東方軌跡録   作:1103

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新年、最初の投稿です。
今回、鈴奈庵の話しなんですが、かなり内容を弄っています。
そのせいか、小鈴の出番が殆ど無く、どうにかねじ込んだ感じになりました。
正直どうなんだろうと思いましたが、軌跡録の主人公はジンなので、と開き直ることにしました。


酒泥棒の珍獣

桜が咲き誇る博麗神社では、いつもの通りに花見が行われていた。

そんな中、レミリアは霊夢とジンに得意そうにある事を話始めた。

 

「最近、珍しい動物を飼い始めたのよ」

 

「珍しい動物?」

 

「そう、外の世界の動物で、何でもツパイって言うのよ」

 

「うーん、聞いたことは無いわね」

 

「海外の動物だからね、今度見せてあげるわ」

 

そう言って、レミリアは上機嫌に笑った。

これが事件の始まりだと、この時の誰も知らなかった。

 

―――――――――――

 

それから数日後、ジンがお酒を買いに里のに行くと、ある事件を聞かされる。

 

「なに? 酒を飲み干される? 盗まれるんじゃなくて?」

 

「そうなんだよ、ここしばらく立て続けに起こっているんだ」

 

「見張らないのか?」

 

「見張っているんだけど、気づいた時には飲み干されるんだよ」

 

「気づかれずにか?」

 

「ああ、お前さんは何か知らないか? 大酒飲みで尚且つ、誰にも気付かれずに行動出来るような妖怪は?」

 

「うーん・・・そんな妖怪は・・・いた」

 

ジンの頭の中では、一人の鬼の姿が浮かび上がった。

 

―――――――――――

 

博麗神社に戻ったジンは萃香に、事件の事を聞いてみた。

彼女の能力、“密度を操る程度の能力”を使えば、誰にも気付かれずに行動出来るとジンは考えていたからである。

 

「え!? 私はそんな事知らないよ!」

 

「本当か?」

 

「本当だよ! 鬼は嘘はつかないよ!」

 

「だがな・・・誰にも気付かれず、その場で酒を飲み干せるなんて、萃香ぐらいしかいないんじゃないか?」

 

「それは否定できないけど・・・。

こうなったら、真犯人をとっちめてやる!

手伝ってくれるかいジン」

 

「まあ、このままじゃ酒がいつまで経っても買えないからな。協力はするつもりだ」

 

「そう来なくっちゃ!」

 

「話は聞かせて貰ったわ」

 

すると霊夢がやって来た。

その手には御払い棒があり、すっかり妖怪退治モードになっていた。

 

「危険な妖怪かも知れないし、私も同行するわ」

 

「ああ、霊夢がいれば百人力だな。

よし、今夜犯人を捕まえるぞ!」

 

こうして、酒飲み妖怪を捕まえることになった。

 

―――――――――――

 

その夜、萃香とジンと霊夢は、酒の見張り番をしていた。

 

「・・・来ないな」

 

「話によると深夜らしいからな」

 

「まあ、どんな奴が来ても、私に掛かればイチコロよ」

 

「それは頼もし―――む!」

 

ジンがいち早く何かに気づき、表情が変わった。

それと同時に、霊夢と萃香も警戒し始めた。

 

「来たのジン?」

 

「ああ、一分後に来るが・・・何だこいつは?」

 

「どうしたんだい?」

 

「軌跡は見えるんだが・・・見たこともない妖怪・・・いや、妖か?」

 

「妖が犯人なの?」

 

「見た感じはな・・・ともかく来るぞ」

 

「どんな奴だろうと、私が捕まえてやるよ!」

 

三人はじっと待ち構える。

そして次の瞬間、何かがこちらへとやって来た。

しかし、そのスピードは凄まじく、注意して見なければ見失う程であった。

 

「な、何よこいつ!?」

 

「萃香!」

 

「おうよ!」

 

萃香は能力を使い、霧状になり、妖を捕まえようとする。しかし、あっさりかわされてしまう。

 

「この!」

 

霊夢も札で足止めしようとするが、まったくの意味をなさず。最後のジンも、動きの予測は出来たが、流石に捕まえる事が出来なかった。

妖はそのまま酒の入った壷に入り、そして数秒後に外に飛び出し、何処かへ行ってしまった。

 

「しまった! 酒は!?」

 

三人は慌てて、壷の中を見るが、中身は既に飲み干されていた。

 

「やられた! 後を追うよ!」

 

「いや、闇雲に行っても、あのスピードじゃ捕まえられない」

 

「じゃあ、どうするのよ?」

 

「そうだな・・・一先ず、今夜はここまでにしよう」

 

こうして、酒飲み妖怪もとい酒飲み妖の捕獲は失敗となった。

 

―――――――――――

 

次の日、三人は阿求の屋敷を訪れ、昨夜の妖とその捕獲作戦について話していた。

 

「なるほど・・・これが今回の事件の犯人ですか・・・」

阿求はジンが描いた妖の絵を、珍しそうに見ていた。

 

「阿求、これについて何か分かるか?」

 

「残念ながら、私の記憶の中にはありませんね」

 

「すると、こいつは外から来たって事かしら?」

 

「そうだと思います。

ジンさんは何か心当たりはありませんか?」

 

「うーん・・・何処かで見たような・・・」

 

「まあ、正体は置いといて、先ずは捕まえる方が先ですね」

 

「何か方法はあるのか?」

 

「はい、とっておきの奴がありますけど、皆さんにも御協力をお願いします」

 

「御協力って、一体何をすれば良いんだ?」

 

「ちょっとある茸を取って来て欲しいんです。その名も、一夜茸って言うんですけど」

 

「一夜茸って・・・一体どんな茸なの?」

 

「はい、毒茸です」

 

「毒茸だって!? まさか・・・」

 

「酒に盛るんです。

正攻法が駄目なら、絡め手ですよ」

 

「うわぁ・・・思った以上に黒いね・・・」

 

「聞こえていますよ萃香さん。

ともかく、お願いしますね」

 

こうして、一夜茸を取りに頼まれた三人は、魔法の森へと足を運ぶのであった。

 

―――――――――――

 

魔法の森についた三人は、早速魔理沙に事情を話し、手伝ってもらう事にした。

 

「なるほど、そういう事なら私に任せろ」

 

「流石魔理沙、茸に関しては右に出る奴はいないな」

 

「へへ、本当の事を言うなよ。照れるじゃないか」

 

「馬鹿な事を言っていないで、さっさと探すわよ」

 

こうして、一夜茸探しが始まった。

 

 

それから数十分後。

魔理沙の協力で茸は十分な数が集まった。

 

「結構集まったな」

 

「これくらいあれば十分だね」

 

「早速阿求のところに戻りましょ。魔理沙はどうするの?」

 

「もちろんついて行くぜ。

その酒飲み妖が、どんなものか間近で見たいからな」

「わかったわ。それじゃ行くわよ」

 

こうして魔理沙を加え、阿求の屋敷に戻る一同であった。

 

―――――――――――

 

そしてその夜、一夜茸で作られた酒―――一夜のクシナダが入った壷を見張る四人の姿があった。

 

「さあ、一体どんな奴が来るんだろうな」

 

「はっきり言って、かなり素早い奴よ。

ジンがいなければ、気づかなかい程にね」

 

「そんなに早いのか?」

 

「ああ、まったく捕まえられなかっね・・・」

 

「正攻法で捕まえられるとしたら、文か咲夜ぐらいしかいないだろ」

 

「そうか・・・なら、私が三人目になってやるぜ」

 

魔理沙はやる気に満ちていたが、実際目の当たりした三人は無理だなと、内心思っていた。

 

 

それから時間が過ぎ去り、日付が変わる頃、それは訪れた。

 

「・・・みんな、奴が来るぞ」

 

その言葉に緊張が走る。

ジンが見ている場所に視線が集まり。その一分後、妖が姿を現す。

 

「来たな! 先ずはこれを喰らえ! “魔符、ミルキーウェイ”!」

 

先手必勝と言わんばかりに、スペルカードを発動させた魔理沙。

星々が妖に迫るが、妖は軽々とそれをかわした。

 

「なに!?」

 

そしてそのまま目にも止まらない速さで、クシナダ一夜が入った壷に入る。すると、ガタガタと揺らした後、ピタリと動かなくなる。

ジンはそっと、中を覗きこむ。

 

「・・・・・・どう?」

 

「ああ、どうやら成功のようだ」

 

そう言って、壺の中に手をいれる。

その手には、クシナダの一夜の効果で酔い潰れている妖の姿があった。

 

「また暴れられたら堪らないから、一応封印しておくわ」

 

そう言って、霊夢は小さい壺に入れ、蓋を閉めて御札を貼る。

こうして、酒飲み妖を捕まえる事に成功したのであった。

 

―――――――――――

 

翌日、妖を捕まえたジン達であったが、肝心な正体は分からずじまいであった。

そこで二手に別れて調べる事にした。

ジンと萃香は紅魔館の図書で、霊夢と魔理沙は鈴奈庵で調べる事になった。

その道中、鳥籠らしき物を手に持った咲夜と出会う。

 

「あら、ジンに萃香じゃない。珍しい組み合わせね」

 

「こんにちは咲夜、そっちは何かを探しているみたいるのか?」

 

「篭を見る限り、ペットの鳥でも逃げたのかい?」

 

萃香はからかうように言うが、咲夜はやや困った表情で呟く。

 

「鳥では無いけど・・・お嬢様のペットが数日前に逃げてしまって・・・」

 

「ペット? 前の花見の席に言っていた珍獣の事か?」

 

「ええ、ツパイって言って、外見は・・・そうね、ゴブリンを鋭くしたような感じね」

 

「ゴブリンを? ますます持ってわからないな・・・そんな動物いるのか?」

 

「ところで、貴方達は?」

 

「この前、酒泥棒の妖を捕まえたんだが、正体がわからなくてな。これから紅魔館の図書で調べようと思って」

 

「因みに、こんな奴」

 

萃香が出した絵を見て、咲夜は表情を変えた。

 

「これって・・・うちのツパイじゃない!」

 

「「な、何だってー!?」」

 

ジンと萃香は驚き、思わず声を上げたのであった。

 

―――――――――――

 

一方、霊夢と魔理沙は鈴奈庵で妖の正体を調べていた。

 

「これでも無い・・・あれでも無い・・・」

 

「おーい小鈴、他に本は無いのかー?」

 

「これで最後ですよ」

 

「やっぱり何処にも載っていないな・・・」

 

「こうなったら、ジン達に期待するしか無いわね・・・」

 

そんな時に、マミゾウが鈴奈庵にやって来た。

 

「小鈴殿、今日も買い取りを―――おや?」

 

「あ、マミさん! いらっしゃいませ!」

 

「ん? マミゾウか?」

 

「相変わらず、自作の本を売りつけているのね・・・」

 

「別にいいじゃろう、それよりも、一体何を調べとるんじゃ?」

 

「こいつの正体がわからなくてな」

 

魔理沙はジンが描いた物をマミゾウに見せた。するとマミゾウは―――。

 

「何じゃ、チュパカブラじゃないか」

 

「え? 知っているんですか?」

 

「チュパカブラ。吸血鬼ならぬ吸血獣じゃ、外では未確認生命体―――UAMと呼ばれる生き物じゃ」

 

「何よそれ?」

 

「そうじゃな・・・ツチノコもUMAと呼ばれておるし、外国の妖と考えても良かろう」

 

「外国の妖か・・・どうりでいくら調べてもわからないな訳だぜ」

 

「しかし、チュパカブラが幻想入りをしとるとは・・・」

 

「まあ、正体もわかった事だし、阿求に報告するわよ。それじゃあね」

 

「はい、またのお越しを御待ちしています」

 

正体がわかった二人は、その場を後にし、阿求の屋敷に向かった。

 

 

阿求の屋敷の前に着くと、ちょうどジン達と鉢合わせした。

 

「あら、ちょうど良い所に来たわね。あの妖の正体がわかったわ」

 

「そうか、こっちも飼い主が見つかった」

 

「え? 飼い主?」

 

ジンの後ろから、咲夜が一歩前に出る。

彼女の姿を見て、霊夢と魔理沙は飼い主が誰なのか、何となく理解できた。

 

「もしかして、あのチュパカブラはレミリアのペットか?」

 

「チュパカブラ? ツパイの間違いでしょ?」

 

「どっちでも良いわよ、引き取ってくれるのなら。

阿求の屋敷に預けてあるから、ついて来なさい」

 

「わかったわ」

 

こうして、チュパカブラことツパイは無事にレミリアの所に戻ったのであった。

 

―――――――――――

 

チュパカブラの一件から数日後。

今回の礼を言いに、咲夜、レミリア、フランの三人が神社にやって来ていた。

 

「ありがとうね二人とも、ツパイを見つけてくれて」

 

「まあ、なんと言うか・・・成り行きだけどな」

 

「そもそも、今回の事件はあんたの管理不足のせいなんだから、ちゃんと反省している?」

 

「うっ・・・」

 

「その点は御安心を、細心の注意を払っておりますので」

 

「そうだよ、ちゃんと逃げないように籠に入れているもん。ほら」

 

フランは、チュパカブラが入っている鳥籠を見せた。

 

「にしても・・・不細工な生き物ね・・・外ではこんなのがいるのかしら?」

 

「そんな訳無いだろ。そんなのがウロウロしていたら、幻想郷と変わらんだろ」

 

「所でジン、あんたは外から来たんでしょ。どうして直ぐに正体が分からなかったのよ?」

 

「あのな・・・俺がチュパカブラを知ったのは子供の頃なんだよ。そんな昔の事、直ぐに思い出せるか」

 

「ふーん、あんたの子供時代ね・・・」

 

「言っておくが、面白いような話は無いぞ」

 

「えー、ジンの昔話聞きたい」

 

「あ、私も聞きたいわね」

レミリアとフランは興味津々の眼差しでジンを見つめた。

 

「おいお前ら・・・・・・」

 

「ふふ、観念したらどうですジン?」

 

「良いじゃない、別に減るもんじゃないんだし」

 

「はあ・・・わかった、少しだけだからな」

 

ジンは観念し、桜が舞い落ちる中、子供時代の話し始めるのであった。




少しグダグダとなってしまいました。
因みに、次回はジンの過去話――――にはなりません。次回は次回で別の話しにします。
それでは、今年も軌跡録をよろしくお願いします。

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