来月なんですが、リアル事情で投稿できるか分かりません。でも、投稿出来たらするつもりではあります。
梅雨が迫る頃、博麗神社にある人物がやって来ていた。
「ねえ、暫く博麗神社に住まわせてくれない?」
来るな否や、いきなりそう言って来たのは、天人の少女、天子である。
ここ暫く、博麗神社に顔を見せていなかったのだが、今日何の前触れもなく現れ、いきなり住まわせて欲しいと言って来たのである。ジンと霊夢は困惑するも、事情を聞く事にした。
「ちょっと、いきなり過ぎるじゃない。なにまた家出?」
「違うわよ、ちょっと天界に居られなくなっただけよ」
「天界に居られなくなった? 一体何があったんだ?」
「実はね、宴会の料理をつまみ食いしただけなのよ。反省の意を込めて下界に追放されたのよ、理不尽だと思わない?」
因みに、彼女がつまみ食いしたのは、天界でも特に貴重な一品で、それを食べれば天人になれる天界の秘宝なのだが、ジンがこれを知るのはずっと後であった。
「つまみ食いは褒められないけど、つまみ食いでそれは確かに理不尽だな、霊夢だってそこまでやらないぞ」
「そうね、せいぜいお玉で頭を叩くぐらいかしら。それで、暫く神社に住まわせて欲しいって話だけど――――」
「もちろん、タダとは言わないわ。ここにいる間は働かせて――――」
「悪いけど、無理」
「え?」
霊夢の情け容赦ない言葉に、天子は一瞬固まった。どうやら、速攻で断られるとは思っていなかったようである。
「別に貴女が気に入らないとか、そういう理由じゃないわよ。ただ単純に、貴女を泊められる部屋が無いのよ」
「え!? 嘘でしょ!?」
「残念だが、これは事実なんだ」
どうやら天子は、博麗神社に人がかなり増えている事を知らなかったようである。現在、霊夢、ジン、妖狐、針妙丸、正邪、ピース、あうん、紫苑の合計八人が神社で暮らしている。とてもでは無いが、天子の部屋を用意は出来ないのが現状である。
「そんな訳で、神社は満員なのよ」
「相部屋なら何とかなるかも知れないが、個室の方が良いだろ?」
「そうねぇ、数日程度なら大丈夫だけど、いつ天界に帰れるか分からないから……」
天子の顔が曇る。天界に追放されたものの、当てがあったが故の余裕があったが、当てが外れた以上、住むところを探さなくてはならなくなった。しかし、博麗神社以外で自分を受け入れてくれる場所を、天子はまったく思いつかなかった。
「こうなるだったら金になるものを持ってくれば良かった」
「え? まさか無一文?」
「だって、最初からここで住み込みで働くつもりだったもの。まさか当てが外れるとは思わなかったわ 」
かなり本気で困っている天子を見て、ジンはどうにかしてやりたいと、考えを巡らす。すると、一人の人物を思いつく。
「あ、そうだ。一人だけ当てがある。彼女ならもしかすると……」
ジンは天子を連れて、その人物のもとへ向かった。
――――――――――――――――
「なるほど、そういった理由があったのね」
ここは山奥にある華仙の屋敷。ジンの当てというのは、彼女の事であった。仙人である彼女ならば、天子を悪いようにしないと考えたのだ。
「事情はわかったわ、天人様は私の方で預かるわ」
「ありがとう華仙、いきなりで本当にすまない」
「別に良いわよ。それに、私にとってもチャンスではあるから」
「チャンス?」
「いくら不良天人でも、天人は天人。上手くアピールすれば、天人になる時に口添えして貰えるかも知れないじゃない」
「やっぱり、華仙は天人になりたいのか?」
「当たり前じゃない、その為に修行しているのよ。でも、貴方は違うのねジン」
天人になりたい華仙とは違い、ジンは天人や仙人になろうとは思っていなかった。その理由は、不老不死となって生きても、幸福では無いという実例が身近にいた為に、どうしても憧れを抱けなかった。その辺りが、人であるジンと鬼であった華仙の違いであった。
「俺は人のままで満足だから」
「そう、まあ無理強いはしないわ。貴方の人生だもの、貴方が決めなさい」
そう言った華仙の表情はとても穏やかで、優しいものであった。
そんな時である、屋敷の外で動物と遊んでいた天子が部屋に入って来た。
「話終わった?」
「天子か、今話がついたところだ」
「はい、今日から御世話をさせて貰います茨華仙と申し――――」
「ああ、そう言う堅苦しいのは無しで良いわよ。貴方だって、ずっとそれじゃあ息苦しいでしょ? もっと楽で良いわよ」
「ええっと…それじゃあお言葉に甘えて、私の屋敷はどう? 上手くやっていけそう?」
「凄く良いわよ、こんな素敵な場所はなかなか見ないわ。流石ジンの師匠をしているだけの事はあるわ」
「ふふん、それほどでも」
褒められて良い気分になったのか、華仙は得意気に笑った。
こうして、不良天人である天子は華仙の所で世話になる事となったのだが、たまに遊びに来る死神と一悶着を起こしてしまうのだが、それはまた別の話である。