実は正月早々に体調を崩しておりまして、別の意味で寝正月となってしまいました。
あまり良いスタートとは言えませんが、体調に気をつけて今年も頑張りたいと思います。
今後もお付き合いよろしくお願い致します。
冬の山は危険が多いと、よく言われているが、実際その通りだとジンは染々思っていた。何故なら、妖怪山で遭難しているからである。
「まいったな、こうなるだったら一晩華仙のところで泊まっていけばよかった……」
遭難する数時間前、ジンは授業の為に華仙の屋敷に訪れていた。そして帰ろうとした矢先に、雪が降り初めた。
『この様子だと、吹雪になるわね。今夜は泊まっていったらどう?』
華仙にそう言われたが、霊夢が心配するだろうと思って、ジンはこの申し出を断り、雪降る中、神社に帰ろうとした。その結果が今に至るのである。
「こう視界が悪いと軌跡が見えないな。これは困った……」
もはや、自分が何処にいるのか分からず、吹雪の中を歩き続けるジン。そんな時、灯りが微かに見えた。そしてそこに小屋がある事に気がつく。
「誰か近くに住んでいるのか?」
妖怪山には守矢以外に人は住んではいないので、十中八九妖怪が住んでいるのだろう。だが、このまま吹雪の中を歩くのは困難ではある。ジンは、友好的な妖怪である事を願い、小屋へと近づいた。
「あの、誰かいないか? 道に迷ってしまった者なのだが」
戸を叩いて言うジン。すると直ぐ様戸は開かれ、そこに灰色の髪をした髪の長い女性が現れた。
「オラァ! 食っちまうだべぇ!」
そう叫びながら、手に持った鉈をジンに向かって振りおろした。
――――――――――――――――
「いやぁ、まさかうちが返り討ちにあうとは。お前さん、人間の癖に強いなぁ」
そう言ってジンに御茶を出したのは、先程ジンを襲い掛かった妖怪、山姥の坂田ネムノ。妖怪山で人知れずに住んでいる世捨て人ならず、世捨て妖怪であった。
「いろいろと鍛えているからな。それよりも、いきなり襲い掛かって来るとは思わなかった」
「何言ってるんだ? 妖怪は人を襲うもんだべ」
「まあ、そうなんだが・・・・・・」
「それに、里の人間だったら脅かす程度だ。それ以外は襲うって決めているだ」
「ああなるほど・・・・・・」
つまりネムノがジンを襲ったのは、里の人間では無い判断したからであると、ジンは理解した。
「まあ確かに、里には住んではいないな。でも一応、博麗神社の人間なのだが――――――」
「博麗神社って、なんだべか?」
「へ? 博麗神社を知らないのか?」
「知らん」
ネムノの言葉を聞いて、ジンは驚きを隠せなかった。幻想郷の中でも重要な場所である博麗神社を知らない者がいるとは、余りにも予想外だったからである。
ジンはネムノの、博麗神社の事を説明して話した。
「ふーん、そんな場所があったんだべな」
「・・・この様子だと、守矢神社の事も知らないようだな」
「守矢神社?」
「えっと、外からやって来た神社で、妖怪山の中にあるんだ」
「妖怪山の中に? 天狗共がよく許したな」
「あ、天狗は知っているんだ」
「それくらいは知っている。とは言っても、もう何年も会ってはいないんだがな」
「閉鎖的な生活をしているんだな・・・・・・」
「山姥は天狗とは違って群れるのは好まん。まあ、損得勘定での付き合いはやってるべ」
「ビジネスライク的か、まあそういう付き合いは有りだよな」
ネムノと世間話をしているうちに、吹雪が晴れて行き、夜空に浮かぶ月が顔を出した。
「晴れたか、そろそろ帰るよ」
「大丈夫べか? もう日は沈んでるし、一晩泊まった方が良いんだべ」
「申し出はありがたいが、待っている人がいるから帰る。ありがとうネムノ」
「そうかい、気をつけて帰るだべよ」
こうしてジンは、ネムノのに礼を言い、神社へと帰って行った。
――――――――――――――――
それから半年後、博麗神社で四季異変解決を祝っての宴会が行われていた。その場には、あのネムノの姿があった。
「そんな経緯で二人は知り合ったのね」
霊夢はジンとネムノから、出会った当初の話を聞いていた。
「というか、無理せずに一晩泊まって帰れば良かっただけじゃない。連絡なんて、浮游玉を通せば出きるんだし」
「あっ」
「あって、完全に忘れていたわね・・・・・・」
「まあまあ、そんな怒るべな。ジンはお前さんの事が好きだから、早く帰ろうとしただけだべ」
「なっ!?」
「え!?」
「ん? 違ったべか?」
「いや、まあ、その・・・・・・」
ネムノの言葉に、しどろもどろになるジン。霊夢も、心無しか顔を赤くしていた。
「そ、それより、どうだ博麗神社は? 良い所だろ?」
慌てて話題を変えようするジン、それを功をしたのか、ネムノはすっかり桜に注意がいく。
「そうだべな、こんな綺麗な桜はなかなか御目に掛かれないんだべ。本当に良い場所だべな」
そう言って、桜を眺めるネムノ。この日からたまにではあるが、ネムノが博麗神社に遊びに来るようになったのである。