「ところでパチェリーはいるか? また本を借りたいんだが?」
「それがですね・・・・・今朝から姿が見えないんです。
探そうにも、これだけ広いと苦労します・・・・・」
「ふむ、今朝なら過去の軌跡が残っているかも知れないな。視てみるか」
そう言ってジンは、過去の軌跡を視始める。
そこには、いつものテーブルで本を読んでいるパチェリーの残像が視えた。
「どうやらパチェリーは、いつものテーブルで本を読んでいたらしい。
そして読み終えて、本を戻しに行った」
ジンは残像の後を追った。
するとそこには、本の山がそびえ立っていた。
「そして、本を戻そうとした瞬間。
床に置かれた本に足を取られ転び、その衝撃で上の棚から落ちて来た本の下敷きになったようだ」
「ええ!? それじゃ、この本の山に生き埋めになっているって事ですか!!」
「そうなるな」
「冷静に言って無いで、掘り起こしましょうよ!」
「待て、こういう時は冷静に対処しないと二次災害が―――」
「待ってて下さいパチェリー様! 今お助け―――キャウン!」
小悪魔も、残像のパチェリー同様に、足を取られて転んでしまった。
その衝撃で、上の棚から本が落ちて来る。
「・・・・・こうして過去は繰り返されるって事か」
そんな事を呟きながら、ジンは落ちて来る本をかわし続けた。
それからしばらくして、ジンはようやくパチェリーと小悪魔の救出に成功するのであった。
「本当に助かったわ。ありがとうジン」
「ありがとうございます」
「お礼は良いって、こっちも本を無償で貸し出して来れて感謝しているしな」
「あら? 別に無償でやっているつもりは無いわよ」
「え?」
「いつも本の整理を手伝ってくれているじゃない。本の貸し出しは、それの報酬なの。
等価交換は魔法使いの基本よ」
「別にそういうつもりで本の整理をしている訳じゃない。
単に散らかったり、していると無性に気になる質なんだ」
「・・・・・それって、私の図書館が散らかって汚いって事?」
「ん? 反論出来るのか?」
ジンに言われ、周囲を見渡すパチェリー。
目に写ったのは、床に置かれた無数の本であった。
「・・・・・反論出来ないわね」
「わかったなら、先ずは本の片付けだ。早速やるぞ」
こうして、図書館の大掃除が始まった。
「えっと、この本は・・・・・」
「その本はそこよ。
あと、そこにある本は全部魔導書だから、開かないように」
「了解。
それにしても、以前来た時に片付けた筈なんだが・・・・・どうして散らかっているんだ?」
「そ、それは・・・・・・・・」
「そうなんですよ。パチェリー様は読んだ本を元に戻さず、そのままにするんですよ」
「こあ! 余計な事は言わないで頂戴!」
「だって、事実じゃないですか」
「――――――」
「こあーーーー!!?」
小悪魔はパチェリーが放った魔法で黒焦げになり、そのまま地面に倒れてしまった。
「やれやれ、魔法使いってのは片付けが苦手なのか?」
「そんな訳ないでしょ、私の場合は直ぐに本を取れるように置いといているだけよ」
「そんな事言って、実際は戻すのが面倒くさいって思っているんだろ?」
「うっ・・・・・し、仕方ないじゃない! ここは広いし、いちいち戻しに行ったら、それだけで一日が終わるわよ!」
「開き直りか、どっちにしても、このまま散らかって行けば、魔理沙の家と同レベルになるぞ」
「あの子の家がどう散らかっているかは知らないけど、同じ扱いは嫌ね」
「それなら日頃、本を整理しておけよ」
「善処するわ」
「やれやれ・・・・・」
そして二人は片付けを再開させる。
あらかた片付け終わろうとした時、一人のメイドが突然現れた。
「ご機嫌ようジン様」
「ん? 咲夜か」
メイドの名は、十六夜咲夜。
この紅魔館唯一の人間で、メイド長を勤めている女性である。
「お嬢様と妹様が、ジン様に会いたいと仰せられまして、お向かいに上がりました」
「あー・・・・・本を返してから顔を出そうと考えていたんだが・・・・・片付けに夢中になっていた・・・・・」
「お嬢様は大変御立腹です。
“館の主に挨拶に来ないなんて、いい度胸だわ!”との事です」
「・・・・・・・・逃げていいか?」
「私から逃げられます?」
「・・・・・無理だな。仕方ない、腹を括るか。
パチェリー、小悪魔。悪いが後を頼んだ」
「頼むも何も、元々私の場所よ。
寧ろ、いつも感謝しているわ」
「ジンさん。ご武運を」
パチェリーと小悪魔に見送られ、ジンはこの館の主。レミリア・スカーレットに会いに行くのであった。