最も、某映画を参考にして書きました。
正月が過ぎ去り、博麗神社はようやく落ち着きを取り戻した。
今日は、大晦日、初詣の打ち上げと遅めの正月を行う事になった。
「みんな、大晦日と初詣お疲れ様!」
「「「「お疲れ様ー!」」」」
霊夢の音頭で、乾杯をする六人。
そこで霊夢は、余計な二人に突っ込む。
「―――って、何で魔理沙と萃香がいるのよ!」
「何だよ、別に良いじゃないか」
「そうだよ。お酒は皆で飲むのが一番だよ」
「あんた達は何もしてないでしょうが!
ちょっと、ジンも何か言ってよ」
「ん? 別に良いじゃないか。
こういうのは、大勢の方が楽しいしな」
「あんたね・・・・・たまにでも良いから、私の味方をしなさいよ!」
「まあまあ霊夢さん。
せっかくの打ち上げなんだから。
この際細かい事は気にしないで、楽しみましょう」
「はあ・・・・・もういい。好きにして頂戴・・・・・」
「おーし、霊夢の許可を貰った事だし。思いっきり飲むぜー!」
「「「おー!」」」
こうして、乱入者二名を加えての打ち上げが始まった。
打ち上げで盛り上がっている中、二人の少女が神社に駆け込んだ。
「霊夢さん! ジンさん!
助けてください!」
「あら? 小鈴ちゃんに阿求じゃない」
「そんなに慌てて、どうしたんだぜ?」
「あ、魔理沙さんも居たんですか! ちょうど良かった!」
「少し落ち着け二人とも、一体何があったんだ?」
「それがですね・・・」
そう言って、阿求が取り出したのは一枚のボード。
見た感じから双六のようで、盤の上に小鈴と阿求の人形がマスの上に置かれていた。
「双六みたいな感じだけど・・・」
「だだの双六じゃないです!
これは妖魔双六なんです!」
「妖魔双六だって!?」
小鈴の言葉に、萃香は驚き声を上げた。
「知っているのか萃香?」
「私も噂ぐらいしか知らないけど・・・。
最低最悪の双六で、一度始めたら途中では辞められない。
上がるか・・・死ぬまでは」
その言葉に、誰もが戦慄を覚えた。
「二人とも! これをやってしまったの!?」
「はい・・・実は・・・」
二人の話によると、最初に手にしたのは阿求で、触れた瞬間に盤から自分そっくりの駒と、読めない文字が浮かび上がった。
そこで、阿求は小鈴に解読を依頼し、これが世にも恐ろしい妖魔双六だと知った。
「“ゲームを途中放棄すれば、その地に災厄が訪れる”そう書いてあったので・・・」
「なるほど、それでゲームを始めた訳ね」
「サイコロを振るだけだから、私達でも解決出来ると思ったんですが・・・。
ゲームを進めて行くうちに、色んな妖が現れて、今里は大混乱して・・・」
「何ですって!?」
それを聞いた霊夢は、慌てて境内に飛び出した。
ジン達も急いで後を追う。
そして、そこから見た光景は――――。
「何てこった・・・」
魔理沙は思わず言葉を漏らす。
ここからよく見えるくらいに、里は妖で溢れていた。
「小鈴ちゃん、知っている事を全部教えて」
「あ、はい!
ゲームをクリアすれば、全ての妖は妖魔双六に再封印されるんです!」
「なるほど、この異変を解決するには、ゲームクリアをした方が良いって訳か」
こうして、異変解決すべく妖魔双六に参加するジン達であった。
妖魔双六に参加するのは、既に参加している小鈴と阿求に加え、ジン、霊夢、魔理沙が萃香が加わった。
サニー達には危険だと判断し、ミズナラの木に避難して貰った。
「それじゃ振るぜ」
魔理沙がサイコロを降り、駒を進める。
マスに止まると、盤から文字が浮かび上がる。
「小鈴ちゃん、読んで頂戴」
「は、はい!
えっと・・・“炎獣用心、一匹火事の元”」
「え? それって・・・」
「何か・・・焦げ臭くないか?」
ふと、後ろを振り返ると、既に神社に火の手が回っていた。
「火!? 水! 水!」
「もう手遅れだ霊夢! 急いで逃げるぞ!」
「神社が! 私の神社が!」
「萃香! 霊夢を頼む!」
「あいよ!」
萃香は霊夢を抱えて、神社を飛び出す。
ジン達も盤を抱え、外に飛び出した。
燃えて行く神社を見て、霊夢は泣き崩れてく。
「神社が・・・私の神社が・・・」
「気を落とすな霊夢。
神社なんて、また建て直せば良いだろ?」
「そうですよ! 命あっての物種なんですから!」
「ううっ・・・」
そんな中、燃える神社から何かが飛び出した。
それは、炎を纏う獣であった。
「あんたが・・・あんたが・・・私の神社を・・・許さん!」
霊夢は御札を取り出し、炎の獣に放つ。
それは凄まじい早業で、一瞬で炎の獣を滅した。
「これは先が思いやられるな・・・」
そう呟きながら、ジンは賽子を振った。
駒は進み、マスに止まると再び文字が浮かび上がる。
「小鈴、頼む」
「えっと、“百鬼夜行、直ぐに逃げなければ引き殺される”」
小鈴が読み上げると、地響きが鳴り響く。
「これは・・・不味い!」
「逃げるんだぜ!」
「何なのよもう!」
六人は直ぐそこから逃げ出す。
すると、何処からともなく妖の大群が現れ、ジン達に迫って行った。
―――――――――――
その後、百鬼夜行から逃れたジン達は、街道で双六を続けた。
「次は私ね。それ――!」
霊夢がサイコロを振る。
すると、霊夢の駒が黄色いマスに止まった。
そして、浮かび上がった文字を小鈴が読み上げる。
「“幸運、何も無し”」
「何よ、何も無しが幸運なの?」
「いや、充分幸運だと思うが・・・」
「次は私だな、よっと――」
萃香がサイコロを振り、彼女の駒は黒いマスに止まる。
「何か嫌な予感・・・」
嫌な予感を感じながらも、盤の文字を見る一同。そこに書かれていたのは―――。
「“一回休み、次の番まで石になる”」
「まさか・・・萃香!」
「え? うわ!?」
すると、萃香の体は徐々に石となり、最後に彼女の石像が出来上がる。
「ああ! 萃香さんが!」
「落ち着け小鈴、これは一時的な物だ。
次の次の萃香の番で、元に戻る・・・筈」
「無事に回せればの話ですけど・・・」
「ほら阿求、あんたの番なんだから、さっさと振りなさい」
「そんなに急かさないで下さい。
・・・それ!」
阿求は意を決して、賽子を振る。
そして浮かび上がった文字を小鈴が読み上げる。
「“足下をよく見ろ。見ないと地獄にまっ逆さま”」
「足下?」
全員が足下に注目する。
すると大きな地震が起き、地割れが起きた。
「みんな危ない!」
ジンは石像になった萃香を抱えて、その場を移動する。
そして、全員の安否を確認する。
「みんな大丈夫か!?」
「ええ、何とかね。そっちは?」
「こっちは大丈夫です!」
「盤は!?」
「ちゃんとあるぜ」
そう言って、抱えていた盤を見せる魔理沙。
それを見た一同は安堵した。
「さあ、次は小鈴ちゃんの番よ」
「は、はい!」
小鈴は勢いよくサイコロを振った。
駒は進み、浮かび上がった文字を読む。
「“泥棒に御用心、でないと大切な物が盗まれる”」
読み終わるのと同時に、黒い鳥のような妖が現れ、盤を掠め取って行った。
「ああ!? 盤が!?」
「野郎! 私の前で大して良い度胸だな!」
魔理沙はもうスピードで、妖の後を追って行ってしまった。
「魔理沙! 一人で突っ走らないでよ!」
「急いで後を追うぞ!」
ジンは萃香を、霊夢は小鈴と阿求を抱えて魔理沙の後を追った。
―――――――――――
魔理沙を追って辿り着いたのは、妖怪山の麓にある川であった。
ジンは能力を使い、魔理沙の軌跡を辿っていた。
「確かここいらだな・・・魔理沙ー! いるんだろー!?」
ジンは、魔理沙がいるであろう茂みに向かって声を掛けるが、返事は無い。
「? 一体どうしたんだ?」
「魔理沙、いるんならさっさと出てきなさいよ」
「・・・・・・」
それでも出てこない魔理沙に、業を煮やした霊夢は茂みに近づこうとしたその時―――。
「来ないでくれ!」
「魔理沙?」
「頼む・・・来ないでくれ、こんな姿を見られたくない・・・」
「悪いけど、そうも言っていられないのよ。
さっさと出てきなさいよ魔理沙」
「や、やめろー!」
霊夢は強引に、茂みから魔理沙を連れ出す。
その姿を見た霊夢達は、唖然とした。
「ま、魔理沙?」
「そ、その姿は一体・・・」
「ううっ・・・だから見られたくないなかったんだ・・・」
それは、猫耳と尻尾が生えた魔理沙であった。
「一体どうしたんですか!?」
「あの妖から盤を取り返したんだが、ちょうど私の番だったから、先にサイコロを振ったんだ。そしたら―――」
「その姿になってしまった訳か・・・」
「一体何が書かれているの?」
「えっと・・・“イカサマ禁止、ズルには罰を”」
「魔理沙さん、イカサマをしたんですか?」
「イカサマなんてしてないぜ。
ただ、サイコロの目が大きく出るように振っただけだ」
「それがイカサマって言うんだろ。
まあ、これだけで済んで良かったな」
「ううっ・・・」
「ともかく、俺の番だな」
ジンはサイコロを振る。
駒は黒いマスに止まり、文字が浮かび上がる。
「“貴方を狙うのは処刑人。戦わなければ、生き残れない”」
「これは・・・!?」
ジンは背後に、異様な殺意を感じ、振り向く。
そこに居たのは、巨大な斧を持った怪人であった。
「ウゴォォォ!!」
「うわぁ!?」
雄叫びと共に、ジンに向かって斧を振り下ろす。
ジンはそれを間一髪でかわす。
「ジン! よくも―――」
「俺の事は良いから! さっさとサイコロを振れ!」
「でも――」
「ジンの事は私に任せろ! 霊夢はサイコロを振れ!」
「――わかった!」
そう言って、魔理沙はジンに加勢する。
ジンの事を魔理沙に任せた霊夢はサイコロを振る。
「小鈴ちゃん!」
「は、はい! “空をから危険物落下”」
「空から・・・?」
三人は空を見上げる。よくよく見ると、何かがこちらに落下して来るのが良く見えた。
「こっちに何か来る!?」
「逃げましょう!」
三人は慌てて、その場を離れた。
そして、三人がいた場所に隕石が落ちた。
怪人を退けたジンと魔理沙は、急いで霊夢達と合流した。
「少し見ない間に、ボロボロになったな霊夢・・・」
「あんたもね・・・まあ、無事で良かったわ・・・」
「しかし・・・思った以上にキツいな・・・」
「で、でも、クリアまで後少しですから! 頑張りましょう!」
「それで? 次は誰の番だ?」
「私です・・・それっ!」
阿求は意を決して、サイコロを振る。
―――――――――――
それからというもの、様々な妖や事象に襲われながらも、ジン達はようやく妖魔双六をクリアした。
そして疲れきったのか、六人はぐったりとしていた。
「みんな・・・生きてる?」
「な、何とか・・・」
「さ、流石妖魔双六・・・最低最悪な双六だぜ・・・」
「う~・・・長時間、石になっていたから、体が痛いよ・・・」
「な、なにはともあれ、これで解決ですね・・・」
「でも・・・これはどうします?」
阿求の視線の先には、妖魔双六があった。
すると霊夢が盤に御札を張り、入念に封印を施す。
「ふぅ・・・これで一安心ね」
こうして妖魔双六が起こした異変は終わりを迎えた。
―――――――――――
妖魔双六の異変から数日後。
霊夢とジンは、神社が建て直すまで、サニー達が住むミズナラの木の部屋を又借りしていた。
「“人的被害はほぼゼロ。
博麗神社の退魔道具が功を奏したか?”か・・・。取り合えず、良かったな」
「何が良かったの?」
そう聞きながら、霊夢が部屋に入って来た。
「霊夢か、新聞を読んでいたんだ。
これによると、人的被害はあまり出なかったらしい」
「・・・前から思っていたけど、良くそんな新聞を読みわね」
「霊夢、新聞を馬鹿にしてはいけないぞ。
テレビやラジオが無い幻想郷では、新聞は重宝する」
「そう・・・好きにしなさい」
諦めたように、霊夢は椅子に座った。
「お茶でも淹れるか?」
「お願い」
「わかった」
ジンはテキパキとお茶を淹れ、霊夢に差し出した。
「ふぅ・・・やっぱりお茶は緑茶に限るわ」
「ところで、あの双六は一体どうした?」
「ああ、紫に預けた。
紫も、あんな双六を幻想郷に置くつもりは無いらしいから、もしかしたらスキマか、それとも外に放り出したんじゃない?」
「前者はともかく、後者は不味くないか?」
「私としたら、もうあんな双六と関わりあいたく無い」
「それは同感だ」
「はあ・・・新年そうそう、とんでも無い異変だったわ」
そう呟き、霊夢は窓の外を眺めた。
外は、雪がひらひらと舞い落ちていた。