東方軌跡録   作:1103

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今回はオリジナル異変の話しです。
最も、某映画を参考にして書きました。


妖魔双六の異変

正月が過ぎ去り、博麗神社はようやく落ち着きを取り戻した。

今日は、大晦日、初詣の打ち上げと遅めの正月を行う事になった。

 

「みんな、大晦日と初詣お疲れ様!」

 

「「「「お疲れ様ー!」」」」

 

霊夢の音頭で、乾杯をする六人。

そこで霊夢は、余計な二人に突っ込む。

 

「―――って、何で魔理沙と萃香がいるのよ!」

 

「何だよ、別に良いじゃないか」

 

「そうだよ。お酒は皆で飲むのが一番だよ」

 

「あんた達は何もしてないでしょうが!

ちょっと、ジンも何か言ってよ」

 

「ん? 別に良いじゃないか。

こういうのは、大勢の方が楽しいしな」

 

「あんたね・・・・・たまにでも良いから、私の味方をしなさいよ!」

 

「まあまあ霊夢さん。

せっかくの打ち上げなんだから。

この際細かい事は気にしないで、楽しみましょう」

 

「はあ・・・・・もういい。好きにして頂戴・・・・・」

 

「おーし、霊夢の許可を貰った事だし。思いっきり飲むぜー!」

 

「「「おー!」」」

 

こうして、乱入者二名を加えての打ち上げが始まった。

 

 

打ち上げで盛り上がっている中、二人の少女が神社に駆け込んだ。

 

「霊夢さん! ジンさん!

助けてください!」

 

「あら? 小鈴ちゃんに阿求じゃない」

 

「そんなに慌てて、どうしたんだぜ?」

 

「あ、魔理沙さんも居たんですか! ちょうど良かった!」

 

「少し落ち着け二人とも、一体何があったんだ?」

 

「それがですね・・・」

 

そう言って、阿求が取り出したのは一枚のボード。

見た感じから双六のようで、盤の上に小鈴と阿求の人形がマスの上に置かれていた。

 

「双六みたいな感じだけど・・・」

 

「だだの双六じゃないです!

これは妖魔双六なんです!」

 

「妖魔双六だって!?」

 

小鈴の言葉に、萃香は驚き声を上げた。

 

「知っているのか萃香?」

 

「私も噂ぐらいしか知らないけど・・・。

最低最悪の双六で、一度始めたら途中では辞められない。

上がるか・・・死ぬまでは」

 

その言葉に、誰もが戦慄を覚えた。

 

「二人とも! これをやってしまったの!?」

 

「はい・・・実は・・・」

 

二人の話によると、最初に手にしたのは阿求で、触れた瞬間に盤から自分そっくりの駒と、読めない文字が浮かび上がった。

そこで、阿求は小鈴に解読を依頼し、これが世にも恐ろしい妖魔双六だと知った。

 

「“ゲームを途中放棄すれば、その地に災厄が訪れる”そう書いてあったので・・・」

 

「なるほど、それでゲームを始めた訳ね」

 

「サイコロを振るだけだから、私達でも解決出来ると思ったんですが・・・。

ゲームを進めて行くうちに、色んな妖が現れて、今里は大混乱して・・・」

 

「何ですって!?」

 

それを聞いた霊夢は、慌てて境内に飛び出した。

ジン達も急いで後を追う。

そして、そこから見た光景は――――。

 

「何てこった・・・」

 

魔理沙は思わず言葉を漏らす。

ここからよく見えるくらいに、里は妖で溢れていた。

 

「小鈴ちゃん、知っている事を全部教えて」

 

「あ、はい!

ゲームをクリアすれば、全ての妖は妖魔双六に再封印されるんです!」

 

「なるほど、この異変を解決するには、ゲームクリアをした方が良いって訳か」

 

こうして、異変解決すべく妖魔双六に参加するジン達であった。

 

 

妖魔双六に参加するのは、既に参加している小鈴と阿求に加え、ジン、霊夢、魔理沙が萃香が加わった。

サニー達には危険だと判断し、ミズナラの木に避難して貰った。

 

「それじゃ振るぜ」

 

魔理沙がサイコロを降り、駒を進める。

マスに止まると、盤から文字が浮かび上がる。

 

「小鈴ちゃん、読んで頂戴」

 

「は、はい!

えっと・・・“炎獣用心、一匹火事の元”」

 

「え? それって・・・」

 

「何か・・・焦げ臭くないか?」

 

ふと、後ろを振り返ると、既に神社に火の手が回っていた。

 

「火!? 水! 水!」

 

「もう手遅れだ霊夢! 急いで逃げるぞ!」

 

「神社が! 私の神社が!」

 

「萃香! 霊夢を頼む!」

 

「あいよ!」

 

萃香は霊夢を抱えて、神社を飛び出す。

ジン達も盤を抱え、外に飛び出した。

燃えて行く神社を見て、霊夢は泣き崩れてく。

 

「神社が・・・私の神社が・・・」

 

「気を落とすな霊夢。

神社なんて、また建て直せば良いだろ?」

 

「そうですよ! 命あっての物種なんですから!」

 

「ううっ・・・」

 

そんな中、燃える神社から何かが飛び出した。

それは、炎を纏う獣であった。

 

「あんたが・・・あんたが・・・私の神社を・・・許さん!」

 

霊夢は御札を取り出し、炎の獣に放つ。

それは凄まじい早業で、一瞬で炎の獣を滅した。

 

「これは先が思いやられるな・・・」

 

そう呟きながら、ジンは賽子を振った。

駒は進み、マスに止まると再び文字が浮かび上がる。

 

「小鈴、頼む」

 

「えっと、“百鬼夜行、直ぐに逃げなければ引き殺される”」

 

小鈴が読み上げると、地響きが鳴り響く。

 

「これは・・・不味い!」

 

「逃げるんだぜ!」

 

「何なのよもう!」

 

六人は直ぐそこから逃げ出す。

すると、何処からともなく妖の大群が現れ、ジン達に迫って行った。

 

―――――――――――

 

その後、百鬼夜行から逃れたジン達は、街道で双六を続けた。

 

「次は私ね。それ――!」

 

霊夢がサイコロを振る。

すると、霊夢の駒が黄色いマスに止まった。

そして、浮かび上がった文字を小鈴が読み上げる。

 

「“幸運、何も無し”」

 

「何よ、何も無しが幸運なの?」

 

「いや、充分幸運だと思うが・・・」

 

「次は私だな、よっと――」

 

萃香がサイコロを振り、彼女の駒は黒いマスに止まる。

 

「何か嫌な予感・・・」

 

嫌な予感を感じながらも、盤の文字を見る一同。そこに書かれていたのは―――。

 

「“一回休み、次の番まで石になる”」

 

「まさか・・・萃香!」

 

「え? うわ!?」

 

すると、萃香の体は徐々に石となり、最後に彼女の石像が出来上がる。

 

「ああ! 萃香さんが!」

 

「落ち着け小鈴、これは一時的な物だ。

次の次の萃香の番で、元に戻る・・・筈」

 

「無事に回せればの話ですけど・・・」

 

「ほら阿求、あんたの番なんだから、さっさと振りなさい」

 

「そんなに急かさないで下さい。

・・・それ!」

 

阿求は意を決して、賽子を振る。

そして浮かび上がった文字を小鈴が読み上げる。

 

「“足下をよく見ろ。見ないと地獄にまっ逆さま”」

 

「足下?」

 

全員が足下に注目する。

すると大きな地震が起き、地割れが起きた。

 

「みんな危ない!」

 

ジンは石像になった萃香を抱えて、その場を移動する。

そして、全員の安否を確認する。

 

「みんな大丈夫か!?」

 

「ええ、何とかね。そっちは?」

 

「こっちは大丈夫です!」

 

「盤は!?」

 

「ちゃんとあるぜ」

 

そう言って、抱えていた盤を見せる魔理沙。

それを見た一同は安堵した。

 

「さあ、次は小鈴ちゃんの番よ」

 

「は、はい!」

 

小鈴は勢いよくサイコロを振った。

駒は進み、浮かび上がった文字を読む。

 

「“泥棒に御用心、でないと大切な物が盗まれる”」

 

読み終わるのと同時に、黒い鳥のような妖が現れ、盤を掠め取って行った。

 

「ああ!? 盤が!?」

 

「野郎! 私の前で大して良い度胸だな!」

 

魔理沙はもうスピードで、妖の後を追って行ってしまった。

 

「魔理沙! 一人で突っ走らないでよ!」

 

「急いで後を追うぞ!」

 

ジンは萃香を、霊夢は小鈴と阿求を抱えて魔理沙の後を追った。

 

―――――――――――

 

魔理沙を追って辿り着いたのは、妖怪山の麓にある川であった。

ジンは能力を使い、魔理沙の軌跡を辿っていた。

 

「確かここいらだな・・・魔理沙ー! いるんだろー!?」

 

ジンは、魔理沙がいるであろう茂みに向かって声を掛けるが、返事は無い。

 

「? 一体どうしたんだ?」

 

「魔理沙、いるんならさっさと出てきなさいよ」

 

「・・・・・・」

 

それでも出てこない魔理沙に、業を煮やした霊夢は茂みに近づこうとしたその時―――。

 

「来ないでくれ!」

 

「魔理沙?」

 

「頼む・・・来ないでくれ、こんな姿を見られたくない・・・」

 

「悪いけど、そうも言っていられないのよ。

さっさと出てきなさいよ魔理沙」

 

「や、やめろー!」

 

霊夢は強引に、茂みから魔理沙を連れ出す。

その姿を見た霊夢達は、唖然とした。

 

「ま、魔理沙?」

 

「そ、その姿は一体・・・」

 

「ううっ・・・だから見られたくないなかったんだ・・・」

 

それは、猫耳と尻尾が生えた魔理沙であった。

 

「一体どうしたんですか!?」

 

「あの妖から盤を取り返したんだが、ちょうど私の番だったから、先にサイコロを振ったんだ。そしたら―――」

 

「その姿になってしまった訳か・・・」

 

「一体何が書かれているの?」

 

「えっと・・・“イカサマ禁止、ズルには罰を”」

 

「魔理沙さん、イカサマをしたんですか?」

 

「イカサマなんてしてないぜ。

ただ、サイコロの目が大きく出るように振っただけだ」

 

「それがイカサマって言うんだろ。

まあ、これだけで済んで良かったな」

 

「ううっ・・・」

 

「ともかく、俺の番だな」

 

ジンはサイコロを振る。

駒は黒いマスに止まり、文字が浮かび上がる。

 

「“貴方を狙うのは処刑人。戦わなければ、生き残れない”」

 

「これは・・・!?」

 

ジンは背後に、異様な殺意を感じ、振り向く。

そこに居たのは、巨大な斧を持った怪人であった。

 

「ウゴォォォ!!」

 

「うわぁ!?」

 

雄叫びと共に、ジンに向かって斧を振り下ろす。

ジンはそれを間一髪でかわす。

 

「ジン! よくも―――」

 

「俺の事は良いから! さっさとサイコロを振れ!」

 

「でも――」

 

「ジンの事は私に任せろ! 霊夢はサイコロを振れ!」

 

「――わかった!」

 

そう言って、魔理沙はジンに加勢する。

ジンの事を魔理沙に任せた霊夢はサイコロを振る。

 

「小鈴ちゃん!」

 

「は、はい! “空をから危険物落下”」

 

「空から・・・?」

 

三人は空を見上げる。よくよく見ると、何かがこちらに落下して来るのが良く見えた。

 

「こっちに何か来る!?」

 

「逃げましょう!」

 

三人は慌てて、その場を離れた。

そして、三人がいた場所に隕石が落ちた。

 

 

怪人を退けたジンと魔理沙は、急いで霊夢達と合流した。

 

「少し見ない間に、ボロボロになったな霊夢・・・」

 

「あんたもね・・・まあ、無事で良かったわ・・・」

 

「しかし・・・思った以上にキツいな・・・」

 

「で、でも、クリアまで後少しですから! 頑張りましょう!」

 

「それで? 次は誰の番だ?」

 

「私です・・・それっ!」

 

阿求は意を決して、サイコロを振る。

 

―――――――――――

 

それからというもの、様々な妖や事象に襲われながらも、ジン達はようやく妖魔双六をクリアした。

そして疲れきったのか、六人はぐったりとしていた。

 

「みんな・・・生きてる?」

 

「な、何とか・・・」

 

「さ、流石妖魔双六・・・最低最悪な双六だぜ・・・」

 

「う~・・・長時間、石になっていたから、体が痛いよ・・・」

 

「な、なにはともあれ、これで解決ですね・・・」

 

「でも・・・これはどうします?」

 

阿求の視線の先には、妖魔双六があった。

すると霊夢が盤に御札を張り、入念に封印を施す。

 

「ふぅ・・・これで一安心ね」

 

こうして妖魔双六が起こした異変は終わりを迎えた。

 

―――――――――――

 

妖魔双六の異変から数日後。

霊夢とジンは、神社が建て直すまで、サニー達が住むミズナラの木の部屋を又借りしていた。

 

「“人的被害はほぼゼロ。

博麗神社の退魔道具が功を奏したか?”か・・・。取り合えず、良かったな」

 

「何が良かったの?」

 

そう聞きながら、霊夢が部屋に入って来た。

 

「霊夢か、新聞を読んでいたんだ。

これによると、人的被害はあまり出なかったらしい」

 

「・・・前から思っていたけど、良くそんな新聞を読みわね」

 

「霊夢、新聞を馬鹿にしてはいけないぞ。

テレビやラジオが無い幻想郷では、新聞は重宝する」

 

「そう・・・好きにしなさい」

 

諦めたように、霊夢は椅子に座った。

 

「お茶でも淹れるか?」

 

「お願い」

 

「わかった」

 

ジンはテキパキとお茶を淹れ、霊夢に差し出した。

 

「ふぅ・・・やっぱりお茶は緑茶に限るわ」

 

「ところで、あの双六は一体どうした?」

 

「ああ、紫に預けた。

紫も、あんな双六を幻想郷に置くつもりは無いらしいから、もしかしたらスキマか、それとも外に放り出したんじゃない?」

 

「前者はともかく、後者は不味くないか?」

 

「私としたら、もうあんな双六と関わりあいたく無い」

 

「それは同感だ」

 

「はあ・・・新年そうそう、とんでも無い異変だったわ」

 

そう呟き、霊夢は窓の外を眺めた。

外は、雪がひらひらと舞い落ちていた。


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